金のフォークに銀の匙
2012年4月30日 かわい有美子
2012/04
公認会計士×大学生。
この設定で、なんでこんなパティシエものみたいな表紙なんだろう??と思いつつ読み始めた。
ネタバレ
---------------------------------------------
腹黒公認会計士×天然大学生。
と、作品紹介がされていたけど、攻の不破は根がいい人だと思うなー。
口も性格も悪いなーと思いながらも、不破には共感しやすかった。
有能なのに「観賞用」と言われてしまうザンネンなところも楽しいし。
逆に素直でいい子の三谷のほうは、「この子、大丈夫?」という宇宙人ぶりで、最初はついていけないものを感じた。事故に遭ってるのにヘラヘラ笑ってる人って、特殊すぎだわ…。
でも、三谷の性格が分かってくるにつれて、だんだん慣れてきて好きになった。
一度懐に入れた相手に対しては、不破も優しいし、親切。釣り合いの取れたカップルかも。
表紙、可愛いなー。麻生さん、ちょっとキャラの描き方に幅が広がったような。
公認会計士×大学生。
この設定で、なんでこんなパティシエものみたいな表紙なんだろう??と思いつつ読み始めた。
ネタバレ
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腹黒公認会計士×天然大学生。
と、作品紹介がされていたけど、攻の不破は根がいい人だと思うなー。
口も性格も悪いなーと思いながらも、不破には共感しやすかった。
有能なのに「観賞用」と言われてしまうザンネンなところも楽しいし。
逆に素直でいい子の三谷のほうは、「この子、大丈夫?」という宇宙人ぶりで、最初はついていけないものを感じた。事故に遭ってるのにヘラヘラ笑ってる人って、特殊すぎだわ…。
でも、三谷の性格が分かってくるにつれて、だんだん慣れてきて好きになった。
一度懐に入れた相手に対しては、不破も優しいし、親切。釣り合いの取れたカップルかも。
表紙、可愛いなー。麻生さん、ちょっとキャラの描き方に幅が広がったような。
いとし、いとしという心 2
2012年3月11日 かわい有美子
かわい有美子 リブレ出版 2009/11
つづき~。
ネタバレ
-----------------------------------------
相変わらず京都の雰囲気がいいなあと。
高校生編のほうは、とにかくラストがよかった。切ない…。
執着系の攻がここで踏みとどまれるところが救いというか、共感できる範囲におさまっててよかったと思う。
続編のほうは、ちょっとずつ寄り添っていく二人の距離感がよかったなあと。
最初から(高校生の頃から)泣き落としで口説いてれば、侑央はもっと早く落ちたんじゃないかなー。どう見ても、強気で押すより、情に訴えたほうが弱いタイプだし~。
千秋、ほんとに不器用なんだろうなあ……。
両思いになったことだし、「一緒に地獄に堕ちて」じゃなくて「一緒に這い上がろう」って言えるようになって欲しい。
…しかし、この狭い世界で、結婚せずにやっていくのは大変だろうなあ。
つづき~。
ネタバレ
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相変わらず京都の雰囲気がいいなあと。
高校生編のほうは、とにかくラストがよかった。切ない…。
執着系の攻がここで踏みとどまれるところが救いというか、共感できる範囲におさまっててよかったと思う。
続編のほうは、ちょっとずつ寄り添っていく二人の距離感がよかったなあと。
最初から(高校生の頃から)泣き落としで口説いてれば、侑央はもっと早く落ちたんじゃないかなー。どう見ても、強気で押すより、情に訴えたほうが弱いタイプだし~。
千秋、ほんとに不器用なんだろうなあ……。
両思いになったことだし、「一緒に地獄に堕ちて」じゃなくて「一緒に這い上がろう」って言えるようになって欲しい。
…しかし、この狭い世界で、結婚せずにやっていくのは大変だろうなあ。
いとし、いとしという心
2012年3月11日 かわい有美子
かわい有美子 リブレ出版 2009/6
BLなのに「未亡人」が売りって言われてもなあ…とスルーしてた作品。
ネタバレ
------------------------------------------
かわいさんの京都もの、やっぱりいいなあ。
最初、時代物?と戸惑ったのも、京都ものっぽい。
好きな人の家業とはいえ、自分とは関係のない隣家の旅館を残すために、自分の身を差し出す侑央が、最初は理解できなかった。
でも、読みすすめるうちに、一見流されているだけに見える侑央が、頑固で芯が強いことが分かってきて、こういう強さもあるんだな、と思えた。
脅迫と言い切れない、半分は取引みたいな関係なのが、この話のポイントかも。
一方的に耐えるだけじゃないから、ムリヤリって感じが薄れて、私には読みやすかった。
千秋のほうは、腹黒いわ執着系だわ、最初はゲ~って思ったけど(…)、考えてみれば、好きな子のために人生変えちゃったわけで、純情な人だなーと。
兄の死で千秋が継ぐことになるのは、不況で経営が傾いているような旅館じゃなく、常に予約で埋まっている高級旅館。それを「いらないよ、潰しちゃえば」って言えるぐらいのポジションを、誰の力も借りずに自分の才覚だけで築き上げているわけだから、まあカッコイイ攻だと思う。
まったく好みじゃないが、嫌いじゃないかもなあ。
BLなのに「未亡人」が売りって言われてもなあ…とスルーしてた作品。
ネタバレ
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かわいさんの京都もの、やっぱりいいなあ。
最初、時代物?と戸惑ったのも、京都ものっぽい。
好きな人の家業とはいえ、自分とは関係のない隣家の旅館を残すために、自分の身を差し出す侑央が、最初は理解できなかった。
でも、読みすすめるうちに、一見流されているだけに見える侑央が、頑固で芯が強いことが分かってきて、こういう強さもあるんだな、と思えた。
脅迫と言い切れない、半分は取引みたいな関係なのが、この話のポイントかも。
一方的に耐えるだけじゃないから、ムリヤリって感じが薄れて、私には読みやすかった。
千秋のほうは、腹黒いわ執着系だわ、最初はゲ~って思ったけど(…)、考えてみれば、好きな子のために人生変えちゃったわけで、純情な人だなーと。
兄の死で千秋が継ぐことになるのは、不況で経営が傾いているような旅館じゃなく、常に予約で埋まっている高級旅館。それを「いらないよ、潰しちゃえば」って言えるぐらいのポジションを、誰の力も借りずに自分の才覚だけで築き上げているわけだから、まあカッコイイ攻だと思う。
まったく好みじゃないが、嫌いじゃないかもなあ。
かわい有美子 笠倉出版社 2012/02
『透過性~』のスピンオフ。
このシリーズ、カバーイラストが毎回いいなあ。
今回は裏表紙の折り返した部分もネイビーで、既刊の宣伝までなんだかおしゃれだった。
ネタバレ
-----------------------------------------
面白かった。
頑張ってるけど、なんだか不運な橋本が、いい相手にめぐり合えてよかったなあと。最初、飯島とのやり取りに腹も立てない橋本にイラッとした。人前で他人に恥をかかせるのは、どう考えても嫌な奴だと思うんだけど。
けど、まあ…こののんびりしたところが長所でもあるし、こういう人もいるよね、とだんだん慣れてきた。
嵯上のほうは、普通に優しくて、人よりちょっと頼りになるかな。カッコよくもあると思う。けど、あまり印象に残らなかった。ストーカーから守ってくれたり、落ち込んでるときにそばにいてくれたり、見せ場もあったのに。
嵯上の視点も結構入ってくるのに、仕事場で恩師と話しているとき以外、とくに思い出す場面がない。うーん…。
このシリーズ、好きだけなんだけど。
最初に『透過性~』のスピンオフ、と書いた。
毎回、主役が変わるシリーズの3冊目なのに、1冊目の『上海金魚』ではなく、わざわざ2冊目の『透過性~』を出して、「スピンオフ」と書いたのにはわけがある。
『透過性~』の二人が必要以上に目立ちすぎで、興醒めしたから。
二人も好きなんだけど、橋本と嵯上の話なのに、脇カップルみたいな扱いはどうなのか…。初デートの場面で長々と関係のない北嶋の話されてもさあ……。
なんか牧田さん素敵~、北嶋、相変わらずアホやね~というノリの合間に、いつの間にか橋本と嵯上が両思いになっていたような。
それぐらい、無駄に牧田と北嶋が出張ってた。そんなに書きたいなら、『透過性~』で続編出せばいいのに、と思ってしまった。(同人誌は出てたと思うけど)
いくら地味でも主役の橋本に、常にスポットライトを当ててほしい。
脇役タイプを主役にすえておいて、脇役扱いしてどうするよ?
これ、シリーズものじゃないほうが、面白かっただろうなあ。
『透過性~』のスピンオフ。
このシリーズ、カバーイラストが毎回いいなあ。
今回は裏表紙の折り返した部分もネイビーで、既刊の宣伝までなんだかおしゃれだった。
ネタバレ
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面白かった。
頑張ってるけど、なんだか不運な橋本が、いい相手にめぐり合えてよかったなあと。最初、飯島とのやり取りに腹も立てない橋本にイラッとした。人前で他人に恥をかかせるのは、どう考えても嫌な奴だと思うんだけど。
けど、まあ…こののんびりしたところが長所でもあるし、こういう人もいるよね、とだんだん慣れてきた。
嵯上のほうは、普通に優しくて、人よりちょっと頼りになるかな。カッコよくもあると思う。けど、あまり印象に残らなかった。ストーカーから守ってくれたり、落ち込んでるときにそばにいてくれたり、見せ場もあったのに。
嵯上の視点も結構入ってくるのに、仕事場で恩師と話しているとき以外、とくに思い出す場面がない。うーん…。
このシリーズ、好きだけなんだけど。
最初に『透過性~』のスピンオフ、と書いた。
毎回、主役が変わるシリーズの3冊目なのに、1冊目の『上海金魚』ではなく、わざわざ2冊目の『透過性~』を出して、「スピンオフ」と書いたのにはわけがある。
『透過性~』の二人が必要以上に目立ちすぎで、興醒めしたから。
二人も好きなんだけど、橋本と嵯上の話なのに、脇カップルみたいな扱いはどうなのか…。初デートの場面で長々と関係のない北嶋の話されてもさあ……。
なんか牧田さん素敵~、北嶋、相変わらずアホやね~というノリの合間に、いつの間にか橋本と嵯上が両思いになっていたような。
それぐらい、無駄に牧田と北嶋が出張ってた。そんなに書きたいなら、『透過性~』で続編出せばいいのに、と思ってしまった。(同人誌は出てたと思うけど)
いくら地味でも主役の橋本に、常にスポットライトを当ててほしい。
脇役タイプを主役にすえておいて、脇役扱いしてどうするよ?
これ、シリーズものじゃないほうが、面白かっただろうなあ。
かわい有美子 幻冬舎 2011/4
読むものがないよ~と言って送っていただいた救援物資の中から適当に2冊目を取り出したら、たまたま蓮川さんのイラストが続いた。
ストイックな中に甘い感じがあって、作品にぴったり~。
ネタバレ
-----------------------------------------
SPものというから、緊迫感のある重たい話が続くのかな~と思ってたら、独身寮の話も多くて読みやすかった。
かわい作品らしく職業ものとして骨太さを出しつつ、適度にライトな感覚が混じっているというか。『疵』みたいなギリギリな感じも好きだけど、まあ恋愛ものとしては、こういうほうが読みやすいと思うし、これはこれで読み応えがあった。
ただ…、英田作品の公安ものもそうだったけど、「仕事の権限上、何も解決できない」という結論で事件が終わってしまうし、派手なシーンもほとんどないし、警察ものとして読むとスッキリ感はないかな~。
まあ、「組織の中で無力感に浸る」っていうのは、ある意味で警察ものの醍醐味なのかもしれないし、ファンタジーで終わるよりは楽しい。でも、結局何もできないにしても、もう少しメリハリとか盛り上がりとかがほしいというか…。
シリーズものだから、次でフォローが入る可能性がなくもないけど、かわい作品の場合、やるせないまま終わる可能性も大……。
しかも、事件に関してだけではなく、恋愛に関しても、メリハリと盛り上がりが不足してたような…。キャラも好きだし、話も面白いんだけど、全部読み終わってみると、ちょっと物足りなかった。
いやでも、久し振りに好みの系統のかわい作品に当たったから、設定したハードルが上がってるだけで。
面白かった。
読むものがないよ~と言って送っていただいた救援物資の中から適当に2冊目を取り出したら、たまたま蓮川さんのイラストが続いた。
ストイックな中に甘い感じがあって、作品にぴったり~。
ネタバレ
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SPものというから、緊迫感のある重たい話が続くのかな~と思ってたら、独身寮の話も多くて読みやすかった。
かわい作品らしく職業ものとして骨太さを出しつつ、適度にライトな感覚が混じっているというか。『疵』みたいなギリギリな感じも好きだけど、まあ恋愛ものとしては、こういうほうが読みやすいと思うし、これはこれで読み応えがあった。
ただ…、英田作品の公安ものもそうだったけど、「仕事の権限上、何も解決できない」という結論で事件が終わってしまうし、派手なシーンもほとんどないし、警察ものとして読むとスッキリ感はないかな~。
まあ、「組織の中で無力感に浸る」っていうのは、ある意味で警察ものの醍醐味なのかもしれないし、ファンタジーで終わるよりは楽しい。でも、結局何もできないにしても、もう少しメリハリとか盛り上がりとかがほしいというか…。
シリーズものだから、次でフォローが入る可能性がなくもないけど、かわい作品の場合、やるせないまま終わる可能性も大……。
しかも、事件に関してだけではなく、恋愛に関しても、メリハリと盛り上がりが不足してたような…。キャラも好きだし、話も面白いんだけど、全部読み終わってみると、ちょっと物足りなかった。
いやでも、久し振りに好みの系統のかわい作品に当たったから、設定したハードルが上がってるだけで。
面白かった。
猫の遊ぶ庭―気まぐれ者達の楽園
2011年5月9日 かわい有美子猫の遊ぶ庭 (幻冬舎ルチル文庫)
2011年3月31日 かわい有美子
かわい有美子 幻冬舎 2011/3
待ってました!の文庫化。
これは私の中で殿堂入り作品なので、そのうちゆっくり感想を書こうかと。
山田さんのイラストはきれいで大好きなのだが、今回はキャラのイメージが違っていた。
うーん、杜司はもう少し浮世離れした雰囲気で、もっと顔が痩せてるほうがいいなあ。なんかすごく健康的なキャラに見える。
織田は逆に線が細すぎる気がして違和感が。
…注文多くて、すみません。
待ってました!の文庫化。
これは私の中で殿堂入り作品なので、そのうちゆっくり感想を書こうかと。
山田さんのイラストはきれいで大好きなのだが、今回はキャラのイメージが違っていた。
うーん、杜司はもう少し浮世離れした雰囲気で、もっと顔が痩せてるほうがいいなあ。なんかすごく健康的なキャラに見える。
織田は逆に線が細すぎる気がして違和感が。
…注文多くて、すみません。
疵 スキャンダル(4)
2010年10月16日 かわい有美子
かわい有美子 アスキー・メディアワークス 2010/10
完結巻。
うわ~、ピンクの表紙だ。
ネタバレ
----------------------------------------
やっぱりこの作品好きだなーと改めて。
そっか、こういうラストだったのか…。ラストは思い出せなかったけど、それぞれの決着は結構覚えていた。弥生のこととか、Wじいさんのこととか。有賀の決断は相当ページ数が割かれていて、お気に入りのキャラなんだなあと思ったこととか(笑)
でも、今回変更されている場面があったかどうかは、よく分からなかった…。
篠田との別れの場面では、情が薄いと言われていた桐原もずいぶん変ったなあと思った。成長もしたけど、良い悪いの問題ではなく、ただ考え方が変ったところもあるような。まあその変化が桐原にとってプラスなんだから、いいことなんだろうけど。
前回ひどかった司馬は、今回しっかり反省してて安心した。なんだか回り道したけど、両思いだと自覚した?二人が、自然な形でよりを戻すのもよかった。桐原も寛大だなあ。こういう落ち着いた展開だったから思い出せなったというのもあると思うけど、いままでが痛すぎただけに、この穏やかさが染みるというか。
しかしまあ、そこに奥さんへの愛があろうとなかろうと、片方が既婚のままで終わるBLって珍しそう。そこで揉めたりしないあたり、さすがに…苦労した人は違うのかも…。ああ、あと司馬は子供を持つ親としての気持ちが強いからかもしれない。
桐原が死ぬ思いで守ってきた仕事を楽しく続けられることと、これからも司馬のライバルとして切磋琢磨していく(っていうと爽やかすぎるかな?)のも、本当によかった。
同期の二人に力の優劣がないあたりは、同い年好きとしては美味しかったし(笑)
その後の話も、穏やかそうに暮らしててよかった。
2つ目、今回の文庫の書き下ろし冒頭は、ノベルズ刊行当時はあまり書きたくなかったかもなあと、なんとなく思った。いや、実際のところはよく知らないけど。
面白かった~、大満足。
完結巻。
うわ~、ピンクの表紙だ。
ネタバレ
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やっぱりこの作品好きだなーと改めて。
そっか、こういうラストだったのか…。ラストは思い出せなかったけど、それぞれの決着は結構覚えていた。弥生のこととか、Wじいさんのこととか。有賀の決断は相当ページ数が割かれていて、お気に入りのキャラなんだなあと思ったこととか(笑)
でも、今回変更されている場面があったかどうかは、よく分からなかった…。
篠田との別れの場面では、情が薄いと言われていた桐原もずいぶん変ったなあと思った。成長もしたけど、良い悪いの問題ではなく、ただ考え方が変ったところもあるような。まあその変化が桐原にとってプラスなんだから、いいことなんだろうけど。
前回ひどかった司馬は、今回しっかり反省してて安心した。なんだか回り道したけど、両思いだと自覚した?二人が、自然な形でよりを戻すのもよかった。桐原も寛大だなあ。こういう落ち着いた展開だったから思い出せなったというのもあると思うけど、いままでが痛すぎただけに、この穏やかさが染みるというか。
しかしまあ、そこに奥さんへの愛があろうとなかろうと、片方が既婚のままで終わるBLって珍しそう。そこで揉めたりしないあたり、さすがに…苦労した人は違うのかも…。ああ、あと司馬は子供を持つ親としての気持ちが強いからかもしれない。
桐原が死ぬ思いで守ってきた仕事を楽しく続けられることと、これからも司馬のライバルとして切磋琢磨していく(っていうと爽やかすぎるかな?)のも、本当によかった。
同期の二人に力の優劣がないあたりは、同い年好きとしては美味しかったし(笑)
その後の話も、穏やかそうに暮らしててよかった。
2つ目、今回の文庫の書き下ろし冒頭は、ノベルズ刊行当時はあまり書きたくなかったかもなあと、なんとなく思った。いや、実際のところはよく知らないけど。
面白かった~、大満足。
かわい有美子 幻冬舎コミックス 2010/05
タイトルといい、子供っぽいイラストといい、あんまり惹かれるものがなかったけど、お借りしたので読んでみた。
悪魔×神学生、ヴィクトリア朝時代の英国を舞台にしたファンタジー。
どうでもいいが、相変わらずびっくりするぐらい誤字が多いレーベルだな、リンクス。
ちょっと追記あり
かなりネタバレ
-----------------------------------------------
期待以上に面白かった。
ファンタジーであり、かつ海外舞台の時代物でもあるんだけど、まあそんな取っ付きづらいところもないので読みやすい。…これでこの時代の風俗やら神学校の生活について長々描写されたら、早々に放り出していたと思うけど、わりとサクサクと進む。
悪魔のオスカー(攻)が神学生のセシルに目をつけ、退屈凌ぎに誘惑するのだが、セシルはあっさりと落ちてしまう。オスカーにとっても読者にとってもつまらないところだが、ここからが面白かった。セシルは最初からオスカーが本気じゃないことは分かっていて自分も遊びと割り切っていたので、オスカーに本気になったりせず、とくに態度も変らない。ツンデレで初心な神学生と思わせておいて、もう少しサバサバした性格だったというか…。基本的に素直だし真面目な性格で(信仰心はないけど)、べつに意地を張っているわけではなく、単に最初から何も期待していないというのが、なんか説得力があった。高位の悪魔の誘惑も、諦観には負けるらしい。無宗教の私には、「信仰心が守ってくれた」なんていうよりは分かりやすいかも。
宗教観といえば、神学生に化けたオスカーが書いたことになっている「ヨブ記以降の~」という論文は、ああ、悪魔らしい選択かもと思ったのだが、オスカーの過去が明らかになっていくに連れて、もう少し個人的な事情が絡んでいたんだなと思った。まあ細かいことだけど。
神や天使を無慈悲で、必ずしも絶対的な存在として描かないところなんかも読みやすいかも。
テーマが少し似ているから自然と思い出した『ROSE GARDEN』(木原さんのFT)と比べてみる(優劣をつけるって意味ではなく)のも面白いかもしれない。
かわいさんは少し「人間より超越した」存在として天使を描き、天界も真っ白なイメージ。「こういうものだから」とストーリー(言葉)の中では理不尽を受け入れつつ、読者に「それは正しいのか?」という懐疑を抱かせるような書き方っていえばいいのかなあ。
対して木原さんの天使はもっと人間臭く、天界も美しいというだけで地上とそれほど変らないようなイメージだった。でも感覚的に(理屈をすっ飛ばしたようなところが)超越も感じたかもしれない。宗教的な理不尽を、言葉で説明せずに物語に組み込んでしまったようなところがあるというか。まあ木原さんにそんな意図はなさそうだけども、「提示はしたから、あとは自分で考えたら?(考えなくても一向に構いません)」というような書き方。
…長々と脱線してしまった。
オスカーの正体を知ったセシルは、死ぬかもしれないという恐怖より、オスカーの心が自分にないことに落胆して逃げ出す。最初からセシルはオスカーに惹かれていたわけだが、オスカーはセシルの心は手に入っていないと思っている。「好きだけど、信じてはいない」というのは、相手に心を明け渡しているとはいえないってことかな。まあオスカーの悩みは言ってしまえば、本気になった浮気男の悩みみたいな?(笑)
全て捧げると言いながら、心は渡さないセシルにオスカーは毎日バラを届けるようになり、最初は傲慢だったのが嘘のように最後は「共に生きてほしい」と愛を乞うようにまでなる。このあたりのオスカーの気持ちの変化を、くだくだ言葉で説明しないところが、逆に共感しやすくてよかった。
ストーリーに起伏もあってキャラの心情もつかみやすいし、世界観も分かりやすいけど薄っぺらくもなく、思っていた以上に面白かった。
ただ、セシルのキャラにもっと奥行きがあってもよかったんじゃないかと思う。高位の天使の生まれ変わりという大きな背景のあるキャラなんだし、人格的な深みがあってもよかったんじゃないかと。まあ何度生まれ変わっても「心の弱い人間」に生まれ、30まで生きられないという呪いをかけられているので、これがキャラ造詣として正しいんだろうけど。不幸な生い立ちのわりに素直な心を失っていないあたりや、冷静なあたりは魅力的だし。
うーん、でももう少しオスカーへの気持ちが複雑なものになっていれば面白かったと思うなあ。
SS。天界でのストーリーは、完全に時間差恋愛?で切ない。余計なものが入っていないのに、引き込まれるものがあり、上手いと思ったし面白かった。
…しかし、神さまの嫉妬は怖いなあ。ラストの残酷さに驚いた。
後日談。ふたりの新婚生活?が甘くてよかった。甘いだけじゃなく、永遠に近い時を生きる辛さも描かれていて、こちらも面白かった。
少し気になったのは、神の呪いは解けたのだろうか?ということ。(神に許されたのか?、と書くべきかも?)
神がまだセリエルに執着を持っているのなら、この二人は10年後ぐらいに引き裂かれる運命ということになる。前回の再会なんて、お互い再会に気づかないまま終わってしまうという悲劇だっただけに心配というか…。セシルが人間じゃなくなった時点で、心配は無くなったと考えていいのだろうか。
天使も悪魔も数が減っているというあたりに、答えがあるのかな。
タイトルといい、子供っぽいイラストといい、あんまり惹かれるものがなかったけど、お借りしたので読んでみた。
悪魔×神学生、ヴィクトリア朝時代の英国を舞台にしたファンタジー。
どうでもいいが、相変わらずびっくりするぐらい誤字が多いレーベルだな、リンクス。
ちょっと追記あり
かなりネタバレ
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期待以上に面白かった。
ファンタジーであり、かつ海外舞台の時代物でもあるんだけど、まあそんな取っ付きづらいところもないので読みやすい。…これでこの時代の風俗やら神学校の生活について長々描写されたら、早々に放り出していたと思うけど、わりとサクサクと進む。
悪魔のオスカー(攻)が神学生のセシルに目をつけ、退屈凌ぎに誘惑するのだが、セシルはあっさりと落ちてしまう。オスカーにとっても読者にとってもつまらないところだが、ここからが面白かった。セシルは最初からオスカーが本気じゃないことは分かっていて自分も遊びと割り切っていたので、オスカーに本気になったりせず、とくに態度も変らない。ツンデレで初心な神学生と思わせておいて、もう少しサバサバした性格だったというか…。基本的に素直だし真面目な性格で(信仰心はないけど)、べつに意地を張っているわけではなく、単に最初から何も期待していないというのが、なんか説得力があった。高位の悪魔の誘惑も、諦観には負けるらしい。無宗教の私には、「信仰心が守ってくれた」なんていうよりは分かりやすいかも。
宗教観といえば、神学生に化けたオスカーが書いたことになっている「ヨブ記以降の~」という論文は、ああ、悪魔らしい選択かもと思ったのだが、オスカーの過去が明らかになっていくに連れて、もう少し個人的な事情が絡んでいたんだなと思った。まあ細かいことだけど。
神や天使を無慈悲で、必ずしも絶対的な存在として描かないところなんかも読みやすいかも。
テーマが少し似ているから自然と思い出した『ROSE GARDEN』(木原さんのFT)と比べてみる(優劣をつけるって意味ではなく)のも面白いかもしれない。
かわいさんは少し「人間より超越した」存在として天使を描き、天界も真っ白なイメージ。「こういうものだから」とストーリー(言葉)の中では理不尽を受け入れつつ、読者に「それは正しいのか?」という懐疑を抱かせるような書き方っていえばいいのかなあ。
対して木原さんの天使はもっと人間臭く、天界も美しいというだけで地上とそれほど変らないようなイメージだった。でも感覚的に(理屈をすっ飛ばしたようなところが)超越も感じたかもしれない。宗教的な理不尽を、言葉で説明せずに物語に組み込んでしまったようなところがあるというか。まあ木原さんにそんな意図はなさそうだけども、「提示はしたから、あとは自分で考えたら?(考えなくても一向に構いません)」というような書き方。
…長々と脱線してしまった。
オスカーの正体を知ったセシルは、死ぬかもしれないという恐怖より、オスカーの心が自分にないことに落胆して逃げ出す。最初からセシルはオスカーに惹かれていたわけだが、オスカーはセシルの心は手に入っていないと思っている。「好きだけど、信じてはいない」というのは、相手に心を明け渡しているとはいえないってことかな。まあオスカーの悩みは言ってしまえば、本気になった浮気男の悩みみたいな?(笑)
全て捧げると言いながら、心は渡さないセシルにオスカーは毎日バラを届けるようになり、最初は傲慢だったのが嘘のように最後は「共に生きてほしい」と愛を乞うようにまでなる。このあたりのオスカーの気持ちの変化を、くだくだ言葉で説明しないところが、逆に共感しやすくてよかった。
ストーリーに起伏もあってキャラの心情もつかみやすいし、世界観も分かりやすいけど薄っぺらくもなく、思っていた以上に面白かった。
ただ、セシルのキャラにもっと奥行きがあってもよかったんじゃないかと思う。高位の天使の生まれ変わりという大きな背景のあるキャラなんだし、人格的な深みがあってもよかったんじゃないかと。まあ何度生まれ変わっても「心の弱い人間」に生まれ、30まで生きられないという呪いをかけられているので、これがキャラ造詣として正しいんだろうけど。不幸な生い立ちのわりに素直な心を失っていないあたりや、冷静なあたりは魅力的だし。
うーん、でももう少しオスカーへの気持ちが複雑なものになっていれば面白かったと思うなあ。
SS。天界でのストーリーは、完全に時間差恋愛?で切ない。余計なものが入っていないのに、引き込まれるものがあり、上手いと思ったし面白かった。
…しかし、神さまの嫉妬は怖いなあ。ラストの残酷さに驚いた。
後日談。ふたりの新婚生活?が甘くてよかった。甘いだけじゃなく、永遠に近い時を生きる辛さも描かれていて、こちらも面白かった。
少し気になったのは、神の呪いは解けたのだろうか?ということ。(神に許されたのか?、と書くべきかも?)
神がまだセリエルに執着を持っているのなら、この二人は10年後ぐらいに引き裂かれる運命ということになる。前回の再会なんて、お互い再会に気づかないまま終わってしまうという悲劇だっただけに心配というか…。セシルが人間じゃなくなった時点で、心配は無くなったと考えていいのだろうか。
天使も悪魔も数が減っているというあたりに、答えがあるのかな。
疵―スキャンダル 3
2010年9月12日 かわい有美子
かわい有美子 アスキーメディアワークス 2010/9/7
3巻も面白かった。
ネタバレ
----------------------------------------
ひどいよひどいよ、司馬!
…実は2巻でも、ひどいなあと思ってたけど、3巻は本当にひどい。
桐原は情が薄くてひどい人、と再三にわたって描写されてるけど、司馬のほうがひどい人だと思うけどなあ……?
まず、2巻で桐原が出世すると、「出し抜かれた」とか言って激怒してたけど、きみが桐原の立場だったら絶対に遠慮なんかしないだろ、と言いたい。
で、3巻では桐原の友達に嫉妬して桐原を傷つけた上に、離婚した奥さんが戻ってくるから別れる、そもそも最初から何の関係もなかったって…。うーん、ここまで自分勝手だと……。
とはいえ、司馬は結構、魅力的なキャラだと思う。ひどいけど。
4巻では桐原が幸せになってくれるといいなあ。再読なのに、なんとラストをまったく覚えてないという…。
3巻はでも、読み出したらほとんどの場面を覚えていた。プレゼントを買う場面とか、好きだなあ。
ちゃんと覚えていないけど、文章は前よりかなり読みやすくなったんじゃないかと思う。手元に本がないから分からないけど、確か前は読みづらい文章だと思った覚えがあるから。内容や雰囲気を変えずに読みやすくなってるので、書き直してくれてよかった。
4巻がすごく楽しみ。
3巻も面白かった。
ネタバレ
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ひどいよひどいよ、司馬!
…実は2巻でも、ひどいなあと思ってたけど、3巻は本当にひどい。
桐原は情が薄くてひどい人、と再三にわたって描写されてるけど、司馬のほうがひどい人だと思うけどなあ……?
まず、2巻で桐原が出世すると、「出し抜かれた」とか言って激怒してたけど、きみが桐原の立場だったら絶対に遠慮なんかしないだろ、と言いたい。
で、3巻では桐原の友達に嫉妬して桐原を傷つけた上に、離婚した奥さんが戻ってくるから別れる、そもそも最初から何の関係もなかったって…。うーん、ここまで自分勝手だと……。
とはいえ、司馬は結構、魅力的なキャラだと思う。ひどいけど。
4巻では桐原が幸せになってくれるといいなあ。再読なのに、なんとラストをまったく覚えてないという…。
3巻はでも、読み出したらほとんどの場面を覚えていた。プレゼントを買う場面とか、好きだなあ。
ちゃんと覚えていないけど、文章は前よりかなり読みやすくなったんじゃないかと思う。手元に本がないから分からないけど、確か前は読みづらい文章だと思った覚えがあるから。内容や雰囲気を変えずに読みやすくなってるので、書き直してくれてよかった。
4巻がすごく楽しみ。
疵 スキャンダル 1
2010年7月27日 かわい有美子
かわい有美子 アスキーメディアワークス 2010/07
これまた懐かしい作品の文庫化で。
これから毎月刊行されるようで、続きも楽しみ。
主人公二人は90年代の「大蔵省」のエリート官僚ということで、84年に東大卒という設定。84年じゃ、まだ生まれてなかったという読者も多そう…。
でも話自体は90年代だから、古臭さはとくにないと思う。
ネタバレ
--------------------------------------
面白いんだけど、あまり読み返したくはなかった作品。あんまりな話が続くので、好きなんだけど、読みづらいというか。
再読したくないから旧版は買わなかったんだけど、かなり好きな作品だから、この機会に集めることにした。
1巻を再読して、桐原の事情とか司馬との関係とか、奥さんとか有賀のこととか、話も結構詳しく覚えてたんだけど、この後(2巻以降)どういう展開になるのかはっきり思い出せない。たぶん読めば、そうだった、そうだった!ということになるんだろうけど。
というわけで、続きが気になって仕方ない。
でもたぶん、1巻が1番インパクト強かったと思う。養父と篠田のダブルじいさんパンチが強烈なんで、そこばっかり印象に残ってたみたい…。
ほとんど善人が出てこない作品って珍しいけど、エリート官僚が和気藹々ほのぼのと仕事してるほうが嘘くさいし、シビアなところに説得力を感じる。…いや、桐原の受難にリアリティーがあるとか思ってるわけではなく。
けど、桐原ぐらい優秀な人ならどこ行ってもエリートだろうし、転職したほうが給料高くて仕事は楽で、いまより数倍人生楽しくなりそう、とか思っちゃう。…や、そこであっさり転職するような人は、そもそもこういう人生を選ばないのかな。
これまた懐かしい作品の文庫化で。
これから毎月刊行されるようで、続きも楽しみ。
主人公二人は90年代の「大蔵省」のエリート官僚ということで、84年に東大卒という設定。84年じゃ、まだ生まれてなかったという読者も多そう…。
でも話自体は90年代だから、古臭さはとくにないと思う。
ネタバレ
--------------------------------------
面白いんだけど、あまり読み返したくはなかった作品。あんまりな話が続くので、好きなんだけど、読みづらいというか。
再読したくないから旧版は買わなかったんだけど、かなり好きな作品だから、この機会に集めることにした。
1巻を再読して、桐原の事情とか司馬との関係とか、奥さんとか有賀のこととか、話も結構詳しく覚えてたんだけど、この後(2巻以降)どういう展開になるのかはっきり思い出せない。たぶん読めば、そうだった、そうだった!ということになるんだろうけど。
というわけで、続きが気になって仕方ない。
でもたぶん、1巻が1番インパクト強かったと思う。養父と篠田のダブルじいさんパンチが強烈なんで、そこばっかり印象に残ってたみたい…。
ほとんど善人が出てこない作品って珍しいけど、エリート官僚が和気藹々ほのぼのと仕事してるほうが嘘くさいし、シビアなところに説得力を感じる。…いや、桐原の受難にリアリティーがあるとか思ってるわけではなく。
けど、桐原ぐらい優秀な人ならどこ行ってもエリートだろうし、転職したほうが給料高くて仕事は楽で、いまより数倍人生楽しくなりそう、とか思っちゃう。…や、そこであっさり転職するような人は、そもそもこういう人生を選ばないのかな。
かわい有美子 幻冬舎コミックス 2009/12
数年ぶりに再読した。
これは復刊でかなり手を入れているということだが、ノベルス版は読み返していないので、文庫版の感想。
うっすらとした記憶を元に「ここを肉付けして、あのへんは少し削ったのかなあ」と考えてみた。(まあ勘違いもしてそうだけど)わりと内容を覚えているものだなと少し驚いた。
イラストは…、どう見てもキャラ年齢が20代には見えなくて表紙を見たときガッカリしたのだが、雰囲気があってとてもきれいだった。正直、私がこの作品に持っていたイメージ(再会したときエドワードはまだ17歳なんだけど、もっと大人になってからのイメージのほうが強かった)には合わないのだが、趣味の問題はともかくとして、イラストとしてはすごくいいと思う。
ネタバレ
---------------------------------------------
雰囲気が良くて大好きな作品。
子供時代のエピソードから始め、エドワードの一途な思いやレイモンドの情の深さを丁寧に描き、激動の時代と身分差カップルにふさわしいドラマティックな別離を経てのハッピーエンド。
いい意味での王道ストーリーになっていると思う。単純ではあるんだけど、薄っぺらさはなく、何より当時の上海という街への憧れが伝わってくるので雰囲気がいいし、読み応え十分。
身分差が単なる恋の障害として出てくるのではなく、時代を感じさせ、主人公の生き方、考え方にまで深く影響を及ぼしているところがすごいなあと思う。なんていうか普通の?身分差ものだと、「人目を憚る関係」とか「使用人として主人を尊敬している」とか、そのへんまでしか描かれないことが多いと思う。垣根が高くて大変だねーと思うぐらいで、あまり考えるようなことはない。でも、この作品だともっと踏み込んで描かれているように感じるし、いちいち考えさせられる。エドワードの「私は中国人ですから」という台詞がすごく重たい。そしてそれが健気さ、一途さに繋がっているあたり、時代恋愛ものとしてよくできていて、いいなあと。
ストーリーの順番にお気に入りのシーンを。
最初にレイモンドが万年筆を買って帰る序章。短い文章なんだけど、当時の上海の情景を描写しつつ、プレゼントを用意したレイモンドの優しい気持ちがよく分かるし、気の利いた導入だなあと思う。伏線にもなっているところがまた、伏線好きな私にはたまらない。
ダンスホール。
二人の距離が縮まる場面で、普段は健気で慎ましいエドワードの別の顔が見られるところがいい。レイモンドの台詞の甘さとつれなさの匙加減も好き。
婚約破棄した後にルーシーと会う場面。
少女マンガの主人公のライバル役みたいなキャラなんだけど、この場面で悪い人じゃないんだなーと思えるし、なかなか印象的な場面。
蘇州。
景色が目に浮かぶような、美しい文章だと思う。タイトルは「上海」だし、上海の街の描写も好きなんだけど、この作品のなかで1番好きなのがこの旅行の場面で、すごく印象に残っていた。静かできれいで、少し不安な感じがいい。
埠頭での別れ。
メロドラマ風最高潮なエピソードだが、いい意味で王道。盛り上がるし、お互いへの思いが強く出ていて感動的。
ここでエドワードを置いていくというレイモンドの選択がいいと思う。もちろんそれこそ身を引き裂かれるような思いで置いていくわけだが、健全で前向きな考え方が根底にあって、こんなところにもキャラの魅力が出ているなあと。「ここでお別れです」というエドワードの台詞も同じ。
再会。
いやもう…エドワードの健気さと一途さに涙が出る。何度読んでも感動的。
何年もかけてやっとの思いではるばるイギリスまで来たのに、迷惑はかけまいと会いもせずに帰ろうとするとか…。
レイモンドの最後の台詞がまたいい。
「歌姫」
香港でのエドワードの話。これも雰囲気がある短編。初めて読んだ当時、再会後の甘ったるい話を期待していたのにと思いつつ、すぐに引き込まれてしまったのを思い出した。すごく好き。
レイモンドは出てこないし、第三者視点なのだが、エドワードの切ない思いがしっかり伝わってくる。歌姫も魅力的。
「China Rose」
こちらは最初に期待していたような、再会後の甘い話。まあこの書き下ろしが読みたくて文庫を買ったわけだし、楽しみではあったんだけど、正直不安でもあった。10年以上前の作品に続編をつけるって、作品の雰囲気が変ってしまったりしないのかと…。
すっかり落ち着いてからの二人なので明るくなっているのは当然だし、心配していたような変化は感じなかった。ノベルス版を読み直せば多少の違和感があるのかもしれないが、文庫版を通しで読んだ直後に読む分にはまったく違和感がなかった。
本編は全体に物悲しい色がついているのに対し、こちらは時代が変り、明るい未来を感じさせる話になっていた。作品のカラーとして、これは好みの分かれるところかもしれない。けど、分かりやすく甘いハッピーエンドを求める読者が多いという事情(…?)を抜きにしても、私はこれはこれでいいんじゃないかと思った。作品の舞台が戦後になったことを考えると、時代の空気を反映しているように感じた。
数年ぶりに再読した。
これは復刊でかなり手を入れているということだが、ノベルス版は読み返していないので、文庫版の感想。
うっすらとした記憶を元に「ここを肉付けして、あのへんは少し削ったのかなあ」と考えてみた。(まあ勘違いもしてそうだけど)わりと内容を覚えているものだなと少し驚いた。
イラストは…、どう見てもキャラ年齢が20代には見えなくて表紙を見たときガッカリしたのだが、雰囲気があってとてもきれいだった。正直、私がこの作品に持っていたイメージ(再会したときエドワードはまだ17歳なんだけど、もっと大人になってからのイメージのほうが強かった)には合わないのだが、趣味の問題はともかくとして、イラストとしてはすごくいいと思う。
ネタバレ
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雰囲気が良くて大好きな作品。
子供時代のエピソードから始め、エドワードの一途な思いやレイモンドの情の深さを丁寧に描き、激動の時代と身分差カップルにふさわしいドラマティックな別離を経てのハッピーエンド。
いい意味での王道ストーリーになっていると思う。単純ではあるんだけど、薄っぺらさはなく、何より当時の上海という街への憧れが伝わってくるので雰囲気がいいし、読み応え十分。
身分差が単なる恋の障害として出てくるのではなく、時代を感じさせ、主人公の生き方、考え方にまで深く影響を及ぼしているところがすごいなあと思う。なんていうか普通の?身分差ものだと、「人目を憚る関係」とか「使用人として主人を尊敬している」とか、そのへんまでしか描かれないことが多いと思う。垣根が高くて大変だねーと思うぐらいで、あまり考えるようなことはない。でも、この作品だともっと踏み込んで描かれているように感じるし、いちいち考えさせられる。エドワードの「私は中国人ですから」という台詞がすごく重たい。そしてそれが健気さ、一途さに繋がっているあたり、時代恋愛ものとしてよくできていて、いいなあと。
ストーリーの順番にお気に入りのシーンを。
最初にレイモンドが万年筆を買って帰る序章。短い文章なんだけど、当時の上海の情景を描写しつつ、プレゼントを用意したレイモンドの優しい気持ちがよく分かるし、気の利いた導入だなあと思う。伏線にもなっているところがまた、伏線好きな私にはたまらない。
ダンスホール。
二人の距離が縮まる場面で、普段は健気で慎ましいエドワードの別の顔が見られるところがいい。レイモンドの台詞の甘さとつれなさの匙加減も好き。
婚約破棄した後にルーシーと会う場面。
少女マンガの主人公のライバル役みたいなキャラなんだけど、この場面で悪い人じゃないんだなーと思えるし、なかなか印象的な場面。
蘇州。
景色が目に浮かぶような、美しい文章だと思う。タイトルは「上海」だし、上海の街の描写も好きなんだけど、この作品のなかで1番好きなのがこの旅行の場面で、すごく印象に残っていた。静かできれいで、少し不安な感じがいい。
埠頭での別れ。
メロドラマ風最高潮なエピソードだが、いい意味で王道。盛り上がるし、お互いへの思いが強く出ていて感動的。
ここでエドワードを置いていくというレイモンドの選択がいいと思う。もちろんそれこそ身を引き裂かれるような思いで置いていくわけだが、健全で前向きな考え方が根底にあって、こんなところにもキャラの魅力が出ているなあと。「ここでお別れです」というエドワードの台詞も同じ。
再会。
いやもう…エドワードの健気さと一途さに涙が出る。何度読んでも感動的。
何年もかけてやっとの思いではるばるイギリスまで来たのに、迷惑はかけまいと会いもせずに帰ろうとするとか…。
レイモンドの最後の台詞がまたいい。
「歌姫」
香港でのエドワードの話。これも雰囲気がある短編。初めて読んだ当時、再会後の甘ったるい話を期待していたのにと思いつつ、すぐに引き込まれてしまったのを思い出した。すごく好き。
レイモンドは出てこないし、第三者視点なのだが、エドワードの切ない思いがしっかり伝わってくる。歌姫も魅力的。
「China Rose」
こちらは最初に期待していたような、再会後の甘い話。まあこの書き下ろしが読みたくて文庫を買ったわけだし、楽しみではあったんだけど、正直不安でもあった。10年以上前の作品に続編をつけるって、作品の雰囲気が変ってしまったりしないのかと…。
すっかり落ち着いてからの二人なので明るくなっているのは当然だし、心配していたような変化は感じなかった。ノベルス版を読み直せば多少の違和感があるのかもしれないが、文庫版を通しで読んだ直後に読む分にはまったく違和感がなかった。
本編は全体に物悲しい色がついているのに対し、こちらは時代が変り、明るい未来を感じさせる話になっていた。作品のカラーとして、これは好みの分かれるところかもしれない。けど、分かりやすく甘いハッピーエンドを求める読者が多いという事情(…?)を抜きにしても、私はこれはこれでいいんじゃないかと思った。作品の舞台が戦後になったことを考えると、時代の空気を反映しているように感じた。
かわい有美子 幻冬舎コミックス 2010/02
これは好きな作品だったのだが、好きだっただけに買う気が起きず、お借りしてしまった。
ネタバレ。ファンの方は読まないでください。
-----------------------------------------------------
原型みたいな作品は既読。かなり好きな作品なので、ずーっと続きを楽しみにしていた。もう少し早い段階で続きを書いていただきたかった。
雑誌掲載時に少しばかり雰囲気が損なわれていると教えていただいたが、それでもまだ中身については期待していた。単行本の発売時にタイトルを見たときに、「ああ、私の求めてる話ではなくなっているんだろうなあ」という諦めがついた……。で、買えなくてお借りしてしまったという。…なんでこんなに雰囲気のないタイトルにしてしまったのかな。
…いや、そんな貶すような作品ではないです、これは。ただ、まあ思い入れがあるだけに、私が少し感傷的になっているだけで。
なんかこう「日和った」とかいって離れていくコアなロックファンみたいだな(苦笑)
もともとは『夢色十夜』のBL版みたいな作品だったと思う。とくにキャラ設定は、最初は意図的に似たような設定にしていたらしいし、時代も被る。
そんなわけで今市子さんのイラストでイメージが出来上がっていたので、今回、表紙を見たときにイメージに合わなくてガッカリした。…失礼ながら、私は金さんのイラストの美形キャラと平凡キャラの違いが分からない。
小説のほうは、感傷的な気分で読まなければ面白かったと思う。大好きな時代設定だし、しっとりとした雰囲気もあるし、キャラも3人とも好感が持てるタイプだし。まったくの初読なら、「久し振りに趣味に合うかわい作品」とかいって喜んでいたかもしれない。
ちなみに「変ってしまった」と思うのは、別に三人の関係性が変ったからではなく、もっと感覚的な部分の問題。でもその感覚的な部分で思い入れのある作品だったので、別の作品になってしまったかなという気分は拭いきれず…。
ラノベに対しての感想としては陳腐だけど、分かりやすくしすぎてしまったというか、…濃密な雰囲気が失われたような気がする。
短編連作という形のほうが私の好みには合ったかもしれないなあ。
面白かったけど、勝手に期待していた種類の面白さではなかった。
これは好きな作品だったのだが、好きだっただけに買う気が起きず、お借りしてしまった。
ネタバレ。ファンの方は読まないでください。
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原型みたいな作品は既読。かなり好きな作品なので、ずーっと続きを楽しみにしていた。もう少し早い段階で続きを書いていただきたかった。
雑誌掲載時に少しばかり雰囲気が損なわれていると教えていただいたが、それでもまだ中身については期待していた。単行本の発売時にタイトルを見たときに、「ああ、私の求めてる話ではなくなっているんだろうなあ」という諦めがついた……。で、買えなくてお借りしてしまったという。…なんでこんなに雰囲気のないタイトルにしてしまったのかな。
…いや、そんな貶すような作品ではないです、これは。ただ、まあ思い入れがあるだけに、私が少し感傷的になっているだけで。
なんかこう「日和った」とかいって離れていくコアなロックファンみたいだな(苦笑)
もともとは『夢色十夜』のBL版みたいな作品だったと思う。とくにキャラ設定は、最初は意図的に似たような設定にしていたらしいし、時代も被る。
そんなわけで今市子さんのイラストでイメージが出来上がっていたので、今回、表紙を見たときにイメージに合わなくてガッカリした。…失礼ながら、私は金さんのイラストの美形キャラと平凡キャラの違いが分からない。
小説のほうは、感傷的な気分で読まなければ面白かったと思う。大好きな時代設定だし、しっとりとした雰囲気もあるし、キャラも3人とも好感が持てるタイプだし。まったくの初読なら、「久し振りに趣味に合うかわい作品」とかいって喜んでいたかもしれない。
ちなみに「変ってしまった」と思うのは、別に三人の関係性が変ったからではなく、もっと感覚的な部分の問題。でもその感覚的な部分で思い入れのある作品だったので、別の作品になってしまったかなという気分は拭いきれず…。
ラノベに対しての感想としては陳腐だけど、分かりやすくしすぎてしまったというか、…濃密な雰囲気が失われたような気がする。
短編連作という形のほうが私の好みには合ったかもしれないなあ。
面白かったけど、勝手に期待していた種類の面白さではなかった。
かわい有美子 幻冬舎コミックス 2009/03
これは作家買い。リンクスは滅多に買わないから、レーベル確かめたときにちょっと驚いた。
ところでこの作品、私はあまり面白くなかったので、面白かったという方は、感想を読まないほうが気分よく過ごせるかと思います…。スルーしてください。
とってもネタバレ
---------------------------------------------------
最近のかわいさんの文章は(私にとっては)読みづらいので、新刊が出ても買わなくなった。この作品が発売された今年の3月あたりはまだ迷っていたので一応買っておいたのだが、時代物ということもあって積読にしていたのを思い出して、ようやく崩してみた。
買ってから知ったんだけど、これは10年ぐらい前に雑誌掲載された作品ということで、文章自体は最近のものより読みやすかった。まあ時代物といっても、読むのが面倒くさいタイプの作品でもないし。
ただ、同じ平安ものなら『闇滴りし』のほうが面白かったのに。あちらは中途半端なところで1巻が終わっているにもかかわらず、何年も続きを待たせ、挙句に小説で続きを出さずにコミカライズというわけの分からん方向に進んでいるが…。はっきりいって腹が立ったので、漫画なんて買うものか!と思っている。まあ、どうでもよくなってきたが。
…この作品に戻って。
まずは15歳の少年が8歳(?)の美少年を見初めて家に連れて帰り、忠誠を尽くして育てるって時点で、ちょっと現代人の私にはついていけなかった。まあでも年齢的なものは平安ものだし、と目をつぶって読むことにしたんだが、やっぱり清楚な美少年には興味が持てず…。
しかも清楚で通してくれればいいのに、抱かれた夢を見て「私は浅ましい」とか言った直後に、自分から思いっきり誘っていて引いた…。うーん、誘い受は好きなんだけど、無自覚に魔性系な美少年とか言われると、どうもなあ。この受に対して「傾城」とかいう表現が出てくるので、イメージがそうとう悪いものになってしまった。人を惑わして悪い方向に導くって感じ…。しかも「清楚で健気」のテンプレでおさまった流され系の性格で。
肝心のストーリーも「別にぼくとしてはどーでもいいんだけど、攻のために東宮になりました」→「ぼくってもしかして彼の出世に利用されてるだけ??」→「命がけで守ってくれた彼はやっぱりステキ」って話だったので、受にまるで魅力を感じなかった。
攻はちょっと人でなしだが(…)、まあ普通に?カッコいいんじゃないかと。
で、源氏物語でもそうだけど、この作品でも女性の扱いがひどい。そういう時代だからといっても、やっぱり受け付けられない。だって攻は、受の姉だからって理由で結婚して(このへんが人でなし)、しかもこの奥さんは呪われて死んでしまう。ちなみに受の奥さんは攻の妹(攻が決めた)。この妹はとくに恋愛感情がないからよかったのかもしれないが、普通に受のことを好きだったりしたら、死ぬほど不幸な境遇だなあと…。
これは本当にどうでもいいが、受が攻の尉惟を「ちか」と呼ぶのに、激しく違和感があった。時代物の雰囲気ぶち壊してないだろうか…。
最終的には帝総受って話におさまったようだ。
うーーん…まったく私の趣味に合わない。
これは作家買い。リンクスは滅多に買わないから、レーベル確かめたときにちょっと驚いた。
ところでこの作品、私はあまり面白くなかったので、面白かったという方は、感想を読まないほうが気分よく過ごせるかと思います…。スルーしてください。
とってもネタバレ
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最近のかわいさんの文章は(私にとっては)読みづらいので、新刊が出ても買わなくなった。この作品が発売された今年の3月あたりはまだ迷っていたので一応買っておいたのだが、時代物ということもあって積読にしていたのを思い出して、ようやく崩してみた。
買ってから知ったんだけど、これは10年ぐらい前に雑誌掲載された作品ということで、文章自体は最近のものより読みやすかった。まあ時代物といっても、読むのが面倒くさいタイプの作品でもないし。
ただ、同じ平安ものなら『闇滴りし』のほうが面白かったのに。あちらは中途半端なところで1巻が終わっているにもかかわらず、何年も続きを待たせ、挙句に小説で続きを出さずにコミカライズというわけの分からん方向に進んでいるが…。はっきりいって腹が立ったので、漫画なんて買うものか!と思っている。まあ、どうでもよくなってきたが。
…この作品に戻って。
まずは15歳の少年が8歳(?)の美少年を見初めて家に連れて帰り、忠誠を尽くして育てるって時点で、ちょっと現代人の私にはついていけなかった。まあでも年齢的なものは平安ものだし、と目をつぶって読むことにしたんだが、やっぱり清楚な美少年には興味が持てず…。
しかも清楚で通してくれればいいのに、抱かれた夢を見て「私は浅ましい」とか言った直後に、自分から思いっきり誘っていて引いた…。うーん、誘い受は好きなんだけど、無自覚に魔性系な美少年とか言われると、どうもなあ。この受に対して「傾城」とかいう表現が出てくるので、イメージがそうとう悪いものになってしまった。人を惑わして悪い方向に導くって感じ…。しかも「清楚で健気」のテンプレでおさまった流され系の性格で。
肝心のストーリーも「別にぼくとしてはどーでもいいんだけど、攻のために東宮になりました」→「ぼくってもしかして彼の出世に利用されてるだけ??」→「命がけで守ってくれた彼はやっぱりステキ」って話だったので、受にまるで魅力を感じなかった。
攻はちょっと人でなしだが(…)、まあ普通に?カッコいいんじゃないかと。
で、源氏物語でもそうだけど、この作品でも女性の扱いがひどい。そういう時代だからといっても、やっぱり受け付けられない。だって攻は、受の姉だからって理由で結婚して(このへんが人でなし)、しかもこの奥さんは呪われて死んでしまう。ちなみに受の奥さんは攻の妹(攻が決めた)。この妹はとくに恋愛感情がないからよかったのかもしれないが、普通に受のことを好きだったりしたら、死ぬほど不幸な境遇だなあと…。
これは本当にどうでもいいが、受が攻の尉惟を「ちか」と呼ぶのに、激しく違和感があった。時代物の雰囲気ぶち壊してないだろうか…。
最終的には帝総受って話におさまったようだ。
うーーん…まったく私の趣味に合わない。
かわい有美子 リブレ出版 2008/10
表紙がきれいだなー。
メモ:『透過性~』とはまったく関係ない。
ネタバレ感想
------------------------------------------------
どうもキャラが趣味じゃないので、イマイチ楽しめなかった。
「ドラスティック~」
もともとはアンソロに掲載のエロとじ的なものらしい。というわけで(?)15年前に捨てられたことを再会後2、3年も引きずって意地を張っていたわりに、受はあっさり落ちてしまう。「捨てられた」「悪かった」で終わり。…えらい簡単だな、おい、とか思ってしまった。もっとも時間だけはたっぷりかかっているので大変といえば大変だったのか。
「報復~」
出会って捨てられて、再会してから現在に至るまで。
身勝手な攻に献身的に尽くす受という図式が好きじゃない。こういう健気系?キャラの心情って共感できないから楽しめないというか。何を求めて攻の会社に入って秘書として仕えているのかもよく分からなかった。あんな捨てられ方をして、しかも10年以上も経ってから呼ばれて、何か期待できるとも思えないのだが…。そこで突っぱねられないのが恋だといってしまえば、それまでなんだけど。なんだかなあ。
感情移入できないので、すでに分かっている過去の話を読むのはちょっと…という感じだった。
「街に~」
反省はしているらしいが、やっぱり攻が偉そうだ…。
表紙がきれいだなー。
メモ:『透過性~』とはまったく関係ない。
ネタバレ感想
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どうもキャラが趣味じゃないので、イマイチ楽しめなかった。
「ドラスティック~」
もともとはアンソロに掲載のエロとじ的なものらしい。というわけで(?)15年前に捨てられたことを再会後2、3年も引きずって意地を張っていたわりに、受はあっさり落ちてしまう。「捨てられた」「悪かった」で終わり。…えらい簡単だな、おい、とか思ってしまった。もっとも時間だけはたっぷりかかっているので大変といえば大変だったのか。
「報復~」
出会って捨てられて、再会してから現在に至るまで。
身勝手な攻に献身的に尽くす受という図式が好きじゃない。こういう健気系?キャラの心情って共感できないから楽しめないというか。何を求めて攻の会社に入って秘書として仕えているのかもよく分からなかった。あんな捨てられ方をして、しかも10年以上も経ってから呼ばれて、何か期待できるとも思えないのだが…。そこで突っぱねられないのが恋だといってしまえば、それまでなんだけど。なんだかなあ。
感情移入できないので、すでに分かっている過去の話を読むのはちょっと…という感じだった。
「街に~」
反省はしているらしいが、やっぱり攻が偉そうだ…。
かわい 有美子 笠倉出版社 2007/05
表紙が綺麗だなー。タイトルの文字がもう少しすっきりしていると、もっと好みだったけど。
ネタバレ感想。
-------------------------------------------------------
わりと好きな『上海金魚』と地続きの話で、あらすじも結構好きそうだったので、楽しみにしていた。
以下引用
主人公の北嶋はいやなやつというより、ちょっとおバカさんで、友達にはなりたくないけど、受だから許せるという程度で、なかなか絶妙な匙加減だと思う。
お勉強はできる、才能はある、容姿もいいとくると、私の好みとしては、あんまり健気で素直じゃないほうが可愛く感じる。できすぎてないほうが、親しみわくから。
というわけで、頭はいいけど人間的におバカさんな北嶋は好きだし、第一、攻も受も好みの職業で、はっきりいって前半はメチャクチャ好みの作品だった。
ちなみに私の好きな、かわい作品はパレット文庫の3作品、『猫の/遊ぶ/庭』、『東/方美人』あたりで、『疵〜』や『いのせんと〜』も好きだが、『EGO/ISTE』が入ってないあたりがポイントかな、と。
かわい作品では圧倒的に、包容力があって優しい攻が出てくる作品が好きらしい。
この作品に戻ると、感情移入して読んでいると恥ずかしくなる行動の多い北嶋だけど、肩入れして読んでいるせいか、子供っぽいだけって感じなので意外と憎めない上に、好きになっちゃった後はいじらしいので応援しながら読んでいた。
読みやすいし、仕事の描写も楽しいし、これはお気に入りの一作になりそうだと思っていたんだけど。
2度目のデート(?)でいきなり自宅に招待してくる牧田もよく分からないが、そこで何も考えずに色々期待できてしまう北嶋についていけなくなった。今までは迷惑な行動も、うわ、恥ずかしい…ぐらいで流していたのだが、ここにきて「?」。
コトに至ってからは個人的NGワードを抜きにしても、二人とも好みから外れてしまい、かなりがっくり。
あと、ベタだけどやっぱり北嶋がコンペで受賞して…という展開を期待していたので、後半から仕事が絡んでこなくなって残念だった。
中盤までかなり好みで面白かっただけにラスト近くでがっくりきて、点が辛くなってしまったかも…。
十分に面白いんだけど、好みかと聞かれると、どうかなあと思ってしまうような作品だった。
追記。
引用したあらすじ、なんかいろいろ違和感あるなあ。
この作品を紹介するのに「鼻をへし折られる」とか「策を弄する」なんて言葉を使うのは変じゃないだろうか。
別に北嶋はすげなく追い返されたわけでもなく、納得して帰っていったのだし、どう考えても「策」なんてものはなかったと思うんだけど。…というか「策」を用いないところが、北嶋の魅力として描かれていると思うので、正反対じゃないかと……。
こういう風に書いたほうが売れるのかもしれないけど、もう少し内容に沿った書き方をできなかったのだろうか。
(小説31)
表紙が綺麗だなー。タイトルの文字がもう少しすっきりしていると、もっと好みだったけど。
ネタバレ感想。
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わりと好きな『上海金魚』と地続きの話で、あらすじも結構好きそうだったので、楽しみにしていた。
以下引用
すべてをかえてしまう恋――
若手建築士として注目を浴び、己れのルックスにも自信を持っていた北嶋は、とあるコンペでホテルマンの牧田と出会う。その落ちついて控えめな物腰を軽んじ、コンペで最優秀賞を逃したことで牧田にいちゃもんをつける北嶋だったが、常に大人の余裕を持つ牧田に諌められ高慢な鼻をへし折られてしまう。それをきっかけに牧田の人間性に触れ、恋に落ちてしまった北嶋は、思い付く限りの策を弄するのだったが……。
主人公の北嶋はいやなやつというより、ちょっとおバカさんで、友達にはなりたくないけど、受だから許せるという程度で、なかなか絶妙な匙加減だと思う。
お勉強はできる、才能はある、容姿もいいとくると、私の好みとしては、あんまり健気で素直じゃないほうが可愛く感じる。できすぎてないほうが、親しみわくから。
というわけで、頭はいいけど人間的におバカさんな北嶋は好きだし、第一、攻も受も好みの職業で、はっきりいって前半はメチャクチャ好みの作品だった。
ちなみに私の好きな、かわい作品はパレット文庫の3作品、『猫の/遊ぶ/庭』、『東/方美人』あたりで、『疵〜』や『いのせんと〜』も好きだが、『EGO/ISTE』が入ってないあたりがポイントかな、と。
かわい作品では圧倒的に、包容力があって優しい攻が出てくる作品が好きらしい。
この作品に戻ると、感情移入して読んでいると恥ずかしくなる行動の多い北嶋だけど、肩入れして読んでいるせいか、子供っぽいだけって感じなので意外と憎めない上に、好きになっちゃった後はいじらしいので応援しながら読んでいた。
読みやすいし、仕事の描写も楽しいし、これはお気に入りの一作になりそうだと思っていたんだけど。
2度目のデート(?)でいきなり自宅に招待してくる牧田もよく分からないが、そこで何も考えずに色々期待できてしまう北嶋についていけなくなった。今までは迷惑な行動も、うわ、恥ずかしい…ぐらいで流していたのだが、ここにきて「?」。
コトに至ってからは個人的NGワードを抜きにしても、二人とも好みから外れてしまい、かなりがっくり。
あと、ベタだけどやっぱり北嶋がコンペで受賞して…という展開を期待していたので、後半から仕事が絡んでこなくなって残念だった。
中盤までかなり好みで面白かっただけにラスト近くでがっくりきて、点が辛くなってしまったかも…。
十分に面白いんだけど、好みかと聞かれると、どうかなあと思ってしまうような作品だった。
追記。
引用したあらすじ、なんかいろいろ違和感あるなあ。
この作品を紹介するのに「鼻をへし折られる」とか「策を弄する」なんて言葉を使うのは変じゃないだろうか。
別に北嶋はすげなく追い返されたわけでもなく、納得して帰っていったのだし、どう考えても「策」なんてものはなかったと思うんだけど。…というか「策」を用いないところが、北嶋の魅力として描かれていると思うので、正反対じゃないかと……。
こういう風に書いたほうが売れるのかもしれないけど、もう少し内容に沿った書き方をできなかったのだろうか。
(小説31)
東方美人 オリエンタル・ビューティー
2006年9月7日 かわい有美子
かわい有美子 心交社 2004/03/10 ¥893
…お借りして読んで、これから絶賛しようというときに自分が買っていないというのもいかがなものかと思い、慌てて注文してみた。
というわけで殿堂入り〜。
どうでもいいことだが、タイトルを入力したら「当方美人」になってしまい、あまりのインパクトに驚いた…。
以下、2巻までのネタバレ。
---------------------------------------------------------
80年代のベルリンが舞台で、主人公は東側の諜報員という設定で、あくまでシリアスに話が展開していくので、当然のように暗い。
正直、読みはじめは取っ付きづらくて参ったが、読み進めるとBL要素以外でも面白いので、最初乗り切ると後は一気に読める。
サエキはすごく好みだが(クールで有能で男前。容姿が中性的じゃないところが重要)、アレクセイのほうがもっと好みかもしれない。優しくて気がきいて努力家で知的で容姿もいいという、すごいキャラなのだが、全然嫌味もない上に、感情移入もしやすいタイプ。
いい男だなーと普通に楽しく読んでいた。
でも、話の展開が重たい(上で暗いと書いたが、暗いっていうより重たいんだと思う)中で、このアレクセイの優しさとか穏やかさが本当に救いというか、癒しになっていて、彼の人柄のよさはだんだん「かっこいい〜」ってレベルじゃなくなっていく。
アレクセイの視点で進んでいくことが多いのに、サエキの気持ちのほうがよく分かるような気がする。過去も現在も不遇で孤独なサエキが惹かれるのは当然の相手というか…。出会えてよかったねって、しみじみ言いたくなる。
あと1冊で終わるそうだが、続き…。続きはーーー!?
来年中に出るといいなあ……。
…お借りして読んで、これから絶賛しようというときに自分が買っていないというのもいかがなものかと思い、慌てて注文してみた。
というわけで殿堂入り〜。
どうでもいいことだが、タイトルを入力したら「当方美人」になってしまい、あまりのインパクトに驚いた…。
以下、2巻までのネタバレ。
---------------------------------------------------------
80年代のベルリンが舞台で、主人公は東側の諜報員という設定で、あくまでシリアスに話が展開していくので、当然のように暗い。
正直、読みはじめは取っ付きづらくて参ったが、読み進めるとBL要素以外でも面白いので、最初乗り切ると後は一気に読める。
サエキはすごく好みだが(クールで有能で男前。容姿が中性的じゃないところが重要)、アレクセイのほうがもっと好みかもしれない。優しくて気がきいて努力家で知的で容姿もいいという、すごいキャラなのだが、全然嫌味もない上に、感情移入もしやすいタイプ。
いい男だなーと普通に楽しく読んでいた。
でも、話の展開が重たい(上で暗いと書いたが、暗いっていうより重たいんだと思う)中で、このアレクセイの優しさとか穏やかさが本当に救いというか、癒しになっていて、彼の人柄のよさはだんだん「かっこいい〜」ってレベルじゃなくなっていく。
アレクセイの視点で進んでいくことが多いのに、サエキの気持ちのほうがよく分かるような気がする。過去も現在も不遇で孤独なサエキが惹かれるのは当然の相手というか…。出会えてよかったねって、しみじみ言いたくなる。
あと1冊で終わるそうだが、続き…。続きはーーー!?
来年中に出るといいなあ……。
ISBN:4773002638 単行本 かわい 有美子 笠倉出版社 2003/05 ¥900
なんか、えらい素直に著者名出てきて、逆に驚いた。
ネタバレがあるかどうか分からない感想。
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タイトルだけ知ってたので、上海で金魚なの…?と、なんだか内容は想像できなかったものの、なんとなく派手な話なのかと思っていたら、表紙からして結構地味。
読んでみたら、しっとりとしていて、地に足の着いたお話で、私好みだった。ほわほわーって感じ。(癒やし系といってもいいかも)
どうでもいいことだが、私はあまりアジアを旅行したいと思わない。台湾に行ったのも、親孝行と思って、かなりの妥協をした結果で……。
なので、上海っていいところだなーっと思ったものの、行ってみたいと思わなかった。なんだかなあ。
さらにどうでもいいことだが、ペットは金魚とハムスターしか飼ったことがないので、身近な生き物と言えば金魚だったな…と懐かしくなった。金魚は結構、長生きだと思う。
なんか、えらい素直に著者名出てきて、逆に驚いた。
ネタバレがあるかどうか分からない感想。
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タイトルだけ知ってたので、上海で金魚なの…?と、なんだか内容は想像できなかったものの、なんとなく派手な話なのかと思っていたら、表紙からして結構地味。
読んでみたら、しっとりとしていて、地に足の着いたお話で、私好みだった。ほわほわーって感じ。(癒やし系といってもいいかも)
どうでもいいことだが、私はあまりアジアを旅行したいと思わない。台湾に行ったのも、親孝行と思って、かなりの妥協をした結果で……。
なので、上海っていいところだなーっと思ったものの、行ってみたいと思わなかった。なんだかなあ。
さらにどうでもいいことだが、ペットは金魚とハムスターしか飼ったことがないので、身近な生き物と言えば金魚だったな…と懐かしくなった。金魚は結構、長生きだと思う。
今、風が梢を渡る時〈前編〉
2005年2月18日 かわい有美子
かわい 有美子 小学館
再読中。
『夢色十夜』の感想でも書いた気がするけど、もう一度。
この方の作品はどれも好きだけど、パレット文庫の作品がとくに私の好みに合っている。
この話は、最初ちょっと読みづらかったのを覚えてるけど、再読の今はかなりのペースで進んでいる。
明日の電車の友にしようと思っていたのに、今日中に読み終わってしまいそう……。
それはともかく、こういう爽やかな話を読むと、気分がすっきりしていい。現代を舞台にした小説では、こんな真面目な高校生がいたら違和感がありそうだけど、この時代ならすんなり納得できる。それに実際はよく知らない時代なのに、なぜかこの時代には懐かしさのようなものを感じる。郷愁みたいなものとは、また違うし、明治まで遡ってしまうと感じないんだけど。大正から昭和までは身近だけど、現代とはまるで違うところが好きなのかもしれない。
表紙に出てる主人公二人も好きだけど、友人の日比野というキャラクターが好き。カッコイイというキャラじゃないんだけど、好感が持てるので。
ちょっと地味な内容なのに、しみじみした感じでいいなあと思えるこの作品にはぴったりなキャラクターかも。
BL的には物足りない人も多そうだけど、この話はこれでちょうどいいと思う。かえってBLらしくしてしまったら、味わいが薄れたんじゃないかなあ。
再読中。
『夢色十夜』の感想でも書いた気がするけど、もう一度。
この方の作品はどれも好きだけど、パレット文庫の作品がとくに私の好みに合っている。
この話は、最初ちょっと読みづらかったのを覚えてるけど、再読の今はかなりのペースで進んでいる。
明日の電車の友にしようと思っていたのに、今日中に読み終わってしまいそう……。
それはともかく、こういう爽やかな話を読むと、気分がすっきりしていい。現代を舞台にした小説では、こんな真面目な高校生がいたら違和感がありそうだけど、この時代ならすんなり納得できる。それに実際はよく知らない時代なのに、なぜかこの時代には懐かしさのようなものを感じる。郷愁みたいなものとは、また違うし、明治まで遡ってしまうと感じないんだけど。大正から昭和までは身近だけど、現代とはまるで違うところが好きなのかもしれない。
表紙に出てる主人公二人も好きだけど、友人の日比野というキャラクターが好き。カッコイイというキャラじゃないんだけど、好感が持てるので。
ちょっと地味な内容なのに、しみじみした感じでいいなあと思えるこの作品にはぴったりなキャラクターかも。
BL的には物足りない人も多そうだけど、この話はこれでちょうどいいと思う。かえってBLらしくしてしまったら、味わいが薄れたんじゃないかなあ。