榎田尤利 大洋図書 2010/7

電車の中で『~嵌められる』を読み終わったので、続きは憂鬱な月曜日の楽しみに取っておこうと思っていたんだけど、我慢できずに『~諦めない』も読んでしまった。一気読み。
というわけで、2冊セットで感想。


いろいろガッツリとネタバレ
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まず安心したこと。
交渉人シリーズはこれで終わりじゃなかった!
緊迫した展開や2冊同時発売や次巻がスピンオフということで、まさかこれで終わり?と心配していたけど、まだ続きがありそうな雰囲気。
面白い作品だからこそ、あまり引っ張らずに終わってほしいという思いもあるが、エダさんは今回もしっかりクオリティを保っている!
これなら続刊にも期待できるし、「長くなると間延びしてクオリティーが落ちる」というシリーズものの悲しい法則に当てはまることはなさそう。

冒頭の恒例となってきた芽吹のコスプレだが、今回はヤクザだった。芽吹は頑張っていたが、うわ~、似合わない(笑) 優男な風貌だし、弁が立ちすぎて、凄んでもヤクザっぽいイメージじゃないなあと。

今回は芽吹の過去の話が明らかになり、重たい展開が続いた。芽吹の軽い一人称が魅力の作品だが、今回は三人称が多くて、あちこち視点が飛ぶので落ち着かなかった。それが読みづらいってわけじゃなくて、先の見えない感じと「何か裏があるらしい」という不安感を煽られて、ストーリーに合っていたと思う。こういうところも上手いなあと思う。
芽吹と兵頭の利害が対立してしまった場面では、最初は兵頭の行動を残念に思った。けど、恋人を優先して信念を曲げないところがこの二人の魅力なんだろうなあと思い直した。…まあ正直、ヤクザの信念なんかどうでもいいけど、兵頭は世話になった人のために、芽吹は亡き親友のために譲れなかったわけで、結局同じ理由なのかな。
タイトルどおり、芽吹の活躍があまり見られなくて残念だった『~嵌められる』だが、芽吹の過去がじっくり語られてよかった。痛手から少しずつ立ち直っていく学生時代の話、その後、親友を失って絶望する話。本当に辛い過去が続いているが、そこから這い上がることができた芽吹は強いなあと惚れ直した。

『~諦めない』では、最初のほうから「反撃はもう始まってるんだな」と分かる伏線(プラグソケットとビー玉)がきっちり張ってあるのだが、それが分かっていても芽吹にとって痛い展開が続き、読んでいてしんどい部分があった。私は芽吹と違って兵頭を信用していないので(笑)、ちょっと兵頭が嫌いになった。
芽吹は自分で思っている以上にタフな人だなあというエピソードが続いたし。
芽吹が盗聴に気付いていたというのは分かっていたが、ビー玉の使い道は分からず、種明かしで驚いた。たったそれだけのメッセージで…二人の絆の強さが改めて分かるエピソードで、不足しまくりだった?ラブ部分でも最後に大満足。

今回大活躍だった?環は、確かに強い敵役だったのかもしれないけど、USBを持ち歩いていると分かっていて、ヤクザが手を出せないものかな~という疑問がちょっとあった。あと、「気に入らない」とかいう感情的な理由だけで動く敵というのはあまり好みじゃなく、面白くはあったけど、個人的にはそこだけ物足りなかったかなあ…。

3冊ほどヘビーな展開が続いた。もちろんそれも読み応えがあって最高に面白かったけど、次回は芽吹の一人称オンリーのコメディーに戻して、依頼人を助ける芽吹の活躍を描いてほしいなあ。笑えるコメディー作品って数が少ないので、このシリーズには笑いも期待してしまう。

追記。
兵頭を全部「兵藤」と書き間違えてた…。あとから誤字を見つけて直したのに気付かなかったなー…。

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