勝ち

今日は健康診断だった。もう何日も前から、憂鬱だった。採血がすごく苦手で、今まで気分が悪くならなかったことが1度もなかった。
思えば、子供のころから臆病で、注射がある日は何日も前から怖がっていた。成長がないどころか、だんだんエスカレートしている…。
別に貧血になりやすいとか、そういう体質のせいではなく、怖がって緊張するのが原因だ。はっきりとそれがわかっていても、どうにもならないのが情けない。
健康診断に向かう電車の中で、早くも思いつめてしまい、気分が悪くなってきた。注射ぐらいでこんなに悩む自分をみっともないと思いながら、電車を下りた。他のことを考えて、気を紛らわせようと思ったが、上手くいかない。
それで行く前に、本屋に寄った。新刊はやはり手に入らなかったけど、少し気が紛れたので、大丈夫大丈夫、気分が悪くなったら、横になっていればいいだけだと自分に言い聞かせながら向かった。なんで採血でこんなに苦労しなければならないんだろう…。
気分が悪くなるのでと自己申告して、診察台に横になった状態で採ってもらった。針が刺さってもちくっとするだけで痛いというほどではないし、そのことはよく分かっていたけど、どうしても緊張してしまう。（トラウマのせいだってわかってるけど…）
針が刺さっている間、顔から血の気が引いているのが自分で分かった。本当にバカだと思う。
やっと針を抜いてもらうと、今度は少しだけ痛む。じんじんとする、針を抜いた後だけする独特の痛みを感じ、ああ、これがすごく苦手なんだよと思い出した。
しばらく診察台の上で、横になったままガーゼを押しつけていた。数分して、起き上がってみたが、大丈夫だった。気持ち悪くなっていない。そのとき、勝ったー！と思ってしまった。

元気なまま帰れたので、書店めぐり。
ある店で新刊の入荷はいつになるのかと訊いてみたところ、わざわざ出版社に電話をしてくれるという。申し訳なく思ったが、かけてもらうことにした。だが、出版社は何かの行事のために出払っているようだった。
そこで、新刊を求めて都会…の書店を7件ほど。どこも空振りだった。書店でみつける喜びを味わおうと予約しないでおいたが、なんだか不安になってきた…。まあ、これも楽しみの一部。

疲れたので近くの店に入って、ケーキを食べた。あんまり一人でお茶している人いないなあ…。そういえば、一人で店に入って食事できないって人、多いような気がする。私は空腹のほうが我慢できないなと思いながら、苺ののったミルクレープを食べた。次は茶色いモンブランが食べたいなあ。私の子供のころって、モンブランといえば黄色いものだったから、茶色いのは美味しそうに見える。