木原音瀬 リブレ出版 2008/7
★★★★★
めちゃくちゃ面白かった…。
BLノベルスとしてはかなり高めの値段から想像はついていたが、厚さ2センチ、338ページとかなりの読み応えがある。でも一気読み。正確にいえば往復の電車と帰宅後に読み、1日かけて読み終わったわけだが、とにかく夢中で読んだ。
ネタバレ。
---------------------------------------------
まずキャラがいい。木原作品にはヘタレ攻が多いけど、百田はイラッとこないヘタレで。うーん、何度も自分を卑下したり、泣いたりするのだが、なんというか愛嬌があるというか。あんまりメソメソするキャラだと背中に蹴りを入れたくなる私だけど(…人として間違ってます)、百田はなんか慰めてあげたくなる。それに彼の明るくて人が好くて素直なところは本当にいいと思う。思いやりがあるし。確かにダメダメだったけど、今は仕事を頑張っている、気のいい人という感じ。癒し系かも。
で、受のロンちゃんが恐ろしく真面目不器用なタイプなのだが、頭の固い私は彼のいうことに結構な頻度で頷けるので、これまた共感しやすいキャラで。百田の過去の犯罪を「仕方なかった」と言って許したりはしないあたりが納得できる。その上で、頑張っている今の自分を否定することはないって真剣に言ってくれる。この台詞には感動した。こういうことを言える人っていいなあと。百田が迷わず浜渦の優しいところが好きだといった気持ちもよく分かる。優しいし、強い人だ。
あ、あと甚呉も面白いキャラで好きだなー。いい人というより、いい奴。いい味を出しているキャラ。
ストーリーはいつもながら先が気になる引き込まれるもので、暗かったり、希望が見えたり、ハラハラしたり、しんみりしたり、ほっこりしたり、感動したりと、いろんな要素がバランスよく入っていた。深いし、味わいがある。
今回は愛もたっぷりあるし(笑)
正反対の魅力を持つ二人がお互いを大切にしながら一緒にいるのは、まさに薔薇色の人生。タイトルに偽りなしな、幸せな気分になれる1冊だった。
★★★★★
めちゃくちゃ面白かった…。
BLノベルスとしてはかなり高めの値段から想像はついていたが、厚さ2センチ、338ページとかなりの読み応えがある。でも一気読み。正確にいえば往復の電車と帰宅後に読み、1日かけて読み終わったわけだが、とにかく夢中で読んだ。
ネタバレ。
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まずキャラがいい。木原作品にはヘタレ攻が多いけど、百田はイラッとこないヘタレで。うーん、何度も自分を卑下したり、泣いたりするのだが、なんというか愛嬌があるというか。あんまりメソメソするキャラだと背中に蹴りを入れたくなる私だけど(…人として間違ってます)、百田はなんか慰めてあげたくなる。それに彼の明るくて人が好くて素直なところは本当にいいと思う。思いやりがあるし。確かにダメダメだったけど、今は仕事を頑張っている、気のいい人という感じ。癒し系かも。
で、受のロンちゃんが恐ろしく真面目不器用なタイプなのだが、頭の固い私は彼のいうことに結構な頻度で頷けるので、これまた共感しやすいキャラで。百田の過去の犯罪を「仕方なかった」と言って許したりはしないあたりが納得できる。その上で、頑張っている今の自分を否定することはないって真剣に言ってくれる。この台詞には感動した。こういうことを言える人っていいなあと。百田が迷わず浜渦の優しいところが好きだといった気持ちもよく分かる。優しいし、強い人だ。
あ、あと甚呉も面白いキャラで好きだなー。いい人というより、いい奴。いい味を出しているキャラ。
ストーリーはいつもながら先が気になる引き込まれるもので、暗かったり、希望が見えたり、ハラハラしたり、しんみりしたり、ほっこりしたり、感動したりと、いろんな要素がバランスよく入っていた。深いし、味わいがある。
今回は愛もたっぷりあるし(笑)
正反対の魅力を持つ二人がお互いを大切にしながら一緒にいるのは、まさに薔薇色の人生。タイトルに偽りなしな、幸せな気分になれる1冊だった。
さようなら、と君は手を振った(Holly版)
2008年6月22日 木原音瀬
木原音瀬 蒼竜社 2008/6
今朝届いたので、早速読んだ。
ネタバレで。
-------------------------------------------
旧版を読んだときにすでに感想を書いているので、少しだけ。
やっぱり、きれいなだけじゃない一途な愛情が描かれているところがいいなあと。
貴之の話は救いがなくて好きになれなかったが、今回の書下ろしを読んで好きになった。歪で幼かった気持ちが変化して、正面から向き合おうとしているので、痛々しさが薄くなって先も見えるようになった。これで柊とうまくいかなかったとしても、今度は失恋を乗り越えられそうだし、読後感が格段によくなったと思う。
このレーベルは木原専用機ではなくなってしまうらしい。少し残念だ。まあそれは仕方ないとして、次回の木原作品の予告がないのが寂しかった。うーーん、次はちょっと待たされるのかな。
今朝届いたので、早速読んだ。
ネタバレで。
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旧版を読んだときにすでに感想を書いているので、少しだけ。
やっぱり、きれいなだけじゃない一途な愛情が描かれているところがいいなあと。
貴之の話は救いがなくて好きになれなかったが、今回の書下ろしを読んで好きになった。歪で幼かった気持ちが変化して、正面から向き合おうとしているので、痛々しさが薄くなって先も見えるようになった。これで柊とうまくいかなかったとしても、今度は失恋を乗り越えられそうだし、読後感が格段によくなったと思う。
このレーベルは木原専用機ではなくなってしまうらしい。少し残念だ。まあそれは仕方ないとして、次回の木原作品の予告がないのが寂しかった。うーーん、次はちょっと待たされるのかな。
ergo vol.5
2008年6月16日 木原音瀬
昨夜はどうしても出せなかった画像が出た。サーバが混みあう時間だと上手く検索できない…らしい。不便だ。
早く届けてーと思っていたが、平日に配達されても読む時間がないや…。ライブ疲れがまだ残ってる(筋肉痛…)から早めに寝たいし。ああ、でも再読の本が気になる……。
えーっと、これもネタバレかな?
---------------------------------------------
---------------------------------------------
投票結果を見て、えーっ、もう1冊同じ作品で小冊子なの?と思ったら、1位じゃない作品が選ばれるとは、これまた意外で。
『リベット』じゃないなら何でもいいわ、どれでも一緒よ、ぐらいに思ってたけど、『牛泥棒』は結構嬉しいかも。
まあ『リベット』は2冊目が出ることを期待して……。ううう…。
小冊子のアンケート、投票しておけばよかったなあ…。最初に感想を書くのがちょっとイヤだなと(出版社へのメールという形で熱く感想を語るのがどうもダメで、だけど感想なしで送るのもどうかと)思ってしまい、放置しているうちに締め切りを過ぎてしまった。というか、締め切りは7月末ぐらいだろうと何故か自信を持って勘違いしていた……。
今回、『美しいこと』の漫画が読めたのが嬉しかった♪
これを連載で読みたかったなあ。
早く届けてーと思っていたが、平日に配達されても読む時間がないや…。ライブ疲れがまだ残ってる(筋肉痛…)から早めに寝たいし。ああ、でも再読の本が気になる……。
えーっと、これもネタバレかな?
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投票結果を見て、えーっ、もう1冊同じ作品で小冊子なの?と思ったら、1位じゃない作品が選ばれるとは、これまた意外で。
『リベット』じゃないなら何でもいいわ、どれでも一緒よ、ぐらいに思ってたけど、『牛泥棒』は結構嬉しいかも。
まあ『リベット』は2冊目が出ることを期待して……。ううう…。
小冊子のアンケート、投票しておけばよかったなあ…。最初に感想を書くのがちょっとイヤだなと(出版社へのメールという形で熱く感想を語るのがどうもダメで、だけど感想なしで送るのもどうかと)思ってしまい、放置しているうちに締め切りを過ぎてしまった。というか、締め切りは7月末ぐらいだろうと何故か自信を持って勘違いしていた……。
今回、『美しいこと』の漫画が読めたのが嬉しかった♪
これを連載で読みたかったなあ。
『リベット』 木原音瀬 蒼竜社 2006/9
昨日は昼寝をしていた上に気分が沈みがちだったので、すぐに寝付けそうになくてこの作品を再読した。もう何度目の再読か分からない。
テーマが重いので人に気軽に薦めることはできないが、大好きな作品。
完全ネタバレ
-------------------------------------------------
すでに一度感想らしきものを書いているのだが、読み返してみたら、テーマが重いせいか相当逃げた書き方をしていた。今回はもうちょっと正面から感想を書きたいなあと。また感想を書きたくなるかもしれないけど。
二人が両思いになるまで話が辿りついていないためか、BLではないという意見もあるようだが、私は片思いの純愛だと思う。ただ、主人公の初芝が思われる側なので、やっぱり恋愛ものとしては変わっているかもしれない。
初芝はすごく強い半面、すごく脆いところもあって魅力的。それに優しい。レイプによってHIVに感染し、病気のせいで恋人から拒絶され、副作用に苦しむ。そういう悲惨な状況で親友だった加害者や恋人を恨んだりもする。きれいなだけ、強いだけじゃない、ごく当たり前の人間的な感情も持っていて、それでも頑張っている姿に胸を打たれた。一番辛い時期に、初芝は事情をすべて知っている後輩の乾に当たってしまうのだが、ひどい言葉を投げつけたり殴ってしまったりするたびに、深く後悔と反省をする。置かれた状況を考えれば、甘えるのは仕方がないと思えるのだが、当たられる乾にしてみれば大変なことで…。「俺は、俺が嫌だ」という台詞から初芝の気持ちが痛いほど伝わってきた。八つ当たりをしてしまうのは弱さだが、自分を立て直そうとする初芝はやはり強い人だと思う。この状況で強くあろうと努力できるのはすごいことだ。
そんな初芝もラストのほうで薬を飲むのをやめてしまい、生きることを放棄してしまうが、ここで乾がしっかり受け止めてくれるところが感動的だった。乾はこの時点では完全な片思いなのに、初芝と真剣に愛し合っていた由紀でさえ受け止めきれなかったものを受け止めてくれる。まさに純愛だと思った。
でも、初芝の恋人だった由紀も責めることはできない。由紀には由紀の人生があるというだけで…。由紀の選択をひどい、冷たい、とは言えないところが、この話の重たさ、切なさだと思う。
「リベット2」では乾の視点になるが、乾の最終的な選択にほっとした。
初芝は転任先の学校で病気のことを同僚に打ち明け、「自業自得だ」と言われてしまう。そういう偏見を持たれる病気だし、病気について多くを語りたくない上に、まさか本当のことも言えないし、初芝は自業自得と言われても何も言い返せず、耐えるしかない。悪いことなんて何もしていないのに、病気そのものだけでなく、周囲の無理解や孤独とも戦っていかなくてはいけない。
だからこそ、片思いでいいから、新しい恋人ができるまでの間だけでいいから支えたいという乾の言葉が嬉しかった。本当にもう初芝を一人で泣かせておくのは嫌だと思ったから、乾の優しさをありがたく感じた。初芝のそばに乾がいてくれてよかった。
重たくて切ない話なんだけど、初芝の強さと乾の純愛に感動し、じわーっと心が暖かくなる作品だ。
カバー下の続編は嬉しかったが、やはりそこまで行く前の二人の話が読みたい。切実に続編が読みたい…。
昨日は昼寝をしていた上に気分が沈みがちだったので、すぐに寝付けそうになくてこの作品を再読した。もう何度目の再読か分からない。
テーマが重いので人に気軽に薦めることはできないが、大好きな作品。
完全ネタバレ
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すでに一度感想らしきものを書いているのだが、読み返してみたら、テーマが重いせいか相当逃げた書き方をしていた。今回はもうちょっと正面から感想を書きたいなあと。また感想を書きたくなるかもしれないけど。
二人が両思いになるまで話が辿りついていないためか、BLではないという意見もあるようだが、私は片思いの純愛だと思う。ただ、主人公の初芝が思われる側なので、やっぱり恋愛ものとしては変わっているかもしれない。
初芝はすごく強い半面、すごく脆いところもあって魅力的。それに優しい。レイプによってHIVに感染し、病気のせいで恋人から拒絶され、副作用に苦しむ。そういう悲惨な状況で親友だった加害者や恋人を恨んだりもする。きれいなだけ、強いだけじゃない、ごく当たり前の人間的な感情も持っていて、それでも頑張っている姿に胸を打たれた。一番辛い時期に、初芝は事情をすべて知っている後輩の乾に当たってしまうのだが、ひどい言葉を投げつけたり殴ってしまったりするたびに、深く後悔と反省をする。置かれた状況を考えれば、甘えるのは仕方がないと思えるのだが、当たられる乾にしてみれば大変なことで…。「俺は、俺が嫌だ」という台詞から初芝の気持ちが痛いほど伝わってきた。八つ当たりをしてしまうのは弱さだが、自分を立て直そうとする初芝はやはり強い人だと思う。この状況で強くあろうと努力できるのはすごいことだ。
そんな初芝もラストのほうで薬を飲むのをやめてしまい、生きることを放棄してしまうが、ここで乾がしっかり受け止めてくれるところが感動的だった。乾はこの時点では完全な片思いなのに、初芝と真剣に愛し合っていた由紀でさえ受け止めきれなかったものを受け止めてくれる。まさに純愛だと思った。
でも、初芝の恋人だった由紀も責めることはできない。由紀には由紀の人生があるというだけで…。由紀の選択をひどい、冷たい、とは言えないところが、この話の重たさ、切なさだと思う。
「リベット2」では乾の視点になるが、乾の最終的な選択にほっとした。
初芝は転任先の学校で病気のことを同僚に打ち明け、「自業自得だ」と言われてしまう。そういう偏見を持たれる病気だし、病気について多くを語りたくない上に、まさか本当のことも言えないし、初芝は自業自得と言われても何も言い返せず、耐えるしかない。悪いことなんて何もしていないのに、病気そのものだけでなく、周囲の無理解や孤独とも戦っていかなくてはいけない。
だからこそ、片思いでいいから、新しい恋人ができるまでの間だけでいいから支えたいという乾の言葉が嬉しかった。本当にもう初芝を一人で泣かせておくのは嫌だと思ったから、乾の優しさをありがたく感じた。初芝のそばに乾がいてくれてよかった。
重たくて切ない話なんだけど、初芝の強さと乾の純愛に感動し、じわーっと心が暖かくなる作品だ。
カバー下の続編は嬉しかったが、やはりそこまで行く前の二人の話が読みたい。切実に続編が読みたい…。
木原音瀬 蒼竜社 2008/5/29
オッサンもの。
ネタバレ注意。
同人誌版もネタバレ。
--------------------------------------------------
たぶん、ダンディーな攻なら50歳越えでも許容範囲だっていう読者は多いと思うけど、見た目も中身も冴えないオッサン受っていうのは確かにハードルが高いと思う。
攻の手違いと遊びから付き合いが始まるが、付き合ってみようと思う時点で福山(攻・30歳)にはオヤジ好きな素質があったんじゃないかと。しかもからかっているだけと言いつつ、木原作品の攻にはよくあることだが、ベタベタベタベタ…鬱陶しいことこの上ない。普通に恋愛どころか、誰がどう見ても嵌りすぎ。
仁賀奈に対する態度はひどいものなので腹が立ったりもするのだが、気持ちを自覚してからの福山は最初の頃演じていた「年下の可愛い恋人」そのもので、振られてしまったときには可哀想になってしまった。仁賀奈、ひどすぎない?とか、本気で思った。いつの間にか結構感情移入していたらしい。
…受け入れておいて、全否定で捨てる。仁賀奈は本当にひどいし、福山に同情せずにはいられない展開なんだけど。
この恋愛の立場が見事にひっくり返るところが、木原作品の面白さのひとつだと思う。
ここで潔く諦めてしまえるなら楽だったんじゃないかと思うけど、まあ木原キャラなので、自暴自棄になっても忘れたいと思っても、もちろん諦めきれない。風邪を引いたと聞いて部屋まで見舞いに行ってしまうあたりは相当痛い。みっともない。痛ければ痛いほど、みっともなければみっともないほど、福山の思いが伝わってきて切なくなる。福山のやり方は自分勝手で責められても仕方がないものなんだけど、すごく気持ちが分かってしまう……。
当然というべきか、手酷く追い返されてから、今度は仁賀奈が入院したと聞いた福山は毎日病院の前まで行き、自分からだと黙っていてくれと言って見舞いの品を渡してもらう。このいじらしい行動には泣けてくるものがある。
ラストは病院に入らずに帰っていく福山を仁賀奈が見ていてハッピーエンド。そこにたどり着くまでに福山は恥をかなぐり捨てて縋りつくし、これは仁賀奈でもほだされるだろうなあという、納得の展開だった。本当っに安心した。
確か(もう随分前に読んだので詳細は忘れたが、そして本が手元にないので確かめようもないが)同人誌のほうでは、こんなに甘いラストではなかったはず。そちらも面白かったしインパクトあったし納得のラストではあったのだが、ちょっぴりビターであまり読み返したい感じではなくて、私の趣味からいうと今回のラストのほうが読みやすかった。基本的な部分は何も変ってないけど、ちょっとスイート増量って感じかな。記憶があやふやで自信ないけど。
切ない部分ももちろん好きだけど、バードウォッチングっていう渋いデートもよかった。えー、つまんなそうってシチュエーションで、福山がちょっとしたことで楽しく感じたり、仁賀奈の嬉しそうな顔を見て喜んだりするあたりが、恋愛の醍醐味って感じでよかった。オッサン受もいいかも?と思ったのは、この場面以降だったかも。
以前は受の年齢は40代前半までという趣味だったのだが、この作品に出会ってから枯葉時代になってしまい、すっかりオヤジ受好きになってしまった。うーん。でもここまで思い切りよく平凡オヤジ受が出てくる作品にはまだお目にかかったことがない。
ちなみに、実年齢は40過ぎだが10は若く見える受なんていう設定ならたまに見かけるが、見た目が若いなら年齢も若いほうが好きかも。「はい、ダメ〜」と言ってしまう自分に愕然とするときがある。
だけどお腹が出ているとか脂ぎっているとかいう設定だったら、やっぱりイヤかも……。頭髪については、平気そうな気がするんだけど。今度読んでみよう。
オッサンもの。
ネタバレ注意。
同人誌版もネタバレ。
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たぶん、ダンディーな攻なら50歳越えでも許容範囲だっていう読者は多いと思うけど、見た目も中身も冴えないオッサン受っていうのは確かにハードルが高いと思う。
攻の手違いと遊びから付き合いが始まるが、付き合ってみようと思う時点で福山(攻・30歳)にはオヤジ好きな素質があったんじゃないかと。しかもからかっているだけと言いつつ、木原作品の攻にはよくあることだが、ベタベタベタベタ…鬱陶しいことこの上ない。普通に恋愛どころか、誰がどう見ても嵌りすぎ。
仁賀奈に対する態度はひどいものなので腹が立ったりもするのだが、気持ちを自覚してからの福山は最初の頃演じていた「年下の可愛い恋人」そのもので、振られてしまったときには可哀想になってしまった。仁賀奈、ひどすぎない?とか、本気で思った。いつの間にか結構感情移入していたらしい。
…受け入れておいて、全否定で捨てる。仁賀奈は本当にひどいし、福山に同情せずにはいられない展開なんだけど。
この恋愛の立場が見事にひっくり返るところが、木原作品の面白さのひとつだと思う。
ここで潔く諦めてしまえるなら楽だったんじゃないかと思うけど、まあ木原キャラなので、自暴自棄になっても忘れたいと思っても、もちろん諦めきれない。風邪を引いたと聞いて部屋まで見舞いに行ってしまうあたりは相当痛い。みっともない。痛ければ痛いほど、みっともなければみっともないほど、福山の思いが伝わってきて切なくなる。福山のやり方は自分勝手で責められても仕方がないものなんだけど、すごく気持ちが分かってしまう……。
当然というべきか、手酷く追い返されてから、今度は仁賀奈が入院したと聞いた福山は毎日病院の前まで行き、自分からだと黙っていてくれと言って見舞いの品を渡してもらう。このいじらしい行動には泣けてくるものがある。
ラストは病院に入らずに帰っていく福山を仁賀奈が見ていてハッピーエンド。そこにたどり着くまでに福山は恥をかなぐり捨てて縋りつくし、これは仁賀奈でもほだされるだろうなあという、納得の展開だった。本当っに安心した。
確か(もう随分前に読んだので詳細は忘れたが、そして本が手元にないので確かめようもないが)同人誌のほうでは、こんなに甘いラストではなかったはず。そちらも面白かったしインパクトあったし納得のラストではあったのだが、ちょっぴりビターであまり読み返したい感じではなくて、私の趣味からいうと今回のラストのほうが読みやすかった。基本的な部分は何も変ってないけど、ちょっとスイート増量って感じかな。記憶があやふやで自信ないけど。
切ない部分ももちろん好きだけど、バードウォッチングっていう渋いデートもよかった。えー、つまんなそうってシチュエーションで、福山がちょっとしたことで楽しく感じたり、仁賀奈の嬉しそうな顔を見て喜んだりするあたりが、恋愛の醍醐味って感じでよかった。オッサン受もいいかも?と思ったのは、この場面以降だったかも。
以前は受の年齢は40代前半までという趣味だったのだが、この作品に出会ってから枯葉時代になってしまい、すっかりオヤジ受好きになってしまった。うーん。でもここまで思い切りよく平凡オヤジ受が出てくる作品にはまだお目にかかったことがない。
ちなみに、実年齢は40過ぎだが10は若く見える受なんていう設定ならたまに見かけるが、見た目が若いなら年齢も若いほうが好きかも。「はい、ダメ〜」と言ってしまう自分に愕然とするときがある。
だけどお腹が出ているとか脂ぎっているとかいう設定だったら、やっぱりイヤかも……。頭髪については、平気そうな気がするんだけど。今度読んでみよう。
またしても木原作品について心ゆくまで問わず語りしようかと。
作品の内容について語るというより、私はこんな風に木原作品を楽しんでいます、という語り。
えーっとファンと自称しづらい私のスタンス。
その才能に惚れ込んでいて、結構信奉者に近い感想を書いたりするが、態度はわりと冷めている。たとえば絶版本を見つけても高かったら買わないとか、貴重な小冊子もオークションでは絶対に買わないとか。これは好きなもの全般に対して共通の態度なので、木原作品だから特別ってわけでもないんだけど。
木原作品特有の態度としては、ものすごく新作を楽しみにしてるし、はまることも熱くなることもあるんだけど、気分的にはちょっとだけ距離を置いているあたりかな。常に内と外、両方から見ている感覚というか。
微妙なたとえで申し訳ないが、「愛してはいるけど、恋したことはない」という感じ。
全作品に対し、ネタバレを一切考慮しないで書くので、ネタバレがダメな方はここで引き返してください
…キャラについて語ろうとすると、ネタバレになりやすいと思う。攻受の分類とかも作品によってはネタバレになるし。
既読と未読
木原作品をどれぐらい読んでいるかなと考えてみると、おそらく8割ぐらいは読んでいると思う。
・現段階で入手困難になっていない、定価で手に入る商業作品は全部。
・絶版になっている商業作品のほとんど。
・同人誌、小冊子、ペーパーの一部。
読んでいないのは、
・雑誌掲載後に単行本化、文庫化されていない作品。
これが結構な数残っていたりする。私にとってはタイトルだけ知っている幻の作品といった感じ。『美しいこと』や『FRAGILE』も長らくこの扱いだった。
・一部の同人誌と小冊子。
買ったけど読みたくない…とか、手に取りたくないから買ってないとか。そんな贅沢な理由で読んでいないもの。あとは絶版。
・携帯配信の作品。
・CD等の特典。あるのかどうか知らないけど。
好きなキャラ
だいたい好きな作品の主要キャラ=好きなキャラかな。
順位をつけたくないから、出会った(読んだ)順で。
有田(『恋愛時間』)
門脇(『あのひと』)
藤原(『脱がない男』)
初芝(『リベット』)
谷脇(植物シリーズ)
松岡(『美しいこと』)
小木(『12hours』)
谷脇以外、全部受キャラだ。分かりやすい趣味で…。
さらに細分すれば、「カッコいい、ステキvと騒ぎたくなる」キャラと、「人としてどうなの、物陰から見るだけで結構ですので」というキャラと、「いい子だ〜、応援してるからね!」というキャラに分かれる。
さて、誰がどこに入るでしょう。
あんまりクイズとして面白くないから、考えなくていいです…。
私が男ならぜひ当て馬として参戦したかった(なんか間違ってる…)のが、有田兄と初芝先生。かわいいわ〜と思ってるのが門脇と松岡。あとは困った課長と鬼畜な医者だけだから、もちろんお近づきにはなりたくない。
好みじゃないけど好感度の高いキャラとしては、
朝霞(『恋について』)
ヘタレ蝙蝠(『吸血鬼と愉快な仲間たち』)
吉川(『情熱の温度』)
亮一郎(『牛泥棒』)
横山(『プレイス』)なんかがいる。
正直に告白すれば、フルネームで覚えていたキャラはほとんどいなかった…。ここにも『箱・檻』やCOLDシリーズのキャラは入ってない。前回別枠で好きだと書いたのは、こういう理由もあって。
あと、再読すれば『嫌な奴』の三浦あたりがランクインしそう…な気もするけど、自信はない。
苦手キャラは、掛川(『セカンド・セレナーデ』)。数え上げれば苦手なキャラもたくさんいるけど、とりあえずこの人がムカつく。あと思いつくのは松下(『あのひと』)ぐらいかな。
たぶん他の苦手キャラは、設定と展開が凄すぎて単純に好き嫌いで語れないからだと思う…。
殺伐とした作風と突き抜けた展開。
今までに何度も書いているからくどくなるが、木原作品全体としてどこが好きかを。
なんといっても、作品の持つ吸引力と読み応えが素晴らしい。好き嫌いは別として、最後まで目が離せないところ。深くて濃いところ。趣味かどうかは別として「物足りない」という感想にはならない。軽くて読みやすい作品も好きだけど、やっぱりずっしりと重い作品のほうが好みだ。ドロドロとしていてもウェット感が少なく、乾いて殺伐としている作風なのが読みやすい。
あとはキャラの言動に共感できないときでも、そういうものなんだと納得できる説得力かな。
私はかなりキャラに感情移入してしまうほうなので、あまりウェットだと読んでる途中で疲れてしまう。木原作品も本来は痛すぎて、読んでてダメージが大きい作風だと思うけど、これ痛いな〜と痛さに酔える余地を残しておいてくれるというか。極端な性格のキャラに視点が固定されていたとしても、地の文には客観性が残っているところが読みやすい。ツッコミ不在の小説はどうにも読みづらいものだけど、その点でも安心で。
痛い展開が続いた後に、がらっと雰囲気を変えて甘くなるのも魅力。まさに飴と鞭(笑) …鞭ばっかりという説もきっとあると思うが。
しかも展開がグダグダにならずに徹底しているのがいい。急展開や強引な展開もたまにあると思う(冷静に読んでないからよく分からない)し、キャラの言動についていけないときもあるけど、何がどうなったの?と思うことはない。えーっと、説明が難しいな。「なしくずし」=「グダグダ」じゃないというか。「なしくずし」に持って行くなら、そこまで山脈越えしていき、「ここまで来ちゃったんだから引き返せないでしょう、普通」というところまで到達しているので、流されるキャラが苦手な私も「どうぞどうぞ」と諸手を挙げて(かどうか分からんが)賛成できるところがいい。
キャラが納得できない行動に出たときも、もはや口を挟めるような段階ではないので、引き止めたりせずに気持ちよくお見送りできる。ああ、遠くに行っちゃったね、と。で、そのキャラの視点に戻れば、その瞬間にまた感情移入できる。このへんが特殊というか、面白いなあと思う。
話の流れは本当に徹底してる。そこらへんでやめておいたほうが、と思うところで終わることがほとんどない。恋愛ものでそこまで「つれない態度」を取るの?と驚くこともあるが、つれないままで終わっちゃったりするのも楽しい。
タブーをタブーにしない作風じゃないかな。結構いつも立ち入り禁止区域というか。
BLは甘くてライトなのが売れ筋路線じゃないかと思うけど(私にとってはありがたくないんだけど)、木原作品に人気があるのが嬉しい。いつでもイバラな趣味の私なので、自分の好きなものが売れている、認められているという状態は嬉しくて。私はいつでも結構偉そうだが、さらに偉そうなことを書けば、こういう実力のある作家が売れているうちはこのジャンルも安泰だよね、と思っていたりする。
次の木原専用機は『さようなら〜』ですか。すべて初ノベライズ作品ってキャッチはやめるのかなー。(余計なことを…)
書き下ろしがあるのか気になる。楽しみだ。
何か語り残しているような気もするが、とりあえず2は終わり。
作品の内容について語るというより、私はこんな風に木原作品を楽しんでいます、という語り。
えーっとファンと自称しづらい私のスタンス。
その才能に惚れ込んでいて、結構信奉者に近い感想を書いたりするが、態度はわりと冷めている。たとえば絶版本を見つけても高かったら買わないとか、貴重な小冊子もオークションでは絶対に買わないとか。これは好きなもの全般に対して共通の態度なので、木原作品だから特別ってわけでもないんだけど。
木原作品特有の態度としては、ものすごく新作を楽しみにしてるし、はまることも熱くなることもあるんだけど、気分的にはちょっとだけ距離を置いているあたりかな。常に内と外、両方から見ている感覚というか。
微妙なたとえで申し訳ないが、「愛してはいるけど、恋したことはない」という感じ。
全作品に対し、ネタバレを一切考慮しないで書くので、ネタバレがダメな方はここで引き返してください
…キャラについて語ろうとすると、ネタバレになりやすいと思う。攻受の分類とかも作品によってはネタバレになるし。
既読と未読
木原作品をどれぐらい読んでいるかなと考えてみると、おそらく8割ぐらいは読んでいると思う。
・現段階で入手困難になっていない、定価で手に入る商業作品は全部。
・絶版になっている商業作品のほとんど。
・同人誌、小冊子、ペーパーの一部。
読んでいないのは、
・雑誌掲載後に単行本化、文庫化されていない作品。
これが結構な数残っていたりする。私にとってはタイトルだけ知っている幻の作品といった感じ。『美しいこと』や『FRAGILE』も長らくこの扱いだった。
・一部の同人誌と小冊子。
買ったけど読みたくない…とか、手に取りたくないから買ってないとか。そんな贅沢な理由で読んでいないもの。あとは絶版。
・携帯配信の作品。
・CD等の特典。あるのかどうか知らないけど。
好きなキャラ
だいたい好きな作品の主要キャラ=好きなキャラかな。
順位をつけたくないから、出会った(読んだ)順で。
有田(『恋愛時間』)
門脇(『あのひと』)
藤原(『脱がない男』)
初芝(『リベット』)
谷脇(植物シリーズ)
松岡(『美しいこと』)
小木(『12hours』)
谷脇以外、全部受キャラだ。分かりやすい趣味で…。
さらに細分すれば、「カッコいい、ステキvと騒ぎたくなる」キャラと、「人としてどうなの、物陰から見るだけで結構ですので」というキャラと、「いい子だ〜、応援してるからね!」というキャラに分かれる。
さて、誰がどこに入るでしょう。
あんまりクイズとして面白くないから、考えなくていいです…。
私が男ならぜひ当て馬として参戦したかった(なんか間違ってる…)のが、有田兄と初芝先生。かわいいわ〜と思ってるのが門脇と松岡。あとは困った課長と鬼畜な医者だけだから、もちろんお近づきにはなりたくない。
好みじゃないけど好感度の高いキャラとしては、
朝霞(『恋について』)
ヘタレ蝙蝠(『吸血鬼と愉快な仲間たち』)
吉川(『情熱の温度』)
亮一郎(『牛泥棒』)
横山(『プレイス』)なんかがいる。
正直に告白すれば、フルネームで覚えていたキャラはほとんどいなかった…。ここにも『箱・檻』やCOLDシリーズのキャラは入ってない。前回別枠で好きだと書いたのは、こういう理由もあって。
あと、再読すれば『嫌な奴』の三浦あたりがランクインしそう…な気もするけど、自信はない。
苦手キャラは、掛川(『セカンド・セレナーデ』)。数え上げれば苦手なキャラもたくさんいるけど、とりあえずこの人がムカつく。あと思いつくのは松下(『あのひと』)ぐらいかな。
たぶん他の苦手キャラは、設定と展開が凄すぎて単純に好き嫌いで語れないからだと思う…。
殺伐とした作風と突き抜けた展開。
今までに何度も書いているからくどくなるが、木原作品全体としてどこが好きかを。
なんといっても、作品の持つ吸引力と読み応えが素晴らしい。好き嫌いは別として、最後まで目が離せないところ。深くて濃いところ。趣味かどうかは別として「物足りない」という感想にはならない。軽くて読みやすい作品も好きだけど、やっぱりずっしりと重い作品のほうが好みだ。ドロドロとしていてもウェット感が少なく、乾いて殺伐としている作風なのが読みやすい。
あとはキャラの言動に共感できないときでも、そういうものなんだと納得できる説得力かな。
私はかなりキャラに感情移入してしまうほうなので、あまりウェットだと読んでる途中で疲れてしまう。木原作品も本来は痛すぎて、読んでてダメージが大きい作風だと思うけど、これ痛いな〜と痛さに酔える余地を残しておいてくれるというか。極端な性格のキャラに視点が固定されていたとしても、地の文には客観性が残っているところが読みやすい。ツッコミ不在の小説はどうにも読みづらいものだけど、その点でも安心で。
痛い展開が続いた後に、がらっと雰囲気を変えて甘くなるのも魅力。まさに飴と鞭(笑) …鞭ばっかりという説もきっとあると思うが。
しかも展開がグダグダにならずに徹底しているのがいい。急展開や強引な展開もたまにあると思う(冷静に読んでないからよく分からない)し、キャラの言動についていけないときもあるけど、何がどうなったの?と思うことはない。えーっと、説明が難しいな。「なしくずし」=「グダグダ」じゃないというか。「なしくずし」に持って行くなら、そこまで山脈越えしていき、「ここまで来ちゃったんだから引き返せないでしょう、普通」というところまで到達しているので、流されるキャラが苦手な私も「どうぞどうぞ」と諸手を挙げて(かどうか分からんが)賛成できるところがいい。
キャラが納得できない行動に出たときも、もはや口を挟めるような段階ではないので、引き止めたりせずに気持ちよくお見送りできる。ああ、遠くに行っちゃったね、と。で、そのキャラの視点に戻れば、その瞬間にまた感情移入できる。このへんが特殊というか、面白いなあと思う。
話の流れは本当に徹底してる。そこらへんでやめておいたほうが、と思うところで終わることがほとんどない。恋愛ものでそこまで「つれない態度」を取るの?と驚くこともあるが、つれないままで終わっちゃったりするのも楽しい。
タブーをタブーにしない作風じゃないかな。結構いつも立ち入り禁止区域というか。
BLは甘くてライトなのが売れ筋路線じゃないかと思うけど(私にとってはありがたくないんだけど)、木原作品に人気があるのが嬉しい。いつでもイバラな趣味の私なので、自分の好きなものが売れている、認められているという状態は嬉しくて。私はいつでも結構偉そうだが、さらに偉そうなことを書けば、こういう実力のある作家が売れているうちはこのジャンルも安泰だよね、と思っていたりする。
次の木原専用機は『さようなら〜』ですか。すべて初ノベライズ作品ってキャッチはやめるのかなー。(余計なことを…)
書き下ろしがあるのか気になる。楽しみだ。
何か語り残しているような気もするが、とりあえず2は終わり。
ergo vol.4
2008年4月29日 木原音瀬
漫画だけ読んだ。
漫画を読むと原作を読み返したくなるんだよなあ…。
小説は…本当だ、またフォントサイズが小さくなってる(笑)
思わず1をチェックしてみたら、すげえ字が大きかった。
追記。小説も読んだ。
私は絶賛中。
-------ネタバレ-------
木原作品の場合、別にBL要素は薄くても構わない。あまりキャラのカッコよさにも期待していない。まあ恋愛要素はあったほうがいいし、キャラもカッコいいに越したことはないけど。そういうオプションはなければないで構わない。あってもなくても楽しめてしまう。
この病院もののシリーズは恋愛要素が少ないと思う。病院内の人間模様はしっかり描かれているし、きちんとカップリングはあるのだが、とくに1、2話は恋愛ものを期待していたので読みづらかった。3話目はわりと期待に応えてくれる書き方だったし、甘めで面白かった。
4話目の今回はまたキツイのか?と読み始めてから身構えた。
けど、小説として面白い。いままでよりフォントサイズを下げて詰め込んだ分、読み応えも増していて、長くなったのに逆にノンストップで読めた。
キャラもいい。小木はもとから好みのタイプだからとくに書かなくてもいいとして、高瀬。まったく好みではないが、木原さんはこういう浅はかでちょっと鼻持ちならない、とくに応援したくもならないような、人間的につまらない小物タイプを描くのが上手いよなあと惚れ惚れする。別に嫌な奴というほどでもないし(ムカつくタイプではないし)、これぐらい現実にならいくらでもいると思う。でもラノベでは脇役にしかならない、しかも決してカッコよくは思われず、逆につまらない奴だと軽蔑されるような引き立て役タイプのキャラを主人公に持ってくるのもすごいし、底の浅いタイプをじっくり深みを持たせて描くのもすごい。
読んでいるうちに、なんだかだんだん高瀬の可能性のようなものが見えてくる。楽することばかり考えるし、努力家でもないし、素直でもないし、手先が器用なぐらいしか才能らしきものもないんだけど。本人がもうちょっとやる気を出して、環境が整えばいい医者になりそうな気もする。うちの子はやればできるんです、というタイプに思える。
ぐだぐだ書いてきたが、小木の台詞を引用すればたった一行で分かりやすく説明できる、ことに今気付いた。うう…。
小木の台詞自体がシンプルにして的確で、しかも小木らしさが出ているという、(読後に思い返してみれば)この場面ではこれしかないと思えるような名台詞なのだが、それを十分に活かせるだけの下地がすでに整っている。このへんが面白い。
それにしても。小木は確かに恐ろしい襲い受だが、高瀬の台詞がすごい。「おかあさん、助けて」って…。エッチシーンの攻の台詞としては過去最高に情けなくて笑った。
そして小木の最後の台詞は殺し文句だ。いくらやる気の足りない高瀬でも、医者になった以上、それなりの努力と苦労と上昇志向はあったはずだし、これでグラつかないわけがないというか、秒殺だったんじゃないかと。小木、いいわ〜。楽しかった。
漫画を読むと原作を読み返したくなるんだよなあ…。
小説は…本当だ、またフォントサイズが小さくなってる(笑)
思わず1をチェックしてみたら、すげえ字が大きかった。
追記。小説も読んだ。
私は絶賛中。
-------ネタバレ-------
木原作品の場合、別にBL要素は薄くても構わない。あまりキャラのカッコよさにも期待していない。まあ恋愛要素はあったほうがいいし、キャラもカッコいいに越したことはないけど。そういうオプションはなければないで構わない。あってもなくても楽しめてしまう。
この病院もののシリーズは恋愛要素が少ないと思う。病院内の人間模様はしっかり描かれているし、きちんとカップリングはあるのだが、とくに1、2話は恋愛ものを期待していたので読みづらかった。3話目はわりと期待に応えてくれる書き方だったし、甘めで面白かった。
4話目の今回はまたキツイのか?と読み始めてから身構えた。
けど、小説として面白い。いままでよりフォントサイズを下げて詰め込んだ分、読み応えも増していて、長くなったのに逆にノンストップで読めた。
キャラもいい。小木はもとから好みのタイプだからとくに書かなくてもいいとして、高瀬。まったく好みではないが、木原さんはこういう浅はかでちょっと鼻持ちならない、とくに応援したくもならないような、人間的につまらない小物タイプを描くのが上手いよなあと惚れ惚れする。別に嫌な奴というほどでもないし(ムカつくタイプではないし)、これぐらい現実にならいくらでもいると思う。でもラノベでは脇役にしかならない、しかも決してカッコよくは思われず、逆につまらない奴だと軽蔑されるような引き立て役タイプのキャラを主人公に持ってくるのもすごいし、底の浅いタイプをじっくり深みを持たせて描くのもすごい。
読んでいるうちに、なんだかだんだん高瀬の可能性のようなものが見えてくる。楽することばかり考えるし、努力家でもないし、素直でもないし、手先が器用なぐらいしか才能らしきものもないんだけど。本人がもうちょっとやる気を出して、環境が整えばいい医者になりそうな気もする。うちの子はやればできるんです、というタイプに思える。
ぐだぐだ書いてきたが、小木の台詞を引用すればたった一行で分かりやすく説明できる、ことに今気付いた。うう…。
「馬鹿でもセンスは悪くなさそうだからな」変人にしてずば抜けた技量と知識を持つ小木が高瀬に目をつけた(決して目をかけた、ではない)理由は、この一言で十分理解できる。ちゃんと理解できるようになっている。
小木の台詞自体がシンプルにして的確で、しかも小木らしさが出ているという、(読後に思い返してみれば)この場面ではこれしかないと思えるような名台詞なのだが、それを十分に活かせるだけの下地がすでに整っている。このへんが面白い。
それにしても。小木は確かに恐ろしい襲い受だが、高瀬の台詞がすごい。「おかあさん、助けて」って…。エッチシーンの攻の台詞としては過去最高に情けなくて笑った。
そして小木の最後の台詞は殺し文句だ。いくらやる気の足りない高瀬でも、医者になった以上、それなりの努力と苦労と上昇志向はあったはずだし、これでグラつかないわけがないというか、秒殺だったんじゃないかと。小木、いいわ〜。楽しかった。
木原音瀬 角川グループパブリッシング 2008/04
帯つきの画像ください…。いや、もういいけどさ。
分かりづらそうだから、星評価。
★★★★
ネタバレで。
------------------------------------------------
苦手な監禁もの。痛い系。木原作品らしいガツンとくる内容で大変満足だった。
本当は痛い中に切なさが入っているほうが趣味に合うが、これはこれで突き抜けていて面白い。
こんな悪趣味な設定、木原作品じゃなければ読まないのにって思いながら読んだ。途中でやめようと思わなかったのは、途中でやめるほうが後味が悪そうだから。なんかカタルシスを得る前に挫折したら、いつまでも思い出してしまいそう…。
そして何より小説として面白いから、読むのをやめられなかった。
すみません、わたしは大河内のほうが好きです…。
誰に謝ってるのって感じだが、うわー、大河内性格悪い〜、なんで青池はこんな奴が好きなの?って感想のほうが多そうだから…。
逆に青池がダメだった。ストーカー、粘着質なタイプと犯罪者は苦手で。暴力描写が苦手だから暴力をふるうキャラというのが、そこからもうダメで。お前、そこまでしておいて相手からの愛情なんて求めるなよ…としか思えなかった。なにかこう…裏切られて可哀想というより、裏切られないほうが不思議だよね、と。
じゃあ大河内の性格の悪さはいいのかというと、わりと平気だった。木原キャラらしい嫌らしさだなあと、普通に流せたらしい…。性格の悪さはともかくとして、基本的に容姿とかスタイルが好きなタイプだし。
大河内のしたことは少なくとも犯罪じゃない上に、監禁後の裏切りは当然だろうとしか思えない。自分を監禁してる相手に思いやりをもてるほうが怖いような気がする。
なんで世間体や社会的地位を気にして逃げないんだろうと最初は大河内の行動が愚かに思えたが、挫折したことがないってそういうことだよなあと思えた。どんなに辛くても後々のことを考えて現状維持したほうがマシって思ってしまう気持ちは共感しやすい。本当は我慢しないほうがいいんだろうけど…と自分に重ね合わせてしまった。大河内をキライじゃないのは、そのへんが大きく影響しているかも。
続編のラストで喉を切ったあたりで、ようやく青池ってそういえばカッコイイ攻だよなと思ったりした。たぶん無害になったからだと思う。とにかく怖かったらしい…。というわけで、読み終わった後は結構、青池のことが好きになった。
ラブラブの続編だったら、大河内(の性格の悪さ)にムカつきそうだなあと思ったり。
木原先生、結構こういうラスト好きだよなあ。いままでの展開からして、この終わり方のほうが納得だけど。
帯つきの画像ください…。いや、もういいけどさ。
分かりづらそうだから、星評価。
★★★★
ネタバレで。
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苦手な監禁もの。痛い系。木原作品らしいガツンとくる内容で大変満足だった。
本当は痛い中に切なさが入っているほうが趣味に合うが、これはこれで突き抜けていて面白い。
こんな悪趣味な設定、木原作品じゃなければ読まないのにって思いながら読んだ。途中でやめようと思わなかったのは、途中でやめるほうが後味が悪そうだから。なんかカタルシスを得る前に挫折したら、いつまでも思い出してしまいそう…。
そして何より小説として面白いから、読むのをやめられなかった。
すみません、わたしは大河内のほうが好きです…。
誰に謝ってるのって感じだが、うわー、大河内性格悪い〜、なんで青池はこんな奴が好きなの?って感想のほうが多そうだから…。
逆に青池がダメだった。ストーカー、粘着質なタイプと犯罪者は苦手で。暴力描写が苦手だから暴力をふるうキャラというのが、そこからもうダメで。お前、そこまでしておいて相手からの愛情なんて求めるなよ…としか思えなかった。なにかこう…裏切られて可哀想というより、裏切られないほうが不思議だよね、と。
じゃあ大河内の性格の悪さはいいのかというと、わりと平気だった。木原キャラらしい嫌らしさだなあと、普通に流せたらしい…。性格の悪さはともかくとして、基本的に容姿とかスタイルが好きなタイプだし。
大河内のしたことは少なくとも犯罪じゃない上に、監禁後の裏切りは当然だろうとしか思えない。自分を監禁してる相手に思いやりをもてるほうが怖いような気がする。
なんで世間体や社会的地位を気にして逃げないんだろうと最初は大河内の行動が愚かに思えたが、挫折したことがないってそういうことだよなあと思えた。どんなに辛くても後々のことを考えて現状維持したほうがマシって思ってしまう気持ちは共感しやすい。本当は我慢しないほうがいいんだろうけど…と自分に重ね合わせてしまった。大河内をキライじゃないのは、そのへんが大きく影響しているかも。
続編のラストで喉を切ったあたりで、ようやく青池ってそういえばカッコイイ攻だよなと思ったりした。たぶん無害になったからだと思う。とにかく怖かったらしい…。というわけで、読み終わった後は結構、青池のことが好きになった。
ラブラブの続編だったら、大河内(の性格の悪さ)にムカつきそうだなあと思ったり。
木原先生、結構こういうラスト好きだよなあ。いままでの展開からして、この終わり方のほうが納得だけど。
蒼竜社 2007/02
有言実行。
…読み出したら一気に読めた。別に読みづらくない。
人には絶対薦めない作品。
★★★★
普段はごちゃごちゃとした感想を数値化するのが面倒で星評価はしていないのだが、今回はまとまった感想を書けそうにないし、せめて星評価でもつけておかないと読んでどう思ったかが伝わりにくそうなのでつけてみた。
以下、たいして感想らしい感想は書かないけど激しくネタバレあり。
---------------------------------------------
いくら面白かったり感動したりしても読み返したくない作品というのがたまにあるけど、これはそういうタイプの作品だと思った。
読まなければよかったとは思わないが、もう一回封印してしまいたいというか。開けてしまったプレゼントを包みなおしても元には戻らなくて、ちょっと包装紙が浮いて不恰好になった状態で奥のほうにしまいこむみたいな気分になった。
うーん。これの感想を書くならカニバリズムについて書くことは避けて通れないが、さらっと書くにはテーマが重すぎるし、きちんと書くと本の感想の範疇じゃなくなりそうだ。もちろん自分なりの感想やら意見やらはある。でも、文章能力の問題でそれを分かりやすく論理立てて書くのは私には無理。たぶん中途半端で消化不良な内容になってしまうだろうなあと。まあ、読みたい人もいないだろう…。
一応お断りしておくと、これは私の感想の書き方のスタイルの問題であって、人様がこの作品の感想を気軽に書くことに対してケチをつけたり、意見したりしているわけではありません。むしろ人様の感想が読んでみたい作品だし。
ネタバレを避けていたので他人の評価はよく知らないのだが、この作品は痛い作品という噂というか感触があった。普通自分が気に入った作品がマイナス評価だとがっかりしたり、気分が悪かったりするが、拒絶反応や抵抗感がないほうが不思議だと思えるあたり、やっぱり自分の中で特殊な位置づけの作品になったと思う。
読む前に予測していたような衝撃や読みづらさもないかわりに、大きな感動やそれなりのカタルシスも得られなかった。なにかこう、この作品に対する態度はニュートラル、読み終えても感情はフラットで。こう書くとつまらなかったようだが、いつも通りに物語に引き込まれ、キャラに感情移入したし、私は面白く読んだ。
ただ、感情移入はできたが、共感というものはなかったので、少し距離を置いて作品を眺められたんだと思う。
表題作は幼馴染みをモノとしか思わない亮介の性格の悪さや、一途過ぎて怖いしのぶというキャラが木原作品らしいテイストで、甘さ皆無なラストが逆にBLとして面白かった。
続編「HOPE」のほうは、BLらしさはないけど、小説として面白かった。
悲惨極まりないというか、どこにも希望や救いを見出せないような話で、突き抜けているなあと。どこかで手を緩めて、辛い中にも希望が持てるようなハッピーエンドにするほうが、たぶんこのラストよりは書きやすいんじゃないかと思うのだが、最後まで手を緩めず痛い系でまとめたのは、さすが木原さん。よくここまで書いてくれたなあと。
まあ甘い話も上手い方だが、甘い話は他の作家に任せておいて、痛い系の作品で頑張ってほしいとか一瞬思ってしまった。…甘いほうが読みやすくて好きだけど。
それにしても突き抜けてるなあ。
ここまで突き抜けているせいか、許せないとか、痛すぎるという感想は出てこなかった。ドロドロ感はなくて、ひたすら殺伐としてドライなところも読みやすかったかな。
そういう世界観の中で田村の人間臭さが際立っていて、素晴らしかった。ちょっと遠くに行ってしまった(…)亮介やしのぶにしても、これが人間ってものだよなあと思えるところが多い。こんな極限状態における人間の行動や心理は想像がつかないので、その点でリアリティがあるかどうかは分からないが、人間らしいなあと思える言動が多くて、殺伐としていて倫理感や価値観を根底から揺さぶられるような展開が続くのに、どこか安心感があった。
とくに田村の悩みは特殊な状況下にあっても理解しやすいものが多かった。心情的に受け入れられる考えや決断ではなくても、そこに至った過程はすんなりと納得できる。田村が犬を殺さないでくれと頼むシーンなんてすごく気持ちが分かって、これが人間ってものではないかと。
こんな究極的なものでなくとも、生きていく上で他人は、支えになることもあれば、重荷になることもあるというのは、日常でも感じられることだし。
正しいとか間違っているとか好きとか嫌いとかは放っておいて、受け取ったものを咀嚼せずに、ゴチャゴチャしたままにしておけばいい作品だと思った。
そんなわけで後味の悪さはなく、なんだかすがすがしい気分で読み終えた。好きでもなければ苦手でもなく、もちろんまったく趣味には合わず、小説としては面白い。しかもテーマがメチャクチャ重いという、感想を書こうと思ったらえらい扱いづらい作品。けど、こういう突き詰めたものが書けるってすごいなあ。
小説の中でぐらい夢を見たい、と思うことが多いけど、小説の中でならこんな救いのなさもいいかもしれない。
有言実行。
…読み出したら一気に読めた。別に読みづらくない。
人には絶対薦めない作品。
★★★★
普段はごちゃごちゃとした感想を数値化するのが面倒で星評価はしていないのだが、今回はまとまった感想を書けそうにないし、せめて星評価でもつけておかないと読んでどう思ったかが伝わりにくそうなのでつけてみた。
以下、たいして感想らしい感想は書かないけど激しくネタバレあり。
---------------------------------------------
いくら面白かったり感動したりしても読み返したくない作品というのがたまにあるけど、これはそういうタイプの作品だと思った。
読まなければよかったとは思わないが、もう一回封印してしまいたいというか。開けてしまったプレゼントを包みなおしても元には戻らなくて、ちょっと包装紙が浮いて不恰好になった状態で奥のほうにしまいこむみたいな気分になった。
うーん。これの感想を書くならカニバリズムについて書くことは避けて通れないが、さらっと書くにはテーマが重すぎるし、きちんと書くと本の感想の範疇じゃなくなりそうだ。もちろん自分なりの感想やら意見やらはある。でも、文章能力の問題でそれを分かりやすく論理立てて書くのは私には無理。たぶん中途半端で消化不良な内容になってしまうだろうなあと。まあ、読みたい人もいないだろう…。
一応お断りしておくと、これは私の感想の書き方のスタイルの問題であって、人様がこの作品の感想を気軽に書くことに対してケチをつけたり、意見したりしているわけではありません。むしろ人様の感想が読んでみたい作品だし。
ネタバレを避けていたので他人の評価はよく知らないのだが、この作品は痛い作品という噂というか感触があった。普通自分が気に入った作品がマイナス評価だとがっかりしたり、気分が悪かったりするが、拒絶反応や抵抗感がないほうが不思議だと思えるあたり、やっぱり自分の中で特殊な位置づけの作品になったと思う。
読む前に予測していたような衝撃や読みづらさもないかわりに、大きな感動やそれなりのカタルシスも得られなかった。なにかこう、この作品に対する態度はニュートラル、読み終えても感情はフラットで。こう書くとつまらなかったようだが、いつも通りに物語に引き込まれ、キャラに感情移入したし、私は面白く読んだ。
ただ、感情移入はできたが、共感というものはなかったので、少し距離を置いて作品を眺められたんだと思う。
表題作は幼馴染みをモノとしか思わない亮介の性格の悪さや、一途過ぎて怖いしのぶというキャラが木原作品らしいテイストで、甘さ皆無なラストが逆にBLとして面白かった。
続編「HOPE」のほうは、BLらしさはないけど、小説として面白かった。
悲惨極まりないというか、どこにも希望や救いを見出せないような話で、突き抜けているなあと。どこかで手を緩めて、辛い中にも希望が持てるようなハッピーエンドにするほうが、たぶんこのラストよりは書きやすいんじゃないかと思うのだが、最後まで手を緩めず痛い系でまとめたのは、さすが木原さん。よくここまで書いてくれたなあと。
まあ甘い話も上手い方だが、甘い話は他の作家に任せておいて、痛い系の作品で頑張ってほしいとか一瞬思ってしまった。…甘いほうが読みやすくて好きだけど。
それにしても突き抜けてるなあ。
ここまで突き抜けているせいか、許せないとか、痛すぎるという感想は出てこなかった。ドロドロ感はなくて、ひたすら殺伐としてドライなところも読みやすかったかな。
そういう世界観の中で田村の人間臭さが際立っていて、素晴らしかった。ちょっと遠くに行ってしまった(…)亮介やしのぶにしても、これが人間ってものだよなあと思えるところが多い。こんな極限状態における人間の行動や心理は想像がつかないので、その点でリアリティがあるかどうかは分からないが、人間らしいなあと思える言動が多くて、殺伐としていて倫理感や価値観を根底から揺さぶられるような展開が続くのに、どこか安心感があった。
とくに田村の悩みは特殊な状況下にあっても理解しやすいものが多かった。心情的に受け入れられる考えや決断ではなくても、そこに至った過程はすんなりと納得できる。田村が犬を殺さないでくれと頼むシーンなんてすごく気持ちが分かって、これが人間ってものではないかと。
こんな究極的なものでなくとも、生きていく上で他人は、支えになることもあれば、重荷になることもあるというのは、日常でも感じられることだし。
正しいとか間違っているとか好きとか嫌いとかは放っておいて、受け取ったものを咀嚼せずに、ゴチャゴチャしたままにしておけばいい作品だと思った。
そんなわけで後味の悪さはなく、なんだかすがすがしい気分で読み終えた。好きでもなければ苦手でもなく、もちろんまったく趣味には合わず、小説としては面白い。しかもテーマがメチャクチャ重いという、感想を書こうと思ったらえらい扱いづらい作品。けど、こういう突き詰めたものが書けるってすごいなあ。
小説の中でぐらい夢を見たい、と思うことが多いけど、小説の中でならこんな救いのなさもいいかもしれない。
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ちょうど世間で木原作品に人気が出てきたころ、偶然にわたしも好みに合う作品を立て続けに読んで木原ブームになった。世間様では人気の火付け役となった(?)雑誌の特集はまったくもって関係がない。関係があってもなくてもどうでもいいが、時期がぴったり重なるんだよなあと今日気付いたので。
とにかく木原作品について心行くまで書きたいだけ書くという趣旨で書いているので、思ったことはなんでも書いておこうかと。
今回は再読したくなかったり、試しに読んでみたくなったりしない木原作品について。
メモ。
4/7 B-PRINCE文庫から『FRAGILE』発売。
2008年のいつか。 COLDシリーズ新装版。
わー、うれしーなー。ぜったいかわないとー。
うう…。『FRAGILE』は木原作品の中でもとくに性格の悪い主人公と聞いて、気の小さい私はすでに気が重くなっている。木原作品でそんなコメントされるって、どこまで…?
いや、絶対買うのは間違いないけど!
読むまでどれぐらいかかるかなー。
COLDシリーズは人気作だから再版されるのは間違いないと思って、古本屋で(法外な値段がついたセットを)見かけても買わずに耐え忍んでいたので嬉しい。
でも、買ったところで再読できるんだろうか。精神衛生上よろしくないから、あんまり読み返したくない。間違いなく佳作だと思うが、読み返すのは怖い…。しかし、あれの感想をここに書かないことには…やり残し感が強くて落ち着かん。
次回のHollyは『美しいこと』の帯によると、『NOW HERE』らしい。
私がオヤジ受好き=枯葉時代に突入したのはこの作品を読んだせいなのだが、考えてみればこれ以降まともにオヤジ受作品を読んでいないような。
この作品にはたっぷり書下ろしがついているといいなあと願うのみ。好きだけど、手放しに再読したいかどうか自分でも分からない作品。
『WELL』
先月ついに購入してしまったが、これは相当痛い系という噂。
わたしこれ読むかな?と友人に聞いてみたら、「いつでも読めるという安心感を買ったと思って、読まなくてもいいんじゃない」と言われた。
そこまで痛いのか、素晴らしいな、と感心し、そのうち読もうと決心した。そうだねー、精神状態が落ち着いていて、気力体力が充実しているときに、と思っていたのだが、それは何年後だ?
というわけで、今週中に着手しようと思う。
不言実行は無理そうなので、有言実行の方向で。
苦手作品が増えそうで楽しみだ。
前回のリストに作品追加。
好きな作品:
『恋愛時間』、『片思い』、『リベット』、『恋について』、植物シリーズ、『脱がない男』、『牛泥棒』、『美しいこと』
これだけは外せないという別枠で好きな作品:
『箱の中』、『檻の外』、COLDシリーズ
好きではないが感動したので自分の好みを無視してでも好きだと言いたい作品:
『嫌な奴』、『LOOP』、『B.L.T.』、『情熱の温度』、『ROSE GARDEN』、『さようなら、と君は手を振った』
これだけはどうしても苦手という作品:
『HOME』
とにかく木原作品について心行くまで書きたいだけ書くという趣旨で書いているので、思ったことはなんでも書いておこうかと。
今回は再読したくなかったり、試しに読んでみたくなったりしない木原作品について。
メモ。
4/7 B-PRINCE文庫から『FRAGILE』発売。
2008年のいつか。 COLDシリーズ新装版。
わー、うれしーなー。ぜったいかわないとー。
うう…。『FRAGILE』は木原作品の中でもとくに性格の悪い主人公と聞いて、気の小さい私はすでに気が重くなっている。木原作品でそんなコメントされるって、どこまで…?
いや、絶対買うのは間違いないけど!
読むまでどれぐらいかかるかなー。
COLDシリーズは人気作だから再版されるのは間違いないと思って、古本屋で(法外な値段がついたセットを)見かけても買わずに耐え忍んでいたので嬉しい。
でも、買ったところで再読できるんだろうか。精神衛生上よろしくないから、あんまり読み返したくない。間違いなく佳作だと思うが、読み返すのは怖い…。しかし、あれの感想をここに書かないことには…やり残し感が強くて落ち着かん。
次回のHollyは『美しいこと』の帯によると、『NOW HERE』らしい。
私がオヤジ受好き=枯葉時代に突入したのはこの作品を読んだせいなのだが、考えてみればこれ以降まともにオヤジ受作品を読んでいないような。
この作品にはたっぷり書下ろしがついているといいなあと願うのみ。好きだけど、手放しに再読したいかどうか自分でも分からない作品。
『WELL』
先月ついに購入してしまったが、これは相当痛い系という噂。
わたしこれ読むかな?と友人に聞いてみたら、「いつでも読めるという安心感を買ったと思って、読まなくてもいいんじゃない」と言われた。
そこまで痛いのか、素晴らしいな、と感心し、そのうち読もうと決心した。そうだねー、精神状態が落ち着いていて、気力体力が充実しているときに、と思っていたのだが、それは何年後だ?
というわけで、今週中に着手しようと思う。
不言実行は無理そうなので、有言実行の方向で。
苦手作品が増えそうで楽しみだ。
前回のリストに作品追加。
好きな作品:
『恋愛時間』、『片思い』、『リベット』、『恋について』、植物シリーズ、『脱がない男』、『牛泥棒』、『美しいこと』
これだけは外せないという別枠で好きな作品:
『箱の中』、『檻の外』、COLDシリーズ
好きではないが感動したので自分の好みを無視してでも好きだと言いたい作品:
『嫌な奴』、『LOOP』、『B.L.T.』、『情熱の温度』、『ROSE GARDEN』、『さようなら、と君は手を振った』
これだけはどうしても苦手という作品:
『HOME』
木原音瀬 ビブロス 2001/11
『片思い』と同シリーズ。
ネタバレ
『片思い』登場時から好きだった門脇が主人公なので、そういう意味では好きな作品なんだけど…。ヘタレ攻は好きだが、木原作品の(とくにメガネをかけた)ヘタレは攻であろうと受であろうと苛立つことが多くてあんまり好きじゃない。そしてそういうヘタレの相手が優しいキャラだと余計にイライラと…。
この作品でも松下がムカつく。表題作のほうでは松下がかわいそうだなと同情気味に読んでいたのだが、どっちかというとなんで門脇が松下を相手にしてるのかがよく分からないという感じだった。
続編のほうではもう…。口下手とか気が利かないとかはいいんだけど、自分が弱いことを言い訳にして、精一杯優しくして守ってくれる門脇を傷つけるのが許せなかった。自分の家族の問題に巻き込んだ上に、逆に庇われるだけで、家族にばれたらどうしようとか自分のことばっかり考えているところが最悪。男として魅力がないだけではなく、恋人としてそれはどうよって態度が多くて。
うう、門脇がいいようにこき使われているだけでも気の毒なのに。
まあでもここまで頼りにならない年上攻って新鮮かも…。悪い人ではないんだけどなあ…。
で。松下のことで引っかからなければ、とってもいい話だと思う。恋愛感情の描写が丁寧だし、切なくて感動的。それに私なんかは、男同士で同棲して明るく楽しいだけっていう話には違和感があるから、これぐらいのほうが抵抗なく読めるかも。
うーん。松下先生、少しはしっかりしてね?
『片思い』と同シリーズ。
ネタバレ
17歳も年上のあのひとが、どうして俺を好きになったんだろう? 恋愛にうとい大学生の門脇には、数学講師・松下が自分に寄せる一途な想いすら不思議で仕方ない。恋にも、数学みたいに法則があればいいのに…。 もうひとつの『片思い』、大人気シリーズの門脇編が、大量書き下ろしとともに登場! 三笠×吉本の書き下ろし短編も収録。
『片思い』登場時から好きだった門脇が主人公なので、そういう意味では好きな作品なんだけど…。ヘタレ攻は好きだが、木原作品の(とくにメガネをかけた)ヘタレは攻であろうと受であろうと苛立つことが多くてあんまり好きじゃない。そしてそういうヘタレの相手が優しいキャラだと余計にイライラと…。
この作品でも松下がムカつく。表題作のほうでは松下がかわいそうだなと同情気味に読んでいたのだが、どっちかというとなんで門脇が松下を相手にしてるのかがよく分からないという感じだった。
続編のほうではもう…。口下手とか気が利かないとかはいいんだけど、自分が弱いことを言い訳にして、精一杯優しくして守ってくれる門脇を傷つけるのが許せなかった。自分の家族の問題に巻き込んだ上に、逆に庇われるだけで、家族にばれたらどうしようとか自分のことばっかり考えているところが最悪。男として魅力がないだけではなく、恋人としてそれはどうよって態度が多くて。
うう、門脇がいいようにこき使われているだけでも気の毒なのに。
まあでもここまで頼りにならない年上攻って新鮮かも…。悪い人ではないんだけどなあ…。
で。松下のことで引っかからなければ、とってもいい話だと思う。恋愛感情の描写が丁寧だし、切なくて感動的。それに私なんかは、男同士で同棲して明るく楽しいだけっていう話には違和感があるから、これぐらいのほうが抵抗なく読めるかも。
うーん。松下先生、少しはしっかりしてね?
木原音瀬 ビブロス 2001/08
まあそんなわけで画像は出ないようで。
再版してくれないかなあ。
ちょうど再読しているときに、友人とのメールでタイムリーにこの作品のタイトルが出てきた。面白いよねー。(私信はそのうち…)
ネタバレ
吉本の意地っ張りなキャラが可愛くて、お気に入りの作品。…でも読んだのが何年も前なので、好きな作品のタイトルをあげるときに思い出せなかった。うう…。
吉本の三笠に対する態度、行動は読んでていちいち痛い。見ていて恥ずかしい、身につまされる、のほうの「痛い」だが、それがいじらしくて切ない。
ほだされた三笠の言葉には、三笠のくせに生意気〜的なムカツキがあったが……、続く。
『恋は盲目』
あれ、続編じゃなくて別の話が!と冒頭でショックを受けたが、第三者視点の続編でした。最初に読んだときも同じようにショックを受けたような。
でも、苦手な第三者視点なのに、この作品は読みやすくて全然抵抗を感じないし、恋愛面に関しても物足りなさはない。さすがだ。
で、盲目っていうか、三笠は吉本の欠点なんて身をもって知ってるよなあ…と。「蓼食う虫も好き好き」って言葉のほうを読んでて何度も思い出した。吉本、キツすぎるだろうと、吉本の視点を離れたら前半はすっかり三笠贔屓になってしまったが、やっぱり吉本は可愛かった。なんかこの続編を読んでようやく三笠のよさも分かった。
『花の宴』
うわっ。この衝撃作(すみません…)はここに収録されてたのか。でもディープなので冒頭を読んですぐに全体を思い出せた。作品の空気をきっちり覚えていたというか。
このディープさが好きだ。説明が抑え目だから余計に不気味。ぶっつり断ち切るように終わっている(と書くと異論がありそうだが、ここで終わり?!と私は思ったもので)のも、この作品らしい味なんじゃないかな。重苦しい上に衝撃の展開だけど、救いはあるし。
満足したからこそ、続編プリーズ。政宗が好きなので、ぜひ甘い続編が読みたい。
まあそんなわけで画像は出ないようで。
再版してくれないかなあ。
ちょうど再読しているときに、友人とのメールでタイムリーにこの作品のタイトルが出てきた。面白いよねー。(私信はそのうち…)
ネタバレ
吉本の友人でカミングアウトしていた三笠の、突然の結婚宣言。彼の恋愛問題に振り回されてきた吉本だが、実は彼に結婚してほしくない理由があった。思い余ったすえに吉本が取ったとんでもない行動とは!?いっぱい泣いても、きっと最後は幸せに。話題独占の大ヒット作、お待たせの登場!書き下ろし続編のほか一編も収録。
吉本の意地っ張りなキャラが可愛くて、お気に入りの作品。…でも読んだのが何年も前なので、好きな作品のタイトルをあげるときに思い出せなかった。うう…。
吉本の三笠に対する態度、行動は読んでていちいち痛い。見ていて恥ずかしい、身につまされる、のほうの「痛い」だが、それがいじらしくて切ない。
ほだされた三笠の言葉には、三笠のくせに生意気〜的なムカツキがあったが……、続く。
『恋は盲目』
あれ、続編じゃなくて別の話が!と冒頭でショックを受けたが、第三者視点の続編でした。最初に読んだときも同じようにショックを受けたような。
でも、苦手な第三者視点なのに、この作品は読みやすくて全然抵抗を感じないし、恋愛面に関しても物足りなさはない。さすがだ。
で、盲目っていうか、三笠は吉本の欠点なんて身をもって知ってるよなあ…と。「蓼食う虫も好き好き」って言葉のほうを読んでて何度も思い出した。吉本、キツすぎるだろうと、吉本の視点を離れたら前半はすっかり三笠贔屓になってしまったが、やっぱり吉本は可愛かった。なんかこの続編を読んでようやく三笠のよさも分かった。
『花の宴』
うわっ。この衝撃作(すみません…)はここに収録されてたのか。でもディープなので冒頭を読んですぐに全体を思い出せた。作品の空気をきっちり覚えていたというか。
このディープさが好きだ。説明が抑え目だから余計に不気味。ぶっつり断ち切るように終わっている(と書くと異論がありそうだが、ここで終わり?!と私は思ったもので)のも、この作品らしい味なんじゃないかな。重苦しい上に衝撃の展開だけど、救いはあるし。
満足したからこそ、続編プリーズ。政宗が好きなので、ぜひ甘い続編が読みたい。
ergo Vol.3 ~木原音瀬セレクション~
2008年2月14日 木原音瀬
木原 音瀬 蒼竜社 2008/02/12
小説目当てで買っているのに、いつもすぐに読む勇気が出なくて漫画だけ読んで閉じてしまう。
昔はどの小説でも読む前にちょっとだけ面倒というか、気が進まない感覚があったんだけど、最近は毎日読んでいるせいか、ページを開くときに気が重いということはなくなった。木原作品を除いては。
…平日に睡眠時間を削りたくないし(途中でやめられそうにない)、休みの日にゆっくり読もう。
小説目当てで買っているのに、いつもすぐに読む勇気が出なくて漫画だけ読んで閉じてしまう。
昔はどの小説でも読む前にちょっとだけ面倒というか、気が進まない感覚があったんだけど、最近は毎日読んでいるせいか、ページを開くときに気が重いということはなくなった。木原作品を除いては。
…平日に睡眠時間を削りたくないし(途中でやめられそうにない)、休みの日にゆっくり読もう。
木原音瀬 蒼竜社 2008/01/29
すごーく楽しみにしていた下巻。
確実に手に入れるために大型書店まで行き、読む時間がなくなるので慌てて帰り、睡眠時間を削って読んだ。
絶賛マークをつけておこう。
★★★★★
ネタバレ感想。
あらすじ
松岡…! なんてカッコよくて健気な人なんだろう。仕事もできる、顔もいい、性格は気が利いて気遣いができて優しい。
そんな松岡が惚れている相手として、「たいした男じゃない」寛末は全然釣り合っていない。気が利かないのも仕事ができないのも卑屈になるのも別にいい。でも無神経に松岡を傷つけるのが、ものすごくムカつく。
でも、なんで寛末なの?とは思わなかった。ちょっと無神経でかっこ悪い男はいくらでもいる(から許容範囲だ)し、優しくて誠実で一緒にいると癒される男はあんまりいない。優しさや誠実さといった長所はもとから見えづらい上に、無神経さと優柔不断さで目減りしてしまっているが、寛末は結構もてるタイプなんじゃないかと思う。一見、操縦しやすそうだし(笑)
「愛しいこと」では寛末の視点になるが、寛末がぼんやりしていて気付かなくても、松岡の健気さはしっかり示されるので、最初から結構切ない。切なければ切ない分だけ寛末にムカつくし、BLにどっぷりはまっているので、男だからって何の問題が?とかつい思ってしまった。けど、松岡が男だから付き合うのは無理っていうのは、我が身に置き換えて考えてみると、無理だよなあ…と納得できる。結婚まで考えていた女性が実は男でしたと分かるのって、普通に同性に口説かれるよりダメージが相当大きいと思う。抵抗感が生理的嫌悪にまでなってしまうというのも分かる。
そこまでは共感できるんだけど、それと松岡を振り回し続けるのは別の問題。思わせぶりなだけの寛末を遠ざけようとして、松岡は何回「お願いします」って頭を下げたんだろう…。もうこんな男さっさと忘れちゃえばいいのにって思うんだが、それができれば苦労はないわけで。それに適当に甘いことを言わない寛末の態度は、やっぱり誠実さの表れだと思うから…松岡が可哀想過ぎるけど、不器用な男に惚れちゃったから仕方がないのかなあとも思えた。
寛末にムカついて表紙の革靴で頭を殴ってやりたいと思ったりもしたが(…)、プライドがボロボロになった状態でもまだ癒し系なところに感心したり。情けないしカッコ悪いけど、魅力がある人だなあと。
それまでの経緯を考えれば上京して松岡に突き放されても当然と思ったけど、松岡が相変わらず健気なので、うまくいってほしくなった。まだ離れたくないからと寛末が松岡を引き止める場面では、寛末の頑張りに期待して応援してたし。
普通なら甘いばっかりの、思いが通じ合ってからのエッチシーンなのに、読みながらボロボロ泣いてしまった…。痛かった、切なかった。こんな場面まできてもまだ寛末に蹴りを入れたい気持ちでいっぱいになるなんて…。
ラストのメールがまた泣けた。松岡…、いじらしすぎる。
寛末にはもっとしっかり松岡を大事にしてあげてほしいと思った。
この作品はキャラの心情、行動に「なんだかよく分からないが了解」(*)と思うこともなく、納得ずくで感情移入できてよかった。
もっとこう…ガツンとくる落とし穴があるかと思っていたのだが、女性キャラも最後まで普通だったし、まあリストラは結構きつい展開だが、松岡じゃなかったので全然OK(…)。
痛さは切なさからくるものだけで、痛いけど読みやすかった。
感動した〜〜。
* 木原作品の場合、なんで相手を好きになったのか私には理解できないことも多いが、理由が分からなくても感情移入してしまい、話に引き込まれる。読んでいて「好きだってことはとりあえず了解」、みたいな気分になることが多いので。
すごーく楽しみにしていた下巻。
確実に手に入れるために大型書店まで行き、読む時間がなくなるので慌てて帰り、睡眠時間を削って読んだ。
絶賛マークをつけておこう。
★★★★★
ネタバレ感想。
あらすじ
松岡洋介は週に一度、美しく女装して街に出かけ、男達の視線を集めて楽しんでいた。
ある日、女の姿でナンパされ、散々な目に遭い途方に暮れていた松岡を優しく助けてくれた男がいた。同じ会社で働く、不器用、トロいと評判の冴えない男、寛末だった。
女と誤解されたまま寛末と会ううちに、松岡は「好きだ」と告白される。友人になりたい松岡は、女としてはもう会わないと決心するが…。
松岡…! なんてカッコよくて健気な人なんだろう。仕事もできる、顔もいい、性格は気が利いて気遣いができて優しい。
そんな松岡が惚れている相手として、「たいした男じゃない」寛末は全然釣り合っていない。気が利かないのも仕事ができないのも卑屈になるのも別にいい。でも無神経に松岡を傷つけるのが、ものすごくムカつく。
でも、なんで寛末なの?とは思わなかった。ちょっと無神経でかっこ悪い男はいくらでもいる(から許容範囲だ)し、優しくて誠実で一緒にいると癒される男はあんまりいない。優しさや誠実さといった長所はもとから見えづらい上に、無神経さと優柔不断さで目減りしてしまっているが、寛末は結構もてるタイプなんじゃないかと思う。一見、操縦しやすそうだし(笑)
「愛しいこと」では寛末の視点になるが、寛末がぼんやりしていて気付かなくても、松岡の健気さはしっかり示されるので、最初から結構切ない。切なければ切ない分だけ寛末にムカつくし、BLにどっぷりはまっているので、男だからって何の問題が?とかつい思ってしまった。けど、松岡が男だから付き合うのは無理っていうのは、我が身に置き換えて考えてみると、無理だよなあ…と納得できる。結婚まで考えていた女性が実は男でしたと分かるのって、普通に同性に口説かれるよりダメージが相当大きいと思う。抵抗感が生理的嫌悪にまでなってしまうというのも分かる。
そこまでは共感できるんだけど、それと松岡を振り回し続けるのは別の問題。思わせぶりなだけの寛末を遠ざけようとして、松岡は何回「お願いします」って頭を下げたんだろう…。もうこんな男さっさと忘れちゃえばいいのにって思うんだが、それができれば苦労はないわけで。それに適当に甘いことを言わない寛末の態度は、やっぱり誠実さの表れだと思うから…松岡が可哀想過ぎるけど、不器用な男に惚れちゃったから仕方がないのかなあとも思えた。
寛末にムカついて表紙の革靴で頭を殴ってやりたいと思ったりもしたが(…)、プライドがボロボロになった状態でもまだ癒し系なところに感心したり。情けないしカッコ悪いけど、魅力がある人だなあと。
それまでの経緯を考えれば上京して松岡に突き放されても当然と思ったけど、松岡が相変わらず健気なので、うまくいってほしくなった。まだ離れたくないからと寛末が松岡を引き止める場面では、寛末の頑張りに期待して応援してたし。
普通なら甘いばっかりの、思いが通じ合ってからのエッチシーンなのに、読みながらボロボロ泣いてしまった…。痛かった、切なかった。こんな場面まできてもまだ寛末に蹴りを入れたい気持ちでいっぱいになるなんて…。
ラストのメールがまた泣けた。松岡…、いじらしすぎる。
寛末にはもっとしっかり松岡を大事にしてあげてほしいと思った。
この作品はキャラの心情、行動に「なんだかよく分からないが了解」(*)と思うこともなく、納得ずくで感情移入できてよかった。
もっとこう…ガツンとくる落とし穴があるかと思っていたのだが、女性キャラも最後まで普通だったし、まあリストラは結構きつい展開だが、松岡じゃなかったので全然OK(…)。
痛さは切なさからくるものだけで、痛いけど読みやすかった。
感動した〜〜。
* 木原作品の場合、なんで相手を好きになったのか私には理解できないことも多いが、理由が分からなくても感情移入してしまい、話に引き込まれる。読んでいて「好きだってことはとりあえず了解」、みたいな気分になることが多いので。
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木原 音瀬 リブレ出版 2007/09
たしか発売日の数日後には手に入れていたのだが、奇抜な設定、この分厚さ(2センチぐらいかな)、加えてまったく私の趣味に合わないイラスト(レーターとしてはちょっとアクが強すぎるように思えて…)。
今年は木原ファンを名乗ろうかと思ったぐらい木原ブームだったが、なかなか読む気になれなかった。
でも手元に積読がなくなったし、年内に読んでおこうということで読んでみた。
ネタバレ。
-----------------------------------------------
読みやすかったし、面白かった。分厚いのに長いとは感じなかったし、実際それほど読むのに時間がかからなかった。
奇抜に思えた設定も、木原作品らしい設定だなあという程度だったし。話もキャラも趣味に合うかどうかというと、まったくもって趣味に合わないのだが、面白い。最後の最後まで先が気になるという読み応えに大満足。
山村が有沢に「信用できない」と切り捨てられる場面は、山村の気持ちを知っているだけに厳しすぎるように思えるのだが、なにも有沢が冷たいわけではなく、彼の立場では当然、というかむしろ誠実で好感が持てる態度で…。人や仕事に対して責任を持つってこういうことだろうな、とよく分かる。
過去に色々してきたけど、今日から心を入れ替えます、で許されないシビアさが、逆に木原作品の場合、救いになっているように思える。簡単に許されないからこそ、新たなスタートに感動できるというか。
宏国というキャラは純粋さにおいても、まわりが接する方法においても、子供と同じだなあと思った。難しいことは言っても理解してもらえないし、社会的に山村を守ってくれることは決してない。「これから一緒に頑張っていこう」なんて説教だか慰めだか分からないような言葉もかけてくれない。でも、いざとなれば命がけで守ってくれて、一緒にいれば嬉しそうな顔をし、出かければ寂しそうにする。
余計な包装が一切ない分強く感じ、愛情なんてこれだけで十分なのかもなあと考えさせられた。
恋愛より、人間同士のもっと広義での愛情について考えさせられる話だった。山村がババアにりんご飴を買ってきてあげる場面とか、落合と一緒にいる場面が優しくて印象に残った。
ラストも暖かくてよかった。
(小説138)
たしか発売日の数日後には手に入れていたのだが、奇抜な設定、この分厚さ(2センチぐらいかな)、加えてまったく私の趣味に合わないイラスト(レーターとしてはちょっとアクが強すぎるように思えて…)。
今年は木原ファンを名乗ろうかと思ったぐらい木原ブームだったが、なかなか読む気になれなかった。
でも手元に積読がなくなったし、年内に読んでおこうということで読んでみた。
ネタバレ。
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読みやすかったし、面白かった。分厚いのに長いとは感じなかったし、実際それほど読むのに時間がかからなかった。
奇抜に思えた設定も、木原作品らしい設定だなあという程度だったし。話もキャラも趣味に合うかどうかというと、まったくもって趣味に合わないのだが、面白い。最後の最後まで先が気になるという読み応えに大満足。
山村が有沢に「信用できない」と切り捨てられる場面は、山村の気持ちを知っているだけに厳しすぎるように思えるのだが、なにも有沢が冷たいわけではなく、彼の立場では当然、というかむしろ誠実で好感が持てる態度で…。人や仕事に対して責任を持つってこういうことだろうな、とよく分かる。
過去に色々してきたけど、今日から心を入れ替えます、で許されないシビアさが、逆に木原作品の場合、救いになっているように思える。簡単に許されないからこそ、新たなスタートに感動できるというか。
宏国というキャラは純粋さにおいても、まわりが接する方法においても、子供と同じだなあと思った。難しいことは言っても理解してもらえないし、社会的に山村を守ってくれることは決してない。「これから一緒に頑張っていこう」なんて説教だか慰めだか分からないような言葉もかけてくれない。でも、いざとなれば命がけで守ってくれて、一緒にいれば嬉しそうな顔をし、出かければ寂しそうにする。
余計な包装が一切ない分強く感じ、愛情なんてこれだけで十分なのかもなあと考えさせられた。
恋愛より、人間同士のもっと広義での愛情について考えさせられる話だった。山村がババアにりんご飴を買ってきてあげる場面とか、落合と一緒にいる場面が優しくて印象に残った。
ラストも暖かくてよかった。
(小説138)
木原音瀬 蒼竜社 2007/11
お待ちしておりました!
8月からかな? 年内に出るらしいと聞いて、すごくすごく待ち遠しかった。やっと読めたよ〜〜!
なぜそんなに楽しみだったかというと、私の趣味に合っているはずだと友人が教えてくれたから。勧められてまず外れたことがない(はまるところまでいかなくても、満足できる)ので、これは期待していいんじゃないかと思っていた。というか激しく期待していた。
きちんとした感想は下巻読了後まで持ち越すけど、とりあえず読後感だけ。
ネタバレ。
-----------------------------------------------------
うおお〜〜、メチャクチャ好みだ!! 激しく好きだ!!
だいたい木原さんの仕事のできる強気リーマン(社会人)受は趣味に合うので、松岡が趣味に合う。BL系で女装するキャラは苦手なのだが、その女装癖さえツボにはまっていた。
女装について。
実は以前これとほぼ同じ設定の小説を読んだことがある。まあ女装ネタは珍しくもないと思うし。(木原さんの作品のほうが発表が早いのだが、私は雑誌掲載を読んでいないので順番が逆になった)
女装した受が街で会社の冴えない同僚(上司)と偶然会ってしまい、とっさに口のきけないフリをしてその場を切り抜けようとするが、熱烈に惚れられてしまい、断りきれずにデートを繰り返し…って話。
でもその作品は全然趣味に合わなかった。もちろん木原作品が元から私の趣味だからってこともあるが、女装がね。その話はロリータ系でちょいイロモノが入ってたから、なんだかついていけなかった。…どうせなら美少女より美女のほうが好きなのよ。
で、松岡の女装はそこらへんの女よりずっと綺麗に仕上がる、しかもストレス発散のための女装という納得のいく理由つき。あくまで自分の趣味で。しかも女性に憧れているわけじゃないってところがポイントかな。まあ私の趣味に合うかどうかという意味でのポイントだけど。
スーツをビシッと着こなすキャラが好きなように、女装して(素材で女性に見えるわけではなく、きちんとメイクして着飾った上で)大人の女性の美しさがあるキャラというのも好きだ。
テイスト。
寛末は木原作品では珍しくない、優しくて冴えない要領の悪いヘタレ攻。メソメソ泣かないあたり、私には好感触。
この攻が熱烈に押してきて受は余裕でいたのに、途中で立場が逆転するところが木原テイスト。逆転してからの切なさがたまらなくいいと思う。
痛さ。
ガツンとやられたが、今のところ平和で安心している。でも下巻の展開がものすごく怖い。もう何回かガツンガツンとやられそうで不安。
会社(同期の福田とか)に女装趣味がバレるんじゃないかとか、最初にホテルに置いてきてしまった財布に身元が分かるようなものが入っていただろうし大丈夫なのかとか。
それより木原作品の女性キャラはどう化けるか分からんので(たいがいトラブルの元だ…)、二人も出てきてるよ、こえー、とか。
二人のこれからの関係以前のところで不安材料がいっぱいで……。妄想が逞しすぎるかもしれないが、うう、本当に怖い。初冬の怪談か…ってぐらい怖い。
あー、下巻が楽しみだ…。読むまで安心できない……。
読後感だけじゃなくなったような…。なんか予定より長くなったな。
とにかく松岡も寛末もすごく優しいけど人間味あふれる弱さも持っていて、感情移入しやすいし、魅力的。
そんなわけで上巻読了直後の感想としては、かなり趣味に合ったし、1月の下巻発売が今から待ち遠しい。
(小説126)
お待ちしておりました!
8月からかな? 年内に出るらしいと聞いて、すごくすごく待ち遠しかった。やっと読めたよ〜〜!
なぜそんなに楽しみだったかというと、私の趣味に合っているはずだと友人が教えてくれたから。勧められてまず外れたことがない(はまるところまでいかなくても、満足できる)ので、これは期待していいんじゃないかと思っていた。というか激しく期待していた。
きちんとした感想は下巻読了後まで持ち越すけど、とりあえず読後感だけ。
ネタバレ。
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うおお〜〜、メチャクチャ好みだ!! 激しく好きだ!!
だいたい木原さんの仕事のできる強気リーマン(社会人)受は趣味に合うので、松岡が趣味に合う。BL系で女装するキャラは苦手なのだが、その女装癖さえツボにはまっていた。
女装について。
実は以前これとほぼ同じ設定の小説を読んだことがある。まあ女装ネタは珍しくもないと思うし。(木原さんの作品のほうが発表が早いのだが、私は雑誌掲載を読んでいないので順番が逆になった)
女装した受が街で会社の冴えない同僚(上司)と偶然会ってしまい、とっさに口のきけないフリをしてその場を切り抜けようとするが、熱烈に惚れられてしまい、断りきれずにデートを繰り返し…って話。
でもその作品は全然趣味に合わなかった。もちろん木原作品が元から私の趣味だからってこともあるが、女装がね。その話はロリータ系でちょいイロモノが入ってたから、なんだかついていけなかった。…どうせなら美少女より美女のほうが好きなのよ。
で、松岡の女装はそこらへんの女よりずっと綺麗に仕上がる、しかもストレス発散のための女装という納得のいく理由つき。あくまで自分の趣味で。しかも女性に憧れているわけじゃないってところがポイントかな。まあ私の趣味に合うかどうかという意味でのポイントだけど。
スーツをビシッと着こなすキャラが好きなように、女装して(素材で女性に見えるわけではなく、きちんとメイクして着飾った上で)大人の女性の美しさがあるキャラというのも好きだ。
テイスト。
寛末は木原作品では珍しくない、優しくて冴えない要領の悪いヘタレ攻。メソメソ泣かないあたり、私には好感触。
この攻が熱烈に押してきて受は余裕でいたのに、途中で立場が逆転するところが木原テイスト。逆転してからの切なさがたまらなくいいと思う。
痛さ。
ガツンとやられたが、今のところ平和で安心している。でも下巻の展開がものすごく怖い。もう何回かガツンガツンとやられそうで不安。
会社(同期の福田とか)に女装趣味がバレるんじゃないかとか、最初にホテルに置いてきてしまった財布に身元が分かるようなものが入っていただろうし大丈夫なのかとか。
それより木原作品の女性キャラはどう化けるか分からんので(たいがいトラブルの元だ…)、二人も出てきてるよ、こえー、とか。
二人のこれからの関係以前のところで不安材料がいっぱいで……。妄想が逞しすぎるかもしれないが、うう、本当に怖い。初冬の怪談か…ってぐらい怖い。
あー、下巻が楽しみだ…。読むまで安心できない……。
読後感だけじゃなくなったような…。なんか予定より長くなったな。
とにかく松岡も寛末もすごく優しいけど人間味あふれる弱さも持っていて、感情移入しやすいし、魅力的。
そんなわけで上巻読了直後の感想としては、かなり趣味に合ったし、1月の下巻発売が今から待ち遠しい。
(小説126)
ROSE GARDEN
2007年11月9日 木原音瀬
木原音瀬 蒼竜社 (1)2005/9、(2)2005/11
木原ファンタジー。
痛くて重苦しそうだし、どんな恐ろしい世界観なのだろうと怖くてあんまり読みたくなくて、どうしたものかと9月半ばから2ヶ月近くも悩んでいたのだが、疲れているときに自棄になって読み始めたら、面白くて一気読みしてしまった。
読めば面白いんだけど、読み始めるまでが辛い。
うーん、別のイラストで読みたかったな。あんまり好きじゃない。でも1(1巻ではなく雑誌掲載分という意味)のラストのイラストは綺麗だー。
激しくネタバレ。
-------------------------------------------------
関係性。
嘘つきでワガママで自分の都合しか考えない子供っぽい天使と、心優しい悪魔と人間のハーフの話。
この設定からして、すでに木原作品らしさが滲み出ているが、さらに二人の関係性もいつものパターン。一人が徹底的に片思いをしていて、相手には徹底的に嫌われているが、隠されているので気付かない、という構図。FTであっても相変わらず痛い関係性だ。
そこから転機が訪れて、ある日いきなり嫌っていた相手への愛に目覚めるというのも木原作品らしい。幸せは失ってみないと気付かないし、愛情は離れてみないと自覚できない、というようなことをガツンと現実の厳しさとともにぶつけてくる。そこからの主人公の一途さや成長していく様子がいつも感動的で、同じような構成を取っていてもそれぞれの作品ごとの味わいは薄れず、飽きるようなことはない。
ファンタジー。
ファンタジーといっても剣と魔法の世界での冒険譚ではない。天使という存在がものすごく俗っぽく、人間世界とたいして変わりがないように思えるところも、やけに夢がなくて木原作品らしいと思った。それならFTじゃなくてもいいのかというと、そうでもない。FTらしい味付けがしっかりされていて、そういう意味でも楽しく読めた。ウォーレンの過去の話なんて辛いばかりの話だが、ストーリーにぐいぐい引き込まれた。
それと天使に神聖を感じさせない設定が、ウォーレンの存在と対比させずにはいられず、行間でものすごく活きていると思った。
BL。
BLらしさは2の途中でかなり薄れる。でも、やっぱり大前提がBLらしいと思う。そばにいないと守れないという設定は、BL読者としてかなり好みだ。1ではウォーレンの片思いが切なく、2ではカイルの愛情が育っていく過程にじんわりする。根底はしっかりラブストーリーになっているところがいい。
以上、前置き終わり。
覚悟はしていたが、ウォーレンの凄惨な生い立ち、不幸な人生、同情せずにはいられない現在(カイルと同居している時期)の生活、すべてが痛い。弱さのためにカイルを傷つけてしまう場面なども、どちらかといえばウォーレンに同情して痛みを感じてしまう。でもそれだけの過酷な運命と弱さを持っていて、なおも優しさを持ち続けるウォーレンの生き方と強さには胸を打つものがある。そしてそうした背景が描かれているからこそ、ウォーレンの穏やかな人柄に魅力を感じ、スネアたちがウォーレンに与えてくれる小さな幸せをより一層暖かく感じさせてくれるのかもしれない。
一方でカイルの愚かさが際立ってしまうのだが、彼の立場にしてみれば、ウォーレンのしたことを許せないのは当たり前だと私は思った。確かに暴言ではあったが…今までの生活のすべてを奪われて、毎日命の危険に晒されていれば、相手を憎まずにはいられないだろう。それにカイルは愚かだけど、スネアに見せる愛情などを見ていると、純粋性を感じて、なんだか可愛い。
2は小説としてすごく面白かった。天界を去って地上に降りた天使が、世間を知り、善や悪について自分で考えるようになり、辛い目にあいながらも、優しい人の力を借りて愛情や思いやりを身につけていく姿が感動的だ。
BLとしては弱い…と読んでいる間は思っていたが、この感想を書きながら思い返してみたらそうでもなかった。
ウォーレンに会いに行ったものの、素直になれずに傷つけてしまい、告白しても信じてもらえず、失恋して自殺未遂をし(さすが木原作品…すごい展開だ)、ボロボロになってたどり着いた町で娼婦に拾われる。ここまではいいとして、ここからがちょっと恋愛ものらしさが足りないかなと思っていたのだが、ウォーレンに会うのが怖いと思い、失恋を受け入れていきながら、自分勝手なままだった愛情の形が少しずつ、穏やかで深いものになっていっていくところがいい。その間に二人を結びつけるものはブローチの話ぐらいだが、カイルが結婚するウォーレンの幸せを願えるようにまでなり、本当に困っているのにウォーレンを頼ろうとせず、ただ死ぬ前に一目だけでも会いたいと思うほど、強くて純粋な愛情を育てるまでに必要な道筋だったのだと、読み終わってしばらくしてからやっと気付いた。
恋愛ものとしても感動的だったが、もっと広義の愛情や善悪についてまで考えさせられる深い話だった。しかも物語性が強くて、最後まで話に引き込まれたままだった。
いい話を読んだ。
贅沢をいえば、もうちょっと幸せになってからの二人を読ませてもらいたかったなあ。
(小説121)
木原ファンタジー。
痛くて重苦しそうだし、どんな恐ろしい世界観なのだろうと怖くてあんまり読みたくなくて、どうしたものかと9月半ばから2ヶ月近くも悩んでいたのだが、疲れているときに自棄になって読み始めたら、面白くて一気読みしてしまった。
読めば面白いんだけど、読み始めるまでが辛い。
うーん、別のイラストで読みたかったな。あんまり好きじゃない。でも1(1巻ではなく雑誌掲載分という意味)のラストのイラストは綺麗だー。
激しくネタバレ。
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関係性。
嘘つきでワガママで自分の都合しか考えない子供っぽい天使と、心優しい悪魔と人間のハーフの話。
この設定からして、すでに木原作品らしさが滲み出ているが、さらに二人の関係性もいつものパターン。一人が徹底的に片思いをしていて、相手には徹底的に嫌われているが、隠されているので気付かない、という構図。FTであっても相変わらず痛い関係性だ。
そこから転機が訪れて、ある日いきなり嫌っていた相手への愛に目覚めるというのも木原作品らしい。幸せは失ってみないと気付かないし、愛情は離れてみないと自覚できない、というようなことをガツンと現実の厳しさとともにぶつけてくる。そこからの主人公の一途さや成長していく様子がいつも感動的で、同じような構成を取っていてもそれぞれの作品ごとの味わいは薄れず、飽きるようなことはない。
ファンタジー。
ファンタジーといっても剣と魔法の世界での冒険譚ではない。天使という存在がものすごく俗っぽく、人間世界とたいして変わりがないように思えるところも、やけに夢がなくて木原作品らしいと思った。それならFTじゃなくてもいいのかというと、そうでもない。FTらしい味付けがしっかりされていて、そういう意味でも楽しく読めた。ウォーレンの過去の話なんて辛いばかりの話だが、ストーリーにぐいぐい引き込まれた。
それと天使に神聖を感じさせない設定が、ウォーレンの存在と対比させずにはいられず、行間でものすごく活きていると思った。
BL。
BLらしさは2の途中でかなり薄れる。でも、やっぱり大前提がBLらしいと思う。そばにいないと守れないという設定は、BL読者としてかなり好みだ。1ではウォーレンの片思いが切なく、2ではカイルの愛情が育っていく過程にじんわりする。根底はしっかりラブストーリーになっているところがいい。
以上、前置き終わり。
覚悟はしていたが、ウォーレンの凄惨な生い立ち、不幸な人生、同情せずにはいられない現在(カイルと同居している時期)の生活、すべてが痛い。弱さのためにカイルを傷つけてしまう場面なども、どちらかといえばウォーレンに同情して痛みを感じてしまう。でもそれだけの過酷な運命と弱さを持っていて、なおも優しさを持ち続けるウォーレンの生き方と強さには胸を打つものがある。そしてそうした背景が描かれているからこそ、ウォーレンの穏やかな人柄に魅力を感じ、スネアたちがウォーレンに与えてくれる小さな幸せをより一層暖かく感じさせてくれるのかもしれない。
一方でカイルの愚かさが際立ってしまうのだが、彼の立場にしてみれば、ウォーレンのしたことを許せないのは当たり前だと私は思った。確かに暴言ではあったが…今までの生活のすべてを奪われて、毎日命の危険に晒されていれば、相手を憎まずにはいられないだろう。それにカイルは愚かだけど、スネアに見せる愛情などを見ていると、純粋性を感じて、なんだか可愛い。
2は小説としてすごく面白かった。天界を去って地上に降りた天使が、世間を知り、善や悪について自分で考えるようになり、辛い目にあいながらも、優しい人の力を借りて愛情や思いやりを身につけていく姿が感動的だ。
BLとしては弱い…と読んでいる間は思っていたが、この感想を書きながら思い返してみたらそうでもなかった。
ウォーレンに会いに行ったものの、素直になれずに傷つけてしまい、告白しても信じてもらえず、失恋して自殺未遂をし(さすが木原作品…すごい展開だ)、ボロボロになってたどり着いた町で娼婦に拾われる。ここまではいいとして、ここからがちょっと恋愛ものらしさが足りないかなと思っていたのだが、ウォーレンに会うのが怖いと思い、失恋を受け入れていきながら、自分勝手なままだった愛情の形が少しずつ、穏やかで深いものになっていっていくところがいい。その間に二人を結びつけるものはブローチの話ぐらいだが、カイルが結婚するウォーレンの幸せを願えるようにまでなり、本当に困っているのにウォーレンを頼ろうとせず、ただ死ぬ前に一目だけでも会いたいと思うほど、強くて純粋な愛情を育てるまでに必要な道筋だったのだと、読み終わってしばらくしてからやっと気付いた。
恋愛ものとしても感動的だったが、もっと広義の愛情や善悪についてまで考えさせられる深い話だった。しかも物語性が強くて、最後まで話に引き込まれたままだった。
いい話を読んだ。
贅沢をいえば、もうちょっと幸せになってからの二人を読ませてもらいたかったなあ。
(小説121)
吸血鬼と愉快な仲間たち Vol.2
2007年10月16日 木原音瀬
木原音瀬 蒼竜社 2007/10
木原吸血鬼第2弾。ギャッギャッ。
ネタバレ
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吸血鬼っていうか、ヘタレ蝙蝠だよなあ。
そんなわけで、小説としては面白く読んでいるが、吸血鬼ものとしてはさっぱり…。別にそれでいいんだけど、私の中では吸血蝙蝠ものって位置づけになりつつある(笑)
にしても、密林レビューでも書いている方がいらしたが、制約の多い吸血鬼ものだ。でも、鏡には映るのねー。
うーん、まだ続くんですか…。続くのは嬉しい! けど、もうちょっとラブを期待してました…。
これについては酒入の台詞「同性愛的嗜好はないって言っても、やっていることはゲイライフ」(P108)に大きく頷いておきたい。今回、いちばん心に残った台詞だ。
けどまあ、ヘタレ蝙蝠と暁の心の交流が丁寧で恋愛未満でも十分楽しい。
で、1巻ではまあどっちがどっちでもいいかも?と思っていたが、ヘタレ蝙蝠には攻になってもらいたいなあと強く希望。…受にはもうちょっと色気が欲しいっていうか。毎回、裸とか脳とか内臓を人目に晒すなんて、露出が多すぎて。そういうものは慎み深く隠さないとね、受としては。攻なら細かいことは言わず、大目に見てもいい。
室井がけっこう気に入ったので、津野はどうだろうとか密かに思っている。でもその前に、忽滑谷がいつ柳川を…というのが気になるが。勝手に決定事項にしてるのは、カップルになったら面白そうだから。
ついでに記録。
『吸血鬼と愉快な仲間たち』 (小説16)
(小説102)
木原吸血鬼第2弾。ギャッギャッ。
ネタバレ
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吸血鬼っていうか、ヘタレ蝙蝠だよなあ。
そんなわけで、小説としては面白く読んでいるが、吸血鬼ものとしてはさっぱり…。別にそれでいいんだけど、私の中では吸血蝙蝠ものって位置づけになりつつある(笑)
にしても、密林レビューでも書いている方がいらしたが、制約の多い吸血鬼ものだ。でも、鏡には映るのねー。
うーん、まだ続くんですか…。続くのは嬉しい! けど、もうちょっとラブを期待してました…。
これについては酒入の台詞「同性愛的嗜好はないって言っても、やっていることはゲイライフ」(P108)に大きく頷いておきたい。今回、いちばん心に残った台詞だ。
けどまあ、ヘタレ蝙蝠と暁の心の交流が丁寧で恋愛未満でも十分楽しい。
で、1巻ではまあどっちがどっちでもいいかも?と思っていたが、ヘタレ蝙蝠には攻になってもらいたいなあと強く希望。…受にはもうちょっと色気が欲しいっていうか。毎回、裸とか脳とか内臓を人目に晒すなんて、露出が多すぎて。そういうものは慎み深く隠さないとね、受としては。攻なら細かいことは言わず、大目に見てもいい。
室井がけっこう気に入ったので、津野はどうだろうとか密かに思っている。でもその前に、忽滑谷がいつ柳川を…というのが気になるが。勝手に決定事項にしてるのは、カップルになったら面白そうだから。
ついでに記録。
『吸血鬼と愉快な仲間たち』 (小説16)
(小説102)
『黄色いダイアモンド』 木原音瀬 2000/8
え、これ、BBNなの……。最初からカバーをかけて読んでたから気付かなかった。てっきりアイスだとばかり。アイスらしい思い切った設定とか思ってたのに。考えてみれば、植物シリーズ3冊目も結構自由な設定だし、こういうのもありか。でもあっちは一応攻が医者だけど、この作品は。うーん。意外と大らかだったんだね。
木原作品を2冊続けて読んじゃったので、ちょっと疲れた。猫舌なのに熱いうちに食べちゃって火傷しちゃったみたいな感じ。
いくら好物でも、よく冷ましてから食べないとね。
ネタバレ
---------------------------------------------------
面白いんだけど、どうしたものかな。読み終わったときに感想をどう書くかで悩んでしまった。
表題作のほうはよかった。読みやすかったし、わりと流れに沿った話だったし。これだけ欠点を並べ立てながら、きっちり魅力のある人物を書けるのって、いつものことながらすごい。
続編は勇視点だろうと勝手に思い込んでいたので、「歯が痛い」で息子視点だったので驚いた。読み始めてすぐに、そうか、あれだ、息子の成長を描きつつ第三者視点で二人のその後を……と思ったのだが、つまんない予想しちゃってすみませんって気分。そうきますか。そこまで踏み込みますか。しかもそこで終わりですか。
あ、別に気に入らなかったわけではなく、単にものすごく驚いただけで。BLというよりは親子愛がテーマみたいな話だが、BLらしくする必要なんて何もないと思わせられる。これがまた感動的で。しかも結構痛い話なのに読みやすくて、とにかく読み応えがあって面白い。
なんだかいろいろ解決していない話なのだが、じゃあ全部の問題や悩みが解決して、主人公が最高に幸せ、みたいな100%のハッピーエンドならよかったとも思えない。そういう話も悪くないが、この作品には合わないし、それだと心に残らなかった気がする。すっきり解決に持っていかずに、そんなに状況に変化はないんだけど、でも一応気持ちの上で乗り越えてるあたりがいいんじゃないかと。
読みづらい設定、展開で読ませるなあ。さすがだなあ。
(小説99)
え、これ、BBNなの……。最初からカバーをかけて読んでたから気付かなかった。てっきりアイスだとばかり。アイスらしい思い切った設定とか思ってたのに。考えてみれば、植物シリーズ3冊目も結構自由な設定だし、こういうのもありか。でもあっちは一応攻が医者だけど、この作品は。うーん。意外と大らかだったんだね。
木原作品を2冊続けて読んじゃったので、ちょっと疲れた。猫舌なのに熱いうちに食べちゃって火傷しちゃったみたいな感じ。
いくら好物でも、よく冷ましてから食べないとね。
ネタバレ
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面白いんだけど、どうしたものかな。読み終わったときに感想をどう書くかで悩んでしまった。
表題作のほうはよかった。読みやすかったし、わりと流れに沿った話だったし。これだけ欠点を並べ立てながら、きっちり魅力のある人物を書けるのって、いつものことながらすごい。
続編は勇視点だろうと勝手に思い込んでいたので、「歯が痛い」で息子視点だったので驚いた。読み始めてすぐに、そうか、あれだ、息子の成長を描きつつ第三者視点で二人のその後を……と思ったのだが、つまんない予想しちゃってすみませんって気分。そうきますか。そこまで踏み込みますか。しかもそこで終わりですか。
あ、別に気に入らなかったわけではなく、単にものすごく驚いただけで。BLというよりは親子愛がテーマみたいな話だが、BLらしくする必要なんて何もないと思わせられる。これがまた感動的で。しかも結構痛い話なのに読みやすくて、とにかく読み応えがあって面白い。
なんだかいろいろ解決していない話なのだが、じゃあ全部の問題や悩みが解決して、主人公が最高に幸せ、みたいな100%のハッピーエンドならよかったとも思えない。そういう話も悪くないが、この作品には合わないし、それだと心に残らなかった気がする。すっきり解決に持っていかずに、そんなに状況に変化はないんだけど、でも一応気持ちの上で乗り越えてるあたりがいいんじゃないかと。
読みづらい設定、展開で読ませるなあ。さすがだなあ。
(小説99)