尾上与一 蒼竜社 2013/08

『天球儀の海』のスピンオフだけど、前作を読んでいなくても問題なし。

ネタバレ!!
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面白かった。
ラバウルね…、重苦しそう。どんだけ悲惨な話になるんだろうと覚悟して読み始めたけど、読みづらさはなかった。
戦争の悲惨さはきちんと語られてるけど、生々しさはなく、かといって美化もせず。BLとしていいバランスだったと思う。
正直、BLでここまできっちり戦闘機のこととか描写されているとは思わなかった。もうちょっとこう雰囲気で終わらせるのかな、と。かといって、専門的すぎて読みづらいってこともなく。
まあ、期待していた以上に読み応えがあった。

戦闘の合間に派手な喧嘩をしたり、わりとアクティブなんだけど、ストーリーそのものは、ずっと静かな雰囲気だった。落ち着いた六郎の視点だからかもしれない。
敵機に囲まれていても、基地の中で仲間と過ごしていても、ずっと二人きりのような感じだった。

キャラもいい。一途で包容力がある六郎もよかったし、恒の強くて真っ直ぐで飛行機バカなところもよかった。

恒はもっと粘るのかな~と思ってたら、意外にあっさり落ちた感じ。ただ…、そのあっさり感さえも生き急いでいるような気にさせられて、暗い予感がしてしまったけど。
戦局が決定的になった頃から、息苦しい雰囲気が続くが、二人の結びつき(恋愛+友情)が美しくて、生きさせてあげたいなあと思った。六郎の最後の決断が素晴らしくて、私も撃墜された(笑)

花火の続編が、短いながら感動的。涙をこぼしたんじゃなくて、号泣したってところから、万感の思いが伝わってきた。

『天球儀の海』は上手い、面白いと思いながらも、個人的にはあまり心に刺さらなかったけど、こちらはとても心に残る作品だった。
…ただ、本文途中の漫画はいりません。せっかく美しい場面なのに、どうして邪魔をするのか。文章もきれいだったが、漫画が挟まっているために集中が途切れて、印象が薄まってしまった。ほんと、興ざめした~。
たとえば、映画やドラマの中で、いきなり同じ場面をリピートされたら、どれだけ素晴らしい場面でも「は?」って思わないだろうか。小説も漫画もストーリーだから、リピートしちゃダメ!

イラストもよかっただけに、もったいない。せめて巻末に入れてほしかった。

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