佐々木 禎子 プランタン出版 2006/09

苦手を克服第2弾(アラブもの)

過去2回の挫折について、前にこんなことを書いた。
なるべく読みやすそうな「オークション」が出てこないものを2冊選んだのだが、両方とも最後まで読めずに克服失敗。なぜか両方ともクライマックス間近の10〜20ページを飛ばしてラストだけ読むという結果に。ちょうどそのあたりで先が見え、自分の趣味に合った(許容範囲の)方向に話が進まないことを確認できてしまうので、読み進める気力が尽きてしまうらしい。で、一応ラストだけ読んで終わると。たかが20ページなのに、どうしても読めずに斜め読み…。ハーレムに閉じ込められるのがムカつくとかいちいち思っているようでは、克服は諦めたほうがよさそうだ。

まあこんな調子で諦めようと思っていたのだが、またお借りしてしまった。
イラストが石原さんだったのも大きい。
それに佐々木禎子は私にとっては安定供給作家さんで、今のところハズレなし。
作品の内容そのものも軌道から外れないので、気分的に疲れているときでも無理なく読めるのがありがたい。「息もつけないような展開、予想もつかないキャラの行動、感動で読後しばらく呆然」……みたいな作品はいくら面白くても続けて読むのには疲れるので、こういうタイプの作品は読みやすくていい。
佐々木さんのアラブものなら「アラブ=アナザーワールド(国内だとジパング)」ってこともないだろうし、ラピス文庫でも読めそうだなあと。あんまり縁がないレーベルで。

…どうもフルネームだと敬称略にしやすい。一応お断り。

ネタバレ感想。

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あらすじを斜め読んだとき、お代官様がご無体なさった後にハーレムに閉じ込められてから釈放される話かと思った。過去2冊しか読んでいないのにこういう書き方もどうかと思うが、アラブ王子が受を対等な仕事相手だと認めているアラブものってほとんどないはずなので。というより、受に人権が認められていることが少ないんじゃないかと思う。人権なんてものはBLアラブもの世界では砂漠に捨てられて風化している。統計を取ったことはないが、たぶん。
が、このお代官様はどうやら「仕事のできる男前受」がお好きらしい。おお、私と同じ趣味ですね、シーク!といきなり親近感を覚えた。そんなわけで、シークが多少おバカさんな行動をとっても暖かく見守ることができた。
どうでもいいことだが、攻がヒゲじゃないことにきちんと説明があるアラブものは珍しいのでは。そんなところにも好感を持った。
受の雪也は仕事ができる上に内面も男らしくて、とっても好みだった。少しばかり理不尽な状況ではあったものの、「言うことを聞かないとお前の会社とは取引しない」なんていう脅迫ではなく、自分で選び取った「取引」なのがいい。
お互いに惹かれた理由と過程が分かりやすいので、感情移入しやすかった。今まで読んだ2冊は、攻は単に「顔が綺麗で毛色が変わってるから」って理由で受を気に入ったとしか思えず(最後まで遊びとしか思えない)、受はただ流されるだけだった。一生ハーレムに軟禁されても構わないって人間に感情移入するのは無理で…。この作品ではちょっと特殊な設定なだけで、普通に恋愛小説として楽しめるぐらいだった。
そういえば、後半の展開が前に読んだ作品とまったく同じで、こんなそっくりでいいのか?と思ったが、その後の展開は真逆ぐらい違っていて面白かった。
王族としての権力が魅力の一部なんて男はつまらないと思うが、この作品では個人の魅力で勝負していたのがよかった。

きっと王道ではないのだろうが、選べば面白いのもあるんだなーとアラブものへの認識を改めた。

(小説90)

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