恋雪

2007年8月9日 砂原糖子
というわけで、なんだか涼しげなタイトルの本を選んでみた。
まあタイトルに関係なく作家×レーベル買いしたんだけど。
あらすじはまったく見なかったが、表紙を見る限り多分あんまり好きじゃないだろうなあ(受が)と思いつつ。
砂原さん×大洋じゃスルーできない…。
 
 
『恋雪』 砂原糖子
 

ネタバレ感想。

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あらすじ・引用
「いつか必ず迎えに来るから、向こうで一緒に暮らそう」そう言って島から去った幼馴染みの成明を信じ東京に来た湊だったが、成明は劇団の仕事が忙しく、冷たかった。
それでも、成明が酔って帰ってきた日に結ばれ、喜ぶ湊だった。
しかし、実は成明には好きな女がいて、その代わりに抱かれたことを知りショックを受ける。そんなとき湊に俳優になることを薦めるプロデューサー柏木が現れて・・・!?
クールで強引な成明と素直で従順な湊が東京で繰り広げる、切なく擦れ違う恋物語。

いつか迎えにって…なんかすごい言い方だと最初は思ったのだが、この台詞は大袈裟でもなんでもなく、湊には本当に島を出られないだけの事情がきちんとある。
某アンソロの後遺症で(…)、たったそれだけのことで感心してしまった。すごい、ちゃんと納得できる理由があるよ!と。えらい態度の悪い読み方だ。
最初は攻視点(好み)から始まったために、この湊の人の好さは本当に野暮ったく、空気が読めないキャラに思えて苦手だった。湊の視点になってもそれはあんまり変わらず…。やっぱり表紙の印象どおりか…と思いかけたのだが。
成明が島に帰り二人が別れ、湊の事情が分かってくるにつれて、だんだん魅力が分かってくる。成明が湊への気持ちを取り戻すのと同じタイミングだから、知らずに感情移入していたようで、上手いなあと。
で、湊が柏木と寝てしまい、有名になっていき、一方で成明は島に残ることになり…。最終的にうまくいくのは分かりきっていても切ない。
映画俳優を続けず、柏木との関係を断ち切っていくあたりが、主体性に乏しいように見えた(まあ選択肢の少ない環境だったから仕方ないと思う)湊の成長を感じさせてよかった。優しくちょっと頼りない、健気なだけのタイプというイメージを、俳優としてもBLキャラとしても、二重の意味で脱却するところが好みだ。
再会後の告白ですんなりいかなかったところも、展開として好み。
たぶん、この作品は読者を選ぶだろうなあという印象。
誤解ではなく、本当に攻が心変わりしたり受が他の相手と寝たりするのは、好まない人も多いと思う。でも私はそういう部分が気に入った。
人間の感情を描写する部分でまで綺麗なだけでまとめられると物足りなかったりするし。もちろん書き方によるし、シビアでリアルな作品が絶対にいいというわけではないけど、この作品みたいにしっかりハッピーエンドになるなら、途中はこれぐらいのほうが読みやすい。ある程度リアリティのあるほうが夢だと気付かない分、途中で冷静にならずにすんで夢も見やすい。どうせ騙すなら上手く騙してって気分(笑)
それに二人が乗り越えてきたものが大きいほうが「それでもあなたが好き」って部分に共感しやすくて、ラストで感動できる。甘いだけじゃなくアクセントが効いていたなあと。

しかし。作品の雰囲気、ストーリーは好みだったのだが、湊はいいキャラだと思ってもやっぱり趣味じゃなかったので、面白かったけど……という感想。

作品とは関係ない話。
BLはあくまでFTみたいな書き方をするのは、そういう側面があることを否定できないからっていうのも確かにあるけど、これだけどっぷり浸かってると客観的には見られないし、ちょっと厳しいぐらいの書き方のほうがバランスが取れるかなあと思っちゃうせいかも…。それにしても最近よく語るなあ…。

(小説64)

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