AMETORA―雨寅―

2010年1月25日 BL漫画
依田沙江美 新書館 2009/11

お久し振りの(私好みな)依田作品。

ネタバレ
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…依田さんの作品が私の好みかどうかは、ほぼ受の年齢で決まる。中高生なら即アウト、大学生はグレーゾーン、社会人ならセーフorホームランぐらい。
ゼミの先輩×後輩と帯に書いてあったので、この作品は読むまで分からんという感じだったが、見事に好みだったし、面白かった♪
表紙を見たとき雨音が年上に見えたので、依田作品とは思えないカップリング?と驚いたが、トラは表紙がとくに若く見えただけで、中身は年齢相応に見えた。

ストーリーはかなり複雑。男5人で別荘に来ていて、メンバーは主人公カップルのほかに、受の雨音の友人3人。この3人の中にヘビーな失恋男と雨音の元カレがいるという。確率2/3が危険地帯。うーん、きつい。
が、攻のトラは能天気な天才で、しかもダムオタク。もちろん気にはするが、わりと楽しんでいるので、話はわりとサクサク進む。時々挿入される元カレの暗黒な過去のほうが、ヘビーな失恋話よりも不気味なのだが、そちらはそちらとして、二人の不器用?な恋愛模様は邪魔されずに楽しめる。
誰が誰?というのも、時々的確なヒントが入っていて、推理を楽しめる。引っ掛けはなく、かといって最初に丸分かりというほど分かりやすくもなく、このへんの匙加減がかなり上手いなあと思った。
1冊でよくぞここまでというほどの要素が入っていて、登場人物のそれぞれに奥行きと個性があり、話は複雑で入り組んでいる。ゴチャゴチャとした印象なのだが読みづらさはなく、順を追って読んでいけば謎もきれいに解けていき、キャラの心情も読み取れ、普通のラブストーリーとしてももちろん楽しめる。ひとつの恋愛の成就までの流れも自然で、過不足なしという感じ。
元カレの話は、ご都合主義の救いはなく、シビアなまま、しかし後味の悪さは残さずにきれいに決着がついていた。このバランスの取り方はすごいな…。
そしてヘビーな失恋男くんのほうも、とくにきっかけはなかったらしいが、時間の経過でしっかりと立ち直っていてよかった。しかも、第三者視点で常識的なツッコミまで入れてくれる親切さ。味があるし、いいキャラだ。
BLの脇役というと当て馬かと思いきや、そういう役割的なものを感じさせない、しっかりしたキャラ造詣で楽しませてくれた。
あと、タイトル。変なタイトルと思ったんだけど、最後まで読んでスッキリ。
…この作品、ゴチャゴチャとしているのだが、すべてにスッキリ感が用意されていてよかった。
ちなみに幽霊の話にとくに説明はないけど、これだけ多くの要素をキッチリ説明しているのに、そこまで説明したら多分相当くどい。というか、この幽霊は「いると思っていたもう一人のメンバーが、実は最初からいなかったと分かってゾッとした」という、怪談の定番オチをつけるために出てきただけであって、これを説明したら話が野暮ったくなるだけだろう…。

BL的に好みだったかというと、そうでもなかったが、BL漫画として、とても面白かった。満足~~。

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