木原 音瀬 オークラ出版 2000/11

面白かった。満足。
原作を読んだので、漫画のほうもやっと読めた。

がっつりネタバレ

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あんまり痛くないなーと読み始めた。
攻の誠一はサイテー男だが、本当に悪い人間というわけではないしマヌケだし、憎めないタイプだと思う。
啓介のほうはどこまで分かっているのかな、と読みながらずっと気になっていた。最後に全部分かっていたのだと判明したときは、すっきりしたというか、なんというか。
誠一を突き放して終わるラストはかなり好み。誠一に思い知ってほしかったわけではなく、こういう愛の形って切なくていいなあと。失恋ものでしか味わえない深みと余韻が感じられてよかった。

「君は〜」のほうは、誠一を信じきれない啓介の哀しい心情を描いていくのかと思っていたら…。「さようなら〜」のほうが派手な雰囲気なのに全体は淡々としていたのに対し、こちらは穏やかそうに見えて激しい愛の話だった。
BLセオリー的には、子供を引き取ることになった時点で、啓介が遠慮→ 誠一が包容力を見せる→ 家族ものって流れになるはずだし、そういう風にキレイにまとめても十分面白かったと思うのだが、木原作品ですから、やっぱりガツンと。
…子供の前でやってしまったこと以外は、実はそう特異なことでもない。子供より妻が大事なんて男は世の中にいくらでもいると思うし、恋人か子供かという究極の選択――崖に恋人と子供がぶら下がっていたら、どっちを助ける?ってやつ、をあえてする必要もないはず。家族への愛と恋人への愛は別物でいいはずというか。
そこらへん曖昧にしとけばキレイに終わるのに、やっぱり選ばせてしまう。それで子供を選ばなかったことでこの愛が汚いものになってしまうかというと、もちろんそんなこともない。恋愛がキレイなだけのものじゃないことなんて、最初から分かってるし。
ドロドロとしたものを内包しながらも、一心に相手を求める姿は、ある意味ではやっぱり綺麗な愛の形なんじゃないかと思う。
ちょっと激しすぎる気はするが、感動的な話だった。

と、ここで終わっておけばいいものを、やっぱり木原作品。もっと先まで行きます。もうかなり立ち入り禁止区域だけど、行けるところまで行きます。
書き下ろしは精神的な意味で捨てられてしまった子供の話。なんだかんだいって父親も父親の恋人も可愛がってくれて…って話になってほしいなと願っていたが、もちろんそんな甘ったるい話にはならなかった。愛に飢えて、逃げ込んだ先でさらに…っていうなんだかあらすじを書くと悲惨な話だった。
でもこの恋?の結末は明るいものじゃないにしても、次に恋する相手と幸せになるかもしれない。父親を見ていれば、そう悲観的になることもないような気がする。
うーん、明るい話じゃなかったんだけど、後味は不思議とそんなに悪くなかった。

(小説98)

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