駒崎優 講談社 2007/04/27

書名で検索できなかった。ただ単にサーバが「忙しいんだから後にしろよ」と横柄な態度を取っていただけのようだが、頭の悪い私は横文字タイトルだとすぐにスペルを間違えるので、また自分が間違えたのかと思った。こんな基本単語すら忘れてるなんて困ったなあと悲しくなりつつ、作者の名前で検索。しばらく考えたら、こっちはなんとか思い出せた。

ごめんなさい、趣味に合いませんでした。(貸してくれた方に謝ってます)

クリス・J・ウォーカーの油彩画の個展を訪ねてきた男は、「天使」というタイトルの絵の前で呟いた。「これは、俺だ」と。その男ラフィと、クリスは幼馴染みだった。ニューヨークの向かいのアパートメントに住み、兄弟同然に育ったのだ。十年ぶりの再会は、しかし苦いものだった。「あのこと」が二人を引き裂いたのだから―。

ネタバレ
翻訳調の文章がちょっと読みづらい。最近の翻訳ものを読んでいないので「これが翻訳の文章」というイメージが少し古いかもしれないが…。どうせならくどくど読んでて息苦しくなるぐらいの一文の長さで描写を入れてくれると翻訳ものの雰囲気になっていいと思うんだけど、センテンスが短いので「彼は〜〜した」という書き方が頻出するとどうにも入り込みにくい。
たぶん多くの人にとってすっきり読みやすい文章なんだろうけど、私には合わなかったらしい。
肝心の内容はというと、恋愛ものというよりトラウマ克服がメインに思えた。BL系はキャラの心理を説明しすぎることが多いし、この作品もたっぷり解説してくれていて、共感もしやすい。だけど、こと恋愛に関しては訴えてくるところがなくて、文章で解説されてはじめて理解できるという感じ。全然伝わってこない。
クリスにとってラフィが幼馴染みから恋愛の対象に変わった場面が唐突過ぎたし、クリスの恋愛感情は続編になるまで読み取れなかった。本当に幼馴染への愛情以上の感情があるのか、よく分からなかった。
ベタかもしれないけど、怖さに耐えてまで寝るのはラフィが好きだからというのをもっと前面に出してほしかった。
一方ラフィのキャラも少々冷たく感じてダメだった。いや、優しいんだけどね。叔父を殺した犯人を救ってやりたいっていう熱意をさほど感じないのに、クリスの傷を抉ってまで供述書を作ろうとしてたり、必要のない場面で「叔父」と言ってみたり。クリスにとっては立ち直るきっかけになったんだろうし、荒療治にもなったけど、ラフィのほうには荒療治する覚悟があったのか、相手のことをしっかり考えて供述書を頼んだのか疑問で。
クリスに同情し哀れんでいるのは確かなんだろうけど、所詮は他人事なのかなーという無神経さだった…。あとこれを責めるのは酷なんだろうけど、友達がひどい目に遭っていると気付いていて助けに行かないのも。その場面でラフィの恐怖が十分に伝わってこないので、つい責めたくなってしまう。
面白いし、雰囲気もある。脇キャラにしっかり個性があって、当て馬君がかなり好みだった。…恋愛部分以外のほうがよかったかな。
優しくて切ない系の話なのは私にも分かるのだが、キャラが遠く感じられて感動までいかなかった。

コメント

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年2月5日22:22

ああ、よくわかります、それ<論文調

『足のない獅子』シリーズは読みやすいほう、でも文章が好きかと訊かれると…ちょっとツライかなあ(あとがきもニガテだったり)。ただ駒崎さんって、私と同じ西洋史学科卒(学校は違いますが)なんですよねー。英国中世騎士モノの『足のない〜』は明らかに歴史専攻してた人の小説だと思うし、読んでて「あ、そうそう、そうなのよ」と同感することがけっこうありました。でも、この本は私向きじゃないなと直感、手を出さなかったんですよねー。

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年2月5日22:23

あ、しまった!論文調じゃなく翻訳調だった…間違えて書いちゃった。すみません。

りょう
りょう
2008年2月6日12:35

わたしは内容以前に文章の好き嫌いで、作品の印象が左右されてしまうことが多いです。

>『足のない獅子』シリーズは読みやすいほう、でも文章が好きかと訊かれると…ちょっとツライかなあ(あとがきもニガテだったり)。

1巻だけ読んだことがありますが、そういえばとくに読みづらいとは思わなかった気がします。…記憶がおぼろげで。
あとがき……。この作品では「ゲイノベルの翻訳みたいになった」、「BLはポルノ化が進んでいるから、この作品では〜〜」というようなことを書かれていて、初BLだからというニュアンス以上に、BL作家と区別してほしいという言い方に受け取れてしまいました…。

>英国中世騎士モノの『足のない〜』は明らかに歴史専攻してた人の小説だと思うし、読んでて「あ、そうそう、そうなのよ」と同感することがけっこうありました。

中世が舞台だとイメージ先行で書く方も多いと思いますが、描写がしっかりしていそうですよね。私自身に知識がないので正確かどうかは分からないのですが、食事のシーンで中世ってこんな感じなの?と驚きました。

>でも、この本は私向きじゃないなと直感、手を出さなかったんですよねー。

『足のない〜』とくらべてしまうと、どうかなあと……。

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