雫井脩介 双葉社 2004/07
ずいぶん前に買ってきたのだが、ハードカバーで買ってしまった上に、読むなら一気にと思っても結構な厚さがあるし…。読む機会がなくてずっと積読になっていたが、ようやく読み終えて満足だ。
ネタバレ注意
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」
帯に書かれたこの台詞に惹かれて読もうと思った。もともとこういう骨太な警察小説が好きだし、わくわくしながら読み始めた。
苦い、渋い、重たい。これだよ、これ! 連続殺人を扱うなら、こういう雰囲気がまずほしい。そこをクリアしてくれたので、あとは安心して読むだけだった。
主人公の巻島は腹心の部下はいるものの、上司には汚れ役としてスケープゴートにされ足を引っ張られ、世間からはバッシングされ、遺族には詰られる。しかも本人は数年前に捜査を指揮した誘拐事件で人質にされていた子供を殺されてしまうという、忘れられない重い十字架を背負っていて…。
踏んだり蹴ったりだが、そうなったのには本人にも責任があるというあたりが辛い。それでも事件の解決を第一に考え、行き詰まりながらも辛抱強く捜査を続けていく。読んでいて息苦しくなってくるが、遺族の言葉や部下の話など、泣けてしまうエピソードがいくつも入っているので、とにかく犯人を捕まえてほしいという気にさせられる。
劇場型捜査という言葉からもっと派手な展開を予想していたのだが、全体に地味に淡々としている。事件が解決しても巻島は勝者にはならない。犯人逮捕のカタルシスよりも、巻島が誘拐事件の遺族に謝罪できたことのほうに重きが置かれているし、感動もする。
劇場型捜査という目新しい素材も、それが効を奏するところも面白かったが、犯罪捜査に関わる人たちの思いを丁寧に描いているところがよかった。
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」
カッコよすぎるこの台詞は、ずーっと踏みつけにされながら頑張ってきた巻島の境遇に同情しているので、胸がすく台詞だ。でも、巻島はこの場面でまだ十字架を背負っていて、言うべきだから口にした台詞という感じで、決して驕りはない。盛り上がる場面なのだが、皮肉と寂しさが入り混じっている。
最後に連続殺人のほうの遺族に礼を言われたことが、この捜査で彼が得た唯一最大のものかもしれない。世間や組織の中でのこれからの評価ははっきり分からないが、一番ほしかった言葉だろうと思う。胸に響いた。
ずいぶん前に買ってきたのだが、ハードカバーで買ってしまった上に、読むなら一気にと思っても結構な厚さがあるし…。読む機会がなくてずっと積読になっていたが、ようやく読み終えて満足だ。
ネタバレ注意
犯人よ、今夜は震えて眠れ。連続児童殺人事件。姿見えぬ犯人に、警察はテレビ局と手を組んだ。史上初の劇場型捜査が始まる!
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」
帯に書かれたこの台詞に惹かれて読もうと思った。もともとこういう骨太な警察小説が好きだし、わくわくしながら読み始めた。
苦い、渋い、重たい。これだよ、これ! 連続殺人を扱うなら、こういう雰囲気がまずほしい。そこをクリアしてくれたので、あとは安心して読むだけだった。
主人公の巻島は腹心の部下はいるものの、上司には汚れ役としてスケープゴートにされ足を引っ張られ、世間からはバッシングされ、遺族には詰られる。しかも本人は数年前に捜査を指揮した誘拐事件で人質にされていた子供を殺されてしまうという、忘れられない重い十字架を背負っていて…。
踏んだり蹴ったりだが、そうなったのには本人にも責任があるというあたりが辛い。それでも事件の解決を第一に考え、行き詰まりながらも辛抱強く捜査を続けていく。読んでいて息苦しくなってくるが、遺族の言葉や部下の話など、泣けてしまうエピソードがいくつも入っているので、とにかく犯人を捕まえてほしいという気にさせられる。
劇場型捜査という言葉からもっと派手な展開を予想していたのだが、全体に地味に淡々としている。事件が解決しても巻島は勝者にはならない。犯人逮捕のカタルシスよりも、巻島が誘拐事件の遺族に謝罪できたことのほうに重きが置かれているし、感動もする。
劇場型捜査という目新しい素材も、それが効を奏するところも面白かったが、犯罪捜査に関わる人たちの思いを丁寧に描いているところがよかった。
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」
カッコよすぎるこの台詞は、ずーっと踏みつけにされながら頑張ってきた巻島の境遇に同情しているので、胸がすく台詞だ。でも、巻島はこの場面でまだ十字架を背負っていて、言うべきだから口にした台詞という感じで、決して驕りはない。盛り上がる場面なのだが、皮肉と寂しさが入り混じっている。
最後に連続殺人のほうの遺族に礼を言われたことが、この捜査で彼が得た唯一最大のものかもしれない。世間や組織の中でのこれからの評価ははっきり分からないが、一番ほしかった言葉だろうと思う。胸に響いた。
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