陸王 リインカーネーション
2010年4月18日 BL作家か行
久能千明 新書館 2009/01
たまたま読む時期が重なっただけなんだけど、また上海もの。
にしても、なんかディアプラスだとイメージ的に違和感ある作品だなあ。
時代やキャラの設定が凝っていて骨太な作品なので、期待が大きい分だけ要求レベルが高くなってしまった。そんなわけで文句の多い感想になりそうだけど、すごく面白かったし、これがデビュー作とはさすがと思っている。
…という前提で、感想は読んでもらえればと。
ネタバレ
タイトルから中華風FTだと勘違いしていたんだけど(…)、陸王ってバイクのブランド名だった。本文の説明を読むと、何かものすごく特別なバイクという印象を受けるのだが、ハーレーからライセンスを取って日本で製造したバイクということらしい。ハーレーなら馴染みがある。でも、サイドカーとかついてて、おじさんが乗るバイクというイメージかな……。
デビュー作ということで、かなり古い作品。文庫1冊を短い章に区切って章ごとにサブタイトルをつけるというのも懐かしい感じ。タイトルに「リインカーネーション」とつけているのもそう。同じく古い作品の復刊、上海繋がりで引き合いに出すと、かわいさんの『上海』も最初は『上海―うたかたの恋』だったのに、復刊するときに「うたかたの恋」を削ったのと対照的かも。
良くも悪くもオールドスタイルということで、もちろん良い面も多い。最近のBLのお手頃感がないかわりに、丁寧でオリジナリティがある。イラストでいえばCGとアナログの違いみたいなもので、どちらがいいかは読者の好みによるだろうし、一長一短というところ。
分類すれば、寡黙攻×強気受って感じかな。
あとがきに、大幅に削ったと書いてあった。面白かったけど、内容的に多少物足りなさを感じたし、2冊ぐらいの長さだとよかったんじゃないかと。
超ざっくりした流れとしては、主人公(受)が攻に危ないところ助けられる→ 反発から親しみを感じるようになる→ 恋の自覚と別れっていうライン。
けど、途中で出てくるバーの女主人&従業員のエピソードが目立ってしまっていて、恋愛ものとしての流れが中断され、肝心の惹かれ合っていく部分が弱く感じた。バーの話も面白いので小説としてはいいし、惹かれる理由が分からないということはないんだけど、感情移入するには「データ不足です」という状態だった。
舞台設定は好きだし、少し謎めいたところのある将校と、軍の物資の横流しをすっぱ抜こうとして軍人から命を狙われることになった新聞記者という設定も面白かった。ただ、欲を言えば主人公の尚之の仕事ぶりが読みたかった。なかなか男らしい過去を持っていて、冒頭で「鳴り物入り」という感じで登場するだけに、横流しの実行犯の将校に命を狙われることになったという設定しか残さなかったのがもったいない。結局、逃亡してきた上海支局で最後まで飼い殺しにされているだけだったし、記事を書きたいという情熱もほとんど描写がないのが気になってしまった。
最後の藤堂の決断も、少しばかり物足りなかった。まあ好みの問題なんだけど、残される家族や許婚に対しては責任を果たすと言うのに、尚之に対してはとくに謝罪めいた言葉もなく…。いや、尚之と出会う前から決めていたことだし謝る必要はないんだけど、結果的に捨てていくわけだから、もう少し気遣いがあってもよかったんじゃないのかなーとか。尚之に責められた藤堂が語る言葉から気持ちは伝わってくるが、あまりに自分勝手なので、仕方ないんだろうと思いつつ、まあ感情的な問題で納得がいかなかった。
エピローグは冗長だった。エピローグ自体が蛇足とは思わないし、ページ数は短いんだけど、書き方がちょっとしつこくて間延びしてしまっていた…。転生後のキャラの詳細な紹介なんていらないし、二人の会話がダラダラしているように感じた。なんというか、前の章の余韻が残っているので、ここはもう少しさらりとしているほうが好みだった。「どこかで会ったことがある」と感じたことを書いて、陸王のプレートでアクセント付けて終わりぐらいのほうがよかったような。
…注文だらけ、文句だらけの感想になっちゃったけど、大正~昭和初期という時代設定や、キャラの性格なんかは好みにぴったりだったし、悲恋に終わって転生後に再会するという王道ストーリーもわりと好きなので面白かった。
たまたま読む時期が重なっただけなんだけど、また上海もの。
にしても、なんかディアプラスだとイメージ的に違和感ある作品だなあ。
時代やキャラの設定が凝っていて骨太な作品なので、期待が大きい分だけ要求レベルが高くなってしまった。そんなわけで文句の多い感想になりそうだけど、すごく面白かったし、これがデビュー作とはさすがと思っている。
…という前提で、感想は読んでもらえればと。
ネタバレ
194X年、東洋の魔都上海。貴族の出である新聞記者折原尚之は、『陸王』という巨大バイクに乗る将校、藤堂克己に命を救われた。『真実の報道』という信念を持って記者をしていた尚之は、ある人物から命を狙われていたのだ。戦争を生業とする藤堂を最初は憎んでいた尚之だが、見かけとのギャップに徐々に心を開いていく。だがたがいの気持ちに気づいた時、もうふたりに残された時間はほんのわずかだった…。久能千明デビュー作大幅加筆完全版。
タイトルから中華風FTだと勘違いしていたんだけど(…)、陸王ってバイクのブランド名だった。本文の説明を読むと、何かものすごく特別なバイクという印象を受けるのだが、ハーレーからライセンスを取って日本で製造したバイクということらしい。ハーレーなら馴染みがある。でも、サイドカーとかついてて、おじさんが乗るバイクというイメージかな……。
デビュー作ということで、かなり古い作品。文庫1冊を短い章に区切って章ごとにサブタイトルをつけるというのも懐かしい感じ。タイトルに「リインカーネーション」とつけているのもそう。同じく古い作品の復刊、上海繋がりで引き合いに出すと、かわいさんの『上海』も最初は『上海―うたかたの恋』だったのに、復刊するときに「うたかたの恋」を削ったのと対照的かも。
良くも悪くもオールドスタイルということで、もちろん良い面も多い。最近のBLのお手頃感がないかわりに、丁寧でオリジナリティがある。イラストでいえばCGとアナログの違いみたいなもので、どちらがいいかは読者の好みによるだろうし、一長一短というところ。
分類すれば、寡黙攻×強気受って感じかな。
あとがきに、大幅に削ったと書いてあった。面白かったけど、内容的に多少物足りなさを感じたし、2冊ぐらいの長さだとよかったんじゃないかと。
超ざっくりした流れとしては、主人公(受)が攻に危ないところ助けられる→ 反発から親しみを感じるようになる→ 恋の自覚と別れっていうライン。
けど、途中で出てくるバーの女主人&従業員のエピソードが目立ってしまっていて、恋愛ものとしての流れが中断され、肝心の惹かれ合っていく部分が弱く感じた。バーの話も面白いので小説としてはいいし、惹かれる理由が分からないということはないんだけど、感情移入するには「データ不足です」という状態だった。
舞台設定は好きだし、少し謎めいたところのある将校と、軍の物資の横流しをすっぱ抜こうとして軍人から命を狙われることになった新聞記者という設定も面白かった。ただ、欲を言えば主人公の尚之の仕事ぶりが読みたかった。なかなか男らしい過去を持っていて、冒頭で「鳴り物入り」という感じで登場するだけに、横流しの実行犯の将校に命を狙われることになったという設定しか残さなかったのがもったいない。結局、逃亡してきた上海支局で最後まで飼い殺しにされているだけだったし、記事を書きたいという情熱もほとんど描写がないのが気になってしまった。
最後の藤堂の決断も、少しばかり物足りなかった。まあ好みの問題なんだけど、残される家族や許婚に対しては責任を果たすと言うのに、尚之に対してはとくに謝罪めいた言葉もなく…。いや、尚之と出会う前から決めていたことだし謝る必要はないんだけど、結果的に捨てていくわけだから、もう少し気遣いがあってもよかったんじゃないのかなーとか。尚之に責められた藤堂が語る言葉から気持ちは伝わってくるが、あまりに自分勝手なので、仕方ないんだろうと思いつつ、まあ感情的な問題で納得がいかなかった。
エピローグは冗長だった。エピローグ自体が蛇足とは思わないし、ページ数は短いんだけど、書き方がちょっとしつこくて間延びしてしまっていた…。転生後のキャラの詳細な紹介なんていらないし、二人の会話がダラダラしているように感じた。なんというか、前の章の余韻が残っているので、ここはもう少しさらりとしているほうが好みだった。「どこかで会ったことがある」と感じたことを書いて、陸王のプレートでアクセント付けて終わりぐらいのほうがよかったような。
…注文だらけ、文句だらけの感想になっちゃったけど、大正~昭和初期という時代設定や、キャラの性格なんかは好みにぴったりだったし、悲恋に終わって転生後に再会するという王道ストーリーもわりと好きなので面白かった。
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