穂積 小学館 2013/11

長くなるかと思ったら、これで完結。

かなりネタバレ
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天才の兄と、その才能に嫉妬する弟。兄弟の愛憎劇を長編でじっくり描いていくのかと思っていたので、この展開には驚いた。

なんだかあっさり終わってしまった気がして、最後まで読んでから、また1ページ目に戻って読み返した。
急いで読むと分かりづらいけど、ゆっくり読めば、弟の兄に対する愛憎がよく伝わってくる。ストーリーをただ追っていく読み方じゃなくて、適当に自分で間を取りながら味わうほうがいいというか。

あの(激しいイメージのある)ゴッホを、ぼんやりした人物に設定した理由が分かる終盤は鮮やかで、「ソルシエ」という呼び方がぴったりだった。
教会のシーンだけでは、イマイチ兄の気持ちは掴みづらいんだけど、最期の弟宛の手紙で、いかに弟が特別な存在だったか分かった。この手紙から、テオは兄弟の往復書簡というアイディアを得たのかな。

そして、最初に読んだとき感じた、急展開で物足りないような読後感が、これからというときに突然兄を失った弟の気持ちとぴったり重なっていることに気付いた。お見事。

たぶん、テオも読者も同時に「なんでこんな展開?!」と思ったんじゃないかと(笑) 
テオは兄の人生がぶつ切りにされたような、理不尽さと喪失を感じたはず…。天才画家の人生はこんな風に終わるべきじゃないという思いが、その後の行動に繋がった気がする。
急展開にしないと成立しない話なのかもしれない。

それにしても、弟、本当に色っぽいな~。

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