木原音瀬 ビブロス 1998/04
イラストがとても綺麗なんだけど、密林画像が出てこなかった。残念。
ネタバレ
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初期の作品で、しかも一人称ということも関係しているのかもしれないが、なんだか瑞々しさを感じる作品。
内容的にはこれでもかというぐらい木原作品で、原点という感じだけど。いまとは少しスタイルが違うというか、まだ確立されていないような印象を受ける。完成度が低いって意味でもないし、木原節じゃないって意味でもないんだけど。うーん、説明が難しい。
タイトルの「嫌な奴」=和也と感じる読者が多そうだなーと思う。アンケート取ったわけじゃないんで、想像だけど。『FRAGILE』での青池同情票の多さを考えると、キャラやストーリーの傾向が被る作品だし、三浦の一途さに惹かれる読者が多そうな気がする。『FRAGILE』で大河内の気持ちのほうが分かりやすかった私は、この作品でもやっぱり和也の気持ちのほうに感情移入して読んだ。
いや、視点キャラにどっぷり感情移入してしまうもので、基本的に視点キャラに肩入れしてしまうせいもあるんだけど。そんなわけで、かなり和也寄りなのを承知で偏ったまま感想。
和也の嫌なところって、私は別に嫌じゃないというか、受け入れやすい欠点で。大人になれば、嫌いな人間とでも仲良くやっていくっていうのは当然求められる態度だし。相手に嫌われてるのに気付かずに寄ってくる人のほうが、むしろ人の気持ちに鈍感で、気遣いに欠けるタイプじゃないかと。鈍いっていうのは、優しさが足りないっていう側面があると思う。私は三浦が乱暴だったり強引だったり非常識だったりすることより、そういうところが受け付けられない。
あと和也は結構、三浦に冷たくしてしまうことで自分も傷ついてるので、悪い人じゃないよ~と思う。あ、悪く書いたばっかりだけど、三浦も別に嫌ってない。(大筋で?)結構好き。
…なんていうか、途中から態度がよくなろうが、どれだけ相手から好かれようが、どうしても好きになれない相手っているの分かるし。好き嫌いっていうのは、もう理屈じゃないし、相手の態度の問題でもないと思う。
死んだって聞かされてもなんとも思わないほどの嫌い方もすごいと思うけど、三浦の和也への執着はこれの裏返しなわけで、不思議でもなんでもない。三浦が和也に冷たい仕打ちをされても離れられないように、和也はどれだけ三浦に想われたとしても逃げたいんだと思う。
ただまあ、和也は本当に三浦が嫌いなわけでも、逃げたいわけでもないので、そこらへんが切ないっていうか、もどかしいっていうか。三浦に感情移入していれば、ムカつくところになるのかな? スイートラブが好きな人だと、「愛はどこですかー?」って叫びたくなりそうな話だし、痛さもあるんだけど、他の作品みたいに突き抜けたところがない。心理描写が繊細で、ストーリー展開より心情面を軸にしているようなところに、瑞々しさを感じるのかもしれない。
私はこの作品を、お互いに対してだけは極端なぐらい不器用ですれ違ってしまう二人の話って受け止めてる。
木原作品はどれもラストがいいと思うけど、この作品のラストは秀逸だと思う。
和也に感情移入しながらほろ苦く読み進めていって、ラストで三浦の切ない愛情に触れて泣ける。私の場合、本当に最後の最後までこないと、三浦の気持ちが分からない。何度読み直しても、きっとそうなんだと思う。
和也にいつか三浦の気持ちが届いて、素直な気持ちで受け入れられる日が来ればいいなあと。ほんのちょっと三浦に持ってるイメージが変わるだけで、劇的に関係が変わってしまいそうなだけに、二人の現状が切ない。
イラストがとても綺麗なんだけど、密林画像が出てこなかった。残念。
ネタバレ
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初期の作品で、しかも一人称ということも関係しているのかもしれないが、なんだか瑞々しさを感じる作品。
内容的にはこれでもかというぐらい木原作品で、原点という感じだけど。いまとは少しスタイルが違うというか、まだ確立されていないような印象を受ける。完成度が低いって意味でもないし、木原節じゃないって意味でもないんだけど。うーん、説明が難しい。
タイトルの「嫌な奴」=和也と感じる読者が多そうだなーと思う。アンケート取ったわけじゃないんで、想像だけど。『FRAGILE』での青池同情票の多さを考えると、キャラやストーリーの傾向が被る作品だし、三浦の一途さに惹かれる読者が多そうな気がする。『FRAGILE』で大河内の気持ちのほうが分かりやすかった私は、この作品でもやっぱり和也の気持ちのほうに感情移入して読んだ。
いや、視点キャラにどっぷり感情移入してしまうもので、基本的に視点キャラに肩入れしてしまうせいもあるんだけど。そんなわけで、かなり和也寄りなのを承知で偏ったまま感想。
和也の嫌なところって、私は別に嫌じゃないというか、受け入れやすい欠点で。大人になれば、嫌いな人間とでも仲良くやっていくっていうのは当然求められる態度だし。相手に嫌われてるのに気付かずに寄ってくる人のほうが、むしろ人の気持ちに鈍感で、気遣いに欠けるタイプじゃないかと。鈍いっていうのは、優しさが足りないっていう側面があると思う。私は三浦が乱暴だったり強引だったり非常識だったりすることより、そういうところが受け付けられない。
あと和也は結構、三浦に冷たくしてしまうことで自分も傷ついてるので、悪い人じゃないよ~と思う。あ、悪く書いたばっかりだけど、三浦も別に嫌ってない。(大筋で?)結構好き。
…なんていうか、途中から態度がよくなろうが、どれだけ相手から好かれようが、どうしても好きになれない相手っているの分かるし。好き嫌いっていうのは、もう理屈じゃないし、相手の態度の問題でもないと思う。
死んだって聞かされてもなんとも思わないほどの嫌い方もすごいと思うけど、三浦の和也への執着はこれの裏返しなわけで、不思議でもなんでもない。三浦が和也に冷たい仕打ちをされても離れられないように、和也はどれだけ三浦に想われたとしても逃げたいんだと思う。
ただまあ、和也は本当に三浦が嫌いなわけでも、逃げたいわけでもないので、そこらへんが切ないっていうか、もどかしいっていうか。三浦に感情移入していれば、ムカつくところになるのかな? スイートラブが好きな人だと、「愛はどこですかー?」って叫びたくなりそうな話だし、痛さもあるんだけど、他の作品みたいに突き抜けたところがない。心理描写が繊細で、ストーリー展開より心情面を軸にしているようなところに、瑞々しさを感じるのかもしれない。
私はこの作品を、お互いに対してだけは極端なぐらい不器用ですれ違ってしまう二人の話って受け止めてる。
木原作品はどれもラストがいいと思うけど、この作品のラストは秀逸だと思う。
和也に感情移入しながらほろ苦く読み進めていって、ラストで三浦の切ない愛情に触れて泣ける。私の場合、本当に最後の最後までこないと、三浦の気持ちが分からない。何度読み直しても、きっとそうなんだと思う。
和也にいつか三浦の気持ちが届いて、素直な気持ちで受け入れられる日が来ればいいなあと。ほんのちょっと三浦に持ってるイメージが変わるだけで、劇的に関係が変わってしまいそうなだけに、二人の現状が切ない。
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