チボー家の人々

2011年5月24日 読書
ロジェ・マルタン・デュ・ガール 白水社 1984/01

全13冊。
読み終わった…長かった。
読んでた期間、半年ぐらいか?
急に読んでみたくなって、まず密林で古本を集めたのだが、1冊800円~1100円ぐらいのお値段。
正直、注文してから後悔したが、読了後のいまは注文をキャンセルしなくて良かったと心底から思う。

ところでこの作品、解説も素晴しい。本当に素晴しい。最近の解説者なら…ここまで書けないというレベル。
でも、1巻から超~ネタバレで、泣かされました。うう……。
本編を読み終わったので、やっと解説をじっくり読める。実は解説が読みたくてウズウズしていたので嬉しいな。

とことんネタバレ

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傑作。

この作品、8~11冊の『一九一四年夏』だけノーベル賞をとっている。
1~7冊目まで読んで、ここまでだって相当な傑作なのに、なんで?と思ったのだが、『一九一四年夏』を読んで理由が分かった。
別に『一九一四年夏』の前後の出来の良し悪しではないし、『一九一四年夏』はきっちり物語の一部として機能しているのだが、『一九一四年夏』を取り出したくなるのが分かる、ような気がする。

ところで、先日この作品について「どういう話なの?」と訊かれて、かなり困った。単に小説のあらすじを説明するのが苦手ということもあるけど、実のところ、「この話のテーマはなんだろう?」と読みながら常に考えていたから、とっさに言葉が出てこなかったというのもある。
ざっくり説明してみると、1-7巻目まではジャックとアントワーヌ、それぞれの少年期から青年期にかけてのエピソード。家族の関係、友情やら恋愛やら生き方について。
8-11冊目は第一次世界大戦前夜がテーマ。
残り2冊の『エピローグ』は登場人物たちのその後、戦争について、人間について。
これでいいのかな?
…とても深いテーマなので、テーマをつかみきれているという自信がまったくない。たぶん、分かってないことも、いっぱいある。
難解に表現することが「文学的」だと思い込んでいるような節のある現代文学なんかに比べると、かなり読みやすく書かれているのだが、分かるようで分からない。解釈に迷う。
ただ、分からないなりに圧倒されるし、汲み取れる部分に深く心を動かされる。物語としても面白いし、引き込まれる。
重たいテーマ。悲惨と言っていいほどの最期。
徹底的に反戦を貫いたジャックは、フランス人なのにフランス兵から「ドイツのスパイ」と誤解され、石を投げられ、銃殺されてしまう。
医者として召集されたアントワーヌは毒ガス中毒にかかり、何年も病魔と闘い、苦しみぬいて自殺する。
これだけ書くと、なんだか救いのない、暗いだけの話のようだけど、希望はある。志を果たしたとはいえない二人だが、「人生を全うした」と思えるからかもしれない。

この作品は第一次世界大戦に終わりが見えたところで終わっているのだが、作者が執筆していたのは、第二次世界大戦の少し前だそうで。解説を読んでそれを知った。それを知ると、また考えさせられるものがある。
もう少し時間をおいてから『一九一四年夏』を読み返したい。

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