秘書とシュレディンガーの猫
2009年1月9日 榎田尤利 コメント (3)
榎田尤利 大洋図書 2008/12
「PET LOVERS」シリーズの3冊目。
面白かった。
激しくネタバレ!
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猫か…。猫は好きだけど、BLで猫イメージのキャラって趣味じゃないと思う。
いや、どう考えてもプライドの高くてきまぐれな美人系(男だが…)か小柄で素直な可愛い子ぐらいしか思いつかないしなあと、しばらく積んでおいたのだが、エダさんだし、と思い直して読んでみた。
で、読みやすかったし、面白かった。さすがエダさんっていつものように思った。
今回は生前にまったく会ったことのなかった祖父の遺言状により古びた屋敷に集められる相続人候補たち、故人の弁護士、秘書、謎の友人、さらにメイドさんまで揃っている。ミステリファンなら、待ってました!という舞台設定じゃないかと。…よく知らないけど、たぶん。
というわけで、気合を入れてネタバレ表示をしておいた。
でもいきなり殺人が起こったりはせず(がっかり?)、6匹の猫の中から「シュレディンガー」って名前の猫を言い当てたら、遺産をもらえるっていう話。
最初からあまりにもシュレディンガーのヒントが多すぎて、ワタクシは逆に「引っかけ問題か?」と疑ってしまい、途中までどっちなのか結構迷った。まあミステリじゃないんで、別に謎は簡単でいいってことなのだろう。メインは雨宮の過去の事情と恋愛のほうだし。
エダさんらしい素直な話の展開で、わりと予想通りにすべてが進んでいったが、話の流れがスムーズでテンポがよく、シリーズ3作の中では一番読みやすかった。ドギツイ描写がないせいか、ほのぼのしていて後味もいい。
ただ「PET LOVERS」シリーズとしては弱かったかな。まずカップルは客と男娼って形が崩れたので、シリーズの中に入っている意義が薄いというか。まあ別にこだわることもないのだろうが、なんとなく番外編的な設定だと思った。間接的には関わっているとはいえ、別にクラブが介在している必要がないという意味で。
まあそういったことはともかく、猫がいっぱい出てくるので猫好きには嬉しい作品かも。
傲慢そうに見えて優しく、しかも猫アレルギーっていう舘のキャラがよかった。雨宮はとくに趣味に合わなかった。…真面目で融通が利かないツンケンした美人秘書って設定がとくに好きじゃないから。でも、なかなか好感が持てるし、感情移入もしやすいキャラだった。帯に出ている「真面目な秘書さんに楽しみを~」(?)とかいう台詞の結果が、台詞どおりに行かなかったところなんかも好み。初心な受が攻に身体から落ちていくって展開が好きじゃないので。
あとは。舘じゃないけど、ほんとよく許せるよなあという、意外な強さが好みだった。
舘もいい奴で、自然と応援したくなる二人だったし、王道的な面白さと甘いラストがよかった。
個人的には3冊目のこれが一番BLとして面白かった。設定が濃いだけに、話を重くしないでくれたところも好み。ただまあ、あくまで趣味の問題だけだけど。
「PET LOVERS」シリーズの3冊目。
面白かった。
激しくネタバレ!
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猫か…。猫は好きだけど、BLで猫イメージのキャラって趣味じゃないと思う。
いや、どう考えてもプライドの高くてきまぐれな美人系(男だが…)か小柄で素直な可愛い子ぐらいしか思いつかないしなあと、しばらく積んでおいたのだが、エダさんだし、と思い直して読んでみた。
で、読みやすかったし、面白かった。さすがエダさんっていつものように思った。
今回は生前にまったく会ったことのなかった祖父の遺言状により古びた屋敷に集められる相続人候補たち、故人の弁護士、秘書、謎の友人、さらにメイドさんまで揃っている。ミステリファンなら、待ってました!という舞台設定じゃないかと。…よく知らないけど、たぶん。
というわけで、気合を入れてネタバレ表示をしておいた。
でもいきなり殺人が起こったりはせず(がっかり?)、6匹の猫の中から「シュレディンガー」って名前の猫を言い当てたら、遺産をもらえるっていう話。
最初からあまりにもシュレディンガーのヒントが多すぎて、ワタクシは逆に「引っかけ問題か?」と疑ってしまい、途中までどっちなのか結構迷った。まあミステリじゃないんで、別に謎は簡単でいいってことなのだろう。メインは雨宮の過去の事情と恋愛のほうだし。
エダさんらしい素直な話の展開で、わりと予想通りにすべてが進んでいったが、話の流れがスムーズでテンポがよく、シリーズ3作の中では一番読みやすかった。ドギツイ描写がないせいか、ほのぼのしていて後味もいい。
ただ「PET LOVERS」シリーズとしては弱かったかな。まずカップルは客と男娼って形が崩れたので、シリーズの中に入っている意義が薄いというか。まあ別にこだわることもないのだろうが、なんとなく番外編的な設定だと思った。間接的には関わっているとはいえ、別にクラブが介在している必要がないという意味で。
まあそういったことはともかく、猫がいっぱい出てくるので猫好きには嬉しい作品かも。
傲慢そうに見えて優しく、しかも猫アレルギーっていう舘のキャラがよかった。雨宮はとくに趣味に合わなかった。…真面目で融通が利かないツンケンした美人秘書って設定がとくに好きじゃないから。でも、なかなか好感が持てるし、感情移入もしやすいキャラだった。帯に出ている「真面目な秘書さんに楽しみを~」(?)とかいう台詞の結果が、台詞どおりに行かなかったところなんかも好み。初心な受が攻に身体から落ちていくって展開が好きじゃないので。
あとは。舘じゃないけど、ほんとよく許せるよなあという、意外な強さが好みだった。
舘もいい奴で、自然と応援したくなる二人だったし、王道的な面白さと甘いラストがよかった。
個人的には3冊目のこれが一番BLとして面白かった。設定が濃いだけに、話を重くしないでくれたところも好み。ただまあ、あくまで趣味の問題だけだけど。
コメント
…というか、"シュレディンガーの猫"というキーワードだけで、刺さりますね、私には。かの有名な"半死半生の猫"が出てくる物理学(細かく言うと量子力学ね)上のパラドックスですね。大学の講義で初めて聞いたとき全然意味がわからなくて、たいへんだったなー…。レポート書けなくて困ったっけ…。今だって大して理解できてはいないのですが、なんていうか、不思議な魅力のある理論だと思います。漫画とか小説とかで小ネタにされているのをときどき見かけますし。
…すいません、なんかちょっと、好きなキーワードだったもので…。
>個人的には3冊目のこれが一番BLとして面白かった。
私は1冊目かな~?好みの不等式は「1>>3>2」という感じ。でもどれも面白かったです。
フツーだったら「絵師が作品に合わせて描いてくる」なんでしょうけど、エダさんって「絵師に合わせて書いてくる」という印象があります。2冊目と3冊目は、なんとなく志水ゆきがマンガで描きそうなキャラとストーリーだったなあと。それが頭から離れなかった。1冊目もそうといえばそうだけど、たまにエダさんってかなりヘンタイなこと書くでしょ?(ハイヒールで踏みつける、とか)…そんなエダ色を一番感じられたということで、私はたぶん1冊目が好きなんだと思います。
Dさん>
おお~、さすがです。「シュレディンガー?」と思った私より、よほど楽しめそうです。うう、有名なんですね、ちっとも知らなかったです…。
…物理でレポート。想像を絶する世界です。す、すみません。
なんだか面白そうな理論ですが、子供向けに説明されても分からないかもしれません。
でも物理にしても数学にしても、小説や漫画でネタにされると、やたらとロマンを感じさせる世界だなあと思います。『容疑者Xの献身』や『博士の愛した数式』(両作品とも数学者が出てきます)を思い出すと、のめりこんでしまう気持ちが分かる世界だなあと思います。好きになる気持ちは分かりますが、理論のほうはさっぱり分かりません(笑)
秋林さん>
1冊目がお好きだというのは納得です。『犬ほど~』はちょっと珍しいぐらいに濃密な設定&描写で、吸引力が強い作品だったので。
私のように薄味好みじゃなければ、1巻かな~という感じがします。
>2冊目と3冊目は、なんとなく志水ゆきがマンガで描きそうなキャラとストーリーだったなあと。
同感です! とくに3冊目の秘書はそんな感じでした。
エダさんはマンガがお好きなようなので、イラストのイメージを念頭において書くのかもしれない…とか思ってしまうほどで。器用ですよね~。
>1冊目もそうといえばそうだけど、たまにエダさんってかなりヘンタイなこと書くでしょ?(ハイヒールで踏みつける、とか)
ああ…ハイヒールを履くやつですか。ありましたね。思い出してもちょっと足が痛いような…。たまに「え?」と思うことがあります(笑)
>…そんなエダ色を一番感じられたということで、私はたぶん1冊目が好きなんだと思います。
エダさんはバランスを取りつつ、根っこの部分では情念の濃い作品を書く作家さんというイメージがあります。確かに1冊目はエダさんテイストでしたね。