ちんぷんかん

2008年7月10日 読書
畠中恵 新潮社 2007/06

どれも面白かった。シリーズの中でも面白いほうだと思う。

ネタバレ

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「鬼と子鬼」
とうとう賽の河原まで行ってしまった若だんな。いくら病弱とはいえ臨死体験とは。でも、若だんなに焦りはない。病弱だからか達観してる。なんだか不憫…。
ここでも若だんなが気にかけているのは、鳴家であったり知り合ったばかりの子供たちであったり。本当に優しい子だなあと。
賽の河原から逃げ出す場面も面白く、今回も人の弱さが織り交ぜられたりしている。強く正しくあることも、ただ生きるだけのことも簡単にはいかない。そういう世の中の厳しさや不条理をきちんと描いているからこそ、若だんなの優しさや他の人や妖との交流が余計に貴重で暖かいものだと感じられる。

「ちんぷんかん」
若だんなの視点から離れ、広徳寺の若い僧が主人公。出てくる人物たちのやり取りが面白いし、テンポがよく、しかも成長ものでもある。面白かった!

「男ぶり」
若だんなの両親の馴れ初め話。推理ものとしても面白いし、シリーズのファンならなお楽しい昔話。若だんなはお母さん似だなあと。でも、おたえのほうが頼もしい。

「今昔」
松之助兄さんが縁談…。ちょっと寂しいような気もするが、まあよかったなあと。
何もかもを、ほのぼのハッピーにしないところがこのシリーズのよさだと思う。ちょっとだけダークな終わり方。

「はるがいくよ」
今回は1冊通して、変化と別れがテーマという感じだった。季節でいえばまさに出会いと別れ、卒業と入学がセットになった春に当たるんじゃないだろうか。シリーズも6冊目だし、いい頃合だろう。
小紅の存在は最初はなんだか残酷なように思えたが、確かに人より儚い一生だからといって、「かわいそう」なわけではないのだと思えた。深いなあ…。
兄や達の思いも伝わってきて、作品内でもいつもは触れられない、日常ではみんな考えないような部分がじっくり描かれていてよかった。少ししんみりと、でも残る余韻は桜が散るときと同じ、という作品だった。

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