英田サキ リブレ出版 2007/06

英田作品の中では比較的読みやすかった。
どうもストーリーや書き方の癖が肌に合わないので、面白い作品であってもはまるところまでいかない作家さんだ。設定段階では好みのことが多いので、趣味に合わないのが残念。

ネタバレ
ファンの方と未読の方は退避してください。

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とっつきやすい書き方だし、まとまりがいいしテンポもいいし、盛り上がりもある。読みやすい小説だと思う。
で、面白いと思うからこそ、いろいろなところが気になってしまう。

香港マフィア×刑事だが、監視しているだけなのでそれほどの緊張感はない。
最初こそワガママを言ってみせたマフィアだが、一度懐いたらひたすら甘いだけの男だった。まったく疑いも警戒もせずに刑事に骨抜きにされていく姿は、ただの金持ちという設定なら優しさを感じていいかもしれないが、マフィアのボスとしては少々情けない。もう少し切れるところ(キレやすいって意味じゃなく…)を見せてほしかった。あんまり大物に見えないせいか、元恋人とのいきさつや父親との再会なども弱さを強調しているだけのようで、隙がありすぎるというか。人が好すぎていつか食い物にされるのではないかと余計な心配をしたくなる。
とりあえず髪を切ってくれない限り趣味じゃないからいいけど。
受のほうもそれなりに刑事としての使命感はあるがとくに熱意も経験もないので、正直、最後に仕事を選んだときは違和感があった。たいして好きでもない仕事を続けるために日本に残ると言い、自分の人生を捨てられないと言うが、こだわるようなものが何も感じられなかったので、ラストの切なさも目減りした。
受が精神的、社会的に自立しようとする態度は好感が持てるが、自分の都合で別れておいて「わたしいつまでも待ってるわ」と言うのは違う気が…。

どちらにしても私は英田作品のキャラにはどうにも台本通りに動いているような作り物っぽさを感じてしまうので、ところどころしか感情移入できない。こういうのは感覚の問題なので、趣味の問題と同じく個人的なことだけど。

(小説116)

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