海野幸 二見書房 2007/11

いま読んでる本は行きの電車の中で読み終わりそうだから、帰りに読むための薄い本を…という理由で選んだ。パール文庫は薄いので片道1時間以内で通勤通学しているような人にはちょうどいい厚さかも。
ネタバレ
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海野幸(さち)さんは雑誌掲載された別の作品を読んだことがあるので、えーっとこれで4作目かな。この文庫の発売が発表されたときついていた仮題は(うろ覚えだが)「意地悪おばけと〜〜」という小学校低学年向けの児童書みたいなタイトルだったので、全然読む気がしなかった。しかも雑誌掲載作は読みやすいものの(おもにキャラが)まったく趣味に合わず…。どうもPNが面白おかしいタイプは作品のほうも(私には)駄目なときが多くて、PNで避けてる作家さんもいたり…。

あらすじ
銀縁眼鏡に鋭利な美貌、趣味は怪談。そんな入社五年目の佐藤清司は、人当たりがよく完璧に仕事もこなす新人・坂木康太が大嫌い。坂木の唯一の弱点が”おばけ”だと知った清司は、無理やり怪談を話しまくり、前後不覚になるほど怯える彼の様子に、感じたことのない胸の高鳴りを覚える。だが、怖さのあまりパニックに陥った坂木にキスで口を塞がれて…。
このあらすじを読んだときにまた趣味に合わないなーと思った。
…長々失礼なことを書いてきたのは、マイナス印象から入りましたよと云いたかったから。

飾らない、癖のない文章なので読みやすい。怪談という妙なモチーフを使っているし、最初は変人にしか思えない主役に感情移入しにくかったが、話が現実的な仕事のほうに向くと急に共感が芽生えた。年齢が違うから事情も違うけど、「就職氷河期」を体験した人間ならこうした不満のひとつやふたつや…百ぐらいまでは共感できる気がする。もっとも同じ年に就活をした友人に「割を食った」と思わなかったという人もいるので、必ずしもではないが。
あ、話が横に…。
というわけで、ちょっと傲慢で変人な清司は親しみやすいキャラだった。清司の視点なので後輩の坂木は出来すぎでちょっと嫌味なぐらいに感じるが、その完璧君が「おばけ」が苦手なんて言い出すと笑える。バカバカしく感じて抵抗のあるモチーフだったが、面白い、上手い、と思った。読めたというより、読まされたという感じ。
だんだん、おばけ嫌いなところまで含めて坂木が可愛く思えてきて、ちょっとびっくり。なんかもう愛嬌ぐらいにしか思えない。
切なさも味わえ、年下攻のよさを堪能できた。
キャラが合えば結構好きな作家さんかも。4度目の正直でした。さっさと見切りをつけずにしつこく読んでみるのも、たまにはいいかも。
それにしても、坂木に邪魔されて最後まで聞けなかった(読めなかった)怪談のオチが気になるなあ。

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