『セラピストは眠れない』 幻冬舎コミックス 2008/01/18
なんじゃこりゃ、という設定だし、キャラは変人だし(砂原作品には多いけど)、うーん?と思っていた作品だが、読み返してみたら面白かった。全部分かって読めば、なんじゃこりゃが薄れて楽しめるらしい(笑)


『センチメンタル・セクスアリス』 幻冬舎コミックス 2006/11
こちらは、え~?と言いたくなる性格の受なので(アホすぎて)、最初はなんだかなあという感想だったが、気持ちに余裕のある状態で読み返してみると面白かった。BLは気持ちがささくれているときに読むと、つまらなく感じるんだなと再確認した気分。
すごく好きってほどじゃないけど、共感しづらい性格の主人公でも、その気持ち分かるな~と思えるあたり、上手いなあと。
砂原糖子 リブレ出版 2010/08

今日は出かけててPCと離れてたから目の調子がいいなあと思っていたのに、帰宅してからずっとPCの前にいる。意味ないなあ。

リブレで砂原さんって、なんかイメージ違うわーと思いつつ買ってみた。

ネタバレ
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また変な主人公の話だけど、砂原さんらしいなあと。
とはいえ、いつものように感情移入はしづらい設定だったかな。
天の邪鬼なのは別にいいんだけど、「意地になってしまう」とか「調子に乗ってしまう」ときの気持ちは理解できても、後悔と同時進行で心にもないことを言ってしまうというのは理解しづらい。勢いで言ってしまう → 我に返って激しく後悔って図式なら分かりやすかっただろうけど、どうにも不自然な感じがしてしまって。
王子様のキャラも微妙につかみづらく、表題作では共感が少なかった。

続編は少し分かりやすくなった。あと、主人公の天の邪鬼ぶりに慣れてきたせいか、コメディーとして笑えるようになった感じ。ツンデレの激しいバージョンみたいな(笑)
王子の言い分も主人公の言い分も共感しやすかったし、ヒカルの話も面白かった。
どうでもいいが、王子には「人から嫌われやすい」という誤解を解いてくれるような友達はいないんだろうか…。ちょっとそこが引っかかったなあ。
砂原糖子 新書館 2010/06

スピンオフ~。

ネタバレ
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前作『~花』もそうだったけど、雑誌掲載時はそんなに面白いと思わなかった。
『~花』は重苦しかったし、『~世界』はまたこのキャラ設定か…と少~しガッカリしたから。…ひねくれて性格は悪いけどカッコいい攻×お人好しなぐらい優しくて純情系でおとなしい性格の受。こういうカップルの話がしばらく続いてた気がする。
私は雑誌掲載はとにかく時間を節約したくて飛ばし読みする傾向があって、逆に文庫だとじっくり読むので、そのせいもあると思う。このシリーズは、たぶんじっくり読むほうが面白い。
というわけで、雑誌掲載時より二人の気持ちに共感しやすかった。
仮原はひねくれてしまうのも無理のない生い立ちなんだけど、実は結構親切でマトモな人間で、砂原さんはこういうタイプを書くのが上手いと思う。
お母さんとのエピソードは気の毒だなあと思いつつ、「この子は超能力者です」と子供を売り物にしなかっただけ、いい両親じゃないの、とか思ってしまった。そんなこと考える私が荒んでるだけか…。
藤野のほうは最初どうにも受け付けないタイプ…と思っていたけど、慣れてくると、いい人だなーと思えるようになった。仮原がサトリなら、藤野は「サトラレ」な立場なのに、変った人だからか?順応早いなあと。まあ心に、読まれて困るような疚しいことがないからかもしれない。
占い師は、雑誌掲載時は救いないなあと思ってたけど、書き下ろしでよかったねえ~と。バッドエンドの過去の話も読んでみたいなあ。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2010/5

これは2005/2にオークラから出た単行本の復刊。…アイス、ほんといいレーベルだったな。
砂原作品の「殿堂」を考えたときに、『優しいプライド』とこの作品がほぼ同時に思い浮かんだ。けど、この作品のほうは本が手元になかったし、なにより書くのが難しくて、「下書き」を残しただけでなかなか感想を書けずにいた。
ぐずぐずしているうちに文庫が出たので、この機会に勢いをつけて書いてしまおうかと。


ネタバレ
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なんで感想が難しいかというと、主人公の睦が特殊学級に行くほどではないけど、知能が遅れているから。
この説明だけでも、「差別的になっていないだろうか」、「表現として適切だろうか」、「偏見が入っていないだろうか」と考えてしまうので、長々感想を書くとなると難しい。あるいは「難しい」と云ってしまうことさえ、誰かを傷つけることになってしまうのではないかと心配になる。
そんなわけで、小説、しかもBLというラノベのジャンルで扱うのは相当難しいテーマだと思う。これを逃げずに、丁寧に、気を遣いつつ、真摯に書き上げた砂原先生はすごい。
もしかしたら、書き方に問題(差別的で不適切な表現、偏見等)もあるのかもしれないけど、上にも書いたように「この問題をBLで扱うのはどうか」と避ける考え方自体が差別に繋がることもあるので、まず書こうと思った姿勢だけでも評価されるところなんじゃないかと思う。
しかも決して、特別視するような書き方じゃなかったし、睦の目を通して差別っていうのがどういうものなのか分かりやすく書いている。これでダメっていうならこのテーマは不可侵、書くだけでタブーってことになりそうだと個人的には感じたが…。


…とても暖かくてBLとしても楽しい作品なんだけど、どうしても堅苦しい前置きが必要になってしまう。
読んでいて、やっぱりちょっと痛い場面もある。睦が「触らないで」と言われて、手を洗い続けるシーンとか、強烈で忘れがたい。でも来栖と、家族や友人の愛情が読者の気持ちまでしっかりフォローしてくれるし、辛いからこそ人の気持ちの暖かさにじんわりするというか。

睦は一途でいじらしいので、感情移入しやすいし、素直に応援したくなるキャラ。攻の来栖はちょっと不器用だけど、やっぱり優しくて…、睦から逃げてしまう。しかも再会まで8年間という思い切った(?)ブランクが空くのだが、来栖からの手紙も途絶え、連絡もない状態で、睦は来栖を追いかけて上京する。うーん、すごい一途だ。
じゃあ来栖がひどい人なのかというと、そうでもない。いつまでも子供みたいな睦と恋愛するのって、常に罪悪感がつきまとうものだろうと想像つくし。実際には同い年でも、大人が小中学生を好きになってしまうような感覚なんだろうと思う。せがまれてキスはしたけど…その先のことまで考えたら、18歳の来栖が逃げ出したくなるのも当然かもしれない。
最初に読んだとき、「何も分かっていなそうな睦に手を出していいものなのかどうか」というようなことを考えさせられた。…でも、相思相愛の相手が手を出しちゃいけないなら、睦は大人なのに誰ともセックスしちゃいけないって言うようなもので。だとしたら悩むところは同性同士だってことぐらいだろうし。(…BL読者にとっては考える必要のない問題)
と、来栖が再会後にすぐに思い切れるわけもなかったが、大事にしたいがゆえの葛藤がよかったし、ハードルを乗り越えてのハッピーエンドは感動的だった。
そして睦が来栖を「純粋」と表現するところに、この作品のよさがあると思った。睦の台詞に「確かにそうだなー」と頷けるところがいいというか。来栖の睦に対する言動は自分勝手だったんだけど、逃げてしまったことには共感できるし、来栖は来栖ですごく一途。睦のことを忘れたいと思いながらも、8年間大事に、睦にもらった「願い事をかなえる券」を持っていたなんて…やっぱり純粋な人なんだろうなあと。まあそのことだけじゃなく、睦に対する優しさを見ていてそう感じた。
睦も一緒にいて癒されるような純粋性を持っている。
当て馬として(?)来栖の婚約者が出てくるのだが、この女性は優しそうに見えて睦を馬鹿にしていたり、選挙に利用しようとしたりする。読者に嫌われるタイプのキャラ。でも睦は彼女のことを理解したうえで優しい人だと感じる場面がある。人の悪意を見抜けないとか、睦自身がお人好しキャラだからではなく、きちんと理由があり、暖かい目線で彼女を見た結果として優しい人だと思うところがよかった。…障害があるから、天使みたいに悪意がないキャラって描き方じゃないからこそ、睦の優しさに癒されるというか。
そしてそういう睦の優しさに一番救われてるのは来栖で……、そんな二人だから幸せになってほしいと思う。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2010/02

絵柄だけじゃなく、表情やポーズまで含めて苦手系のイラストだったんで買うのをためらってしまったが、話は面白かった。


ネタバレ
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復讐ものってことはドロドロ系?と思ったら、わりとほのぼの系だった。
最初はまあ重たい話でもあったんだけど、何か事情がありそうな含みもあったし、主人公がそれほどダークな心理状態じゃないように思えたから。
で、復讐のために不幸にしてやろうと近付いた相手は、生い立ちゆえに無愛想、真面目すぎて不器用、ドジな税理士で、しかも現在は妻に捨てられて仕事もうまくいってないという、不幸な状態だったという。
砂原さん、こういう状況を描くのがうまいなあと。あと孤独な老人とか、主人公の不器用さとか。
話に意外性みたいなものはなかったけど、どっちの方向に進むのかなって楽しみな部分は多かった。受の志田を完全な白にしてしまったのは、BLらしいし、後味もいいのだが、ちょっと物足りなかったかな。
ただ無罪を勝ち取ろうとせず、復讐のために近付いたと知っても真岸を責めずに贖罪ができたと言うあたりの、特異にも感じる志田の考え方にはブレがなくて、感情移入はしづらいが、妙に説得力があった。
あと二人が出会ったことがお互いの前進に繋がったこともよかったなあと。

イラストはやっぱり最後まで好きにはなれなかったけど、作品イメージには合っているかもしれない。少なくと、薄い絵柄や可愛らしい絵柄よりはずっとよかった。

スリープ

2009年9月19日 砂原糖子
砂原糖子 新書館 2009/09

失礼ながら(悪気はないんだけど)ノリでつけたネタ的なペンネームだと思い込んでいたので、あとがきを読んで驚いてしまった。気にしていたとは…。だったらそもそもどんな由来でつけたんだろう。なんか気になるなー。
いつも変換が面倒くさいから「砂糖」って入力してから「原」と「子」を足してるんだよなあ……。
でも可愛い名前だから、変えなくてもいいんじゃないかと思うけど。


ネタバレ
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うーん…、やっぱりルチルのほうが好きかな~。正直、微妙な作品だった。
もうちょっと軽めにするか、重めにするか、どちらかにしたほうがバランスがよかったと思う。
主人公が両方ともトラウマ持ちで病気で、しかも二人を取り巻く環境がよくないので、なんだかお腹いっぱい。とことん暗く痛くすれば、これもありだと思うんだけど。それかもうちょっと恋愛どっぷりなストーリーなら感情移入して浸れたかもしれない。とにかく重たいわりにさらっと流してしまうので、入り込む前に話が進んでしまうという感じで物足りなかった。これは片方の視点に絞って読ませてほしかったなー。
ただまあ痛くなりすぎず、このほうが読みやすいという人も多いだろうし(ディアプラスだし…)、好みの問題なんだろうけど。
キャラは強くもあり弱くもありという、基本的には好みのタイプなのに、イマイチ感情移入できなかったから、ついていけない部分がやけに気になってしまった。たぶん魔性の美貌ってあたりで、ついていけないんだと思う。
あと攻の暴力と暴言に対して、ラストでちょっとフォローが入ってれば、口うるさいワタクシのような読者も納得できたんだけど…。
読みやすいし飽きさせないストーリーだっただけに、色々言いたくなってしまった。

…大変失礼なことを承知で書けば、魔性の美貌っていうなら、顔の描き分けができるイラストレーターを使えばよかったのに。攻とそっくりな顔で魔性とかいわれても違和感が……。
砂原糖子 新書館 2009/6

色モノ。雑誌掲載時に読んでるし、どうしようかなーと悩みつつ、美術館の階段のシーンが印象的で、もう一度読みたくなって買ってみた。

ネタバレ
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やっぱり砂原さんは色モノ設定を書くのがうまいなあと。
萌みたいなものがあるかどうかは、個人の趣味によると思うし、私はまったく惹かれるところのない設定だった。でも話として面白いし、テンポもノリもいいので一気に読めてしまう。色モノとして面白いし、出来がいい。
で、それだけじゃないのが砂原さんのすごいところで、ラブストーリーとしても読ませてくれる。変なキャラの変な思考(笑)でも感情移入できるし、暖かい雰囲気なのもよかった。

身長は1/12スケールになってしまったわけだが、体重も?というのが読んでてずっと気になってた。雪見は細そうだから1/12というと、5~6キロかなー。長さ14センチの物体が5キロもあったら、ずっしり重たそうだ。ポケットに入れたり手のひらに乗っけるのも大変そうな気がする。…伏木野は鈍いから気付かなかったが、普通の人ならシャツの裾にぶら下がられたら、すぐに気付くだろうなあ、とか。なんかどうでもいいことを色々考えてしまった。

ところで、夢オチというのは嫌われるラストのひとつだと思うのだが、この作品の場合は夢が単なる夢に終わらず、夢を共有していたというオチなので、夢オチのガッカリ感はまったくない。ラストはちょっと不思議な話ぐらいでおさまっているのが、余韻を持たせていていいなあと。
なんでもありで終わらず、現実に復帰してからの二人が仲を深めていくまでが書かれているのも、ラブストーリーとしてよかった。
幻冬舎コミックス 2009/7

ネタバレ
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期待通りに面白かった。
砂原さんは、不器用でちょっと?変わり者だけど可愛げのある受を書くのが上手いなあと。
上芝も「条件」(性格以外のオプション)からいったらBLの攻らしい派手さなんだけど、本人は至って庶民的で、そこがまた魅力的というキャラで、匙加減がよかった。
上巻では庭中がズレているせいですれ違ってしまったふたりだったが、庭中が素直に…というかようやく恋を自覚してハッピーエンド。雨の埠頭に豪華客船と、まさにラブロマンスにぴったりな演出だったのに、ロマンティックな雰囲気にはならなかったあたりが、このふたりらしくて微笑ましかった。切なさ→甘さがしっかりあったし、いい場面だったな~。
続編でもマリモ的な成長?を遂げる庭中と、基本はのんびり系の包容攻なのに、たまに年下らしい可愛らしさを見せる上芝が絆を深めていくのがよかった。
八川の番外編も面白かった。八川は好みのタイプのキャラじゃないけど、共感しやすいし、味があってよかった。
2冊丸ごと大満足~。

…イラストはやっぱりイメージに合わなくて、かわいいとは思うけど、なんだかなあという気分になる。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2009/6

ほんとルチルって復刊が多いなあ。BLは入手困難な作品が多いから、ありがたいけど。


ネタバレ
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下巻の発売を待って読もうかと思ったけど、つい読んでしまった。
面白かった!
のんびりしていて御曹司だけど庶民派の攻もいいし、変人だし口は悪いけど、まったく憎めないタイプの受が好みだった。不器用で可愛い。それに結構いい奴だと思う。まりもを可愛がってたり、それを素直に言えなかったりするあたりが可愛い。
砂原さんらしい?コミカルな設定が面白いし、ストーリーはテンポがいい。けど、恋に落ちていく二人の心情は丁寧に追っているし、ちょっと切ないところもある。その匙加減がいいなあと。
下巻の発売が楽しみ。

イラストがちょっとなあ。表紙はかなりキャラが違う。この作品の場合、攻にスーツを着せるなら、もうちょっと華を添えてほしい。読んでいてずっと、文章から受けるイメージと挿絵が合わないので違和感があった。…もともと好みの絵柄じゃないっていう理由も大きいかもしれないけど。うーん。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2009/4

1月からお待ちしていた新刊が出たのでイソイソと購入。お気に入りレーベルのルチルだし。
カメラマン×大学生。

ネタバレ

あらすじ
中沢千夏史には好きな人がいる。九つ年上の売れっ子カメラマン日和佐明。日和佐は男も女も来る者拒まず、だが「子供は嫌い」と千夏史を相手にしてくれない。九歳のときに出会った日和佐は亡き兄・由多夏の恋人で、千夏史が恋心を抱いても叶わない存在でもあった。そして、二十歳になっても、千夏史の想いは募る一方だが…。

このあらすじで、しかも表紙イラストを見ていながらなんでそんな勘違いができたのか自分でも不思議だが、年下攻だと勘違いして買った。
攻兄弟かと思ったら、受兄弟でちょっとガッカリ。いや、私が変な勘違いをしただけなんだけど。しかもこういう健気系の受は好みじゃないので、主人公はさっぱり趣味に合わなかったのだが、ちょっとひねくれた攻の日和佐と亡くなった兄のカップルは好みで……面白かったけど、すごい微妙な読後感になった。なんかこう、主人公より兄の由多夏の話が読みたかったなあとか。身も蓋もないことを…。
そんなことを考えてしまうぐらい、回想のシーンも切なくて面白かったというべきか。話にしっかり組み込まれている上に、学生同士のちょっと甘酸っぱい(?)恋愛が描かれていて読ませる。
まあでも千夏史のほうは趣味には合わないけど一途でいい子だったし、日和佐とうまくいってよかった。千夏史の家の事情や小道具の使い方なんかもよくて、読みやすいし面白かった。
砂原糖子 オークラ出版 2002/06

ルチル文庫版が2008年10月に出ていて、そちらはさらに続編がついている。アイスノベルズだともう古本でしか買えない。
でも私がお借りしたのはアイスノベルズなのでこちらの画像を。…それにイラストが断然こっちのほうが好みだ。まあ私の趣味としては。
ルチル文庫を自分で買おうと思ったけど、表紙を見てやめてしまった。だってこっちのほうが好き……。

ネタバレ

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面白かった。
やっぱり砂原さんはイロモノ設定?が上手いよね~。本を投げ捨てたくなるようなトンチキ設定ではなく、BL王道を踏まえたうえでのコメディ路線な設定なので、入りやすい。「ありえねーよ」じゃなくて、「えー、なにそれ~」って感じで笑える設定が多い。
主人公の千野は顔がよくて身長180センチ以上、生徒会長でテニス部のエースで当然モテるけど、心は乙女な受っていう設定。見た目は完全に男前攻なのに、少女マンガや星占いが大好きで、片思いをしている相手は後輩の有坂くん。遠くから見ているだけで幸せvという。…外見とのギャップを想像すると、かなり笑える。
千野は努力家ゆえに成績優秀だったり、ぼんやりしていて失敗が多かったりと、親しみと好感が持てるタイプで、少女趣味なのもだんだん可愛く思えてくる。デカイ自分が嫌いで、小さく可愛くなりたいと思っていたりするのも、笑えるだけじゃなくて、なんか可愛い。
うーん、中身も外見も可愛い受は別に可愛く思えないのに(…)、外見は男前で中身はヘタレ乙女な千野は可愛く思えるっていうのも、私がイバラ趣味だからだろうか。
攻の有坂は年下だけど、しっかりしていて結構包容力のあるタイプ。なんてできた男だ!と感心してしまうことが多い。セレブじゃなくたって恋人の前では王子様になれるのよ(笑) とくにその我慢強さは、全国の自分勝手でムリヤリな傲慢攻の皆さんに、ぜひ見習っていただきたいものがある。
と、ベタ誉めしておいてなんだが、あんまり、というか全然趣味に合わない。どちらかというとニガテ系だ。なんでだろう。とくにイヤなところもないのになあ。
変なたとえで申し訳ないが梅の香りみたい。ワタクシ梅の香りって上品でいいなあと頭では好きなのだが、子供の頃からどうにも受け付けない香りで。梅酒も梅のジャムも梅の飴も食べられるけど、ニガテ。…梅干は好きだけど。
有坂もいい奴だなーと思うんだけど、言葉では上手く説明できないけど、趣味の問題でなんかダメ。うーん?

話はテンポがよくて、笑えて、甘いところもあり、読みやすく楽しめた。両方の視点で話を進めているのが上手いと思う。有坂の視点で「実は千野の中身は乙女だった」ってやられたら、「それはちょっと気持ち悪い」ってなりそうだし、千野の視点だけだったら「なんで有坂はデカイ千野に惹かれたんだろう」ってあたりの描写が足りなくなったと思う。
千野の気持ちにも有坂の気持ちにも自然と共感できて、ラブストーリーとしても面白かった。素敵~って感じじゃなく、応援したくなるような面白さかな。
新書館 2008/9

雑誌掲載で読んでるからどうしようかな~と思っていたのだが、帯に「砂原糖子フェア」と書いてあったので、砂原さん好きだしな…と買ってみた。
(ちなみにフェアと書いてあるだけで、ありがたいことに全サなんかの企画はやってない。ありがたいですよ、やってないほうが)

や~、面白かった。大好きな大学生ものだし。普通の大学生、とくに等身大キャラっていうのがあまり見かけないので、それだけで嬉しい。
設定が地味な上に、展開もおとなしいので、そこらへんでマイナス評価されそうだが、この材料でこれだけ読ませることに私は逆に痺れてしまった…。このレーベルに私が求めているのは、完成度と丁寧さなので、そういう意味でも満足。
まあもともとが地味好きだから思うことかもしれないけど、大学生ものに限っては、余計な飾りをつけずにほのぼのムードで爽やかに、かつ丁寧に描いてあるのがいい。先の展開が気になって…!ってやつより、ディテールを楽しみながらゆっくりページをめくるのがいい。各駅停車で行く旅行みたいな。
砂原作品は元気なところも好きだけど、この地味テイストが好きだなー。

砂原さんは思い出を描くのが上手だと思う。衝撃の過去とか、現在に至る状況説明が上手な作家さんはいっぱいいるけど、楽しかったことだけでなく苦い思い出まで含めて懐かしく語ってしまうところがすごい。ちゃんと懐かしい感じがするところがいいなあと。
そのせいか地方出身という設定のキャラのほうが楽しい。
新バージョンでの初日記~。
デザインの変更はまた今度じっくりやります。

砂原糖子 オークラ出版 2003/05

面白く読んだが、受がちょっと好みじゃなかったかな。
意地っ張りなのはいいんだけど、意地を張るならもう少しカッコもつけてほしい。せめてもうちょっと可愛げを増量するとか…。私も人のことは言えないけど、君はすごく変わった趣味だね、と攻に話しかけたくなった…。
コメディーはわりと好きなんだけど、やっぱりもうちょっと乙女要素がほしいな。感情移入できる部分か、ステキvって部分がないと恋愛ものとして物足りないというか。うーん。なんとなく砂原さんらしいテイストの作品だったけど。
砂原糖子 オークラ出版 2001/10

前回に引き続き、瀬名がかわいかった。
けど、ナルシストの裏返しの打たれ弱さがちょっと痛々しかった。何もそこまで…。
で、頼りがいがありそうだった攻だけど、…受をフォローするほど余裕のあるタイプじゃないらしい。もっと男を磨いて出直してこい!って気分になった。
瀬名はこれでいいと思う。今回少し成長したし、おとなしくなっちゃったらつまらないし。
…玩具の缶詰、捨ててなかったのには笑えた。
砂原糖子 オークラ出版 2001/02

これもアイスか!
うーん、復活してほしいレーベルだ。

がんばれ瀬名。
上記のあらすじどおりのコメディで読みやすかった。いや、あらすじの最後に添えられたこの一言がちょっと笑えて。
シリアスでもコメディでも好きな作家さんだなー。
久しぶり(※1)に特急券(※2)な作品だった。
瀬名は仕事のできる(顔が)男前受だし、笑えるだけ、暖かいだけの作品じゃないところがよかった。瀬名が可愛いなあと思っているうちに読み終わる感じだったが…。面白かったんだけど、なんか感想が書きづらい。
そういえば、「抱かれたい男」歴の長い某タレントさんの某ドラマでの役名に「瀬名」ってあったような気がする。だからなんだってわけでもないのだが、読んでるときに思い出して懐かしくなったので。

非常にどうでもいい注釈
※1 別に本当に久しぶりなわけではなく、「超」とか「すごく」とかのかわりに使っているらしい…ってことに最近気付いた。
※2 いつも電車の中で読んでいるので、「気がついたら○駅だった! 乗車時間が短く感じる!」っていうぐらい夢中で読んだ作品が「特急券」。

野ばらの恋

2008年5月28日 砂原糖子
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2008/5/15

珍しくブログの更新をする暇もなかった…。疲れたー。

砂原さん×ルチル。好きな作家さんとレーベルだから、表紙を見て趣味に合わないと思ったけど読んでみた。

ネタバレ感想。

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まず、やっぱりイラストが趣味に合わなかった。時々、攻の表情が受っぽくなるのが気になる…。や、そんなものは個人の感覚の問題なんだけど、私の基準ではこういう表情をするのは、受の中でもとくに乙女系の受で…。
まあいいや。小説のほうの感想を。
砂原先生、最近ちょっとひねくれたモテ系攻×初心できれいな丁寧語受が好きだなあ。攻のタイプは結構好きなんだけど、受がちょっと私の趣味じゃなくて、話は面白かったんだけど……。
あんまりキャラが趣味じゃなかったせいか、盛り上がるはずの火事の場面で、君らの恋愛はおいといて早くじいさん助けてあげなよ…とか思ってしまった。
なんだかこう書くとつまらなかったようだが、BLとしても楽しく読めた。ちょっとずつお互いのことを知っていって好きになっていく過程がじっくり描かれていて、さすが砂原さんという読み応えだった。趣味じゃないだけで。(しつこい)
どうでもいいが、砂原作品に出てくる女性たちのパワフルなのに引き際のいいところが、なんとなく好きだ。
それにしても老人ホームが舞台っていうのも珍しいなあ。ループタイを小道具に持ってくるBLは最初で最後じゃないかと(笑)
シニアラブはちょっと読んでみたい気もするけど…期待するのはやっぱりミドルラブぐらいかな。オヤジ同士の渋い恋愛が読みたくなった。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2008/3/17

砂原先生、デビュー作。私が読むのは3回目かな。
リンクしている画像はオークラ出版のノベルス版。まだ画像が出ないから代用したけど、私が今回買ったのはルチル文庫版。
直しが入っているかとか、そういう細かい違いは分からないが、同人誌収録の続編が入っているのが大きな違いではないかと。
せっかく文庫化したんだから、あっという間に絶版にするのはやめてほしい。恋愛時間みたいに。恋愛時間なんとかしてくださいよう…。

イラストも好き。作品の雰囲気に合ってて綺麗だし、表情に色気があっていい。

結構ネタバレ

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カッコよく可愛い年下攻で、クールでちょっと無気力になっている受。ものすごく好みの設定なのだが過去2回読んだときは、攻の永倉が高校生なので(好みから外れるので)そんなにインパクトがなかった。でも、いいなあ、これ。地味じゃないけど、落ち着いた雰囲気だから読みやすい。
主人公の浅名はクールでカッコよく見えるのに、意地っ張りで可愛いところがあって共感しやすい。永倉が高校生なのを気にしてしまうのもよく分かる。いくら大人っぽいタイプでも、実年齢を気にするなっていうほうがムリだよなあ。ましてや将来のことなんて考えたら…。
で、それを乗り越えてくれるところがいいなあと。大変なことはあるけど、きっと大丈夫だよって言ってくれる永倉の優しさがよかった。
派手な展開はないけど、しっとりと丁寧に恋愛が描写され、読後感もさわやか。ほんと、これからも二人で幸せに過ごしていくんだろうなあと自然に思えるカップルだった。

恋のはなし

2008年2月13日 砂原糖子
砂原糖子 新書館 2008/02/09

今月はチェックする新刊が少なくて、おお、砂原さんの新刊が!と発売日にいそいそと書店に行き、で、設定は?と帰宅後にあらすじを見たら(雑誌掲載で)既読だった。残念。
そんなわけで再読。

ネタバレ

ホテルマンの多和田はゲイである己に罪悪感を抱き、29歳になるこの年まで恋愛経験がなかった。ある日、親友の石野から男性を紹介されることになる。待ち合わせ場所に現れた男に多和田は一目で惹かれるが、実はそれは別人。来られなくなった相手の代わりに伝言を頼まれた石野の従兄弟・新山が、美貌なのに初心な多和田に興味を覚え、ゲイのふりで話を合わせていたのだ…。偽りから始まるトゥルーラブストーリー。
面白いことは面白くてさくさく読んだけど、キャラが両方とも趣味に合わないので、読み返すことはなさそう。
石野と続編に登場した晶は結構好きだなあ。
攻が昔同棲してた恋人に言われた言葉を思い出す件が、砂原さんらしくて好きな場面。新山は趣味ではないものの、しっかり個性があって、読んでて面白いキャラだった。砂原作品のキャラは素直で優しいタイプより、屈折しててちょっと感じが悪いぐらいのほうが好きだ。…これで受だったら好みだっただろうなあ。
あと多和田が自分のコンプレックスからくる考え方を、人にとっては重たいだろうと自覚してるところがよかった。マトモな人だ。
…多和田の寛大さと初心なところに、どうもついていけなかったが、まあ個人的な趣味の問題なので。
砂原糖子 幻冬舎コミックス 2008/01

砂原さん×ルチル文庫は私にとって相性のいい組み合わせ。
発売を知ったときから楽しみにしていたが、この作品で勝率8割になり、次回への期待も高まった。

ネタバレ

日記代わりに感想書いてるだけだしと思って今まであらすじの引用はしなかったが、これからはなるべく面倒くさがらずに出そうかなあと…。未読の人が私の感想を読んで、その作品の内容が分かることってないと思うし…。

あらすじ
外村泰地が代役を頼まれた仕事は出張ホスト。渋々出向いた先には整った顔立ちをした年上の男・碓氷志乃が待っていた。外村は碓氷に値踏みされ務めを果たすよう命じられるが、役に立たないうえに説教までして怒らせてしまう。しかしなぜか専属契約まで結ぶことに。外村は碓氷が放っておけず、碓氷もまた外村が気になるようで…。
役に立たない…。まさにその通りだが、さらっと書かれると笑える。
タイトルからしてセラピスト受と踏んでいたので、最初から意外だった。まああとからタイトルの意味は分かるのだが。
受が金持ちで男を買う側っていうのが砂原さんらしい設定で、しかも借金のカタに身売りっていう悲壮感もないので、私には読みやすかった。
面倒見のいい年下攻・外村と変人クール受の碓氷のキャラも好みにぴったりだし、眞野や三好といった脇キャラも個性的でよかった。(いま何も見ないで脇キャラの名前が出てきた自分に満足してますが、間違っていたらツッコミください)
キャラの性格の違いがそのまま生活の違いになっていて、視点が変わると周囲の雰囲気が変わる。なので、外村の視点で碓氷の部屋にいると少し居心地が悪く、碓氷の視点で外村の家に行ったときは暖かさに癒される感じがした。
こういう生い立ちの人がこういう風に育って、という部分が自然に描かれていて、そういう二人が出会って恋をして、というのにも納得できる。両思いなのにどうもタイミングの合わない二人に焦れつつ、意外な展開に驚き、楽しく読めた。
やっぱりいいわ〜、不眠症の受。はい、そこがツボでした。

言ノ葉ノ花

2008年1月25日 砂原糖子
砂原糖子 新書館 2007/09

面白いんだけど、ちょっと暗いんだよなあと発売当時は買い控えていたのだが、急に読み返したくなって買った。(ドラマCDの宣伝を見かけるせいかも)
雑誌掲載された表題作だけでも楽しめるが、続編を読むともっと楽しめる。

かなりネタバレ

あらすじ。
三年前から突然人の心の声が聞こえ始め、以来人間不信気味の余村。ある日彼は、自分に好意を持っているらしい同僚の長谷部の心の声を聞いてしまう。罪悪感を覚えつつも、言葉で、“声”で、一途に注がれる愛情が心地よく、余村も長谷部を好ましく思うようになる。そしてついに長谷部の告白を受け入れるが、余村が心の声を聞けると知った長谷部の反応は意外なものだった…。切なさ200%!!胸に迫るスイートラブ。
いくらでも話を派手にできそうな能力を設定しつつ、話は地味に丁寧に進むので、FT設定に抵抗のある人でも楽しめそう。
切なさ200%…確かにそれぐらいかも。そんなわけで最初に読んだときは重苦しくて読みづらかったのだが、細部をすっかり忘れる程度に時間を置いて再読した今回は切なさに涙ぐみつつ、最後まで恋愛ものの醍醐味?キャラと一緒に悩んだりドキドキしたり…を楽しめた。
能力のことを告白してからは長谷部の態度が冷たく感じるのだが、後から言い分を聞けばもっともで、むしろなんで長谷部の気持ちを想像してみなかったのかと驚いてしまった。余村にどっぷり感情移入してたせいで、どうもそこまで余裕がなかったらしい。なんかすごいなあ。
で、続編は彼の最大の悩みだった能力が消えてしまい、最初は喜ぶものの、次第に人の心が読めないことが不安になり…という内容。まあこの作品の場合は、なんでこんな能力が備わってしまったのかというのはどうでもいいことなのだが、しかしそんなあっさりいかれると、ちょっと都合がよすぎないかと首を傾げてしまった。唐突に現れたものだから、ある日いきなり消えても不自然ではないのだが、なんだかねーと。
でも読み始めたら余村の不安に引き込まれていた。人の心が分からないのなんて、恋愛小説のキャラだけではなく、すべての人に共通の悩みだろうけど、余村のような事情があったらやっぱりこんな風に不安になりそうだと思う。現実ではありえない悩みをリアルにじっくりと描いていくので、感情移入もしやすいし、切なさも、その後の幸福感も大きい。
このまま終わってもいいと思っていたが、ラストはどうなるのかなという期待があったので、尻すぼみで終わらなかったのが嬉しい。
砂原さんは不器用真面目(たまにヘタレ)攻×気が強くてちょっとひねくれた繊細受が上手いなあと。

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