かわい 有美子 笠倉出版社 2007/05

表紙が綺麗だなー。タイトルの文字がもう少しすっきりしていると、もっと好みだったけど。

ネタバレ感想。

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わりと好きな『上海金魚』と地続きの話で、あらすじも結構好きそうだったので、楽しみにしていた。

以下引用
すべてをかえてしまう恋――

若手建築士として注目を浴び、己れのルックスにも自信を持っていた北嶋は、とあるコンペでホテルマンの牧田と出会う。その落ちついて控えめな物腰を軽んじ、コンペで最優秀賞を逃したことで牧田にいちゃもんをつける北嶋だったが、常に大人の余裕を持つ牧田に諌められ高慢な鼻をへし折られてしまう。それをきっかけに牧田の人間性に触れ、恋に落ちてしまった北嶋は、思い付く限りの策を弄するのだったが……。


主人公の北嶋はいやなやつというより、ちょっとおバカさんで、友達にはなりたくないけど、受だから許せるという程度で、なかなか絶妙な匙加減だと思う。
お勉強はできる、才能はある、容姿もいいとくると、私の好みとしては、あんまり健気で素直じゃないほうが可愛く感じる。できすぎてないほうが、親しみわくから。
というわけで、頭はいいけど人間的におバカさんな北嶋は好きだし、第一、攻も受も好みの職業で、はっきりいって前半はメチャクチャ好みの作品だった。
ちなみに私の好きな、かわい作品はパレット文庫の3作品、『猫の/遊ぶ/庭』、『東/方美人』あたりで、『疵〜』や『いのせんと〜』も好きだが、『EGO/ISTE』が入ってないあたりがポイントかな、と。
かわい作品では圧倒的に、包容力があって優しい攻が出てくる作品が好きらしい。
この作品に戻ると、感情移入して読んでいると恥ずかしくなる行動の多い北嶋だけど、肩入れして読んでいるせいか、子供っぽいだけって感じなので意外と憎めない上に、好きになっちゃった後はいじらしいので応援しながら読んでいた。
読みやすいし、仕事の描写も楽しいし、これはお気に入りの一作になりそうだと思っていたんだけど。
2度目のデート(?)でいきなり自宅に招待してくる牧田もよく分からないが、そこで何も考えずに色々期待できてしまう北嶋についていけなくなった。今までは迷惑な行動も、うわ、恥ずかしい…ぐらいで流していたのだが、ここにきて「?」。
コトに至ってからは個人的NGワードを抜きにしても、二人とも好みから外れてしまい、かなりがっくり。
あと、ベタだけどやっぱり北嶋がコンペで受賞して…という展開を期待していたので、後半から仕事が絡んでこなくなって残念だった。
中盤までかなり好みで面白かっただけにラスト近くでがっくりきて、点が辛くなってしまったかも…。
十分に面白いんだけど、好みかと聞かれると、どうかなあと思ってしまうような作品だった。

追記。
引用したあらすじ、なんかいろいろ違和感あるなあ。
この作品を紹介するのに「鼻をへし折られる」とか「策を弄する」なんて言葉を使うのは変じゃないだろうか。
別に北嶋はすげなく追い返されたわけでもなく、納得して帰っていったのだし、どう考えても「策」なんてものはなかったと思うんだけど。…というか「策」を用いないところが、北嶋の魅力として描かれていると思うので、正反対じゃないかと……。
こういう風に書いたほうが売れるのかもしれないけど、もう少し内容に沿った書き方をできなかったのだろうか。

(小説31)

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