うえだ真由 大洋図書 2009/10

後味の悪い話だった。


ネタバレ
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気にならない人はまったく気にならないし、気にしない(むしろ好んで読む)読者のほうが多いんだろうけど、私はやっぱりムリヤリは受け付けない。
この作品の場合はムリヤリと強引の間のグレーゾーンぐらいだけど、そもそも泥酔した相手に手を出すって、置き引きみたいなものだと思うし。隙があった自分も悪いと主人公はいうが、相手に隙があると犯罪行為は正当化されるものなんですか、警備員を巡回させていない店では万引きされても仕方ないんですか、検事さん?と質問してみたい。
こんな倫理感のない検事はイヤだ…。
そもそも同性相手に、なんで警戒しなくちゃいけないのか。お互いにゲイだと分かっているならともかく、酔って先輩の家に泊めてもらうぐらい普通だし…。それがBL界の常識だとしても(?)、世間一般では非常識だと思うんだが。
しかもこの攻、余裕のある年上って設定なので、余計に気分が悪い。
相手の気持ちに隙があるって冷静に見極めてるなら、気持ちを踏みにじるような方法を取らなくても、優しくして口説けばいいんじゃないの?
その程度の手間隙惜しんでおいて、好きだとか言われても。
たいして好きじゃないんだろうなーと思ってしまう。その後、この攻は落ち込んでいる主人公を励ますために、遊びに連れ出したりする。自分の気分次第で冷たくしたり優しくしたりするってことなのかな。
主人公は強姦→脅迫という被害を受けているのに、「言い過ぎました」とか後で謝っているのも、結構不思議。うえだ作品は、いつも受には必要以上に厳しいのだが、攻のモラルの欠如にはなぜか寛容だ。うーん。作者と倫理感が違うと読みづらいなあ。

後味が悪い1
主人公が心変わりして、キス止まりの恋人と別れるのはいいのだが、恋人の株を下げることで、本命(攻)を選んでいるところがあるので、なんだかなあと。攻の本音ではあるのだろうが、恋敵の悪口を吹き込んで略奪愛って、すげえ感じ悪い。

後味が悪い2
受が担当していた事件。再犯の可能性が高いのに、起訴猶予で犯人は野放し。
これに納得せず、検事を辞める主人公の行動は格好いいといえば格好いいのだが、ただの自己満足という感も否めず…。たとえば刑事ものなんかだと、上には逆らえずに辞めるという展開になっても、犯人に一言ぐらい説教するとかなんとか、多少はフォローが入るのだが。この作品だと犯人(大臣の息子)は、受が意地を通して辞めたことなど知る由もなく、本当に何もなく野放しで…。受はある意味、筋を通してスッキリしたかもしれないが、自分の中だけで完結してしまっている。これだとせいぜい、上司や同僚に「馬鹿な奴がいた」と思われる程度だろう…。いくら小説でも、やるせないなあと。

攻も主人公もわりと好きなタイプ(※)のキャラなのだが、ストーリーの後味が悪すぎて、どうにも楽しめない作品だった。
※ 強引ぐらいで済ませてくれたら、かなり好きだったと思う。

そんなに受け付けないのに、なんでムリヤリ作品を読むのかというと、攻の反省とかその後の展開によって許せることもあるし、逆に感動できる作品もあるから。
まあムリヤリを読むときの気分は、九回表で1点ビハインド、1アウト、走者1、3塁で打席に立つぐらい? ……例が適切かどうか分からないけど。

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