角川書店 1992/12
下村の登場。
ネタバレ
若いからか、性格なのか、下村の気持ちは分かりやすい。単純という意味ではなく、共感という意味で。
ストーリーはある意味では単純かもしれない。理由を言わずに消えた婚約者を追ってN市に辿り着いた下村が、余命幾ばくもない男(沖田)に出会って、自分が求めていたものは婚約者とのけじめではなく、もっと別のものではないかと考える。生ぬるい表現を使えば、「自分探し」ってやつ。(どうでもいいが、私は「自分探し」って言葉が好きじゃない)
ただ、北方ワールドなので、自分の生き方を見つけるのは命がけ…。下村は意地を通したために手首を切り落とされたりしている。
…にしても、下村はこの街に向いた人間だったんだろうなあ。川中やキドニーに惹かれ、坂井に懐き(?)、桜内と一緒に住んだりしているんだから…。
下村には共感しやすいが、もう一人の主役といっていい沖田は…、最後まで魅力が分からなかった。癌に冒されながら亡き友人との約束を守るために、ヤクザの妨害に遭いながらも病院を作ろうするところまではいいとして、「自分が死ぬと分かっているから、他人の命のことなんて考えられない」と言い切るのは最低だと思う。どんなに崇高な目的があろうと、自分のせいで誘拐された恋人を助けようともしない男なんて好きになれるはずもない。
で、この沖田を庇って叶が死んでしまう。再読だから、ここで叶が死ぬことは知っていたんだけど、知っていてもやはり悲しい…。最後まで「お喋りな殺し屋」を貫く叶が好きだ~!
叶は沖田のためではなく、自分の生き方を貫くために沖田を庇ったわけだけど、沖田にかける言葉は本当に優しい。
ところが、叶に助けられた命を沖田はすぐに無駄にして、自殺してしまう。爆弾持って敵と恋人を道連れに死んだんだけど、沖田のこういうところが嫌い。
…叶の犠牲が無駄になったからではない。叶は許すと思う。
だけど、こんなところで命を捨てるなら、何のために今まで周囲を犠牲にしてきたのか?
まだ病院はできてない。放り出すなよ。癌と戦わないのかよ。
沖田の壮絶な死に対してこんな感想を持ってしまうのは、私の器が小さいせいかもしれないが、なんか許せないんだよなあ。
下村の「俺の天使」発言は、何度読んでも笑える。
下村の登場。
ネタバレ
「なにも言わずに消える。それが俺には納得できなかった」自分の前から、突然消えた女を追いかけて、青年はこの街にやって来た。癌に冒された男との出会い。滅びゆく男に魅いられた女との再会。青年は、それから生きていくためのけじめを求めた。やがて死に向かった男の生命の炎が燃え尽きたとき、友の瞼には残照が焼き付けられる。喪失しつづけた男たちが辿り着く酒場を舞台に、己の掟に固執する男の姿を彫りおこす好評“ブラディ・ドール”シリーズの第7弾
若いからか、性格なのか、下村の気持ちは分かりやすい。単純という意味ではなく、共感という意味で。
ストーリーはある意味では単純かもしれない。理由を言わずに消えた婚約者を追ってN市に辿り着いた下村が、余命幾ばくもない男(沖田)に出会って、自分が求めていたものは婚約者とのけじめではなく、もっと別のものではないかと考える。生ぬるい表現を使えば、「自分探し」ってやつ。(どうでもいいが、私は「自分探し」って言葉が好きじゃない)
ただ、北方ワールドなので、自分の生き方を見つけるのは命がけ…。下村は意地を通したために手首を切り落とされたりしている。
…にしても、下村はこの街に向いた人間だったんだろうなあ。川中やキドニーに惹かれ、坂井に懐き(?)、桜内と一緒に住んだりしているんだから…。
下村には共感しやすいが、もう一人の主役といっていい沖田は…、最後まで魅力が分からなかった。癌に冒されながら亡き友人との約束を守るために、ヤクザの妨害に遭いながらも病院を作ろうするところまではいいとして、「自分が死ぬと分かっているから、他人の命のことなんて考えられない」と言い切るのは最低だと思う。どんなに崇高な目的があろうと、自分のせいで誘拐された恋人を助けようともしない男なんて好きになれるはずもない。
で、この沖田を庇って叶が死んでしまう。再読だから、ここで叶が死ぬことは知っていたんだけど、知っていてもやはり悲しい…。最後まで「お喋りな殺し屋」を貫く叶が好きだ~!
叶は沖田のためではなく、自分の生き方を貫くために沖田を庇ったわけだけど、沖田にかける言葉は本当に優しい。
ところが、叶に助けられた命を沖田はすぐに無駄にして、自殺してしまう。爆弾持って敵と恋人を道連れに死んだんだけど、沖田のこういうところが嫌い。
…叶の犠牲が無駄になったからではない。叶は許すと思う。
だけど、こんなところで命を捨てるなら、何のために今まで周囲を犠牲にしてきたのか?
まだ病院はできてない。放り出すなよ。癌と戦わないのかよ。
沖田の壮絶な死に対してこんな感想を持ってしまうのは、私の器が小さいせいかもしれないが、なんか許せないんだよなあ。
下村の「俺の天使」発言は、何度読んでも笑える。
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