渡海奈穂 新書館 2008/11

趣味に合わなかった。

ネタバレ
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渡海作品としては癖が少なくて読みやすいんじゃないかなあと。なんていうか、途中で置いていかれる感じがしないし、まとまりもよくて読みやすい。本自体が薄いせいもあるけど、いつもより短く感じた。…癖を感じる作家さんだから、ついちょっと語りたくなる。
この作品はムリヤリが入ったので、その時点で私の趣味としてはアウト。…もとからこういう強引で押し付けがましいタイプの攻って苦手で、読んでいて息苦しい感じがしてくる。渡海作品としては王道の攻タイプだろうと思うけど。
甲子園出場目前で事故に遭い、野球を諦めることになった樋崎は、落ち込んだり自棄になったり無気力になったり人に八つ当たりしてしまったりするところまで含めて、感情移入しやすいタイプだった。本気で打ち込んでいたものを突然取り上げられたら、これぐらいは当然というか。
逆に同じ野球部の後輩で以前から憧れていて、樋崎の事情を知っていて、しかも自分は今も野球に打ち込んでいる(続けていられる)立場の明石が、ムリヤリ樋崎を立ち直らせようとする気持ちにはまったく共感できなかった。立ち直ってほしいという気持ちは分かる。でもそんな荒療治をするのはエゴでしかないというか。結局、自分の理想を相手に押し付けているだけで…優しさではないと思う。たまたまうまく事が運んだが、下手したら樋崎は人間不信に陥っていたのではないだろうか。まあ今回はおまわりさんは呼ばなくてもいいムリヤリだったから、考え方の違いかもしれないけど。樋崎は明石を突っぱねることはいくらでもできたから、樋崎が自分で選んだことであって、明石を責めることはないのかもしれないけど。優しさを感じないんだよなあ……。エゴを押し付けてうまくいかなかったら、傷つくのはあんたじゃない、相手なんだぞ!ってすげえ思った。
樋崎は好みのタイプだったし、年下攻なんだけど、そういうわけであんまり楽しめなかった。
すっきりと納得できるラスト、樋崎が立ち直っていく過程も丁寧に描かれていて、小説としては面白いのだが、個人的に好きじゃない。

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