肉迫

2011年7月17日 読書
角川書店 1990/03

「ブラディ・ドール」3冊目。
BL読者にも人気が高いシリーズだし、そういう感想もアリかと思う。
でも、今回はあえてハードボイルドとして感想を書いてみようかと。

ネタバレ
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1、2巻に比べて、かなり文章が読みやすく(偉そうにいえば上手く)なっている3巻。
秋山の持つフロリダという背景が、物語の幅を広げたようにも思う。
土崎もいいキャラクターだし、菜摘も他の(少しばかり類型的に思える)女性キャラクターに比べて、生き生きしていて好き。
秋山もまず川中を好きになり、徐々に藤木のよさを知っていく。川中と藤木は、そういう人たちなんだろうなあ。
秋山も魅力的な人だと思う。シリーズが進んでいくにつれて、わりと穏やかなイメージが強くなったのだが(珍しく家庭を持っているキャラだからかも)、3巻を読み返してみると、あ、結構激しい人なんだな、と。
妻を殺された復讐のためにN市にやってきて、誘拐された娘を救うためとはいえ、すでに友達といってもいい、信頼関係の成り立っている相手である川中の命を狙う。秋山の選択が人として、モラルの面で、正しいのかどうか分からない。だけど、夫あるいは父親の行動としては、こうあってほしいと思ってしまう。
1章の終わりに、秋山は間接的に敵の一人を死に追いやった。他の場面でも、何人かの人間に怪我を負わせている。自分もかなり痛めつけられているとはいえ…。
でも、すでに人殺しで、自分の手を汚している3人(川中、藤木、坂井)と違い、彼は11歳の少女の父親だし、愛する女性にも出会ったから人は殺さないのかもしれない。
そんな期待をしながら読んでいったが、最後に彼は妻の仇を撃ち殺してしまう。
妻を殺されて、娘も殺されそうになった人なので、それを糾弾する気にはなれないんだけど、残念な気持ちになった。
最後の一文がいい。
誰がなんといおうと、私は人殺しだった。

秋山が失ったものは、妻だけではなくなった。彼は一生この罪を背負っていくのだろうと思うとやりきれないものがある。
だけど、復讐を遂げて満足しなかったことにこそ、救いがあったはず。

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