SASRA 1
2007年7月31日 BL作家ま・や・ら・わ行
Unit Vanilla リブレ出版 2007/07
Unit Vanilla:(和泉桂・岩本薫・木原音瀬・ひちわゆか)
勢いで買ってしまった1、2巻だが、本当に読むのか?と自分で疑問だった。
普段は企画ものキライ、時代物苦手、外国もの避けてる、アンハッピーはしばらく立ち直れなくなるから読む前から気が重い。
…勢いって怖いな。
で、いざ読もうとしたら読む前にわりとネットでは評判悪いみたいと聞いて、じゃあ私はべた褒めで決まりね!と読む前から意気込んだ。ひねくれていて、どうしようもない。
まあでも、先入観に感想そのものを左右されるなんていうのはよくあることで。最初から斜に構えて読むより、絶賛態勢で読むほうが楽しく読めるから、いいかなーと。
で、せっかくの企画ものだし、犯人当て…じゃなくて作者当てもやってみようかと思ったのだが、そもそも作者を一人しか知らない…。木原 or Not木原じゃ、あんまりだ。やめておこう。
友人にならってワタクシのそれぞれの作者への思い入れ?を…。
和泉桂:名前しか知らない。代表作すら思いつかない…。
岩本薫:エビリティの人。セレブでイケメン、スタイリッシュ重視作家。エビリティを3冊読んだだけなので、キャラは3足千円の靴下を履きそうにないとか、ゴミ箱はダストボックスって呼ぶとか、方向性を間違えたイメージばかりある。でも妙に気障な攻は結構好みなことがあるし読みやすいので、決して趣味に合わないわけではない。
木原音瀬:好きな作家さんの一人。既刊はイメージ7割既読。
ひちわゆか:5作品だけ読んでいる。初期より最近の作風が好みなようだが、実はよく知らない。文章は読みやすい。
すでに前置きで体力を使い果たしたが、
以下、ネタバレで誉めるはず。
-------------------------------------------------------
それぞれの回ごとに見れば、アンハッピー。これって連作の「引き」としても上手く機能していると思う。毎回、転生して容姿も性格も変わってしまう話の性質上、「めでたし、めでたし」で終わってしまうと、読みきりとして楽しんでしまい、1冊読めばいいやって読者が増えると思う。
主役たちと同じように愛にも幸福感にも飢えた状態になってしまうことで、最後まで読もうっていう気になりやすいというか。
プロローグ
男の顔を普通に誉める親友、やけに過保護な兄、豪放磊落系の攻と、BLらしさたっぷり。テンポよく進むので読みやすいし、アイテム紹介も上手で、導入にふさわしい作品じゃないかと。
…エジプトの少年として真っ当な髪形をしているのに、「つかぬことをお伺いしますが、囲碁はお好きですか?」と聞きたくなるイラストつき。
第1回 物語の起点となるエジプト編
この受にイライラしたのは、読んでいるとき空腹だったからか?
「愛している」と言われてもキスされても、「兄がわりの自分への親愛の情」って思い込むのはどうもなあ。それに何千年も罪を許されず、都合8〜9回?の転生をするにはインパクトが弱いので、もうちょっと神への畏れを強く出しておくべきだったのではないかと。
私としては、二人を国のために生きる王子と信仰に生きる神官という高潔なタイプ(または仕事に生きるタイプ)にして、もっと読者が憧れるようにしたほうが好みだった。そんな神官が愛する人のために半ば狂気にかられて罪に手を汚し、王子もこの人の罪なら自分も一緒に償おうと思って命を落とす。神官は「王子に罪はない。罰は我が身だけに」と祈りを捧げてナイルに身を投じる…っていうような思いっきりベタでドラマティックなラストのほうが、この後の長い話に思い入れができたような気がする。
実際の展開では「王子もティティもなんらかの罰が下るはず」とか考えている、どうにも俗っぽさの抜けないような神官が気になる。
ここで思うのが、この第1回に必要なのは何かということ。
私の好みはともかくとして、あんまり時代物をドラマティックに仕上げると、たぶん古臭くなる。いくら時代物でも、書き方が古臭いのは読者を選びそうだ。
しかも古代であることを考えると、主役二人から親近感をなくして伝説風にしてしまうと、続きが気にならなくなってしまうかもしれない。
どうにも私の好みではないが、これはこれで効果的な書き方なのかもしれない。
第2回 古代中国編
受は顔に痣のある劣等感の強いタイプ、攻は物乞いの子で高官に出世しても受の前ではヘタレ。なんとなく木原先生が好きそうな設定だけど書き方がぬるいので違うかもしれないなとか、思わず作者当てをしたくなったが、3/4を知らないんじゃなあ…。それに企画の性質上、ふだんと違う書き方をするように意識しているかもしれないし。
そんなことはともかく面白かった。ヘタレ包容攻。
これもラストがちょっと薄かった。やっぱり引き裂かれた恋人たちの転生ものなら、現世であまり満足しないほうがいいはず…。鷹峻に薬を届けられずに早く帰らなくちゃって思いながら死んでいく紅蓮、何も知らずに帰りを楽しみにしている鷹峻っていうほうが、悲劇性があると思う。
ただこれも、時代物、悲恋ものでありながら、取っ付きやすく後味をよくしていて、読みやすくしようと思っているなら大成功ではないだろうか。
正直、10作も重たい悲劇を読むのはしんどい上に、途中できっと飽きる。最初から主役のどちらかが必ず死ぬと分かっているために、思っていたほどアンハッピー、死にネタも読みづらくない。
それなら「引き裂かれた恋人たち」にこだわるより、「同じ相手と何度も恋に落ちる」って側面でバリエーション豊かに楽しんだほうがいいのかもしれない。
1冊読み終わって、そんな風に考えを改めた。
とっつきづらいテーマをとっつきやすく仕上げていて読みやすい作品。
さすがに実力派の作家さんが集まっているだけある。
(小説61)
Unit Vanilla:(和泉桂・岩本薫・木原音瀬・ひちわゆか)
勢いで買ってしまった1、2巻だが、本当に読むのか?と自分で疑問だった。
普段は企画ものキライ、時代物苦手、外国もの避けてる、アンハッピーはしばらく立ち直れなくなるから読む前から気が重い。
…勢いって怖いな。
で、いざ読もうとしたら読む前にわりとネットでは評判悪いみたいと聞いて、じゃあ私はべた褒めで決まりね!と読む前から意気込んだ。ひねくれていて、どうしようもない。
まあでも、先入観に感想そのものを左右されるなんていうのはよくあることで。最初から斜に構えて読むより、絶賛態勢で読むほうが楽しく読めるから、いいかなーと。
で、せっかくの企画ものだし、犯人当て…じゃなくて作者当てもやってみようかと思ったのだが、そもそも作者を一人しか知らない…。木原 or Not木原じゃ、あんまりだ。やめておこう。
友人にならってワタクシのそれぞれの作者への思い入れ?を…。
和泉桂:名前しか知らない。代表作すら思いつかない…。
岩本薫:エビリティの人。セレブでイケメン、スタイリッシュ重視作家。エビリティを3冊読んだだけなので、キャラは3足千円の靴下を履きそうにないとか、ゴミ箱はダストボックスって呼ぶとか、方向性を間違えたイメージばかりある。でも妙に気障な攻は結構好みなことがあるし読みやすいので、決して趣味に合わないわけではない。
木原音瀬:好きな作家さんの一人。既刊はイメージ7割既読。
ひちわゆか:5作品だけ読んでいる。初期より最近の作風が好みなようだが、実はよく知らない。文章は読みやすい。
すでに前置きで体力を使い果たしたが、
以下、ネタバレで誉めるはず。
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それぞれの回ごとに見れば、アンハッピー。これって連作の「引き」としても上手く機能していると思う。毎回、転生して容姿も性格も変わってしまう話の性質上、「めでたし、めでたし」で終わってしまうと、読みきりとして楽しんでしまい、1冊読めばいいやって読者が増えると思う。
主役たちと同じように愛にも幸福感にも飢えた状態になってしまうことで、最後まで読もうっていう気になりやすいというか。
プロローグ
男の顔を普通に誉める親友、やけに過保護な兄、豪放磊落系の攻と、BLらしさたっぷり。テンポよく進むので読みやすいし、アイテム紹介も上手で、導入にふさわしい作品じゃないかと。
…エジプトの少年として真っ当な髪形をしているのに、「つかぬことをお伺いしますが、囲碁はお好きですか?」と聞きたくなるイラストつき。
第1回 物語の起点となるエジプト編
この受にイライラしたのは、読んでいるとき空腹だったからか?
「愛している」と言われてもキスされても、「兄がわりの自分への親愛の情」って思い込むのはどうもなあ。それに何千年も罪を許されず、都合8〜9回?の転生をするにはインパクトが弱いので、もうちょっと神への畏れを強く出しておくべきだったのではないかと。
私としては、二人を国のために生きる王子と信仰に生きる神官という高潔なタイプ(または仕事に生きるタイプ)にして、もっと読者が憧れるようにしたほうが好みだった。そんな神官が愛する人のために半ば狂気にかられて罪に手を汚し、王子もこの人の罪なら自分も一緒に償おうと思って命を落とす。神官は「王子に罪はない。罰は我が身だけに」と祈りを捧げてナイルに身を投じる…っていうような思いっきりベタでドラマティックなラストのほうが、この後の長い話に思い入れができたような気がする。
実際の展開では「王子もティティもなんらかの罰が下るはず」とか考えている、どうにも俗っぽさの抜けないような神官が気になる。
ここで思うのが、この第1回に必要なのは何かということ。
私の好みはともかくとして、あんまり時代物をドラマティックに仕上げると、たぶん古臭くなる。いくら時代物でも、書き方が古臭いのは読者を選びそうだ。
しかも古代であることを考えると、主役二人から親近感をなくして伝説風にしてしまうと、続きが気にならなくなってしまうかもしれない。
どうにも私の好みではないが、これはこれで効果的な書き方なのかもしれない。
第2回 古代中国編
受は顔に痣のある劣等感の強いタイプ、攻は物乞いの子で高官に出世しても受の前ではヘタレ。なんとなく木原先生が好きそうな設定だけど書き方がぬるいので違うかもしれないなとか、思わず作者当てをしたくなったが、3/4を知らないんじゃなあ…。それに企画の性質上、ふだんと違う書き方をするように意識しているかもしれないし。
そんなことはともかく面白かった。ヘタレ包容攻。
これもラストがちょっと薄かった。やっぱり引き裂かれた恋人たちの転生ものなら、現世であまり満足しないほうがいいはず…。鷹峻に薬を届けられずに早く帰らなくちゃって思いながら死んでいく紅蓮、何も知らずに帰りを楽しみにしている鷹峻っていうほうが、悲劇性があると思う。
ただこれも、時代物、悲恋ものでありながら、取っ付きやすく後味をよくしていて、読みやすくしようと思っているなら大成功ではないだろうか。
正直、10作も重たい悲劇を読むのはしんどい上に、途中できっと飽きる。最初から主役のどちらかが必ず死ぬと分かっているために、思っていたほどアンハッピー、死にネタも読みづらくない。
それなら「引き裂かれた恋人たち」にこだわるより、「同じ相手と何度も恋に落ちる」って側面でバリエーション豊かに楽しんだほうがいいのかもしれない。
1冊読み終わって、そんな風に考えを改めた。
とっつきづらいテーマをとっつきやすく仕上げていて読みやすい作品。
さすがに実力派の作家さんが集まっているだけある。
(小説61)
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