情熱の温度

2007年9月11日 木原音瀬
『情熱の温度』 木原音瀬 1999/08

別に好んで選んでいるわけでもないのに、また攻がかっこいい作品に当たった。そういう時期なのか…。

ネタバレ感想。

-----------------------------------------------------

あとがきを読んで、つい笑ってしまった。いま手元に本がないから、引用できないけど。「教師と生徒という組み合わせは王道」というようなことを書かれていて。
その組み合わせは確かに王道かもしれませんが、ですけど…。
その王道設定で、生徒に嫌われている暗い35歳教師受(もちろん美形ではない)を持ってくるあたり、すごいです。王道だってことに気付きませんでしたよ(笑)

この作品も攻の吉川がなぜ泉野を好きになったのかは、あまり分からない。
…なんというかこう、頑なだった泉野がちょっとずつ心を開いてきて仲良くなっていく段階は読んでいて楽しかったので、まあ気持ちは分からなくもない。自分の半分しか生きていない生徒に甘えっぱなしの泉野には誰もが納得するような魅力は乏しいけど、一緒にいる間にだんだん情が移ってしまったような感があり、まあ吉川がそこまで好きだというなら、それでいいのかなーと最初は思っていた。
だが泉野視点になってからは、なんだか吉川が可哀想になってきてしまった。泉野に散々尽くしているのに(隣の部屋に引っ越してくるのは行きすぎだと思うが、それ以外は節度を保っている)女ができた途端に邪険にされる。泉野は吉川の忠告を無視して騙された挙句にリストカットを繰り返し、慰めてくれた吉川に対して八つ当たりで酷いことをいい…。
ずっとこんな調子で、泉野の都合のいいときだけ相手にされて、傷つけられて、最後に裏切られる。それでもまだ好きだといって優しくする吉川の一途さ、健気さには泣けてくるものがあった。
なんでそんなに泉野がいいのかと、ここでまた最初の疑問に戻ってしまうのだが、「なんとなく分かる」と自分に言い聞かせつつ読んだ。理由は分からないが、吉川が泉野を想う気持ちはガンガン伝わってくるので、理由なんて必要がないともいえる。

けど。泉野は弱くて卑怯なタイプだが、極端なところはあるにせよ、それほど嫌な奴ではない。泉野の弱い部分は、程度の差はあっても誰でも持っているようなものなので、これを真正面から非難するのは難しいような気がする。
年齢以上に大人で包容力があって、しかもここまで一途に自分を慕ってくる吉川に甘えてしまっているんだなと分かるので、しょうがないなあと思いつつ、憎めない。

それにしても、吉川は人間ができていて、しかも可愛いい。
面白い作品だった。

(小説79)

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索