未完成

2009年4月29日 凪良ゆう
凪良ゆう  白泉社 2009/4

久しぶりにブラックを買った気がするなあ。
高校生×教師。

ネタバレ
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裏表紙のあらすじはちょっとネタバレしてる気がする。目新しい展開ではないだろうけど、いくつもある選択肢の中から作者がどれを選ぶのか、よほどのテンプレ作品じゃない限り読めそうで読めないものだし、かなり後半になってから出てくる「転」の部分を書いちゃうのはどうなのかと…。
再読では決して味わえない、初めて読むときの楽しみを奪わないでほしい。


凪良ゆうさんの作品は設定が好きそうなものしか読まないので、これで2冊目。
前回読んだ『恋愛犯』の感想として、「次は下から目線で上目遣いに読みます」と書いたので(……)、当社比では謙虚な気持ちで読みはじめた。
だから誉めるわけではないが、読みやすかったし、面白かった。

主人公、瀬名の高校生らしい未熟さと一途さがよかった。阿南のほうは最初、二面性があるタイプかと思ったんだけど、一貫した考えに基づいて行動しているように描かれている。キャラの造詣がしっかりしているというか。ふたりともカッコいいという設定なのだが、突出したカッコよさじゃなくて、あくまでリアリティのあるカッコよさで、感情移入がしやすかった。
ふたりの関係も同じ。家庭の事情で鬱屈した生活を送っている瀬名が、偶然クラブで高校の教師を見かけ、近づいていく過程が自然で。どこにも行き場のない瀬名が、クールに見えても優しい阿南にのめり込んでいくのは説得力がある。
凪良さんの文章は読みやすくて、いろいろな意味で上手いと思うんだけど、キャラの心情に読者を導入する部分がとくに上手いと思う。共感できない言動であっても、無理なくついていけるというか、引き込まれやすいというか。

瀬名が阿南にだけ縋るのは痛々しくもあったけど、好かれようと背伸びする姿は高校生らしくて可愛い。年下攻作品の醍醐味だなあと(笑)
この話では、教師と生徒、男同士ということが深刻な障壁になっている。かといってドロドロもしてないし、重苦しさより切なさを感じて、高校生が主人公の作品だけあってビターであってもピュアな印象が強い。
ふたりが別れを決める場面がとくによかった。悲しいんだけど、お互いに相手を想う気持ちがひしひしと伝わってくる。切ない…。
最後までハラハラさせられたが、甘く終わってくれて大満足だった。

次回作も楽しみだ。

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