木原 音瀬 オークラ出版 2000/11

面白かった。満足。
原作を読んだので、漫画のほうもやっと読めた。

がっつりネタバレ

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あんまり痛くないなーと読み始めた。
攻の誠一はサイテー男だが、本当に悪い人間というわけではないしマヌケだし、憎めないタイプだと思う。
啓介のほうはどこまで分かっているのかな、と読みながらずっと気になっていた。最後に全部分かっていたのだと判明したときは、すっきりしたというか、なんというか。
誠一を突き放して終わるラストはかなり好み。誠一に思い知ってほしかったわけではなく、こういう愛の形って切なくていいなあと。失恋ものでしか味わえない深みと余韻が感じられてよかった。

「君は〜」のほうは、誠一を信じきれない啓介の哀しい心情を描いていくのかと思っていたら…。「さようなら〜」のほうが派手な雰囲気なのに全体は淡々としていたのに対し、こちらは穏やかそうに見えて激しい愛の話だった。
BLセオリー的には、子供を引き取ることになった時点で、啓介が遠慮→ 誠一が包容力を見せる→ 家族ものって流れになるはずだし、そういう風にキレイにまとめても十分面白かったと思うのだが、木原作品ですから、やっぱりガツンと。
…子供の前でやってしまったこと以外は、実はそう特異なことでもない。子供より妻が大事なんて男は世の中にいくらでもいると思うし、恋人か子供かという究極の選択――崖に恋人と子供がぶら下がっていたら、どっちを助ける?ってやつ、をあえてする必要もないはず。家族への愛と恋人への愛は別物でいいはずというか。
そこらへん曖昧にしとけばキレイに終わるのに、やっぱり選ばせてしまう。それで子供を選ばなかったことでこの愛が汚いものになってしまうかというと、もちろんそんなこともない。恋愛がキレイなだけのものじゃないことなんて、最初から分かってるし。
ドロドロとしたものを内包しながらも、一心に相手を求める姿は、ある意味ではやっぱり綺麗な愛の形なんじゃないかと思う。
ちょっと激しすぎる気はするが、感動的な話だった。

と、ここで終わっておけばいいものを、やっぱり木原作品。もっと先まで行きます。もうかなり立ち入り禁止区域だけど、行けるところまで行きます。
書き下ろしは精神的な意味で捨てられてしまった子供の話。なんだかんだいって父親も父親の恋人も可愛がってくれて…って話になってほしいなと願っていたが、もちろんそんな甘ったるい話にはならなかった。愛に飢えて、逃げ込んだ先でさらに…っていうなんだかあらすじを書くと悲惨な話だった。
でもこの恋?の結末は明るいものじゃないにしても、次に恋する相手と幸せになるかもしれない。父親を見ていれば、そう悲観的になることもないような気がする。
うーん、明るい話じゃなかったんだけど、後味は不思議とそんなに悪くなかった。

(小説98)
木原音瀬 蒼竜社 2007/09/29

帰宅したら届いていた…。
はっきりいって読むのが怖かったのだが、明日の晩まで気にし続けることになりそうなので思い切って読んだ。
あーー、よかった。天野先生、ありがとうございます…。ご自分の作品より丁寧だったのが嬉しかったです。
下書きの線を消してからペン入れしてほしいなんて思ったりもしたが、それは無茶だった。下書きの線を消したら原稿は真っ白でペン入れできないはず…(笑)
はー、よかった。天野先生はストーリーも上手いし、ひとまず安心と本を置いたが、どうなんだろう。どうなんだろう…。やっぱり漫画で続編を描いているってことは、もう小説で続編は出ないということなんだろうか。
うう、もう一回小説で初芝先生に会いたい〜。初芝先生、好きです〜。

うーん、そして小説はやっぱり読む気になれないまま、今日は時間切れ。
ちなみに『Rose〜』と『さようなら〜』は小説が未読なので読めなかった。早く読まねば…。

プレイス

2007年9月20日 木原音瀬
木原 音瀬 オークラ出版 1999/12

趣味を語るネタバレ感想。

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あらすじ引用
横山には、嘘を見わける力があった。それは天使の父からもらった二つの物…羽と、もうひとつの資質だった…。


可愛らしい設定だ。木原作品なのに…。でも、羽つきが攻で普通の容姿(美形じゃない)ってところがちょっと外してるかも。まあ私はそのほうが好みだが。
この羽が動いている描写がなんだかとっても可愛くて、いいなあ天使、とかちょっと思ってしまった。

加賀は不器用だから口が悪いという人で、仕事ができるヘタレ受。最初は攻かと思い込んでいたが違った。
とにかく可愛げがない。受なのにここまで可愛げがなくていいのだろうか。私の趣味としては受は可愛いくないほうがいいのだが、可愛げはほしいような気がする。
と思っていたら、だんだん可愛くなってきた。「ライアー」までは加賀の不器用さが痛快ですらある。
けど、続く書き下ろしの「スロウ」では、加賀の不器用さ加減が可愛げを通り越して、迷惑なものになってくる。なんか普通に接してもらってるのに、いや、かなり優しく接してもらっているのに怒っていたりする。なんだこいつ…と加賀の怒りっぽさ、自分勝手さにだんだん読んでいてイラついてきた。いくら年下で不器用な性格でも、ここまで甘えるのはダメだろうと。振り回される横山が気の毒になり、なんだかなあと読み終わった。
ラストで横山が溜め込んでいたもっともな言い分を並べ立てるのだが、そこで加賀だけが悪いわけじゃない、とも言っていたので、そうかなあと思いつつ本を閉じ、少したってから読み返してみた。
確かにそうかも、と思えた。いや横山が悪いとは思わなかったが、加賀の取り扱いが下手なのは確かというか…。
それにしても横山はいい人だ。加賀にはもっと反省して寛大な人になってもらいたい。

木原作品でアイスなのにこんな読みやすい話って珍しいなあと2作読み終えて、油断していたら書き下ろしでちょっときた…。ああ、痛いというわけではなく。きたんですよ。

(小説87)
積読がいっぱいあるのに再読なんて、とずっと我慢していたのだが、一昨日ついに我慢できなくなって植物シリーズの1冊目『WEED』を再読してしまった。
7月に感想を書いたばかりだし、また感想を書いたらしつこいかなあと思ったのだが、今日は他に書くこともないので書いてしまおうかと。

木原 音瀬 『WEED』、『FLOWER』再読感想。

三部作全てに対し完全ネタバレな上に、既読の方じゃないと意味が分からない点が多いかもしれません。

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BLの感想を書くのに自分のモラルの低さを告白しなくてはいけないとは…。
(いや勝手に告白するだけだが…)
「ムリヤリは犯罪です」、「陵辱系は楽しめません」と過去に何度も書いてきたが、この作品は好きだ。いままでそれについて、単に若宮と谷脇というキャラが好きで、いじらしい恋心に感動したからだろうと思い込んでいたが、もっと分かりやすい理由に気付いてしまった。
…加害者視点だからだ。
陵辱ものは大抵、被害者の視点だと思うが(それじゃなくてもBLは受視点のほうが多いし)、これは主人公が加害者で、しかも「好きだから思い余って」とかいう理由じゃなく、ただの憂さ晴らし。当然この時点では感情移入などできないので、読んでいてものすごく楽。ここで被害者に同情して読みづらいとは思わない。要するに他人事なのでOKということらしい。うわ、最低…。
感情移入しないでストーリーを追っているだけの状態ってだけで、別に許容しているわけではないです、と一応言い訳しておく。

うだうだ書いてきたが、今回『WEED』は谷脇の出ているところだけ拾い読みするつもりで読み始めた。が、冒頭から出てくるので、つい話に引き込まれてしまい、結局全部通しで読んだ。相変わらず、若宮がカッコ悪くて可愛い。ヘタレとはまた別の魅力があるなあと。
最初に読んだときは谷脇×若宮だったら趣味にぴったりなのにと思っていたのだが、今回ちょっと具体的に妄想しかけて後悔した。遊びならともかく、本気になられたりしたら怖い……。そんなもの、読まされなくてよかった。
前回はどっぷり若宮に感情移入していたのであんまり思わなかったが、岡田…我慢強いなあ。さすが雑草くん。アメリカでも頑張ってくれ…。
『FLOWER』はやっぱり涙なしには読めなかった。無自覚の行動の一つ一つが…。なんでそんなに自分の気持ちに鈍感なんだか…。
後半は場面ごとに松本はこのとき何を思っていたのだろうと考えてしまい、つらかった。友人の言葉を通してしか語られることのなかった本音がものすごく悲しい。
読み終わってぼけーっとしてるときに思い出したのが、谷脇が若宮に言ったこの台詞。
タイトルにかかっていなければ見落としてしまったかもしれないが、かなり深い。『FLOWER』読了後に思い出すと悲しくなる。
以下、引用。
「お前にはあいつが綺麗な『お花』に見えるんだろう。俺にとっちゃただの雑草だけどな」(『WEED』P87)

情熱の温度

2007年9月11日 木原音瀬
『情熱の温度』 木原音瀬 1999/08

別に好んで選んでいるわけでもないのに、また攻がかっこいい作品に当たった。そういう時期なのか…。

ネタバレ感想。

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あとがきを読んで、つい笑ってしまった。いま手元に本がないから、引用できないけど。「教師と生徒という組み合わせは王道」というようなことを書かれていて。
その組み合わせは確かに王道かもしれませんが、ですけど…。
その王道設定で、生徒に嫌われている暗い35歳教師受(もちろん美形ではない)を持ってくるあたり、すごいです。王道だってことに気付きませんでしたよ(笑)

この作品も攻の吉川がなぜ泉野を好きになったのかは、あまり分からない。
…なんというかこう、頑なだった泉野がちょっとずつ心を開いてきて仲良くなっていく段階は読んでいて楽しかったので、まあ気持ちは分からなくもない。自分の半分しか生きていない生徒に甘えっぱなしの泉野には誰もが納得するような魅力は乏しいけど、一緒にいる間にだんだん情が移ってしまったような感があり、まあ吉川がそこまで好きだというなら、それでいいのかなーと最初は思っていた。
だが泉野視点になってからは、なんだか吉川が可哀想になってきてしまった。泉野に散々尽くしているのに(隣の部屋に引っ越してくるのは行きすぎだと思うが、それ以外は節度を保っている)女ができた途端に邪険にされる。泉野は吉川の忠告を無視して騙された挙句にリストカットを繰り返し、慰めてくれた吉川に対して八つ当たりで酷いことをいい…。
ずっとこんな調子で、泉野の都合のいいときだけ相手にされて、傷つけられて、最後に裏切られる。それでもまだ好きだといって優しくする吉川の一途さ、健気さには泣けてくるものがあった。
なんでそんなに泉野がいいのかと、ここでまた最初の疑問に戻ってしまうのだが、「なんとなく分かる」と自分に言い聞かせつつ読んだ。理由は分からないが、吉川が泉野を想う気持ちはガンガン伝わってくるので、理由なんて必要がないともいえる。

けど。泉野は弱くて卑怯なタイプだが、極端なところはあるにせよ、それほど嫌な奴ではない。泉野の弱い部分は、程度の差はあっても誰でも持っているようなものなので、これを真正面から非難するのは難しいような気がする。
年齢以上に大人で包容力があって、しかもここまで一途に自分を慕ってくる吉川に甘えてしまっているんだなと分かるので、しょうがないなあと思いつつ、憎めない。

それにしても、吉川は人間ができていて、しかも可愛いい。
面白い作品だった。

(小説79)
『B.L.T』 木原音瀬

最初に読んだとき痛かったから、どうしようかなーと迷いつつ読み直した。

再読だからたいした感想も書かないけど、やっぱりネタバレで。

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再読だと多少流して読んでしまうこともあるが、この作品の場合は2度目の今回のほうがじっくり読めた。1回目のときストーリーを追うのに夢中だったり、衝撃の展開に読んでるこっちも余裕がなかったりして楽しめなかった部分も楽しめたと思う。
1回目に読んだときは、痴漢とそれをネタに脅す中学生というカップルはどっちもどっちで、馴染むまで「うえー」って感じだったのだが、2回目なので抵抗もなく。抵抗はないのに、それぞれの気持ち、事情を改めて読んでいくと、切なさのほうは新鮮に感じるぐらい強いもので。
登場するキャラはみんな弱いところや狡いところもあって、頑張っているところや優しいところもあって、だからこそ魅力的に感じる。何より二人の恋を応援したくなる。いい話だなーと感動も新たになった。
千博さんは相変わらず怖かったが…、その分だけ大宮のラストの激白が圧巻だった。強烈な部分ばかり印象に残っていたが、恋愛の部分でも激しく切ない。
甘い台詞なんかとくにない、むしろ淡々としているぐらいのドライブのシーンが印象的で、恋愛の楽しさをすごくよく感じるのが不思議。
私の趣味からいえば、萌えなんて言葉とは無縁の作品だが、恋愛ものとして感動した。いい話だー。

(小説67)

甘い生活

2007年8月14日 木原音瀬
木原 音瀬 オークラ出版 2001/12

読む前にタイトルで考え込んでしまった。木原作品で『甘い生活』って…。
『HOME』、『こどもの瞳』という、いかにもハートフルな家族ものラブストーリー(この表現も謎だが)を思い浮かべてしまうタイトルを思い出した。あれらははっきりいって…いや、はっきりいいたくない作品だったし、かえって「甘い」なんていわれると警戒してしまう。
かといって『嫌な奴』などとストレートにきたって、それは看板に偽りがないので安心はできない。逆に控えめ過ぎる気がするし(笑)
そういうわけで、右の頬を打たれて泣きながら左の頬をガードしたら、後頭部に一撃食らってダウン。そういうこともありえるという覚悟で臨んだ。

もちろんこんなことを真面目に書いているわけでもないですし、…だいたいにおいて私は過剰反応してるようで、さらっと楽しめる人も多いらしいです。
(参考にされると困るので、一応注意書き)

ここからネタバレ

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趣味ではないが、面白かった。

「甘い生活」
子供になんてことを…。もとからショタは苦手だが、これはそういう問題じゃない。しかも弟にまで目を付けている…。うう……。
藤井は魅力なんてないような気がするし(…)、あまりに卑劣で感情移入なんてできない。でも、なんていうかムカつくって感じでもなくて。呆れてしまうんだけど、いつか悔悛してくれるといいなあと、そういう期待も捨てきれなかった。
ラストで立場が逆転するが、それが復讐ではなく、文和の純粋な愛情からというところが悲しい。こういう歪んだ形でしか愛されたことがないんだな、と改めて思い知らされてしまう。

「口唇エレジー」
思考法がずれているので、やっぱり感情移入はしづらい文和の視点。藤井はもちろん、義母も自分のことしか考えていないので、親友の森村の存在が本当に救いに思える。
で、森村の指摘によって文和も藤井の異常性に気付いていくのに、自分が藤井から愛されていないとは認められない。親から虐待を受けて育った子供が、周囲から非難される親を庇うのにも似ていて、読んでいて痛い。
好き嫌いは理屈じゃないけどって思いつつ、藤井から離れられたらいいのにと思ってしまう。
でも、この子の一途さにだんだん根負けしてきて、最後にはそれもありかと思っていた。

「太陽がいっぱい」
これが書き下ろしと知って、雑誌で読んだ人は大変だったなと同情……。
(そうそう雑誌掲載で思い出したが、「ホーリーは小説の作風に合ったイラストレーターを探すのが上手い」と書いたことがあったが、あれは雑誌アイス掲載時のものをそのまま使っていることが多いそうで。こんなところで、ちょっと訂正。)
その後、優しい先輩(?)とうまくいっているのかと思ったら、暴力男に遊ばれている藤井。うーん、とくに同情はできないが、だからといって藤井がこんな酷い目にあわせられても、ザマーミロとはさすがに思えず…。
こいつとくらべれば絶対に文和のほうがいいと思うのに、なんでこれだけ尽くされて(まとわりつかれて?)気持ちが傾かないんだろうと、それが結構読んでいて疑問で。でもまあ…確かに年齢の問題を抜きにしても、頼りにはならないし、そういうこともあるかと思ったり。
悔悛どころか、反省も成長もない藤井、どんどん少なくなっていく残りページ数。うわー、このまま終わっちゃうのかと本気で心配した。もうなんでもいいから、文和に幸せになってもらいたいと思い始めたところで、森村になんで藤井なのかと聞かれて文和が答える。「清隆は弱い」と。(本が手元にないので原文と違うかも)
ああ、そうか、これかとすっきりした。「甘い生活」で自分が藤井にムカつかなかった理由が分かったような気分。べつに許せるわけでもないんだけど。
なんていうか、弱さに同情するというより、弱さを知ることで藤井の性格がこういうものなんだと受け入れやすくなったというか。ちょっと自分の感情を脇において見直せるというか。うーん、説明が難しい…。
そうなると文和が魅力なんて欠片もないような(あるにはあると思うけど、イヤなところのほうが目に付く)藤井を選んだ気持ちも分かるような気がして。理由なんて探さなくても、情が移った、で十分かもしれないけど…。
藤井が文和を邪険にしながら、遠ざけることができなかったところとか思い返してみると、ラストの台詞は藤井の本心じゃないかという気がするし、後味のいい終わり方だったと思う。
…とにかく安心できてよかった。

(小説65)

追記の追記

2007年7月25日 木原音瀬
自分で意味が分かんないと思ったので、追記の追記。

>『B.L.T.』は苦手に入れようかと迷ったけど、

インパクトが強いので「苦手」じゃなければ、「好き」になってしまうらしい。
素晴らしい作品だから評価したいって意味でもなくて、これだけ夢中で読んだ作品なら、趣味の問題は通り越して「好き」なんじゃないかなあと。
「痛い」から苦手意識はあるけど、「痛い」ものを読む快感はあったし、思い返せば得られたカタルシスのほうが勝っていたような。

自分の気持ちを語るのに、全部曖昧な言い方になってるのがすごい…。
もはや持病と呼びたい肩凝り&眼精疲労に今週も思いっきり悩まされている。
朝から体がだるい(肩になんか乗ってる…)、頭が痛い、胃がムカムカするという症状が続くので、ただでさえ必要量に足りてない勤労意欲が……。
でも、忙しいので帰宅後も休む暇はないのだが、疲れでぼけーっとしてしまうので用事は片付かない。ビタミン剤なしでは生活できなくなってるし、嬉しいような気がすることに腹肉が落ちたし(すぐ戻るからどうでもいい)、つーかーれーたー。
自分の立てた予定に体力がついていかない上に、気力も続いてない。
蒸しタオルを目に当てたら気分がすっきりしたのだが、効果が持続しないのが惜しい。うーん、三十分ごとにそんなことするぐらいなら寝たほうがマシだ。って寝ちゃったけど、寝ている間に小人さんは用事を片付けてくれなかった。
どうしよう。

昨日の追記。「2」を書くほど体力が…。

好きな作品:『恋愛時間』、『リベット』、『恋について』、植物シリーズ、『脱がない男』、『牛泥棒』
これだけは外せないという別枠で好きな作品:『箱の中』、『檻の外』、COLDシリーズ
好きではないが感動したので自分の好みを無視してでも好きだと言いたい作品:『嫌な奴』、『LOOP』、『B.L.T.』
これだけはどうしても苦手という作品:『HOME』

おおう、思わず既読を全部あげそうになってしまった。
でも、これ以上は絞れない。
『B.L.T.』は苦手に入れようかと迷ったけど、同人誌の続編を読めば大丈夫、という意見に賛成なので。

木原時間 1

2007年7月24日 木原音瀬
木原音瀬について今まで何度も語りたいと思っていたのだが、語るにはまだ読んでいる作品数が少なすぎるので諦めてきた。
現段階でも初期の作品は読んでいないし、設定で避けている作品もある。それに雑誌掲載だけの作品は知らない。
おおざっぱな感触では7割ぐらい読んでいると思う(数えるのが面倒なので単なるイメージ)から、どうせならイメージ9割ぐらいになってから語ればいいんじゃないかと思ったりもする。
けど、最近谷脇愛(※1)が強いためににわかコノハラー(※2)なので、機会があったら語りたい、機会がなければ自分で作る!ぐらいの勢いになっている。
というわけでちょっと語ってみようかと。
ちなみに熱く語っていると書き忘れがひどくなるので、きっと追記するだろうという自分への不信感から「1」にしたけど、「2」があるかどうかは分からない。

※1 「植物シリーズ」のキャラに対するワタクシの愛情。
※2 木原ファン。「熱狂的な」と頭につけるかどうかとか、細かいニュアンスは不明。知らないなら使わなければいいと思うんだが、そう思うと使いたくなるから困る。

木原作品は買っても借りても、すぐに読み始めることはほとんどない。読むだけでも相当パワーが必要なので積読にしてしまう。でも、忘れているわけではない。毎日、背表紙をちらちら眺めながら、「これから取り掛かる大きな仕事」として意識していたりする。そうやっているうちにある日突然心の準備が完了し、読み始めれば一気読みという状態になる。大袈裟な書き方だが、本当にそうなんだから仕方ない。
私にとっては、「あの木原音瀬」とか「木原作品だから」とか言いたくなってしまう作家さんだ。

木原作品との馴れ初めは『LOOP』をお借りしたことだった。
読んでみて「小説として面白い」「キャラがどうしても好きになれない」「文章が読みやすい」「上手い」「苦手なストーリー」という感想を持った。
これをまとめれば、「趣味に関係なく印象的で、気がつくと引き込まれている」という感じ。
この後読んだ作品もキャラやストーリーは趣味に合わないものの、読まないと後悔するような気がして、全部人からお借りして読んだ。
「読みたいけど、絶対に再読しないから」というのが買わない理由。
木原ファンである友人に対して言っているのだから、これはひどい暴言だ。閣僚なら辞任、サッカーならレッドカードで一発退場レベル。深く反省しています…。
でも、「木原作品だから」許してほしい。(反省は?)
もちろん何度も再読している作品も、これから再読したい作品も多数ある。

木原作品を語る上では「痛い」という表現をよくしてしまう。
容赦のない設定、容赦のない展開、容赦のない描写、容赦のない結末、抉るような心理描写を指しているのだが、この、同じことを書くにしても普通なら読みやすくするためにソフトタッチにするところで筆を緩めないのが、木原作品の大きな特徴ではないかと。ソフトどころか、これでもかこれでもかと襲い掛かってくる。「ここまで描くのか?」と読んでいて辛くなってくるのだが、逃げずに書ききってくれるので一種の爽快感もある(…あるのかな)し、中途半端に書かないので読んでいるこっちも迷いが吹っ切れて、かえって読みやすいときもある。
だが、いくら読後にカタルシスが得られると分かっていても、好んで「痛い」ものを読むわけではないし、主人公が心身ともにボロボロになっていくのは、感情移入している読者にとってもしんどいものだ。…途中の痛さを耐え忍ぶだけの価値がある、素晴らしい展開が待っていることも多いと知っているから、つい手にとってしまうが道のりは険しい。これ以上は耐えられません、もう勘弁してください、私が何をしたっていうんですか…と苦しみながら、しかもその苦痛を楽しみながら読み続けることになる。
そうやって読み終わったときの満足感ときたら……、ちょっと癖になってしまうものがある(笑)
最近の作品では、ちょっとだけ手を緩めてくれるようになったので読みやすくなっているのだが、あまり油断しないでおこうと密かに思っている。

書き方としてはドライで、キャラを突き放している印象がある。
「自作キャラに感情移入して泣きながら書きました」とは言わない人だと思う。木原キャラに「別格」はいない。どのキャラも同じように突き放されているように思える。
ときには救いのなさを感じるときもあるが、このスタイルだからこそ人間の弱さ、強さ、醜さ、美しさを突き詰めて表現できるのではないかと思う。
だから好き嫌いは別として、読了後に必ず心に残るものがある。
これは蛇足かもしれないが、キャラを突き放しているというのは、キャラへの愛情が感じられないという意味ではない。

木原作品は設定だけで「カンベンしてよ」と言いたくなってしまうことがある。
読みづらそうというよりは、受け付けない。書き方でぼかしたりしないことが分かっているだけに、「その設定じゃ読めない」と逃げてしまいたくなる。それもひとつの自衛策かもしれないが……。
そのカンベンな設定の中でとくに厳しいのが、モラルに抵触する場合だ。
作者がキャラの心情など考えていなそうな陵辱系(失礼…※3)は除き、攻を「鬼畜」設定にする場合、どこかで逃げ道を用意しておくのがBLのセオリーだと思う。いちばん多いのが「愛のある鬼畜」と呼ばれるタイプだろうか。「愛のある鬼畜」は愛するがゆえの鬼畜行為であるので、愛情が免罪符ということになる。
ところが木原作品の場合、犯罪は犯罪であり、読者に情状酌量など求めていないようだ。言い訳されないことで、その非人道的ともいえる行為を受け入れなくてすむので(間違っていると指摘しなくてすむので)、私などは「愛のない鬼畜」のほうが読みやすかったりする。人によって好みが分かれるところだろうし、「愛のある」場合は読者が受け入れられる範囲での鬼畜行為がほとんどだと思うが。
木原作品の倫理的に問題のある作品は、自分の中のモラルがどこにあるかを突きつけられる危険性が高いし、そのせいで悩んでしまうこともある。だが、誤魔化しなく「痛いこと」として描かれるために、許せないと思うことがあっても「それはそれとして」小説自体は楽しめる。いつの間にか作品に引き込まれているので、許せないからといって本を置く暇もないし、読み終われば感動しているから不可抗力というか、読んだら最後というか…。

※3 私は趣味として陵辱系を好まないし、エロのためだけにキャラの心情に踏み込まずにストーリーが進むタイプの作品に対してこういう書き方をしたが、自分の趣味と違うからといって否定しているわけではない。軽いノリの陵辱系を楽しむのは個人の趣味の問題で、他人が口出しすることでもないと思う。

「知らない間に引き込まれている」というのも、木原作品の特徴だと思う。最初は最低だと思ったキャラが読み終わるころには魅力的に思えていたりする。多少、強引な展開だと頭で思っても、どこかで(どこだか分からないが)納得のいく方向に持っていかれているので、引っかかりは覚えないことが多い。もちろんそうではない読者もいるだろうが、私にとっては木原マジックだ(笑)
これにかかってしまうのも、快感で。

木原作品は私の趣味に合わないことが多い。
小説として面白いし完成度が高いので読めば満足するが、本当のところ、もう少し分かりやすい魅力を持ったキャラや、甘さを感じる展開のほうが読みやすい。
でも、趣味に合わなくても、文句なく面白いので読む。趣味に合わないまでも、魅力を感じることが多いという、BL作品としては珍しい読み方になってしまっているが、だんだんそういうものなんだと慣れてきた。
趣味に合わなくてもいいと思っているので、時々趣味に合ってしまうと、はまりすぎて困ったことになる。うっかりはまってしまった今では、やっぱり趣味に合わないぐらいがちょうどいいんじゃないかと思い始めている…。
ちなみに好きな作品を選ぶとキャラが好きな作品と被るのだが、BL好きな人間としてこれだけは外せないという別枠で好きな作品というものもあり、好きではないが感動したので自分の好みを無視してでも好きだと言いたい作品というのもある。そしてこれだけはどうしても苦手、という作品も中にはある。
単純に好き嫌いを語れないのも木原作品の特徴かもしれない。

とりあえず私の木原ブームはまだ続きそうだ。
最近は新刊が出ると自分で買って読むようになったし。
品薄になっていた植物シリーズに再版がかかると聞いて、ちょっと嬉しい。

三部作

2007年7月18日 木原音瀬
3冊目はまだ画像が出ないし、帯がないとちょっと…なので1冊目で代用。

昨夜急いで帰宅したら、植物シリーズの3冊目が届いていた♪
(シリーズ名を知らなくて、ずっと三部作と呼んでた…)
は〜、嬉しい……。書下ろしが読めるのも嬉しいけど、読み終わって落ち着けることのほうが嬉しいかも。
これでやっと鬼畜攻の帝王のことを考えなくてすむ!
もう早く愛が冷めてほしくて、しょうがなかったし。
とにかく疲れた……。
というわけで、眼精疲労で気持ち悪かったがいそいそと読んだ。
読み終わってもあんまり愛は冷めなかった気がするけど、満足できたのでちょっと落ち着けた…はずだと思う。

以下、書き下ろしのネタバレ感想。

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まさか自分が鬼畜攻を楽しめる日が来るとは…。
はっきりいってショックだった。
木原作品でガツンとやられるのはよくあることだが、別の意味でガツンとやられてしまった記念すべきシリーズ……。
私の中では「愛を知らない男の悲恋」、「究極の不器用攻」という位置づけなのだが、やっぱり鬼畜だと思うし……。
もしかすると「愛のない鬼畜」だったことが逆に私には理解しやすかったのかもしれないとか、無理に理由をこじつけられないこともないが、まあ単に好みだっただけだろう。

書下ろしの感想。
うーん、この長さでこの満足感はすごい。見事です。
写真を隠すように持っていた松本のことを思えば切ない気持ちにさせられるし、いくら谷脇が彼のことを思い続けてももう松本に届くことはないんだけど。伝わらなくても、やっぱり思っていてくれてよかったと思うし、ずっと忘れないでいてほしい。
そして佑哉が谷脇の切なさをしっかり感じ取って、心の中で確かに愛情を感じているところに感動した。松本が渡した優しさが、佑哉の中で時間をかけてゆっくりゆっくり育っていったという感じがして、なんだか暖かい気持ちになれた。
明るい未来を感じさせるラストもよかった。
若宮と岡田も相変わらず仲がよさそうで、それもよかったなあと。

この書下ろしがなくても十分感動的なシリーズだったが、この書下ろしがあることでさらに作品全体に深みが増したように思う。
なんで5月や6月に発売されたばかりの本が品薄なのかと疑問だったのだが、要するに新装版は再版だから、元から少なめにしか刷っていないらしい。とくに書店では出回る数が少ないらしく、ネットで買うほうがまだ買いやすいとか。
うーん。
でもこの作品の場合は結構古いし、私のように最近ファンになった読者は旧版を持っていない人がほとんどじゃないだろうか。しかも、ここ数年で木原ファンになりました、という読者も多いはず。
売れることは予想がついただろうし、売れるならもっと部数を多くすることはできなかったのだろうか。そんな単純なものではないのかもしれないけど、売れるのに部数を抑えるのはもったいない気がしてなんだか不思議で。

2冊目が届いた記念に表紙画像を出しておこうかと…。
3冊目はイラスト的にちょっと躊躇われるものがあるし。攻のほうが露出が多いって珍しいような。
それだけ自信があるのかな、とか(笑)

書き下ろしの番外編にとっても満足した。長さのわりに読み応えがあるなあ…。

POLLINATION

2007年7月12日 木原音瀬
木原 音瀬 『POLLINATION』

とにかくネタバレ。三部作すべてに対してネタバレ。
備考:新装版ではない。
なんで三部作なのにこれだけ売ってないのかと思ったら、発売前でしたか。

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感想を書くのをやめようかと思ったが、まあ1冊だけ書かないのも据わりが悪いし…。なんといっても谷脇が好きだし。
あらすじを素直に読むと、純真な少年に出会って鬼畜な医者も少しはまともになるというストーリーを想像するが、どうなんだろう……。なんだかマトモになった気がしなくもないが。

今回もカンベンなところから話が始まる。しかも今度は15才である。年齢だけで犯罪です、先生。……法律に抵触しない恋愛はできないのか。
誰かこいつを止めてくれ、と思っても葛西先生はもちろん役に立たずに同居決定。ここで葛西が有能だとBLじゃなくなるが、思わず役立たずだと罵ってしまった…。
結果的には、佑哉にとってこれが一番よかった気もするが、なんだかやりきれない。うう、高校生の男の子が鬼畜の毒牙に……。
しかも、過程は最悪だが結果的にはよかったので、ラストには納得がいってしまうからイヤだ。だけどまあ釈然としないものの、佑哉にとっても谷脇にとってもいい変化なのではないかと思えるから、感動的だったりもする。

恋愛部分では、やっぱり松本のことを考えると谷脇に別の相手ができるのは薄情な感じがしてしまうだろうと読む前に覚悟していた。(谷脇は最初から薄情なキャラだけど…)
現実的に考えれば一生死んだ相手だけを思っていろというのは、ものすごく理不尽だが、BL読者としてはどうしてもね。って。
だけど、その点に関しては覚悟していたほどには辛くなかった。なんとなく寂しいだけで。

続編のほうはBLとして楽しもうとすると難しいが、小説としては面白かった。まあ本編のほうも萌ってやつはなかったし、別にいいやという感じ。
それにしても、四十度の熱があろうと文句を言わずに食事の支度をするなんて、鬼畜だが尽くし系の攻だなあと感心した。いい家政婦さんだ。でも、思いやりとか優しさについてはその人に聞いても無駄だと思う……。その人に聞くより、どこかで覚えてきて教えてあげたほうが早いはず。

四十度以上の熱が見せた幻がかなり痛い…。
たまに見える谷脇の愛情が切なくて、それだけで満足できる作品だった。

(小説54)

FLOWER

2007年7月12日 木原音瀬
木原 音瀬 『FLOWER』

これ以上ないほど激しくネタバレ。三部作すべてに対してネタバレ。
備考:まだ3冊目は読んでない。

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『WEED』で、若宮に輪をかけた最低ぶりを発揮していた谷脇が主人公で、相手は番外編で登場していた松本。
またこれはちょっと…な場面から始まるが、「酔わせて強引に」はBL的にはよくある展開なので、張り紙の前で堂々とやっている分、逆に落ち着いて読めるのだが……。
その後の最低ぶりは犯罪部分を抜きにしても、ものすごい。
で、読み始めてわりとすぐに、マズイなあと思った。
この最低な鬼畜医者はものすごく私の好みのキャラで……。別に鬼畜キャラを好きになるのは構わないが、松本の辿る運命を最初から知っているだけに感情移入せずに淡々と読みたかったのだ。
でもダメ、すごい好き…。(ちっとも大丈夫じゃないんで、気にせず見捨てて下さい)
そして恐ろしいことに、登場当初の松本はものすごく苦手な、流され系、気弱タイプのキャラで、ひどいめにあっていても、なんだかあまり同情できず。かなり自分のモラルを疑ってしまった…。張り紙を増やしたほうがいいんじゃないだろうか。
まあそんなことはともかく。
松本が靡いてこなくなると、だんだん松本が魅力的に思えてくる。知らないうちに松本に落とされているあたり、谷脇に感情移入している度合いが強いというか、恋愛を追体験しているみたいな気分になった。
けど、先を知っているだけに、ああイヤだなーと思いながら読んだ。松本に対してひどい態度を続ける谷脇に「少しは思い知れ」って感想も持てない。
谷脇は(若宮に対してもそうだったが)自分の恋心を自覚できない人で、それがまたもどかしいというか、悲しいというか。異常なほどに執着しているので、もうとっくに落とされているのは読者には分かるのだが、本人はどうやっても気づかない。
そうしているうちに松本の病気が発覚し、普通ならここでもっとショックを受けるのだろうが、それもスルー。作者にそういう意図があるかどうかは分からないが、医者って職業も関係があるような気がする。普段から人の生き死にを見ている人だから、普通の人より病名を聞いても冷静だったんじゃないかと。たとえ顔見知り程度でもショックな病名だし、個人的にどうとかいう問題をおいても病名のインパクトが強いから、反応が薄いのは麻痺してるからかなあと思った。
今まで谷脇に感情移入しながら読んでいたので比較的に楽だったのだが、ここらへんから早く自覚してって思うようになるから、読んでいて辛くなる。馬鹿だなあって悲しくなるというか。
結局、松本への思いを自覚するのは死んでからで…。谷脇は自業自得だし、自覚してしまっていたらその後が地獄だったろうけど、松本のためにもう少し早く自覚していてくれたら、自覚しないまでもせめて無自覚な思いが伝わっていたらと思わずにいられない。
だけど、谷脇もかわいそうな人だと思う。不器用で可愛いとかいうレベルじゃないから余計に悲しい。庇うような余地もない人だが、あまりに切なくて泣けてくる。
こうなっていれば、ああなっていればと、いつまでも考えてしまった。

やっぱり悲恋ものは読むのがしんどい。
というわけで、3冊目を読むのはしんどい作業になりそうだ。…色々な意味で。

番外編、シリーズ外の兄弟ものも面白かったが、感想はスルーで。
(小説53)
木原 音瀬 『WEED』

三部作すべてに対し、ネタバレ。
備考:まだこの1冊しか読み終わってない。

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私の頭の中には常に張り紙がしてある。
「ムリヤリは犯罪です」
BLは所詮ファンタジーだからといわれても、この張り紙があるので陵辱系は楽しめない。BLに対して期待しているのは、男同士のエロ小説じゃなくて、男同士の恋愛小説だし。
と言いつつ、BLだからと思って差し引いている部分も大きい。
これが男女の恋愛小説ならムリヤリって要素が入った時点で本を捨てるが、BLなら読み通せる。理由も分かっているが、詳しく説明すると長くて退屈なので割愛。
前置き終わり。

というわけで、カンベンしてくれって場面から始まるこの作品。
木原音瀬という作家の力量だけを信頼して(ファンだからって素直に書いてもいいんだが)、わりとムカツキながら読み進めた。
ここで「BLだからね」って書き方だと、「いや、でも張り紙があるんで…」と思ってしまうのだが、木原作品の場合、別に張り紙を隠したり、無視したりする必要はない。だからカンベンな場面から入っても比較的抵抗が少なくて読みやすい。その場面が痛いかどうかは、また別の問題として。
なんだかよく分からないが勢いよく雑草くんに惹かれていく主人公。なんだか知らないが、だんだん最悪なはずの主人公を受け入れる(特殊用語に非ず……)雑草くん。理屈としては理解できないのだが、心情としては理解できる。分かりすぎて、切なくなってくる。
最後には最悪な若宮にどっぷり感情移入をし、結構こいつ好きだなあと思ったりしている。私が木原作品を読むと陥りやすい状態で、ここが好きなんだろうなあと思う。
とても面白かった。

続編のほうでは、はっきりいってウザと思っていた雑草くんが構ってくれなくなったので、やっぱりベタベタしててもいいよ、寂しいから…と雑草くんに白旗。

新装版の書き下ろし。
シリーズ通しての番外編みたいな紹介だったので、それってネタバレは平気なの?とちょっと心配していたら、激しくネタバレだった。まあ私は知っていたのでいいんだけど、知らない人にとっては知らないで2巻を読んだほうがガツンときていいような気もする。
あと2巻を読んでからのほうが、この番外編自体味わいが深くなっていいと思う。

次は鬼畜医者か…。これまたハードル高いな。
(小説52)
うしー。
そういえば、レーベルバトンには書き忘れたが、このレーベル、作品ごとに豪華なレーターさんを使っているが、それぞれ作品の雰囲気に合った画風の方々で、趣味がいいなあといつも感心している。

ところでこの作品が手元に届くちょっと前に、小D(略し方を知らんがこれは不正解だろう)に作者の萌えについてのエッセイが載っていたので読んだ。
そこでこの『牛泥棒』について触れていて、この作品を書くに当たって○○○○萌えに目覚めたという内容だったのだが。
じゃあこの作品を読むと洗脳されて、○○○○萌という特殊スキルが身についてしまうのかと、結構こわごわ読んだ。
…あまり特殊なスキルを身につけても、どの作品でそれを発揮すればいいのか困るじゃないですか。

激しくネタバレ。○○○○についても書くので、モエダンのネタバレ?も含む。

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なんでこんなタイトルなんだ、BLなのに。BLって恋愛ものじゃないのか……と思いつつ、なんだか面白おかしくて、だんだんいいタイトルのような気がしてきた(笑)

ストーリーのほうは「口がきけない使用人」という設定と表紙のイメージから、ちょっと痛め暗めの作品を想像していたのだが、ガマガエルが出てきたのでちょっと安心。けど、妖怪ネタだったのか…ってかなり驚いた。
そうなってくればタイトルの意味はだいたい想像がついたが、牛泥棒の現行犯で捕まるとはさすがに思っていなかった。で、沼まで行ったらガマガエルが助けてくれるのかと思った。きっと頭からパクリなんだろうと思って、あまり殺生なことはしないでください〜と思っていたら…。あれはさすがに予想していた人は少ないんじゃないだろうか。
それにしてもこの契約、確かに牛は毎年買うには高価すぎる代償とは思うが、証文もかなり高くないですか、ガマさん。ちょっとボッタクリすぎなんじゃないかと思うが、返してくれたってことは、それほどあくどい商売じゃないのかもしれない。
肝心の恋愛部分は甘ったるい誤解とすれ違いで、読者は安心していられるという気軽なパターンで、感情移入しやすい素直なキャラだし、最後まで楽しめた。
親の借金のために身売り…結婚まで覚悟した主人公だが、最後は案外あっさりカタがついた。人によってはこのあたりはご都合主義と取るかもしれないが、私はここにものすごくリアリティを感じた。
大きなトラブルに遭うと思いつめてしまって視野が狭くなるものだけど(とくに借金では…)、ちょっとしたきっかけで解決の糸口が見つかると、そこから事態一気に好転するようなことってあるよなあと。人生はたまにものすごく大雑把だ…。
抉るような展開がなかったせいか、妙なところで考え込んでしまったり。

ほのぼのとしていて読みやすかった。キャラも真っ当すぎて、え?と戸惑ったが、坊ちゃんは好みのタイプだった。木原作品で攻が好みのタイプって、ものすご〜〜く珍しいなあと。
素敵vと可愛いvの中間くらいだ。それは年下攻として正しい姿だし、人間としてもマトモだし。
ほのぼのとした男夫婦の新婚生活を楽しめる作品だった。

最後にふんどし萌えについて告白。
きやがれ、褌!と張り切って読んでいたので、物足りないぐらいだった。もっと褌シーンがあってもよかったぐらい。
洗脳されるには至らなかったが、
ふんどしに抵抗感は一切なくなった。
受が褌でも全然問題なしですよ。


(小説49)

秘密

2007年5月9日 木原音瀬
一応お断りしておくと、「なんか癒し系で設定が簡単に頭に入ってくるリーマンものの小説」(昨日の日記に読みたいって書いた)を期待してこの作品を選んだわけではないです…。

木/原音/瀬 『秘密』
ネタバレ感想。
秘密が秘密じゃなくなるんで、未読の方は退避してください。

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木原作品を読んだときのよくある感想。「キャラは好みに全然掠りもしないけど、じわじわ好きになった。話は面白い。引き込まれる」というもの。
キャラの描き方がいつもながら容赦がなかった。多分、同じキャラ設定で下手に書いたら「こんな嫌なやつのどこに感情移入しろっていうの?」って思っちゃうんだろうけど、ちょっと苦手と思いながら読んでいくと、いつの間にか好きになっちゃってるから不思議。木原作品のすぐに泣いちゃう情けない攻はちっとも好みではないのだが、人間としては好きなことが多い…。
「秘密1」のオチは、もしかしてそうなるんじゃないかとかなり初期から思ってたけど、そこまで抉るんだろうかって怯えていたところに落ち着いた。さすがだ。やっぱりここまでくるか。
書きなおしたせいか、あとがきにあったような行き詰った感はなかったけど、深い穴に落とされて、上を見ればとりあえず眩しいからよじ登れれば助かるんじゃない?っていうようなところで終わってしまい、なんだかとっても先行き不安だったのが、2、3でしっかりフォローが入っててよかった。
最近、この辺で微妙に手を緩めてくれる、その匙加減がいいと思う。初期の作品ならきっと救いがないまま、ばっさりいっちゃったりしたのだろうけど。私には今の作風のほうが読みやすいかな。
けど、変わってないように思うのは(一部の作品しか読んでないから語っていいか分からないけど)、キャラを突き放した視点で書いてる感じがするところ。たぶん作者は、「魂を削りながら書きました」とか「(自作のキャラに)感情移入して、泣きながら書きました」なんてことは言わない人なんじゃないかと。別にそれがいいとか悪いってことではなく、感じるスタイルとして。
だからある意味容赦のないところまで人間の弱さと醜い部分と、あと強さと魅力を描写できるんじゃないかと思う。
今回は短い話ばかりだったが、3の主人公、充の弟の樹なんて、特にそう思った。はっきりいって嫌なやつでしかないのだが、その短い中で何かがあって(よく分かんないけど。分かりやすい心情の変化の部分だけではなく、徐々にって感じ)、最後にはなんか憎めないねってなってる。しっかりムカついた後だけに、そこが快感というか。
それにしても、3での二人は甘かった。BLとしても、そこらへんでしっかり満足できた。

(小説29)

こどもの瞳

2007年3月9日 木原音瀬
木原音瀬 『こどもの瞳』

葛藤…。

ネタバレ

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ものすごく面白いが、ものすごくイヤ…。
上手くて面白くなかったら、思い切り貶してたんじゃないかなあ。でも、面白く読了したので、否定的な感想を読んだらムカついた…。まあいいや。
モラルの面でまったく肯定できないんだが、まあそれはそれとして。それはそれとして、って思えるところがすごいなあと。
この設定この展開で、作者の筆にまったく迷いを感じないのが、またすごい。これで迷いのあとが見られたり中途半端にフォローが入ったりしたら、かえって居たたまれなくなったかも。いけるところまでいってくれたほうが、読むほうは楽だ(多分…)。
…しかし、早く大人に戻ってくれないかと思っていたのに、大人に戻ったらどこがいいのかちっとも分からん。いや分かるんだけど、好みじゃなかった。まあいいや。
息子の話のほうは、ごめん、うまくいってくれなくて嬉しかったかも…。けど、再会後によりを戻し(?)てくれてもよかったんだけど、それはないのか…。うーん、残念なような、すっきりしたような。

最近ソフトな木原作品ばかり読んでいたので(本当にそうなのか…?)、久々にガツンとやられた。そういう意味でも満足だ。

(小説12)
木原 音瀬 『あいの、うた』

この作品、発売当時あまり感想を見かけなかった気がする。
単にネタバレを恐れて自分で回避してただけかもしれないけど。

ほろ苦…。

ネタバレ

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ちょっとおとなしい話で読みやすかった。
DVもないし。暴力がなかったわけでもないけど、陰惨じゃないし。まあ兄弟喧嘩みたいなものかなあと。
とか思うのは、慣れて麻痺したせいなのか……。
だいたい他の作家さんが同じストーリーで書いたら、何かショッキングな出来事があったか、何かが吹っ切れたか、どっちだろうと思ってしまいそうだし…。
それをソフトと感じるのもなあ(笑)
2作品共通した印象は、主人公の相手が非常識人だということ。
まあ木原作品で両方平凡なキャラだった作品ってあんまり思い出せないが。何かあったかなあ。あ、『恋愛時間』と『リベット』はかなり常識的だった。

表題作のほうは甘く感じるタイトルの割りに現実の厳しさがヒシヒシというよりバシバシガンガン描かれていたが(…)、だからこそ二人の心の交流が暖かく感じる、いい話だったなあと。
受がわりと好きなんだけど、タイプじゃないわということと、仕事面で救いがないところがナンだったが。

「The en/d of yo/uth」
こっちのほうが受キャラが好きだった。
まあ表題作のほうで二人のその後が分かっているために読みやすかったが、タイトルからして激苦そうだ。才能のなさに自分で見切りをつけるのが若さや青春の終わり(って訳せばいいのかなあ…)だっていうのはよく分かるし、珍しい話ではないんだけど、相変わらず容赦がなくて生々しい描き方だった。
けど、読後感はほろ苦ぐらいで面白い話だった。
田頭はよく考えると結構いやな奴だが憎めないタイプだったし、感情移入しながら読んでいたので、彼が夢を諦めていく過程はきついものがあった。
どん底まで落ちたときに、さらに自分を追い詰めるように力のところに行ってしまい、傷口をえぐられるところにカタルシスを感じるかどうかが、好き嫌いの分かれ目かと思った。
ラストの二人の会話が甘くて(?)よかった。

…表題作のほうは書き下ろしが入っていなかったら、相当救いがないと思う。というわけで、その後の話にほっとした。

(小説11)

檻の外

2006年12月16日 木原音瀬
素晴らしかった。

以下、ネタバレ感想。
作品を未読の方はこの感想は見ないでください。
これがミステリならトリックと犯人を両方書いてしまっているようなもので、完全にネタバレしています。
…私の感想は未読の方には意味が分からないことが多いでしょうし、こんな駄文を読むより作品を読んで欲しいです。

 
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うう…。
堂野が弱くて卑怯な行動に出て、そういう意味で痛い展開になるのかなあと安心していたら、ううう…。
山脈越えかと思っていたら、単に(単に?)崖から突き落とされただけでした、みたいな。
…まあそれについては感想の書きようもないけど、その前の、堂野と再会してからの喜多川の一途さには泣けるものがあった。堂野も本当に情が深くていい人だと思った。
堂野が喜多川を少しだけ疑ってしまったとき悲しくなったけど、考えてはいけないと思っても悪い方向に考えてしまうこともあるし、警察や奥さんに対しては庇ってたからほっとした。
橋のシーンがすごくよかった。感動した。

『雨の日』も甘くてよかったなあ。これがあったから『なつやすみ』のラストが余計に感動的だったんだと思う。
読んだ直後はやっぱりショックで、ここまで書かなくてもいいのにって思った。息子の台詞じゃないけど、堂野がかわいそうで。
でも、あとがきの「喜多川の人生を書ききった…」という言葉がすごくよくて、ラストのところだけもう1回読んだら、ここまで書いてくれてよかったなと思っていた。堂野の「こうなってみると圭の方が先でよかったのかもしれない」という台詞は本当にその通りじゃないかと。喜多川の人生は堂野に出会えたことで満たされて、満ち足りたまま終わったということが嬉しい。もちろん堂野はかわいそうだし、時期は早かったけど、避けようがないことだから。堂野も逆だったら、さぞ心配で心残りだったんじゃないかと思うし。
多分今度は、喜多川は堂野に一緒に死んでほしいとは思わなかったような気がする。

まだ書き足りないけど、どう書いたらいいか分からない。
いい話を読んだ。

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