うえだ真由 幻冬舎コミックス 2005/07
うえだブーム継続中。
完全ネタバレ感想
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幼馴染の再会もの。8年ぶりに戻ってきた晴一は千波の幼馴染で初恋の人。千波が約束を破り、待ち合わせの駅に行かなかったことが答えになり、二人の恋は終わり連絡が途絶えていたのだが……。
晴一は過去のことを一切語らず穏やかで、主人公のほうから別れる決意をしたらしいが、具体的に何があったのかは伏せられたまま回想を交えて話が進んでいく。こういうパターンだと過去のことを話し合うときに、主人公が厳しい言葉で責められたり傷つけられたりすることが多いと思うけど、この話では晴一のほうも千波がなぜ別れを決意したのか十分理解していて責めることがない。だから、晴一がなぜ突然戻ってきたのか分かっていない段階でも、8年という長い間連絡が途絶えていたことに説得力がある。
回想によって明かされる8年前の「事件」は、二人に非があるとはまったく思えず、別れるという決断がもどかしくなるほどだ。だが、責任があろうがなかろうが、傷ついた人がいるのに気にするなというのが無理な話で、二人とも優しくて真面目な性格だということはきちんと描写されているので、この時点ではこの決断しかなかったんだろうと共感ができるし、納得がいく。責任がなくても前に進むことができなかった千波に必要だったのは誰かの許しの言葉だったんじゃないかと思う。
このとき千波が「自分たちは悪くない」と自分に言い聞かせて(実際悪くないんだけど)晴一と東京へ行ったとしても、罪悪感に押しつぶされてしまって続かなかったんじゃないかという気もする。
話が逸れるが、千波の強烈な祖母や嫁として耐える母親と違い、妙に影の薄い父親の様子が事件の騒動の場面でさらっと描写されているのが上手いと思った。主人公の父親に対しての感情が行間に出ていてよかった。
二人は8年前に想いを確かめ合い、同時に苦い経験に繋がった思い出の海に行って、記憶を上書きしていくことで過去を乗り越える。そこで晴一がアメリカに留学するという事情が初めて明かされ、一緒に行ってほしいといわれる。いきなり厳しい選択を迫られる千波は大変だが、ここでも8年前の約束を再現することで過去を乗り越えようとする晴一の意志が伝わってきて、今度こそ、と期待した。
千波は結局今回も不可抗力で約束の駅へ行くことができなかったが、連絡手段を残してくれなかった晴一を諦めずに捜し、渡米の前日に会いに行くという展開がとても感動的だった。おとなしくて優しいところが魅力的な主人公が、勇気を出して前に進もうとするところがいいなあと。しかも実は二人の関係に薄々気付いていた、気が弱いとばかり思っていた母親が力強く送り出してくれて、8年前には足りなかったピースが埋まる(他者から言葉をもらえた)ところもよかった。
周囲を気遣って一度は諦めた恋。あのときああしていればと過去の恋愛で後悔することは多いけど、もう一度やり直せるとしたら、どうしますか?
そういう場面になって、今度こそ自分の気持ちに素直になって、情熱に任せて何もかも捨ててアメリカについていっても悪くはなかったと思う。そういう展開でも応援したと思う。でも、単純に8年前の約束を履行しました、で終わらないところが上手い。
必ず行くから待っていて欲しいといい、晴一との関係を話して傷つけてしまった家族をもう少し支え、担任しているクラスの児童が進級するまで見守りたいというのが、優しくて責任感の強い千波らしい選択だった。障害がつきまとう恋愛なのに、それを全部まわりのせいにせず、難しくて遠回りで、でもきっとみんなが一番幸せになれる方法を選んだのだと思う。8年前の選択で傷つき、苦しみ、たくさん後悔した千波だからこそ選んだ、後悔しない、しこりが残らないやり方。8年分大人になり、強くなったんだと思える、いいラストだった。
うえだブーム継続中。
完全ネタバレ感想
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幼馴染の再会もの。8年ぶりに戻ってきた晴一は千波の幼馴染で初恋の人。千波が約束を破り、待ち合わせの駅に行かなかったことが答えになり、二人の恋は終わり連絡が途絶えていたのだが……。
晴一は過去のことを一切語らず穏やかで、主人公のほうから別れる決意をしたらしいが、具体的に何があったのかは伏せられたまま回想を交えて話が進んでいく。こういうパターンだと過去のことを話し合うときに、主人公が厳しい言葉で責められたり傷つけられたりすることが多いと思うけど、この話では晴一のほうも千波がなぜ別れを決意したのか十分理解していて責めることがない。だから、晴一がなぜ突然戻ってきたのか分かっていない段階でも、8年という長い間連絡が途絶えていたことに説得力がある。
回想によって明かされる8年前の「事件」は、二人に非があるとはまったく思えず、別れるという決断がもどかしくなるほどだ。だが、責任があろうがなかろうが、傷ついた人がいるのに気にするなというのが無理な話で、二人とも優しくて真面目な性格だということはきちんと描写されているので、この時点ではこの決断しかなかったんだろうと共感ができるし、納得がいく。責任がなくても前に進むことができなかった千波に必要だったのは誰かの許しの言葉だったんじゃないかと思う。
このとき千波が「自分たちは悪くない」と自分に言い聞かせて(実際悪くないんだけど)晴一と東京へ行ったとしても、罪悪感に押しつぶされてしまって続かなかったんじゃないかという気もする。
話が逸れるが、千波の強烈な祖母や嫁として耐える母親と違い、妙に影の薄い父親の様子が事件の騒動の場面でさらっと描写されているのが上手いと思った。主人公の父親に対しての感情が行間に出ていてよかった。
二人は8年前に想いを確かめ合い、同時に苦い経験に繋がった思い出の海に行って、記憶を上書きしていくことで過去を乗り越える。そこで晴一がアメリカに留学するという事情が初めて明かされ、一緒に行ってほしいといわれる。いきなり厳しい選択を迫られる千波は大変だが、ここでも8年前の約束を再現することで過去を乗り越えようとする晴一の意志が伝わってきて、今度こそ、と期待した。
千波は結局今回も不可抗力で約束の駅へ行くことができなかったが、連絡手段を残してくれなかった晴一を諦めずに捜し、渡米の前日に会いに行くという展開がとても感動的だった。おとなしくて優しいところが魅力的な主人公が、勇気を出して前に進もうとするところがいいなあと。しかも実は二人の関係に薄々気付いていた、気が弱いとばかり思っていた母親が力強く送り出してくれて、8年前には足りなかったピースが埋まる(他者から言葉をもらえた)ところもよかった。
周囲を気遣って一度は諦めた恋。あのときああしていればと過去の恋愛で後悔することは多いけど、もう一度やり直せるとしたら、どうしますか?
そういう場面になって、今度こそ自分の気持ちに素直になって、情熱に任せて何もかも捨ててアメリカについていっても悪くはなかったと思う。そういう展開でも応援したと思う。でも、単純に8年前の約束を履行しました、で終わらないところが上手い。
必ず行くから待っていて欲しいといい、晴一との関係を話して傷つけてしまった家族をもう少し支え、担任しているクラスの児童が進級するまで見守りたいというのが、優しくて責任感の強い千波らしい選択だった。障害がつきまとう恋愛なのに、それを全部まわりのせいにせず、難しくて遠回りで、でもきっとみんなが一番幸せになれる方法を選んだのだと思う。8年前の選択で傷つき、苦しみ、たくさん後悔した千波だからこそ選んだ、後悔しない、しこりが残らないやり方。8年分大人になり、強くなったんだと思える、いいラストだった。
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