鳩村衣杏 海王社 2009/03

下巻。

激しくネタバレ!
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憂里は総受なので、まあ忙しい、忙しい……。なんだかやりっぱなしだが、それぞれの男との関係も面白いので、飽きずに楽しめるし、やっている間にも話はちゃんと進んでいる。
ヤクザの世代交代で、マフィアや製薬会社も動き出したようで、憂里はついに自分から動く決断をする。母親を人質にされているようなものなので、流されて踏みつけにされるしかなかった彼が、とうとう…。状況の変化が大きな原因だけど、城上に出会ったことも大きいんだろうなあと。ただ待つだけで終わらなかったところが、話としてとてもよかった。動くべきってことじゃなく、動けたことがよかったというか。
城上がマフィアに繋ぎをつけることによって、人生のほとんどを逃げ続けてきた憂里はあっさりと解放される。なんだか拍子抜けするぐらい、あっさりと。
ただ、べつに城上が凄いんじゃなくて(彼の働きも大きいんだけど)、ちょうどそういう局面だったというあたり、出来合いみたいな安っぽさがなくて良いなあと思う。結局、麻薬の密売ルートが強固になってしまったという皮肉な結末も…まあ気分はすっきりしないが、嘘っぽくならなくていい。
憂里たち母子は長年よくマフィアに見捨てられなかったなと読みながらずっと思ってたんだけど、それについても説明があって、あっさりしすぎてる気もするのに、説得力のある展開だった。

で、二人が同居を決め、憂里が新たな人生を踏み出そうとしたときに……。
よくある手法なんだろうけど、(ひねくれた読み手の私にとっても素直に)ショッキングな展開だった。ショックだったけど、これはこれでアリかなとも思った。こういう終わり方のBLも悪くないなーと。
でも、そこはBLなので。すっきり終わって読後感もよかった。
BLな終わり方だっただけに、BLで来るなら、最後にもう1回二人の甘い関係を見たかった。これはもちろん不満じゃなくて、アンコールとしてのリクエストだけど。


上巻のほうでは一ノ瀬が浮かばれないなあと思ったんだけど、下巻ではこれはこれでいいのかなと思えた。

下巻の途中ぐらいから観念的というか叙情っぽいというか、一読して意味の分かりづらい文章が増えたので、ちょっと読みづらかった。キャラの心情を語らないとBLにならないけど(たぶんそういうジャンルなんじゃないかと)、つらつら語ってしまうとハードボイルドにならない…という矛盾があるから、そこを埋めるためにこういう書き方になったのかなあ。先の気になるストーリーなだけに、まだるっこしくて読みづらさを感じたけど、もう1回通しでゆっくり読んだら、また違った味わいがありそう。

上下巻だし、内容は結構ハードだし、好き嫌いは別として、かなり力の入った作品だと思った。

私としては趣味に合ったし、面白かった。

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