義援金の思い出

先週の金曜日にようやく募金を振り込むことができた。なかなか銀行には行けなくて…。募金は絶対に銀行振り込みか銀行に置いてある募金箱に入れようと固く決めていた。
…いや、ネットで募金も振込みもできる便利な世の中なんだけど。ネットの口座は持っていないし、気持ちが年寄りだから馴染みのない方法はどうも敬遠してしまう。
話を戻して。街頭で募金活動をしている立派な方々には申し訳ないが（本当に頭が下がる思いなんだけど）、学生のときに「義援金詐欺」に遭ったことがあるので、大きな団体とかじゃないと信用できなくなってしまった。とにかく確実なところで募金したいという思いが強い。

今以上に世間知らずだった学生時代、母と姉と一緒に都会に買物に出て、駅前で募金をした。「募金してくるね」と云って二人から離れたので、まあそばに誰もいなくて。
その前に別の場所で募金したばかりだったので小銭を入れるつもりだったのだが、紙に名前を書いてくれと言う。なんでそんな面倒な…と思いながら書き始めたら、金額を書く欄もある。ざっと見たところ5000円、3000円と並び、2000円以下の人はいない。気が小さい人間なのでこういう状況で小銭は入れられず、泣く泣く1000円入れた。
今ならその場で変だと気付くし、「募金は10円だろうが100円だろうが構わない、身の丈にあった金額を」と思うのだが、当時は…そう思ってなかった。「みんなが大変なときなんだから、いくら学生だからってさすがに10円なんて入れられないわ」って思ってた。
で、母や姉のところに戻ってその話をしたら「それは詐欺なんじゃ」という話になり、場所が駅前だったので、通りすがりのおじさんにまで「それは詐欺だよ」と言われてしまった。
なんだかもう悲しくて悲しくて涙が止まらず、駅のトイレにこもってメソメソ泣いてしまった。いやほんと、情けない……。
泣くだけ泣いて落ち着いてからトイレを出ると、姉が「お金を取り返してきたよ」と1000円札を渡してくれた。
嬉しくて、また少し泣いてしまった。
お金なんてもうどうでもよかったけど、泣いてる私のために姉がさっと行動してくれたことが嬉しかった。踏みにじられた気持ちを、確かに取り戻してもらえたんだと思う。
でも、証拠もないのに詐欺だなんて云ったら（後で寄付すれば詐欺じゃないから）相手も逆上しそうだし、大丈夫だったの、怖くなかったの？と後で聞いたら、姉は相手にこう云ったそうで。「妹はまだ学生なので、千円でも大金なんです。返してください」と。
相手も怒ったりせず、すぐに返してくれたそう。
ふだんは寂しがり屋で甘え上手な姉なので、それまで妹の私のほうがしっかりしてるなんて思ってたんだけど、実際は逆だったということ。

ドラちゃん、よろしくね、とか云いつつ、そんな昔のことを思い出した。
義援金はきちんとしたところに振り込もう…という反省だけが残る出来事だったはずなのに、姉のおかげで今では暖かい思い出になっている。