秘密

2007年5月9日 木原音瀬
一応お断りしておくと、「なんか癒し系で設定が簡単に頭に入ってくるリーマンものの小説」(昨日の日記に読みたいって書いた)を期待してこの作品を選んだわけではないです…。

木/原音/瀬 『秘密』
ネタバレ感想。
秘密が秘密じゃなくなるんで、未読の方は退避してください。

---------------------------------------------------------

木原作品を読んだときのよくある感想。「キャラは好みに全然掠りもしないけど、じわじわ好きになった。話は面白い。引き込まれる」というもの。
キャラの描き方がいつもながら容赦がなかった。多分、同じキャラ設定で下手に書いたら「こんな嫌なやつのどこに感情移入しろっていうの?」って思っちゃうんだろうけど、ちょっと苦手と思いながら読んでいくと、いつの間にか好きになっちゃってるから不思議。木原作品のすぐに泣いちゃう情けない攻はちっとも好みではないのだが、人間としては好きなことが多い…。
「秘密1」のオチは、もしかしてそうなるんじゃないかとかなり初期から思ってたけど、そこまで抉るんだろうかって怯えていたところに落ち着いた。さすがだ。やっぱりここまでくるか。
書きなおしたせいか、あとがきにあったような行き詰った感はなかったけど、深い穴に落とされて、上を見ればとりあえず眩しいからよじ登れれば助かるんじゃない?っていうようなところで終わってしまい、なんだかとっても先行き不安だったのが、2、3でしっかりフォローが入っててよかった。
最近、この辺で微妙に手を緩めてくれる、その匙加減がいいと思う。初期の作品ならきっと救いがないまま、ばっさりいっちゃったりしたのだろうけど。私には今の作風のほうが読みやすいかな。
けど、変わってないように思うのは(一部の作品しか読んでないから語っていいか分からないけど)、キャラを突き放した視点で書いてる感じがするところ。たぶん作者は、「魂を削りながら書きました」とか「(自作のキャラに)感情移入して、泣きながら書きました」なんてことは言わない人なんじゃないかと。別にそれがいいとか悪いってことではなく、感じるスタイルとして。
だからある意味容赦のないところまで人間の弱さと醜い部分と、あと強さと魅力を描写できるんじゃないかと思う。
今回は短い話ばかりだったが、3の主人公、充の弟の樹なんて、特にそう思った。はっきりいって嫌なやつでしかないのだが、その短い中で何かがあって(よく分かんないけど。分かりやすい心情の変化の部分だけではなく、徐々にって感じ)、最後にはなんか憎めないねってなってる。しっかりムカついた後だけに、そこが快感というか。
それにしても、3での二人は甘かった。BLとしても、そこらへんでしっかり満足できた。

(小説29)

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索