普通のひと

2009年7月1日 榎田尤利
大洋図書 2009/3

文庫版を持ってるので、3、4回目の再読?
わりと好きな作品。

ネタバレ
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文庫と大きく違うところは、書き下ろしの短編がついてるのと、イラストが変わったこと。木下さんのイラスト、悪いとは思わないんだけど、オジサンがオジサンっぽくないんだよなあと。あとお花ちゃんはもっとお洒落っぽい外見にしたほうがイメージに合うなあとか。上手い下手の問題じゃなく、私がこの作品のキャラに持っていたイメージと違っていたので、あんまり……。

「普通の男」
普通、普通と言葉にこだわるあたりが私は少々うるさく感じる。既成概念に無闇矢鱈に反発したがる学生みたいで…。でもこれは多くの人には気にならない程度だと思う。
ノンケがいきなり同性を好きになったら、これぐらい戸惑うのが「普通」だと思うので、こういう作品のほうが感情移入しやすくていい。キャラも等身大、カッコいいところもカッコ悪いところもある三十代ってところが好みにぴったりだし、ちゃんと仕事をするリーマンってところもいい。
花島がきちんと大人なのに、子供らしいところも残っていて、すごく可愛い。
もとがクリスタル文庫なのでエッチはぬるめ。最初の話ではキスもないという。これが30代同士だと思うと、なんだかこの純情ぶりが可愛い。

「普通の恋」
誤解からすれ違っていき、別れるところまでいってしまうが、そこに至るまでの不安とか、思わず見栄を張ってしまうところとか、誰でも覚えのあるような感情が丁寧に描かれているし、そのわりにテンポがいいし、起伏もしっかりある。テーマは地味なのに、退屈させないところがすごい。
この話では当て馬の経済学者の先生がすごくいい奴なので、先生にも素敵な出会いがあるといいなあと。
またしてもエッチはぬるめ。なければないで構わないんだけど、布団まで敷いた後に焦らされるので、なんだか気分が盛り上がりましたよ……。
…まあそれはいいとして、時間をかけて気持ちを確かめ合うところがよかった。
この作品のキャッチは「恋がしたくなる」だったと思うんだけど、まさにそういう読後感だった。
エダさんは今回もハイアベレージを保っている

「普通のオジサン」
本編の5年後。続編にありがちな甘ったるいだけの話ではないところが好みだった。
5年後なのでミクちゃんがすでに店を辞めていたりするけど、真砂はまだ元気に働いてた。素敵な彼氏はできたのかな? そういう変わっているところと変わってないところをさりげなく描いてあるあたりもよかった。当たり前のことだけど、いきなり5年後じゃなくて、ちゃんと年月が積み重なって5年後なんだなという雰囲気が感じられたというか。だからこそ、ふたりの生活はこれからも続いていくし、ずっと一緒にいるんだろうなあと安心できた。

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