夜のピクニック

2008年3月6日 読書
恩田陸 新潮社 2006/09

面白かった。
ネタバレあり
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

あらすじどころかジャンルも知らずに読み始めたので、中盤に入るまでミステリかなホラーかなと考えていたりした。で青春小説と気付き、青春ものかー、だったらもっと若い作家さんのほうがいいかもなあと思った。(作者の年齢は知らないがこれほど長く活躍しているんだからそんなに若くはないだろうと)
まあ結構失礼なことを思ったわけだが、読み出したらぐいぐい引き込まれて、ああ恩田陸の作品でよかったなあと、逆に。

本当にただ歩くだけで終わるの?というのが読みながら気になったこと。で、本当にただ歩くだけだった。
これについては何度か出てくる杏奈の台詞がすべてだと思う。「みんなで夜歩くというだけのことが、どうしてこんなに特別なのか」(長いので省略)というような台詞だが、この小説に対しても同じことが言える。本当にただ歩くだけ。まあもちろんそれぞれの登場人物が抱えている事情は特殊だったり複雑だったりして、軸は人間関係の話なのだが、「歩行祭」という行事の中だけでそれを語ってしまうというのがすごい。しかも登場人物と一緒に80キロ歩いているような気分で退屈せずに読める。ここまでではないにしても学校行事って妙に濃縮されていて、非日常だよなあと懐かしくなったり。
世界は不条理で不可思議なものと表裏一体でできているという恩田作品共通世界観(?)もちらっと出てくるが、ベースはいろんな子がいていろんなことを考えているというストーリーで、爽やかな青春もの。珍しくすっきりと話が終わっているのには驚いた。これは普段の恩田作品を好きな人には逆に物足りないのかもしれないが、私には読みやすくてよかった。
真正面から青春を取り上げると臭くなる、というのを大前提にしておいて、変に照れずにまっすぐ青春を描いてある。友情も恋愛も大事だし、この1日の経験がこの先の彼らにとって貴重な財産になるんだろうと自然に思えた。
それにしても恩田作品に出てくる子供たちは賢くてナイーブで、魅力的だなあ。

ちょっと散歩に行きたくなった。

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