恩田陸 講談社 2006/04
半年ぐらい前?に恩田作品をまとめ買いして積んでおいたので、そろそろちょっと読まないとなーととっつきやすいのを選んで読んでみた。
『三月は~』を読んでたから、前から気になっていた作品。
ネタバレ
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恩田作品はサスペンス的だと思う。なんせオチに難ありなので、最後まで読まないことには好き嫌いも判断できない…。途中までは文句なく面白いので、読み始めると結構速いかな。でも面白いからこそ、オチが!!
そんなわけで、面白ければ面白いほど「ラストは?!」という心配でドキドキしてしまい、最後の1行まで疑心暗鬼が続くという。これっぽっちも作者を信じていないが、ものすごく期待はしているって感じ?(笑)
この作品は大学時代の友達、男女4人が屋久島に行き、そこで優雅に?「美しい謎」に挑みつつ、同時に過去と自己の内面も旅する、というような話。
それぞれ知的で嫌味のない4人なので、会話も楽しい。ほんと、こういう頭を使う会話って、日常ではしないと思った。屋久島の風景もきれいで神秘的。「美しい謎」も面白い。なんていうのかな、切羽詰った話じゃないのがいいのかも。解けても解けなくても現実は何も変らないんだけど、当事者にとってはちょっとだけ前進になるような謎だからこそ、のんびり楽しめるんだと思う。
旅情+過去+青春の余韻+現在+ちょっぴりミステリーっていうような配分かなあ。過去を思い出して懐かしむだけでも、乗り越えるわけでもなく、後ろを確認して前に進む爽やかさがあった。…珍しく、前向きっていうか、すっきりできるラストで。いつもこうだと素敵なのにね。
作品は4つのパートに分かれていて、それぞれ語り手がバトンタッチしていく方式で進む。現在時間では大きな事件は起こらない、過去の謎が主軸なんだけど飽きさせない。登場人物4人がそれぞれ魅力的、かつ興味深い人たちで、友達同士の旅行の物語としても面白かった。
最初は利枝子。この話の主軸になる死んだ女性、憂理の親友だし、一番過去を引きずっている人だから、一番手にふさわしい人物だと思う。考え方とか共感がしやすいので、物語の入り口として適任な人物というか。強さと脆さのバランス、冷静さと甘さのバランスが取れてて、魅力的な女性だった。
2番手は彰彦。考え方が単純だし、人間的な魅力も分かりやすいし、性格的にこの人が先頭でもよかったかなと思ったんだけど、抱えている過去がわりとヘビーなものだったので、この位置がぴったりって、読み終わってから思った。
3番手は蒔生。この人は他の人たちから「憂理を殺した?」ぐらいに思われているので、最後に来るのかなと思ったら3番手。「人と一緒に暮らすのが嫌になった」という理由で妻子を捨てるような「人でなし」で、他の3人に対しても結構ひどい仕打ちをしている。でも生き方みたいなものが見えてくると、利枝子と彰彦に愛されちゃってるのも分かるような気がしてくる。…とりあえず、もてる理由はよく分かるし(笑) 自分を悪者にして利枝子に真相を語らなかったあたり、いい奴かも?
4番手は節子。明るいリアリスト。4人のうちで一番普通に見えて、実は一番大物かもしれないし、強いことは間違いない。アンカーだから、もしかしたら何か重大な鍵を握っているのかなと思っていたのだが、そういう役割じゃなかった。
「アンカー」を辞書で引いたら、最後の走者、錨とあって、どちらも当てはまっているのだが、「時計の歯車にかみ合って、回転を調節する爪状の装置」という意味が印象的だった。まさにそういう女性。
文庫の解説でうまいこと節子の役回りが説明されていて、珍しく解説に頷いてしまった。たいてい解説って独りよがりな感じで好きじゃないんだけど、これは面白かった。
なかなか好みな作品だった。いいものを読んだ。ありがとう。
半年ぐらい前?に恩田作品をまとめ買いして積んでおいたので、そろそろちょっと読まないとなーととっつきやすいのを選んで読んでみた。
『三月は~』を読んでたから、前から気になっていた作品。
ネタバレ
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恩田作品はサスペンス的だと思う。なんせオチに難ありなので、最後まで読まないことには好き嫌いも判断できない…。途中までは文句なく面白いので、読み始めると結構速いかな。でも面白いからこそ、オチが!!
そんなわけで、面白ければ面白いほど「ラストは?!」という心配でドキドキしてしまい、最後の1行まで疑心暗鬼が続くという。これっぽっちも作者を信じていないが、ものすごく期待はしているって感じ?(笑)
この作品は大学時代の友達、男女4人が屋久島に行き、そこで優雅に?「美しい謎」に挑みつつ、同時に過去と自己の内面も旅する、というような話。
それぞれ知的で嫌味のない4人なので、会話も楽しい。ほんと、こういう頭を使う会話って、日常ではしないと思った。屋久島の風景もきれいで神秘的。「美しい謎」も面白い。なんていうのかな、切羽詰った話じゃないのがいいのかも。解けても解けなくても現実は何も変らないんだけど、当事者にとってはちょっとだけ前進になるような謎だからこそ、のんびり楽しめるんだと思う。
旅情+過去+青春の余韻+現在+ちょっぴりミステリーっていうような配分かなあ。過去を思い出して懐かしむだけでも、乗り越えるわけでもなく、後ろを確認して前に進む爽やかさがあった。…珍しく、前向きっていうか、すっきりできるラストで。いつもこうだと素敵なのにね。
作品は4つのパートに分かれていて、それぞれ語り手がバトンタッチしていく方式で進む。現在時間では大きな事件は起こらない、過去の謎が主軸なんだけど飽きさせない。登場人物4人がそれぞれ魅力的、かつ興味深い人たちで、友達同士の旅行の物語としても面白かった。
最初は利枝子。この話の主軸になる死んだ女性、憂理の親友だし、一番過去を引きずっている人だから、一番手にふさわしい人物だと思う。考え方とか共感がしやすいので、物語の入り口として適任な人物というか。強さと脆さのバランス、冷静さと甘さのバランスが取れてて、魅力的な女性だった。
2番手は彰彦。考え方が単純だし、人間的な魅力も分かりやすいし、性格的にこの人が先頭でもよかったかなと思ったんだけど、抱えている過去がわりとヘビーなものだったので、この位置がぴったりって、読み終わってから思った。
3番手は蒔生。この人は他の人たちから「憂理を殺した?」ぐらいに思われているので、最後に来るのかなと思ったら3番手。「人と一緒に暮らすのが嫌になった」という理由で妻子を捨てるような「人でなし」で、他の3人に対しても結構ひどい仕打ちをしている。でも生き方みたいなものが見えてくると、利枝子と彰彦に愛されちゃってるのも分かるような気がしてくる。…とりあえず、もてる理由はよく分かるし(笑) 自分を悪者にして利枝子に真相を語らなかったあたり、いい奴かも?
4番手は節子。明るいリアリスト。4人のうちで一番普通に見えて、実は一番大物かもしれないし、強いことは間違いない。アンカーだから、もしかしたら何か重大な鍵を握っているのかなと思っていたのだが、そういう役割じゃなかった。
「アンカー」を辞書で引いたら、最後の走者、錨とあって、どちらも当てはまっているのだが、「時計の歯車にかみ合って、回転を調節する爪状の装置」という意味が印象的だった。まさにそういう女性。
文庫の解説でうまいこと節子の役回りが説明されていて、珍しく解説に頷いてしまった。たいてい解説って独りよがりな感じで好きじゃないんだけど、これは面白かった。
なかなか好みな作品だった。いいものを読んだ。ありがとう。
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