凪良ゆう 心交社 2012/05

幽霊もの。

ネタバレ、ネタバレ
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面白かった。
いいなー、穏やかな攻とちょっとキツイ美形受。
幽霊ものだから、いい意味でJUNEっぽい展開になるのかと思ったら、あくまでBL路線だった。好みのタイプのキャラだし、話も面白いから、もうちょっと掘り下げて書いてほしかったなあ。深刻になり過ぎないから読みやすいのかもしれないけど、良くも悪くも、テーマのわりにさらっとした書き方だった。
まあ、こういう書き方が凪良さんらしさなのかもしれないけど。どの作品も踏み込み過ぎない書き方っていうか。浅いとか、書き込みが足りないっていうのとも、またちょっと違ってて、丁寧だし、説明不足なところはない。読みやすさ優先なのかな?
これはこれで、きれいにまとまってて好きなんだけど、今回は少し物足りなく感じてしまった。
実は二人とも生きてました、というラストだから、「BL的に読みやすく」が重要だったのかもしれない。あんまり重たくしてもねえ?という感じか。
ただ、途中を重苦しく(痛く)しといたほうが、ラストの感動が大きくなった気がする。

地震で植物状態に…というストーリーだから、しばらく刊行できなかったらしい。まあ確かに、去年の今頃だったら、私も読めなかったかも。

『夏より』の雰囲気がよかった。幽霊ものから、霊能力ものにしても面白いかも?とか、ちょっと思った。

ところで、あとがきの「ちょっとした試み」とは、やっぱり手書き文字のことだろうか。
やり方が、実に、もったいなかった。
素直な読者なら、あそこでウルウルしたのかもしれないが、ひねくれた私はページを開いて苦笑いしてしまった。
違うんだよ~、そういう風に使っても効果が小さいんだって!
…また、上から目線の感想になってしまうが。
まず、この話の最大のクライマックスは令が生きていたと判明する場面で、この場面を読む頃にはすでに気持ちが落ち着いていた。確かにここも感動する場面ではあるんだけど、そこまで強調する必要性を感じないから、手書き文字は「さあ、泣いてください」と言わんばかりの過剰な演出に感じてしまった。
顔文字の出てくるネット小説は例外(論外)として、活字の小説で手書き文字を使う(文章以外で表現する)っていうのは、いわば反則技。どうせ反則技を使うなら、もっとあざとく、狙い澄ました箇所で挿入すればよかったのに。この手紙を見て初めて恋人が生きていると判明する、とかね…。
さらにいえば、手書き文字は活字に囲まれているほうが視覚的なインパクトが増す。挿絵みたいに1ページ使ってしまうと、逆に効果が薄れるような。

子供の頃読んだ小説で、ものすごく重要かつ盛り上がる場面で、赤いインクを使っていたことがあった。傑作といわれる小説の中で、恐らく一番インパクトがある箇所で赤い活字が出てくるという、あの驚きはいまだに忘れられない。
活字の色を変えるなんて、一人の作家さんが何度もできることではないはず。何度もやったら、意味も効果もないし。
そこで、「赤を使うなら、この作品のこの場面しかあるまい」という箇所を選ぶ作家さんのセンスに、本当に才能を感じたものだった。

逆に、伊坂さんはルールを分かりやすく説明するためだけの目的で、地の文で麻雀牌の絵を気軽に、さりげなく使ってきたりする。軽妙な文章と合わさって、あれもセンスがあるなあと感心した。

…そんなわけで、こんな使い方はもったいないよーと思ってしまったんだけど、凪良さんは別に一生一度とか思わず、気軽に使ったんだろうし、まあ余計なことだろう。

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