彼岸の赤

2013年2月8日 BL作家あ行
尾上与一 ムービック 2012/03

初めて読む作家さん。

ネタバレ
-------------------------------------------

文章は上手いけど、微妙な作風。
まず、二人の出会い。主人公(攻)が屋上にいると、自殺しようとしていると勘違いされ、自殺を止めようとした僧侶の恋慈(受)に逆に突き落とされてしまうというもの。
このドタバタ劇と、落ちた直後に坊さんと一緒にいたために救命隊員に死んだと勘違いされる件は、ギャグなのか、なんなのか。
このまま主人公が転落死していたら、恋慈は人を殺しておきながら「自殺者を止めようとしたけど、力及ばず助けられなかった」と勘違いしたままだったんだろうか…。
もうビルから落ちた時点で笑えるネタではなく、書き方もシリアスなのかギャグなのか分からず…。

とにかく微妙。
これは作品全体の印象でもあった。
ムショ帰りの元ヤクザ攻とか心中して一人だけ生き残った受とか、設定自体がやたら重苦しくて濃いわりに、ほぼ病院と寺だけという閉じられた舞台の中でぼんやりした日常話。

恋慈の異様なネガティブさには最後まで共感も魅力も感じなかった。
…しかも、ネガティブが繰り返し強調されるせいか、話が進んでいる感じが全然しなくて読みづらかった。

話の終盤に、恋慈の心中相手が、ただ心中したいがために相手を物色していて、恋慈に目をつけたと分かるが、ここまで常軌を逸した人物像にしなくてもいいだろうに…と思った。話のスパイスにしてるんだろうけど、恋慈が相手の本音を知っていたことで、変な風に相殺されてしまっていた。
カレーの匂いを香水で消そうとするみたいな?
なんていえばいいのかな。
「愛されていないと分かっていながらも、自分は好きだから心中した」とか、あるいは「愛し合っていたけど、心中という愚かな選択をしてしまった」とか、単に「寂しい二人が出会って、心中してしまった」とか。
そういう普通の話じゃ駄目だったのかな。
「心中で片方だけ生き残る」というだけで、テーマとしてはもう十分すぎるほど重苦しくて、読んでるこっちはお腹いっぱいという感じだから、あとはもう普通に書いたほうが心に残ったと思う。盛り込みすぎというか。

幼馴染とニワトリ(なんとなくセットになってる)がよかったなあ。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

日記内を検索