火車

2005年1月27日 読書
宮部 みゆき 新潮社

ネタバレしてます。
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事実が重い。
フィクションなんだけど、取り扱っている社会問題はフィクションではないから。
それでいて、面白い。
面白いっていう感想が、ちょっと不謹慎な気がしてしまうぐらい重いし、何度も涙ぐんでしまうのだけど、やっぱり面白い。
これを数年前(10年近く経つのかな…)に読んだ時は、重苦しい気持ちになったし、再読の今回もずっしりくるものがあったけど。
でも、先が気になって仕方なかった。

カードの問題だけじゃなくて、個人情報の流出の問題まで扱ってるのには驚き。これが書かれた時は、今ほど騒がれてなかったような気がするし。多分。

解説でも誉めてたけど、本当に宮部みゆきの文章、心理描写は上手いなあと思う。
ヒロインはほとんど表に出てこないで、友人や同僚の話の中にしか出てこないのに、人柄や人生がくっきり浮かび上がってくるあたりがすごい。

犯罪そのものについては、もちろん許せるものではないのだけど、
凄まじくて悲しい過去が泣ける。
親も友人も夫も、誰も彼女を救うことが出来なかったから。もちろん、彼女自身にはどうしようもなかったし、法律さえも守ってくれなかった。
「犯罪に走らなくても、こういう方法があったはず」、という選択肢を思いつかないし、彼女には全く過失がないのに、あまりに過酷な状況に置かれてしまったことを思うと、同情せずにはいられない。
途中、何度も「彼女は今、何をしているだろうか」って、本間刑事は考えて、最後に「誰も聞いてあげなかった彼女の話を聞いてあげたい」って思うところに救いがあってよかった。

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