久能千明 フロンティアワークス 2004/09

ノベルスはもっと出版年が古い。90年代。

ネタバレ
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面白かった。実は結構楽しく読んだのだが、いざ感想を書こうと思ったら、あんまり誉めるところがなかったなーと…。

まず、とにかく冗長。上下巻になっているが、1冊で十分という内容。
それだけのページ数を費やしたにもかかわらず、恋愛に関してはここで終わりなのか、と男前の受くんが不憫になった。なんか攻が旅館の美青年に執着している印象ばかりが残っている。
ここまで受以外の相手を気にする描写を入れているんだから、攻の気持ちがどう変化していくのか(受に気持ちが傾いていくのか)が最大の読ませどころだろう、と思っていた…んだけど、受と1回寝ただけであっさり乗り換えるの?という感じ。
流されただけ??
うーーん…。事件ものとしても弱い、恋愛面も弱い、雰囲気面も弱い。

あと、最初から犯人が丸分かりなのはいいとしても、計画殺人の動機が…。賢いって設定の犯人なんだから、殺す前にいくらでも対策を立てられると思う。いきなり殺すのか!というのが最大の突っ込みどころ。
というわけで、ちっとも犯人に同情できなかったので(未遂とはいえ)人殺しに対して同情と賞賛しかしない高校生たちも怖い……。

せめてもうちょっとコンパクトにまとめてあればなあ。
わりと面白かっただけに、惜しいと思った。
玄上八絹 幻冬舎 2012/08

初めて読む作家さん。
あたりだったー。

行き倒れ×質屋という変ったカップリング。
凝った設定のお仕事ものだから、私よりAさんのほうが好きだろうなあ。
今度貸すよ!と思いながら読んでいた(笑)

ネタバレ
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質屋のお仕事が楽しい。
やっぱり未知の領域なんで(…)、そうなんだ~と思うことが多くて。
しかも自分の仕事にプライドを持ってる受っていいなあ。

攻はその真逆というわけではなく、変なこだわりがあって煮詰まってしまっているだけなんだけど、働く意味が分からないというのは、やっぱり呆れる。主人公は攻を見直していたけど、私は最後まで「何千万も自由になるなら、そりゃ働く意味なんて分からないだろうね」としか思えなかった。
いい話だけど、そこだけ引っかかったかなー。
でも、この攻の職業は(ネタバレになるから伏せるけど)、よくそんな職業思いついたね、そして書こうと思ったね!!とかなり驚いた。
さすがにBL界で同じ職業のキャラはいないと思われます。

それにしても、主人公を引き取ってくれた先代は凄い人だ。
赤の他人のために、なぜそこまで?
作品内で明確な説明もないし、理解はできないんだけど、そいう巡り会わせだったのかな…と思った。なんとなく。
小林典雅 2011/12/09

たぶん初めて読む作家さん。
新規開拓しようかなーと。
どーでもいいけど、表紙イラストは教師と生徒みたいだなー。

ネタバレ
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私には合わなかった。
コメディ部分で笑えないので、作者と感覚が違うんだと思う。

作中で主人公が攻が講師をしているセミナーに参加したので、長々と「ご静聴」させられたが、ただただ退屈で…。私ならお金をもらっても聞きたくないわ、という内容だった。
あとがきによると、以前「講義八割ラブ二割」の作品を書いたので、今回は配分を逆にしたとか。意外と「講義八割」のほうが面白いかもしれない。…まあ、今回のセミナー場面を読む限りでは、たいした内容じゃない気もする。

カップル二人と主人公の親友の3人での「プチ癒し会」も、感覚が合わないので、ふーん、としか思えず…。
こういうのを「面白い」とか「変ってる」とか感じる人なら、結構楽しめる話かも。
で、肝心のラブストーリーは、似たような主人公が続いて、なんだかなあと。
これもあとがきによれば「正反対のキャラ」だそうだけど、そうなの?似てるけど?と思ってしまった。言われてみれば性格は違うんだけど、「小さくて可愛い、いかにも受っぽいタイプ」というイメージが共通しすぎてて。
受も攻も男性としてカッコイイとか可愛いという感じがしなかったから、BLを読んだという気がしなかった。

何が悪いというわけではなく、とにかく一から十まで私の感覚に合わなかったとしか言いようがない。
たぶん何冊読んでも駄目なタイプ。
栗城偲 フランス書院 2012/05

スピンオフなのかな?

ネタバレ
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軽く読めてよかった。面白かったけど、ところどころ引っかかるというか。
まず、攻が漫画家だというのは、短編1本分ぐらいの枚数をかけて引っ張るほどのネタなのか?と、読んでて疲れた。
受は結構しっかり者なのに、人前で涙ぐんだりするのも…ちょっとガッカリ。
攻の妄想はコミカルで楽しい。
ホモ率高過ぎて、さらにスピンオフ狙い?とか、ちょっと白けた気分になってしまった。

どうでもいいが、駅に近い、立地のいい弁当屋なら、一人で切り盛りするのはちょっと無理があるような。我家近く(郊外)の小さな弁当屋だって、接客と調理で最低4人ぐらいは入ってるし。バイトの一人も雇っていないというのは、ちょっと不自然では。…作者さんの行く弁当屋さんは、1人でやってるんだろうか。
そして、この弁当屋の営業時間も謎だ。最初は6時から10時までで、長!と驚いたが、後から夜8時に閉店準備をしてたりするので、営業時間がまちまちなのか?? 重箱の隅をつつくような点かもしれないけど、こうした小さな違和感が多すぎて、なんか雑な書き方だなーと思ってしまった。

…全体の印象は悪くないし、雰囲気もいいだけど、粗が目立つのが残念。
楠田雅紀 徳間書店 2012/02



ネタバレ
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これが木原作品なら、どんな鬼畜が出てくるのかと恐ろしくて本を開けないようなタイトルだけど(たぶん『FRAGILE』の大河内レベル)、この作品の上司は可愛い。タイトルの「最悪」は上司の性格とかではなく、昔とんでもなく迷惑をかけちゃった相手だから、1番会いたくない相手という意味だった。
といっても、主人公の黒歴史が読んでいるこっちまで居たたまれなくレベルで、相当痛いんで、ある意味読みづらい(笑)

迷惑かけちゃった相手と再会というのは、確かに「史上最悪」な展開かもしれないが、挽回できるチャンスに恵まれたってことじゃないかなあ。実際、主人公はもし振られちゃったとしても、謝ることができてよかったんじゃないかと。

受は天然すぎだろー。ただ、駅で困っている人を見かけて、道案内を申し出る親切さとか、いいな~と思った。
そして当馬幼馴染は気が長すぎ。20年かけておいて、なぜムリヤリ展開?
そういうツッコミどころが適度なスパイスになっているし(これは変じゃない?という指摘ではなく、ノリで「違うでしょー」とツッコミ入れる感じ)、お仕事描写も適度な割合で面白かった。
剛しいら 徳間書店 2008/07

居酒屋親父×失業中のフレンチシェフ。

ネタバレ
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面白かったし、出てくる料理も美味しそうだった。テンポもいいし、読みやすい。
ただ、作品全般に漂う昭和テイストは好き嫌いが分かれるかも。タイトルも含め、とにかく親父くさい気がする。
受もチャラいという設定のわりには、おしゃれな感じがないし、彼らの恋愛自体にも洒落た駆け引きや気の利いた台詞もなく、乙女成分は皆無。
熱燗が飲みたい気分のときならこれでOKだけど、カクテルが飲みたい気分のときにはちょっと不向きかもしれない。

恋愛だけじゃなく受と攻の生き方や背景までしっかり語られているのは、さすが。キャラに奥行きがあるから、恋愛面も密度が濃くなっている。
受が恋愛のためにフレンチを捨てなかったのもよかった。最初の頃は、せっかく7年も修行して、いい腕を持ってるのに、居酒屋の店員で満足できるものなのかと疑問だったんで。フレンチのシェフとして活躍する気はまだあるようで、最後にやっと納得できた。

タイトルの言葉は、作中の居酒屋に書いてあるという設定。「食べるということは、命をいただくということ」という考え方には共感できる。感謝して食べるべきだとも思ってる。
けど、私だったら、そんなこと書いてある居酒屋には行きたくないな~。
そういうことは店側が声高に言うことじゃなくて、各人が胸に秘めておけばいいと思う。
どんなにご立派な価値観であっても、客に押し付けるのはカンベンしてほしい。

面白いけど、こういう感覚の違いが多くて、ちょっと読みづらかった。
可南さらさ 海王社 2012/01

パティシエ×リーマン。

ネタバレ
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読んでいるときは結構面白かったけど、あまり印象に残らなかった…。
1週間分の感想をまとめて、さて水曜日はなにを読んだかな?と思い出そうとしたが、どうしても思い出せなくて本棚を漁るまでこの本の存在を思い出せなかった。
…80%は私の記憶力の問題だろうけど。

どっちもどっちというカップル。
海外に行って、電話の1本もしないで2年も恋人を放っておいたら、心変わりされてもしょうがないレベル。たとえ、待っててくれと頼んで、まめに電話とメール入れて、さらに1年に2、3度帰国して会ってたとする。そこまで頑張ってても、遠距離はきついっての!
見合いされてから慌ててもね~。
この攻、ほんとは恋愛下手なんじゃ。
受のほうも相手からの言葉待ってるだけって…ちょっと情けないような。最初は強引だったにしても、その後は合意の上でしょ? 少しぐらいは努力しても、罰は当たらないと思うよ。
って感じに、互いにちょっとずつダメだな~という二人が、すれ違いを乗り越えていくところが面白かった。
まあ好きな相手だからこそ、弱気になったり、うまく気持ちを伝えられなかったりするんだろうし。
このバカップルが(笑)としか言えない話。
可南さらさ 幻冬舎コミックス 2005/11

可南さんの文章は好きなんだけど、キャラが趣味に合わないことが多い。
数作読んでみて、わたしには合わないかもと思っていた。
この作品も表紙やタイトルは好きなんだけど、裏表紙のあらすじで強要っぽいことが書いてあったので、ダメだろうなと思ってた。

でも、古本屋(すみません…)の可南さんのコーナーの前で、何かないかな~?としつこく言っていたら、これをお薦めしてもらった。
でも、これムリヤリだよ?と思いつつ、まあハズレを引くのもBLの醍醐味だよね~と思ってお買上。

すみません…ほんと素晴しい作品でした。
お薦めに感謝!!

円陣さんのイラストもきれい♪

かなりネタバレ。
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同級生の再会ものって設定がものすごくツボなんで、結構楽しく読み始めた。
高校時代に二人が親しくなっていくエピソード、尚哉(受)の「裏切り」もノスタルジックできれいに語られていく。9年経ってもまだセピア色ではないし、切ないんだけど、純粋な感じがしてよかった。
ところどころ久住(攻)の視点が入るために、「過去の償いとして体を~」ときても、あまり痛さはない。なんかむしろ手酷く裏切られた(と誤解してる)のに、そんなこと言い出しちゃう攻の一途さに泣けてくるというか。
誤解されてる部分は尚哉ももっときちんと話せばいいのに、と思いつつ、捨てた形になったのは確かだから、言い訳めいたことを言わないところが潔いなと思ったり。
潔いといえば、久住の謝り方は本当に男らしくていいなあと。
「友達としても無理」と言われた尚哉が出て行く場面では、戻れ戻れと思いながらページをめくり、尚哉の手帳に挟まっていたものが分かったときには涙ぐんだ。
やー、感動しました。

2話目は、二人が付き合いだして、尚哉の家族(母と妹)に関係がバレて反対され…という内容。
尚哉の家庭は、父親が会社の金を使い込んだ上に、若い女と逃げてしまったという複雑な事情があるので、普通に反対されるのとは重みが違う。
高校中退で働き出して、母と妹を養ってきた尚哉だから、今度は自分の幸せを追求すればいいと思う。でも、家族を捨てて自分だけ幸せになっても後悔する、と考える優しさがよかった。
なんか…生活もある程度落ち着いてきて、やっと人並みの幸せを掴んだ息子(兄)に対して、まだ自分たちを優先しろっていう母娘ってひどくない?と始めのうちは思った。
でも、まずはお母さん。夫がいなくなった経緯から、世間の目も含めて苦労してきた彼女が、息子に「人並みの幸せを」と願うのは当然かもしれない。
妹のほうは、1話目に久住のところに一人で行って「兄に付きまとわないでください」と言っている。お兄さんを守るために行動してるわけで。しかも父親に捨てられた過去があるから、父親代わりの兄に甘えちゃうのは仕方ないというか。
尚哉がやっと掴んだ幸せを理解してあげてほしいとは思うけど、すぐには受け入れられない気持ちはよく分かった。
家族だからこそ、受け入れられないこともあるし。
お母さんからの手紙と妹の結婚式は、これまた感動した。

すぐにはついていけないという尚哉の気持ちを理解して、いつまでも待っていると言ってくれる久住が男前だった。

いい話を読んだ。
楠田雅紀 二見書房 2008/6

こっちのほうが先に出ていたらしい。
高校生以下にはあんまり興味ないけど、作家さんへの興味から読んでみた。


ネタバレ
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前半はちょっと苦手系な展開。
本当は好きだけど、好きだっていう自覚のない相手に迫られて流されて…。流され受は健気受と同じくらいNGという趣味の私にはきつかった。
中盤で当て馬からのムリヤリが入るのだが、これは別に平気。…BLの場合、わりと「攻のムリヤリはOK」という人が多いみたいだけど、なんか理解できない。私はむしろ好きな男が暴力をふるうような最低な人間だってことのほうが、よっぽどショックで後味悪いけどなあ…。
…で、この事件がきっかけで二人が結ばれるんだけど、ここまできてようやく攻の優しさが分かるので、恋愛小説の展開としては好みじゃなかった。なんていうか、きっかけにインパクトがありすぎるせいか、相手の魅力に気付いて好きになりましたっていう流れが弱いというか。
続編のほうは、受が「レイプされた自分なんてカッコイイ彼にはふさわしくない」とか悩み始めるのが、なんとも唐突に感じて…、感情移入できなかった。

なんか私にはテンポが合わない話だったけど、別につまらないというわけではないし、テンポが合えば楽しめる作品なんじゃないかと。
楠田雅紀 二見書房 2010/04

掲載誌で読んだとき面白いなあと思ってたんだけど、文庫が出ていることに気付かなかった…。

ネタバレ
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面白かった。
最初は主人公と同じく攻に対して、社会人として非常識…としか思えなかったんど、本来の美点や成長ぶりを見ていると、年下だし可愛いなあと思えるようになってくる。
続編では、また「こんなバカな攻は嫌」と思ったが(笑)、バカゆえの一途さ、ストレートさがよかった。
「遠距離は嫌だ、会社を辞めてもいい」なんて、恋人に言われたら嬉しいかも。もちろん本当に辞めてほしくはないから(本当に辞めるような人なら、ついてけないし)、ちゃんと受の説得に応じてくれるあたりもよかった。
満足~。

ただ、受が男前というより、男臭すぎて、可愛い系の受が好きな読者には合わないだろうなあと。頼りになるし仕事もできるし、いい年上受で、私は結構好きだけど。
草川かおり 心交社 2011/9

知らないな~、新人さんかな~?と買ってみたら、ホワイトハートの人だった。
あ、それはレーベル的にノーマークだよ!と妙に納得。
…でも、ショコラもノーマークなレーベルかもなあ。
知らない間に雑誌もなくなってたし。電子書籍化したのかな?

ネタバレ
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上田さんのイラストがぴったりな、ほんわか系。
「親の愛情を知らずに育った金持ちの息子」という、わりとありがち設定の攻だが、最初はあまりにも非常識&幼稚で驚いた。普通に、「仕事できなそう」ってイメージ。しかも、なんでノンケの攻がいきなり受を好きになったのかも、よく分からなかった。
けどまあ、ほんわか系なので、生温い気持ちで読んでいたら、わりと読みやすかった。
「突っ込みを入れようと思えば、いくらでも入れられるけど、目くじらたてるほどの突っ込みどころはない」っていう書き方なのが、なんていうのか、適度にリアリティを排除してくれて(?)角のない雰囲気を作ってるんじゃないかなあと。
これはこれでいいんじゃないかなあって思った。
でも、三人称の文章で、何の効果もないところで一人称が混ざっていたのは気になったかなー。あと、親の過去はあまり関係が…いやいや、おおらかに読んだほうが楽しいと思う。
栗城 偲 幻冬舎コミックス 2011/02

表紙イラストの攻がどうしても高校生には見えない…。
子供っぽいキャラなのに、なんで老け顔にしたんだろう。

ネタバレ
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自分の心情を色で表現する抽象画を描く受。
芸術家気質の設定で、前半は少し気難しい面があったりしてよかったんだけど、だんだん平凡になっていってしまったのが残念。普通だったり平凡だったりするのが悪いわけじゃないけど、この場合はやっぱり独特な感性を持った、内省的な高校生というキャラが見たかった。
あとどうでもいいことかもしれないが、絵画が唯一の趣味なのに、主人公が描く枚数が妙に少ない。そりゃー、油で色を何百回も(?)塗り重ねていく手法なら、削って塗ってを繰り返して同じ作品をずーっと描いていることも可能だろうが、「心を塗りこんでいく」にしたって、それが作品である以上は完成イメージがあるんだろうと思うんだけど。
描く過程以外はどうでもいいのか?? それとも気持ちに区切りがついたときに、初めて完成形が見えてくるってことなのか。
気の長い芸術だなあ。

攻は強引さと子供っぽさばかり強調されてしまって、あまり魅力を感じなかった。転科の話とか、中途半端なまま終わってしまったような…。ここで終わり?という感じだった。
栗城偲 新書館 2011/03

いくつか人様のレビューを読んだら、「業界用語が多くて難しい」という声が多かった。
うーん…、それはしょうがないというか。
略語っていうのは、確かに慣れないと分かりづらいんだけど、カタカナ語って頻出すると目にうるさいんで、SEはSEで通すしかないと思う。PCを「パーソナルコンピューター」なんて書かれた日にはうっとうしくてしょうがないのと同じように、ちょっと慣れた人からすればSEはSEでしかないんじゃないかなあ。
そして、SEのお仕事は~と説明が入ったら、野暮すぎて読めないと思う。NHKのドラマなら「チャカ(拳銃)」と字幕が入ってもいいだろうけど、ラノベだしねえ。下手な説明入れたら、作品の雰囲気ぶち壊すよなあ…。

どうでもいいが、SEのSってなんだっけ?と、すぐに思い出せなかった自分の記憶力の低下ぶりが怖い…。サービス? セキュリティ?とか、真剣に考えてしまった。

ネタバレ
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仕事とプライベートのバランスみたいなものがちょうどよくて面白かった。ちゃんと仕事しつつ、恋愛してるというような感じ。
ただ、実のところ仕事の場面、しかも攻ではなく、同僚とのやり取りのほうが印象に残ってたり…。

続編の「恋愛ノード」の藤森の妬き方はちょっと面倒くさい男という感じで…。
島垣は元から(仕事はできるが)甘え上手なダメな子だからか、ダメッぷりが可愛く思えるのに、藤森には「しっかりしろ!」とか思ってしまう…。
話は面白かったけど、なんとなく「なし崩し」的なラストに思えてしまった。仕事の上でも一区切り(成長とか)あるとよかったかも。
久我有加 新書館 2010/10

お久し振りの久我さん。
久我さんの小説の中では『何でやねん!』が1番好き。

ネタバレ
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芸人と関西弁はもう飽きたかな~と思って、しばらく久我さん読んでなかった。
この作品も雑誌掲載時に設定見て、ずいぶん地味だなー、シリーズ自体がだんだん萎んできてる気がするとか思ってたんだけど、いや、面白かった。
上から目線で失礼な言い方になるが、見直した、という感じ。

やっぱり久我さんの男前受はいいなあと改めて。
ストーリーもよかった。お笑いが好きで、でも捨て身で頑張ろうにも守るものができちゃって…という葛藤と、芸人ではなく作家として戻るという、ちょっーとビターな形だけど、しっかり夢を取り戻すまでの過程が丁寧で、すっかり引き込まれてしまった。
恋愛面もよかったと思うけど、お笑いへの情熱のほうが印象的だったかな。
でも、恋愛に関しては、これぐらいの書き方のほうが久我さんらしくていいと思う。仲はいいけど、二人の関係にさっぱりした部分を残すっていうのが、なんというかヘタレ×男前の久我キャラには合っている気がする。

草間さんのイラストがすご~くよかった!
1コマ漫画笑った~。
可南さらさ 二見書房 2009/12

どっかで聞いたようなタイトルって思ったら、『恋になる日』のスピンオフだった。

ネタバレ
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遊んでる大学生×真面目で健気なゼミの助手。
あー、いい話なんじゃないでしょうか。不真面目だった攻が受に本気になって改心し、その後はワンコ系の年下攻に。受の健気さと優しさ、改心後の攻の一途さに共感できれば、感動的な話なのでは。
たぶん、キャラが趣味に合えば楽しめたと思うけど、趣味に合わなかったせいか、共感できず、へ~、なるほど~、と言ってるうちに終わってしまった。
見事に傍観読み。
攻の心情がかなり丁寧に長々語られているのだが、説明的、冗長にしか思えず、大事な場面でも、さっぱり話に入り込めなかった。

態度の悪い攻が思い知らされる話は好きなんだけど、土下座して、泣き出して…ついてけないわ。
もはや別人。いや、別に情けないところを見せるのはいいんだけど、その後はヘタレたまま、カッコよさはきれいに捨て去ってしまったので、この攻っていい男か?という疑問も。
受のほうも、年上という意識があんまり見られないせいか、年下攻のよさが半減(…)。このキャラの感情の流れや考え方に違和感、不自然さはなくて納得はできるんだけど、こういう人もいるのかもね~としか。納得はできても、共感ができない。

なんかひどい感想だけど、まあ健気受の人気は絶大なんで…、健気受が好きな人には面白いんじゃないでしょうか。

追憶の庭

2011年6月7日 BL作家か行
栗城偲 海王社 2011/4

雰囲気が好きそうだったから読んでみた。

ネタバレ
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読みやすくはあったけど…、正直、キャラに感情移入しづらかった。
「生前一度も会ったことのなかった祖父の同居人。もしかして愛人?」という設定があんまり活きてなかったかなあと。なんというか、うーん…、主人公はゲイではないんだし、もう少し「男の愛人」に対して、戸惑いやら多少の嫌悪があったほうがよかったんじゃないかと。いくら相手が悪い人じゃなくても、親しくなっていくにつれて祖父に嫉妬というあたり、心情の流れについていけなかった。
これが「幼いころに両親が離婚して、記憶にも残っていない父親の同居人」なら、もう少し生々しくなっただろうし、面白かったかもなあとか、思ってしまった。でも祖父という設定にしたんだから、受への興味の他に、生前の祖父への興味があったほうがよかったなあとか。
読みやすいし、別につまらないわけじゃないけど、ちょっとずつ物足りなかった。

猫と人との交流のほうが、なんというか深く描かれていたような気がするなあ。

疑惑の恋人

2010年10月21日 BL作家か行
鹿住槇 リブレ出版 2010

BL小説では結構珍しいような気がする短編集(2編)。
べつに同じ本に別の話が入っててもいいと思うんだけど、BL読者ってなんでそんなに続編が好きなんだろう??とか、この作品とは関係のないことを考えてしまった…。


ネタバレ
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『疑惑の恋人』
主人公(受)が高校のときに憧れていた同級生と久し振りに再会して、酔った勢い?で寝てしまい、職も世話になり、騙されて借金があるのだが、無利子で金を貸してくれるとまで言われ…という話。
で、攻は半年前に奥さんと死別したばかりなのだが、保険金目当てで殺害したのでは?と保険会社勤めの元同級生に疑いをかけられていて、受は「如月はそんなことしない」ときっぱり否定しつつ、本当に奥さんを愛してたのか?と不審に思うところはあって…。
あらすじを書いてみて思ったんだけど、攻(奥さんと死別、多額の遺産がある)も受(同僚に騙されて借金があり、失業中)もこれだけ事情があって、十年ぶりぐらい?の再会だわ、実はそのころから両思いだわで盛りだくさん、その上保険金殺人なんてオプションがついてるのに、なんというかほとんどドラマ性のない話だった。ある意味、この設定でここまで地味になるのもすごいなあと。
疑惑としてはかなりヘビー級だが、受は別に保険金殺人を疑っているわけではなく、「まあでも謎も多いよね~」程度に思ってるだけなので、とくに深刻でもなく。恋愛のほうもそれほど盛り上がりがない。
面白いといえば面白いし、キャラも好感が持てるし、こういう地味な話こそ好きなんだけど、疑惑も再会恋愛もちょっと中途半端だったかなあ。
でも、ガタガタうるさいジェットコースター展開な話とか、派手な分ゴタゴタしすぎた話は、読むのが面倒くさいときも多いんで、個人的にはこういう落ち着いた雰囲気の作品は好みだし、ありがたい。


『ハルトーカラジー』
ゲイの高校生×不倫を清算したいリーマン。
高校生は素直で可愛いし(苦労してるから結構大人だけど)、主人公のほうも地に足が着いた感じで共感しやすいタイプだし、面白かった。相手が高校生だから恋愛に踏み出せないっていう、真っ当な感覚がいいなあと。
…でも、主人公の不倫相手のほうが好みだったなあ。ずるいところとか、妻に捨てられそうになっているヘタレっぷりが魅力。うわ、暴力ふるうとか最低、しかもしつこくつきまとったくせにやっぱり妻子を取るんだ?みたいなところが、なんか駄目すぎて好きなのかも……。攻としてはちっとも好みじゃないけど、好みのタイプの当て馬だった。
華藤えれな フロンティアワークス 2009/08

ダリア文庫って(私が読むのは)珍しいなあ。
華藤さんは初めて読む作家さん。
よく書店や雑誌で見かけるお名前なので、なんか初めてって気がしないんだけど、たぶん初めて。
外国ものが得意な作家さんというイメージ。

ネタバレ
芸術大学の職員・八幡蒼史は著名な陶芸家の母の私生児という境遇から、目立たぬように生きてきた。だが、チェコからの留学生で若き天才彫刻家のカレル・バロシュと恋に落ち、新たな生き方を模索しはじめた蒼史は、カレルとプラハへ行く決心をする。だが、ある事件が起きて…。みずから諦めたはずの恋。しかし病に蝕まれ、先の見えない体になった蒼史は一路プラハへと―。

彫刻家×大学職員、年下攻。
プラハが舞台のBLってこれ1冊なんじゃないかと。
チェコという国にまったく馴染みのない私は、チェコが舞台、ドイツで脳外科の手術というキーワードで、『MONSTER』(漫画)みたいだな~と思ってしまった。まあそんな個人的な事情はともかく…。

面白かった。
文章は台詞も地の文も説明的(いうなれば、ガイドブックをそのまま引用しているような調子)で気になったけど、だんだん読みやすくなった。ストーリーも、海外舞台、彫刻家、病気ときて、なんだか大仰そうだなと思ってたんだけど、わりと内容は地味で入り込みやすかったし。
蒼史がプラハに行くところから始まり、二人の過去は少しずつ明かされる。はじめのほうに分かっている事実だけ見ていると、なんで蒼史がカレルに事情を説明しようとしないのか、よく分からなかった。というか、ちょっとウジウジしたところのある性格のせいだと思い込んでた……。プラハについていくと約束しながら、行けなくなったことも、お母さんが病気だからってきちんと説明すればここまでカレルを傷つけずにすんだはずなのにって。
再会後も、蒼史に裏切られたことで傷つき、「復讐する」とまで言ってるカレルに何の説明もなく、「償いたい」とだけしか言わず、ただ言いなりになる蒼史の行動が分からなかった。病気のことを隠しているのはいいとして、償いたいなら説明したほうがいいんじゃないの?と、ちょっとイライラした。
カレルにしても、いくら事情を知らない上に若くて世間知らずといっても、蒼史に遊ばれたみたいな解釈は、物事が見えなさ過ぎというか、鈍すぎるというか…ってあきれてしまっていたんだけど。
「ある事件」(あらすじに書いてあるやつ)が明らかになると、蒼史の決断にすごく納得がいく。あー、なるほど、これは話せないな、と。
芸術家としてもこれからっていう若い恋人に、自分の側の事情を背負わせるわけにはいかないだろうなあと…。お母さんがカレルに危害を加えるかもしれないっていう危険は、注意していれば防げるだろうし、事情を説明して別れるという選択肢もあるにはあるけど、そんな重たい事情を話すこと自体がカレルにとって重荷になってしまう。事情を説明した上で別れるんじゃ、心情的にはなんだかカレルが蒼史を捨てるみたいになってしまうし。この話のなかではお母さんは数年後に病死するんだけど、この先何十年も状況が変らない可能性が高かったわけで、蒼史のほうから「二人の愛の力で乗り越えましょう」とは、普通は言い出せない…。
すべてが判明した後に「なんで話してくれなかったんだ」と理由は訊くけど、責めたりしないで「知らなかったとはいえ、ひどいことをして悪かった」と謝るカレルもいい。自分でも言ってるけど(笑)、器が大きいよなあ。
蒼史も気が弱くて、家庭の事情に流されているだけの薄幸なタイプに見えて、実は芯が強いし、カレルの芸術の理解者でもあるというところが魅力的だった。
京都、プラハ、閉ざされたアトリエの世界と、舞台設定も美しいし、心情の流れもつかみやすくて、面白い話だった。途中、何度か涙ぐんでしまうシーンもあったし。
これがJUNEなら、主人公は儚く死んでしまい、残されたカレルは彼の姿を孤独に作り続けるところなんだろうけど、BLなので手術も無事成功。後味もよかった。
可南さらさ  幻冬舎コミックス 2004/12

レビュー機能が使えないので(10月上旬まで調整中だとか)、不便。

この作品、9月の始めに読み始めていたのだが、ちょうど読み途中に旅行になった。旅に行くのにノベルスは重いから文庫本、と読んでる本を取り替えて、そのまますっかり忘れて別の本を読んでた…。
しかもその後、「なにか可南さんの本を買ったはず」と読み始めたことすら忘れて積読本の山をあさってしまった…。で、そこでは見つからなくて、そのうち出てくるだろうと思っていたら、他の本の捜索中に偶然発見。しかも読みかけ?と驚いてしまった。
うーーん。
昔、学校の先生に「作品名と著者名を覚えてないなら、読んだとはいえない」って言われたことあるけど、読み始めたことすら覚えてないなんて……。自分の忘れっぷりが怖い。


…ちょっと作品の感想も。
素直な高校生×ひねくれた小説家。
わりと好みに合うカップリング(設定)なのに、キャラがちょっと趣味に合わなかった。ひねくれてるのも傲慢なのも、描き方によっては好きなんだけど、男なのに女王様っていうのがどうにも駄目で。わがままな受なら、男らしいほうがいいっていう趣味のほうが少数派だろうなあ(笑)
キャラが趣味に合えば面白いと思う。私は趣味に合わなかったから、可もなく不可もなくという感想。

蛍火

2010年7月17日 BL作家か行
栗城偲 海王社 2010/1

癒されたくて、四十路カップル。
ガッシュ文庫とは、珍しいものを手に取ったなあと。


ネタバレ
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二人とも40代、20年以上の付き合いで、倦怠期なカップル。
カップルとしては大学教授×作家という、かなり派手な設定なんだけど、話としては地味~な設定。でもその地味なところが私の趣味としては美味しい設定で、読むのが楽しみだった。
文章は丁寧な感じだし(じっくり書いてる感じがする)、キャラも共感しやすい、普通の感覚を持ち合わせていて、読みやすかった。
話は攻の視点の旅行話と受の視点の学生時代の回想、後日談に分かれている。
攻視点の話は、攻のいい人過ぎない優しさや包容力が魅力的だし、恋人との関係を振り返るという話が面白かった。なんかこう…、BLって二人の関係を作るまでと、その後のすれ違いみたいな話は多いけど、二人の関係を育てたり振り返ったりという、現実の恋愛なら当然あるべき部分が描かれることが少ないから、そういう意味で貴重な作品じゃないかと。「事件」なしの落ち着いた恋愛というのは、今まで読んできたBLには求めることができなかった要素だし。
学生時代の回想では少し「事件」もあるんだけど、それよりも二人の距離が縮まっていくまでの心情の流れが重視されているし、自然に感じられた。早すぎる「プロポーズ」は唐突ではあるんだけど、不自然ではない。

そんなわけで、とても楽しく読んだが、攻を旅に連れ出す大学生が幼すぎることが、ちょっと気になった。いや、大学生が完全に大人だとは思えないけど、なんていうのかな~、成人していればもう少し「顔だけは大人」みたいな部分があるというか。
「大人は嘘つきだから大嫌い」なんて、普通の大学生なら(たとえ中身が子供のままであろうと)恥ずかしくて言えないんじゃないかと思う。あと、うさぎのヌイグルミを持ち歩く大学生って…、いくら事情があっても引いちゃうものが。
なんかこの辺で、いまいち感情移入できなかった。
後日談は余計だった気がする。話がブツ切りだからテンポも悪いし、大学生のほうはもう少し出番を控えめにして、二人の日常のラブラブでも書いたほうがよかったんじゃないかなー。

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