ハサミ男 (講談社文庫)
2007年10月5日 読書
殊能 将之 講談社 2002/08
まだ、さ行。
…それはどうでもいいとして、どうしたものか。
えらい感想書きづらい。ネタバレなしじゃ何も書けないかも。
この本をお勧めしてもらったのは確か6月。
この作者はこの本だけがお勧めというオマケつき推薦をされて読んでみたら面白かったから勧めてくれた、という変わったお勧め本だった。
で、すぐにネットで買っておいたのだが、分厚いしBLじゃないし読むのを躊躇していたのだが、やっとのことで読み始めた。
で、分厚さの割りに2日で読み終えた。行き帰りの電車の中でしか読まないので5時間弱という計算だけど、疲れていても読めるぐらい読みやすかったということじゃないかと。
犯人が分かるネタバレ
ものがミステリだから、気合を入れたネタバレ表示。
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連続殺人鬼が探偵役というミステリ。
まずはあれですか、自分のモラルと戦うところから始めないといけませんか?とビクビクしながら読み始めたのだが、そうでもない。
まず一人称である。
犯人の一人称の場合、語り手が真犯人である確率は結構低いはず。一人称なら疑うべきだと思う。本人がシリアルキラーですと自己申告した場合、本当に殺したのかとそこから疑っておいたほうが楽しい。
加えてこの犯人自殺未遂を繰り返しているし、いわゆる多重人格ってやつらしい。(正式な病名は忘れたし、それとは症状が違うそうで)
「らしい」というのは最初のほうには明言されていないから。でも、私はこれは主人公の別人格かな?と最初から疑ってかかっていた。理由は一人称だから。確証を持ったのは語り手が連続殺人鬼であると別人格である「医師」に話したとき。機知のこととして話していたので、それ以外にないだろうなと。
別に私が鋭い読者だから気付くのではなく、それと分かるようにちゃんと匂わせてあるわけだ。
とにかく芸が細かい。主人公は「鷹番」という地名の読み方を「たかつがい」だと勘違いしていた、というところから話が始まる。だが、最初はルビを振らず、正しい地名を書かないまま話を進めていって、主人公が正しい読み方を知ったところで答えが分かるというのも、細かいなあと。
こういうトリックのミステリだと「あのときはどうだったの?」とつい読み返してしまうが、矛盾はない。上手くできていると思う。
一人称のところで「疑うべき」と書いたのは、作者に騙されないようにではなく、きっちり騙されるために、という意味。流し読みせずに、ある程度身構えて読むほうがミステリは楽しいと思う。この作品は、多重人格が絡んだ場合どうしても身構えてしまうこっちの心理を逆手に取った謎解きだったし。
謎解きを面白く読んだが、引っかかるのはやはりモラルの問題だろうか。面白かった、他の作品も読んでみたいとは(勧められたとしても)思えなかった。
連続殺人鬼の心理を読み解くことにものすごく否定的だが、解説しないまでも、もう少し本人なりの動機を描いてもよかったんじゃないかと思う。余人に理解できなくても、犯人なりの動機がないというのは、ミステリとしてどうにもなあ。
「でぶのフリーター」が探偵、主役ということで、ちょっと変わってていいなあと思ったのだが、語り手の正体は外見に魅力があってミステリの主役としては平凡だった。そこも残念。
(小説96)
まだ、さ行。
…それはどうでもいいとして、どうしたものか。
えらい感想書きづらい。ネタバレなしじゃ何も書けないかも。
この本をお勧めしてもらったのは確か6月。
この作者はこの本だけがお勧めというオマケつき推薦をされて読んでみたら面白かったから勧めてくれた、という変わったお勧め本だった。
で、すぐにネットで買っておいたのだが、分厚いしBLじゃないし読むのを躊躇していたのだが、やっとのことで読み始めた。
で、分厚さの割りに2日で読み終えた。行き帰りの電車の中でしか読まないので5時間弱という計算だけど、疲れていても読めるぐらい読みやすかったということじゃないかと。
犯人が分かるネタバレ
ものがミステリだから、気合を入れたネタバレ表示。
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連続殺人鬼が探偵役というミステリ。
まずはあれですか、自分のモラルと戦うところから始めないといけませんか?とビクビクしながら読み始めたのだが、そうでもない。
まず一人称である。
犯人の一人称の場合、語り手が真犯人である確率は結構低いはず。一人称なら疑うべきだと思う。本人がシリアルキラーですと自己申告した場合、本当に殺したのかとそこから疑っておいたほうが楽しい。
加えてこの犯人自殺未遂を繰り返しているし、いわゆる多重人格ってやつらしい。(正式な病名は忘れたし、それとは症状が違うそうで)
「らしい」というのは最初のほうには明言されていないから。でも、私はこれは主人公の別人格かな?と最初から疑ってかかっていた。理由は一人称だから。確証を持ったのは語り手が連続殺人鬼であると別人格である「医師」に話したとき。機知のこととして話していたので、それ以外にないだろうなと。
別に私が鋭い読者だから気付くのではなく、それと分かるようにちゃんと匂わせてあるわけだ。
とにかく芸が細かい。主人公は「鷹番」という地名の読み方を「たかつがい」だと勘違いしていた、というところから話が始まる。だが、最初はルビを振らず、正しい地名を書かないまま話を進めていって、主人公が正しい読み方を知ったところで答えが分かるというのも、細かいなあと。
こういうトリックのミステリだと「あのときはどうだったの?」とつい読み返してしまうが、矛盾はない。上手くできていると思う。
一人称のところで「疑うべき」と書いたのは、作者に騙されないようにではなく、きっちり騙されるために、という意味。流し読みせずに、ある程度身構えて読むほうがミステリは楽しいと思う。この作品は、多重人格が絡んだ場合どうしても身構えてしまうこっちの心理を逆手に取った謎解きだったし。
謎解きを面白く読んだが、引っかかるのはやはりモラルの問題だろうか。面白かった、他の作品も読んでみたいとは(勧められたとしても)思えなかった。
連続殺人鬼の心理を読み解くことにものすごく否定的だが、解説しないまでも、もう少し本人なりの動機を描いてもよかったんじゃないかと思う。余人に理解できなくても、犯人なりの動機がないというのは、ミステリとしてどうにもなあ。
「でぶのフリーター」が探偵、主役ということで、ちょっと変わってていいなあと思ったのだが、語り手の正体は外見に魅力があってミステリの主役としては平凡だった。そこも残念。
(小説96)
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