小松 左京 徳間書店

角川からも文庫が出てる…。どっちを読んだんだったかな。

ネタバレ
完全にネタバレしていますので、未読の方は読まないで下さい。

「たとえ日本が沈没しても、この本は読まない」という固い決意があれば構いませんが、…未読の方にはあまり意味のない感想だと思いますし。

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「絶対好きだと思うよー、潜水艦とか出てくるから」という不本意な理由で薦められた本。
別に潜水艦が好きなわけじゃ……。『沈黙の艦隊』と『亡国のイージス』ぐらいしか、そういうの読んでないしなあ。
なんて思いつつ、あまり気が進まないけど読み始めた。
というのも、SFというジャンルに興味がないし、その上20年も前に書かれたSFが面白いのかなという疑問があった。もちろん古典的なSFがつまらないと思っているわけじゃないけど、20年って微妙な古さが気になって。
で、結果として、この作品は面白かった。
かえって20年前の最新技術だと、説明されれば理解できるというメリットがあってよかったと思う。あと不謹慎だけど、国際的な政治が出てくるストーリーの場合、冷戦中のほうが分かりやすくて面白い…。

突然、首都圏の上に「雲」が出現して、交通・通信が全て遮断されてしまい、中がどうなっているのか全く分からないという設定自体も面白かったが、ここまでリアルに多角に話を進めていくところが凄いと思った。政治、経済、科学、突然家族と引き裂かれてしまった個人、それぞれに説得力があって面白い。
章が変わると、今までと違う角度から同じ物事を見て、別の判断が下されたりもするが、なるほど、と思わされることが多かった。
普段は、一人の人間の心情や行動を丁寧に追っていく話ばかり読んでいるが、こういう視野の広い話も面白いと改めて気付いたというか。最後、「雲」がどうなるのかということが気になりつつ、それぞれの思惑、行動が絡まっていくのを楽しめた。

ラスト、雲が現れたときと同じように唐突に消えるかも、というところで終わったのも、よかったと思う。
「雲」が全く動かず、このまま居座り続けるというラストだと、やっぱり救いがないし、かといって完全に消えてしまうところまで話が進んでいたら、その先の対応まで書いてくれないと物足りないし。うまいところで終わらせたなあと。
こういう設定が大きい、謎を含んだような話は、ラストで肩透かしってことが多いので、最後の最後まで楽しめたのが嬉しかった。

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