エス 残光

2007年2月16日 BL作家あ行
英田サキ 大洋図書 ¥903

読了。以下、ネタバレ

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前巻に引き続きウェットな展開になってしまい、なんとなくこのシリーズにドライなものを求めていたので、面白く読みつつ、ちょっと物足りなさも感じていた。
うーん、これはこれで面白かったが、もっと男臭い展開も欲しかったなあ。金と利権で動く悪役とか、政治がらみとか、警察組織の腐敗とか、そういう殺伐としたものが読みたかった(のかなあ?)。どうも刑事が主人公だと自動的に薄暗いものを求めてしまうらしい。所属している組織の腐敗とか、保身しか考えない身内に足を引っ張られるとか、同僚の中でも浮いちゃってます、孤独です、やっと事件の真相を究明したら人間不信になりそうな残酷でやりきれないものでした、みたいな。
というわけで五堂はちょっとウェットだし、自滅型だったので、そんな中途半端に動かないでもっと主人公を追い詰めようよ、とか励ましたくなった。ヤクザものは暴力的なところがイヤだとか抜かしながら、どういう嗜好なんだか…。
ただ。
ウェットになったなあと感じたあたりから、実はあんまり好きじゃなかった宗近の株が上がって、わりと好きかもと思うようになった。そういや宗近の株が上がったといえば、裂罅のあとがきはなんだか他人の作品への感想みたいで、ちょっと違和感があった…。
そんなことはともかく。
ラストがすごくよかった。華々しい終わりじゃなくて、つや消しのところが好みだった。
最初の緊張感のある関係から少しずつ距離を詰めて、地に足が着いた関係になったというか、激情だけで終わらずにきっちり安定して、希望の持てる関係になったと思う。
椎葉の刑事としての将来も、呼び戻されるかどうかとか、まだ先のことははっきりしないけど、どういう方向に進んでも希望があるというところがよかった。

椎葉が自分は刑事として失格みたいに考えたあたりでは、生真面目すぎるし、それが弱さのようにも思えて、義兄の言うように折り合いをつけてもいいんじゃない?とか思ったけど、多分こういう不器用な真っ直ぐさがこのキャラの魅力なんだろうなあと。
クールビューティーがツンデレると、そんなにデレないでくれと悲しくなることがあるが、椎葉は最後までカッコよくて、その点も満足だった。(なんか偉そうな感想だな)

関係ないけど、密造拳銃とか旋盤ってキーワードで高村薫の腐女子に生まれたら一度は読んでおきたい(と私が言っている)名作を思い出し、そこからさらに連想して、血の繋がった兄弟もいいけど義兄もいいよね、とか思ったり。

さらにどうでもいいことだが、ものすごく盛り上がって、さあこれからエッチシーンというところで電車が駅に着いてしまい、自分の都合で焦らされたが、仕事がクソ忙しかったせいで何か考える余裕もなく、帰りの電車で長い中断を気にせず続きを読むことができた。…残業したくない一心で仕事も捗りましたとも。
(小説5)

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