絢谷りつこ 新書館 2010/4

「体育会系リーマン×特撮戦隊ヒーローの恋!」だそうで。
興味を引かれない設定だったので、雑誌掲載時にはスルーしてしまったのだが、文庫化したのでなんとなく読んでみた。

思っていたより読みやすかったし、入り込みやすい話だった。キャラも、まあ取り立てて好みというわけではないのだが、いい人だなーという感じで。いい意味で普通の作品。
いままで感じた独特の雰囲気がなかったのが、読みやすかったような、少し残念なような…。

ところでイラストは…。主人公が細すぎて、なんかガタイのいい体育会系には見えないなあと。せめて髪をもっと短く描けばいいのに。まあごつくてもイメージに合わないんだけど、ちょっと気になってしまった。
英田サキ 大洋図書 2008/9




ネタバレ
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やっぱり那岐は男前でいいなあと。最後までキャラが変わらなかったし、那岐と加賀谷の関係性はよかった。
物語の決着としては、あんまり面白くなかったかなあ。感情移入しづらかったせいか、そうなんだ…という感じで、とくに盛り上がらないまま事件が終わってしまった。
…とりあえず泰原の両親と篠塚にとっては気の毒なラストだなあと。
罪悪感がひとつのテーマだった気がするんだけど、その決着がこれというのも、後味が悪いし。安易に清く正しくされるより、こっちのほうが面白いのかもしれないし、別に全員が改心して自首するべきだとか無茶なことは言わないが、どこかで共感できないと小説として楽しめないというか。私はちょっと途中で置いていかれてしまった。罪を背負って生きていくというのは重い決断なのに、文章から重みを感じ取れなかったのが敗因か…。
安見と火野の関係は、好みの問題だろうけど火野の視点は入らないほうがよかったなあ。安見の視点で火野の気持ちが見え隠れしていたときのほうが面白かった。
モヤモヤッとしたまま終わるよりは、このほうがスッキリしてよかったんだろうし、火野が自分の気持ちを長々人に説明するとは思えないから、第三者視点にするのは無理があるんだろうけど。うーん。なんとなく不満だが、これがベターなのかも?
英田サキ 大洋図書 2008/8

こっちが上巻。どっちが上なのか分からなくて書店で迷ったなあと思い出したので書いてみた。
…小冊子の応募券欲しさに下巻だけ買い、応募券を切り取ってから放置していたのだが、救援物資の箱に上巻が入っていたので(お借りしたので)、やっと読む気になった。やっぱり下巻だけ読むのは厳しいし(笑)

ネタバレ
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は~、ヤクザで記憶喪失か~と読む前から趣味に合いそうになくて気が重かったのだが、読みやすかったので読み始めたらサクサク読めた。
火野にさっぱり興味が持てなくて困り、男前受に思えた安見も男前じゃなかった…。
どうも安見の考え方は理解できないことが多くて、感情移入しづらかった。記憶を失う前の知り合いに会いたいと思っていたはずなのに、いざ篠塚に声をかけられると、なぜか人違いだと決め付けたり。「まったく知らない男だ」って…、なんで記憶喪失なのに知り合いである可能性を頭から否定するんだろう。他人を無意識に警戒してるってことを表現したかったんだろうか。この場面は意味がよく分からなかった。
そして失った記憶に関してはヒントが多いのに、「きっとこういうことだろう」と自分の過去を想像できないのが不思議で…。思い出したくないから、考えるのを拒否してるってことなんだろうか。そういう描写もあるにはあったが、警察なのに推理も洞察もできない人?という印象で、どうにも情けなく感じてしまった。

そんなわけで私の興味は那岐と加賀谷にばかり向かってしまった。とくに那岐は好きそうなタイプだなあと。
ソファーと壁の間に寝るって場面で、そんな場所は綿埃とか溜まってそうで、我が家ではそんなところに客が入ろうものなら、ギャーって感じだなあと思った。きっと加賀谷はソファーの裏側を念入りに掃除しているんだわ、なんかいいなあ(笑)
下巻でも那岐が男前路線を貫いてくれますように。
絢谷りつこ 海王社 2010/01

ネットで注文したときは気付かなかったが、届いてびっくり、ガッシュ文庫。
おお~、もしかして初めて買ったかも? …自信はないけど、たぶん。


ネタバレ
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相変わらず文章は読みやすいし、雰囲気はあってよかったのだが、今回はストーリーとキャラが趣味に合わず、厳しかった……。
とにかく受がきつい……。流され受で健気受が好きな人なら楽しめるんだろうけど、私の場合はどっちもNGなんで。

えーっと、あらすじ。
昭和初期の京都が舞台。主人公の敦彦は客の男・鴻野と恋に落ちるが、家業の旅館を手伝うために泣く泣く別れる。鴻野は仕事でヨーロッパに行ってしまい、その間に敦彦の父が病死し、その後を継いだ双子の兄・芳彦も亡くなってしまう。
実は兄の芳彦は借金の形に父親の友人から関係を強要されていたのだが、子供が生まれる日に別れ話が縺れて相手の男に殺されてしまい、その殺害現場に来てしまった主人公(敦彦)は、犯人から逆に「借金があるんだぞ」「兄との関係を世間にばらすぞ」と脅されて、殺人を隠蔽するために双子の兄と入れ替わり、芳彦として生きることに。

…おいおいおい、なんで殺人犯に脅されてるんだ、きみは?!
まったく意味が分からない。借金があろうが、兄の恥になろうが、どう考えても殺人のほうが重い。普通は目撃したほうが脅迫する立場だろう…。というか、兄貴を殺した相手に、なんで唯々諾々と従うのか。しかも借金はそのまま残り、兄の代わりに今度は自分が体の関係を強要されるというオプションつき。
旅館の存続と借金の帳消しを条件に、殺人を隠蔽して兄と入れ替わったというなら、まだ納得がいったんだけど。
たぶん、そういうことを思いつかないような、優しく素直な性格が魅力の主人公ってことなんだろうけど、いくらなんでも頭が悪いように思えてしまって。
気が弱くて頼りない弟という設定ではあるんだけど、学校の成績がよくなかったという設定にも、そりゃそうだろうね…と思わず頷きたくなってしまう頭の悪さで。
耐える必要のないことに無意味に耐えて、それを健気といわれても、はあ、変わったご趣味ですね、としか言いようがない。
そして顔は似ているが性格は正反対みたいな双子なのに、母親と兄の妻が、二人の入れ替わりに気付かないという不自然さ。薄々感づいていたらしいと後で分かるのだが、そんな重大な疑惑を主人公にまったく悟らせないなんて、不気味だし…。だって、片方死んでるのに? 双子のどっちが死んだか分からないって、「きっと何か事情があるのね」って見て見ぬふりができるような問題じゃないだろう…。
この話、母親はともかく兄の妻がほとんど出てこない。仮にも夫婦という関係で、子供がいて一緒に家業をしているのに、会話さえもほとんど描写されず、話に絡んでこない。妻という肩書きだけを持った、すがすがしいまでに装置としてのみ作られたキャラ。…いくらBLでも、これはどうなの。
そんなわけで、母親と妻は真相が明かされた後も、ほとんど混乱もなく、物分りよく受け入れてしまう。そんなバカな……。母親にとっては、双子はどちらも息子なので、まだ受け入れやすいだろう。けど、妻のほうは、「実はあなたの夫はとっくに死んでました」って言われるわけで……。普通は許せないことなんじゃ…。

上に長々書いた点を無視すれば、しっとりとした切ない雰囲気の話で、二人の互いを思う気持ちにも共感しやすく、最後は甘くて、面白い作品だと思う。
…けど、双子の入れ替わりがストーリーの根幹なので、まともに読むつもりがあれば無視できないという。うーん、残念。
岩本薫 リブレ出版 2003/07

高校生にもアイドルにも興味ないんだよね…と思いつつ、スピンオフということで読んでみた。
これも新装版が出ているようで。


ネタバレ
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面白かったし読みやすかった。ものすごく上手いわけじゃないけど、とくに欠点もない無難な作品という感じなので、あとは好みの問題なんじゃないかなーと。
で、私の好みからは外れているので、また読み飛ばしてしまった。

どうでもいい感想。
この曲名はカッコよくないような気がする…。アイドルの歌だから、これぐらいがいいのかなー。アイドルに興味を持ったことが(たぶん)ないから、よくわかんない。

キャラもあまり趣味に合わないんだけど、円陣さんのイラストだと受の顔が好み。

この女友達は…なんだろう、この人。幼馴染みカップルを応援しつつ、自分の女友達にも告白させるって。フェアな態度っていうけど恋愛はゲームじゃないんだから、みたいな反発感を覚えた。板挟みみたいな立場なんだろうけど、やりすぎ。

続編で大人になってて嬉しいなあと思ったけど、中身が別に成長してなかったから、なんだかなあと。

なおさら
「なおさら」の使い方が間違っているのに、何度も何度も出てきてものすごく気になった。文法が間違ってます。
これだけ何度も間違えてるのに誰も気付かないっていうのは問題なんじゃ……。
最初は自信を持って「絶対違う」と言えたものが、意味としての使い方は合っているだけに、何度も出てくるとだんだん「こういう使い方もあるのかも」という気分になってくる。なんかこう、活字の漢字をじーっと見ているとだんだんその字が間違っているように感じるのと似ている。
だいたい、日本語の文法なんて感覚的に覚えているものなので、間違っていることが分かっても明確に説明できないことが多い。そんなわけで、思い出せない気持ち悪さ、みたいなものが加わって、余計に気になって辞書で調べてしまった。
「なおさら、~~~」とか「~~で、なおさら~~」とかいう使い方で頻出していたけど、「なおさら」は接続詞ではなく、副詞です。
岩本さんの文章の「なおさら」は、「しかも」に置き換えればしっくりくることが多い。で、正しく「なおさら」を使っていれば、「ますます」と置き換えてもだいたい違和感なくおさまるはず。
…お勉強になりましたよ。まあこれだけ文法を無視したブログの記事で文法間違いを指摘するのもどうかと思うが。

ちなみに私が読んだのは旧版なので、新装版では直してあるかもしれない。
岩本薫 リブレ出版 2001/12

円陣さんのイラストはやっぱり好きだなー。
でもお名前を忘れてしまったり、イラストを見ても気付かなかったり……。


ネタバレ
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後輩×先輩。

北巳も織田もわりと好みのタイプで読みやすかった。でも微妙に好みじゃない成分?が入ってるから、さらっと読み飛ばしてしまった…。
そのせいか本筋と直接関係のないところばかり印象に残ってしまった。

そんなわけで、どうでもいい感想を。
両親健在の甥っ子を育てるために、20代のうちに自分のやりたいことを我慢できるってすごいなー。いい人だ…。
織田は、恋愛に不器用なのはいいけど、恋愛以外の部分で言葉が足らないのはあんまりカッコよくないかも…。「今の仕事を退職して事業を手伝います」っていうのは、現実問題として北巳にも都合があるし、決心した時点で言っとけよって思った。何ヶ月も電話一本できないほど忙しかったら過労死すると思います。
あと、情報漏洩してるっぽいのに社長である北巳に報告しないとか。なんだか、ありえない…。本当にこの人、有能なんだろうか。
さらにどうでもいいことを書けば、わざわざバレンタインの日に結婚の話を断るって情け容赦がなさすぎだ。織田にはとくに悪気はなさそうだけど、いらんところで人の気持ちを傷つけるなあと…。
基本的にいい人だけど、なんかちょっと周りにいたら迷惑かも。
絢谷りつこ 新書館 2009/10

雑誌で読んで、文庫化を待ってた作品。

ネタバレ
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気にならない程度の癖しかないから、わりと文章が読みやすくて好きな作家さん。
前作もそうだったけど、ゴテゴテ飾り立てない文章で趣を出すのが上手いと思う。雰囲気が好き。
こういう雰囲気が自分の趣味に合っているからという理由で好きな作家さんの作品は、正直ストーリーの出来とか、他の人が読んで単純に面白いのかどうかとか、そういう客観的な評価ができない。萌えみたいなもので、あくまで個人的な感覚になっちゃう。
そんなわけで私は面白かったし、好きだけど、人には薦められない作家さん。たまにこういう作家さんがいるんだよなー。

タイトル。
本のタイトルも「君と、夢のあとに」でいいのになーと私は思うんだけども。
作家さんの希望じゃなく、「それじゃー売れねーよ」っていう理由でつけられたんだったら残念だなあとか、憶測で色々考えてしまった。
やー、なんか最近、愛だ恋だっていうタイトルが増えてる気がするから、もしかして…って。…なんかBLの編集者って「これが売れる」っていう思い込みで、似たような(流行の)タイトルをつけさせたがる傾向が強い気がするし。そりゃ本が売れなければ意味ないんだろうけど、タイトルというパッケージを画一化して、中身はテンプレで…。創作なんだから個性を大事にしませんか?とか、ついつい。

中身。
出会いから再会までずいぶん遠回りしたふたりだが、再会後もお互い忙しいせいもあってあんまり会えない。結構焦らされた。でも、このじっくりペースがいいのかな。
ピアノ曲を聴く場面がとくに好き。そのほかの場面でも、とにかく静かでゆったりした雰囲気なのがいい。場所は現代日本だけど、ピアニストという職業柄か?一史も曾我も忙しいのに、なんかこうどこか空気が違うっていうか。これが好きっていうのは、一史(作者)の目を通してみる世界が好きってことなんだと思う。
そんなわけで、わりとストーリーはどうでもよかった…っていうと言い方が悪いか。たとえストーリーが趣味に合わなかったり退屈だったりしても気にならなかったはず。
でもストーリーもよかった。一史の不器用さと曾我の包容力が甘くて切ない。
一史はもうちょっとちゃんと謝ったほうがいいと思うけど。って思ってたら、最後のほうに、ぎこちなく一生懸命謝っていたのが可愛かった。ほんと口下手って感じが出てた。
甘い部分もしっかりあって、満足~。
あと曾我がピアノを続けてくれて、よかったなあと。いつか共演できるといいんだけど。

当て馬?の恩田。相手にならなすぎだから、当て馬にもなってないんだけど。一言で表現すれば、性犯罪者……。「好きなんだもーん、本気なんだもーん」っていう理由でも、これが攻であればBL界では純愛とされ、許されるんだろうなと思う。
まあでも今回はちゃんと最後まで犯罪者として扱われていたわけだが、こいつは途中で曾我の才能を認め、一史の想いを理解して、一史のことをすっぱり諦める。
なんか粘着系のわりに、あっさり引き下がったなあ。…まあそれはいいとして、恩田は失恋以外になんら痛手をこうむっていない。せいぜい1回殴られたぐらい。納得いかないだろう、これ。
でも、例えば恩田を法的に、あるいは社会的に罰するとすれば、必ず一史自身も傷つくことになる。だからこそ、姉や曾我も何もできなかったんだと思う。必ずしも正面から向かい合うことだけが、問題の解決法でもない。心の傷の場合、時間しか癒せないということもある。曖昧なままにするのも、1つの対処だと思う。
それはわかっているけど、せめて一史が恩田を厳しく責め、恩田が罪を認めて、きちんと謝罪するシーンがほしかった。
犯罪を扱う以上、一史の個人的な問題だけですまない。社会的な側面があるわけで。…反省のない犯罪者を野放しにするってマズイでしょ。

引っかかる部分もあったが、全体的に甘さと切なさのバランスもよく、主役ふたりのキャラにも魅力があって、私は結構趣味に合ったし、好きな作品。
アスキーメディアワークス 2009/08

あらかじめいくつかの展開が用意されている、ゲームみたいな選択式小説というのは(同人で)聞いたことがあるけど、キャラや展開が読者投票で決まっていくというのは初めて見たような。
商業誌の続編SSを同人誌で出すとき、たまにお題を募集する作家さんがいるけど(温泉に行ってほしいとか、そういうやつ)、これはそういうレベルの企画じゃないな~と。

ネタバレ
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教師×生徒、全寮制の学園もの。
BLに関しても自分の偏狭な趣味に悩まされている。年上攻の年の差はほとんど読まないし、これも普段なら趣味的に厳しい設定だが、たまごが面白かったので安心して読み始めた。調理方法によっては苦手な素材も美味しくいただけるのねー、と最初から最後まで楽しめた。読みやすくて一気読み~。

モモちゃんがいいキャラで。なんかこの子のおかげで、作品世界に入り込みやすかった。さばさば、しっかり、ちゃっかり、きっぱりな美少年♪
主人公のチカちゃんは最初は冷めた子だったのに、どんどん可愛くなっていくところがよかった。一途で純粋で、いじらしい。
たとえば学園長室に呼び出される場面。いつもならここでイラッとしたと思うんだけど(……)、なんかこう、この子のいじらしさに負けてしまったというか…。
胸キュン?!
先生が頭を撫でてることが多かったけど、なんか撫でたくなる気持ちが分かるなーという感じだった。
あ、この先生がまた、いい男で。やる気のなさとか、かわし方とか、意外と優しいところとかもいいんだけど、弱い部分がいいな~。チカちゃんは振り回されることになって?大変そうだったけど、いろんな顔を持っていることが魅力的というか。とにかく匙加減が絶妙で。あと喋り方がいい。自然に個性が出ているし、それが作品全体の雰囲気にも繋がっていて。いろいろツボをつかれた…年上攻なのに。

や~、甘くて可愛い話で大満足だった♪
アスキーメディアワークス 2009/8

ぷりんす文庫って発音しづらいので、最初はただの言い間違いだった「プリンセス文庫」がすっかり自分の中で定着してしまった…。


ネタバレ
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私の趣味だと、この設定は非常に非常に読みづらく…どうしたものかと迷いつつ、キャラが好きそうなので読んでみた。…激しく偏食なもので。

まず神崎がしっかり好みのタイプなので、たまごのことは放っておいて楽しもうかなーと思った。…ひどい。いくら羽根つきたまごでも、喋る生き物といきなり同居して会社にまでついてこられるのは、激しくうっとうしいと思うんだが。たまごの成長と健康?を気にかける神崎はいい人だなあと感心。
でも、たまごろうが神崎の代わりに泣き出したあたりで、なんか可愛いなーと思いはじめ、最後には必要なキャラだなと思うようになった。
神崎はもちろん好みのタイプだが、伊達がすごい好みだった!
とくに伊達の視点の話だと、伊達のすごさが分かりやすい。こんな面白い攻だったのか!と。BL界から犯罪は撲滅したいと常日頃から思っているが…、伊達の自覚には爆笑。一途で笑えて、いい攻です。

当て馬の天使(こう書くとよく分からない…)、さゆりちゃん。う、美少年は苦手…と出てきたときは思ったんだけど、さゆりちゃん視点だとすごい可愛いかった。いい子だなーと。
同じく、神崎の恋敵さんも最初は……だったんだけど、ラストで逆転。うわ、すごい好きだ!

や~、面白かった。一気読み。久しぶりに電車の中でガツガツ本を読んだ。
食わず嫌いはいけません、という感想でした。
英田サキ 徳間書店 2008/11

お待ちしていました、教授!
このシリーズ本編のファンではないが、教授が好きなので買ってしまった1冊。

ネタバレ
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イバラ道趣味な私はネト×教授を熱望していた。本編ラストではこの二人、友情とはいえなかなかいい雰囲気だったし、そりゃあもう期待していた。だって二人ともカッコいいから。イバラで結構と開き直ってます。
で、この本の発売を知ったときに、あらすじを見たら主役はロブ。基本的にあらすじは読まないことにしてるから、それしかチェックしなかった。さらにいえば、私は買う前には表紙イラストをほとんど見ない…。
そんなわけで本が届いて、表紙を見て愕然。
教授、攻かよ! しかも相手は新キャラですか!
もうここでかなり読む気をなくしたが、教授への愛7割、お金が勿体ない2割、買った本は読まなくてはという義務感1割という事情から読んでみた。
受のヨシュアは、こういう不器用キャラって結構好きなんだけど、やっぱりネトのかわりというなら(誰もそんなこと云ってません)、もっと男らしいタイプがよかった。しかも年上がよかったし、金髪じゃないともっとよかった。…好きな受のタイプの話になってしまった。でも背が高いのは個人的にポイント高いかな。

えーっと内容の感想。教授が直接捜査をするわけではないので、連続猟奇殺人の話でも暗くはならず、テンポがよくて読みやすかった。短い話だったのも、展開が早くて読みやすかったと思う。恋愛のほうは、ひどいわ、私好みじゃない受に教授が片思いなんて!というところで終わっていた。
2話目のほうは、ヨシュアの視点。「きみのことは実は結構好きだけど、教授を振ってくれ」と話しかけながら読んでみたが、教授があまりにもカッコよかったために、最後には落ちてしまった。別に受の責任ではないし……仕方がないからファンとして祝福しておこう。
教授が逆でもいいと言い出したときには、ちょっと焦った。私は教授が攻でも受でも構わないし、そこらへんはこだわらないつもりだったけど、…こんな受らしい受を相手にしてるときは、やっぱり攻でいてください、教授。
ストーリーのほうは、こちらもまとまりとテンポがよかったので、安心して教授のキャラを堪能できた。
絢谷りつこ 幻冬舎コミックス 2005/1

ナツの小Dに載ってた作品が好みだったので買ってみた。
洋物だなーと思いつつ…。

いろいろネタバレ
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お金持ちのじいさんでも出てくるのかと思っていたら、グレゴールは受の名前だったので驚いた。死にネタとはちょっと新鮮。
10年間失踪していたグレゴールから手紙がくるところから始まるし、興味を引かれる面白いストーリーだった。攻は結構好きだが、受は苦手でもないけど趣味でもなかった。ちょっと反転。受が攻のを擬人化して話しかけるっていうところで、そういや主人公が彼氏への軽い嫌がらせ?として女性名をつけて呼ぶっていうコメディ映画があったなあと思い出した…笑
可愛いんだけど、色気がないっていうか。けど、訳ありなところが気になり、楽しめた。まあ予想がつくように描かれているので、謎の部分に意外性はないけど、こういうタイプのストーリーはどうやって決着をつけるのかが興味深いところで。
相当ネタバレだからまた反転。素直にタイトル通りの展開になったが、キャラそれぞれに嫌味がないので読後感がよかった。かわいそう…で終わらなかったのは、亡くなった彼の性格によるところが大きいんじゃないかと。やっぱりちょっと切なくはなったが、暗い気分にはならない。
始まり方からして前途多難なカップルかと思ったが、続編でしっかり愛を確認できてよかった。
懐かしい感じのうらぶれた街に、貴族の屋敷なんていう舞台だが、雰囲気があっても取っ付きづらさはない。読みやすかった。

日記の背景色を変えたら、反転じゃなくなっちゃうなあ。まあいっか…。
安芸まくら 蒼竜社 2008/8

これは小説アイスの掲載作だったから、木原専用機かと思われていたHollyから出たのかな。
実はこの著者のアラブものは趣味に合わずにきちんと読めなかったことがある。…途中から斜め読みした。それにもともと食わず嫌いなので別に読むつもりもなかったのだが、ある方の感想を拝読して興味を持ってしまい、いくつか他の方の感想も読んでみたらどれも好意的な評価だったので、どうしようかと悩んだ。
気になる、読んでみたい。
でも、私は切ない系の作品を読むとひどいダメージを受けて軽く3日ぐらい立ち直れないことがあるので、それなりの覚悟とパワーが必要で。
うだうだと悩んでそれをこの日記にも書いた。あとで読み返したら「泣いちゃいそうで読めな〜い」と書いてる文章があまりに自分のキャラとかけ離れているようで気持悪くなって削除したのだが、削除前にその記事を読んでくれた友人が「それほど重苦しくならないから大丈夫」と言ってくれたので、怖々(だけど速攻で)買ってみた。
ありがとう、読んでよかった。

追記。
この作品の設定を知って真っ先に『博士の愛した数式』を思い出し、ちょっとぐらいは引き合いに出すつもりだったが、読んでいるときにまったく思い出さなかったのでやめておいた。

ネタバレ感想
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すごく濃厚な話で、まず読み応えだけでも満足だった。薄味の話を読みたい気分のときもあるけど、ストーリーに引き込まれていく感覚と読後の余韻こそが物語を読む醍醐味だと思うので、やはり内容は深ければ深いほど満足度も上がるような気がする。

17年分の記憶を失い、最新の記憶も13分しか保てないという重度の記憶障害の櫂は、覚えておきたい事柄は常に更新していかないと忘れてしまうし、眠れば必死で繋ぎとめた記憶もリセットされてしまう。そんな彼の視点で語られる夏の一日。
櫂の視点は時々過去の記憶と混線してしまったり、ぼんやり混濁してしまったりする。そして記憶がリセットしてしまうたびに深く悲しみ、不安になる。それも読んでいて痛々しくなるのだが、事情が見えてくると、恋人である津田のやるせない気持ちのほうが切なくて泣けてくる。櫂が(徐々に失いつつあるが)思い出せる記憶の中に津田は存在しないので、「初対面」のたびに自己紹介をしなくてはならない。櫂を混乱させずになんとか無難に自分の存在を認識してもらえるのが、津田が最初に名乗った「ハウスキーパー」という肩書きらしい、というのも泣ける話だ。
いきなり男同士で恋人だといえば混乱するだろうけど、親友とでもいってしまえば、毎回もっとスムーズに関係が築けるような気もする。けど、あえて少し距離を作るところに、津田の切ない気持ちが見え隠れしているような…。
転生ものならロマンティックにも感じる「出会うたびに新たに恋をする」という設定も、この場合はひどく悲しい。虚しくなってしまいそうだ。実際に津田がこの関係に疲れて出て行ったとしても、櫂は別れに気づくことさえできないわけで……。それでも津田は櫂の世話をして、毎日かどうかは分からないが口説いているらしい。で、結構な確率で(?)拒絶もされているのだろう。それでもそばにいるんだから、ものすごい純愛だと思う。
想いが通じ合ったとしても、櫂が眠ってしまえばなかったことになってしまう儚い愛情だけに、とても貴重でかけがえのないものに思える。だからこそ美しい、といってしまうのはこの場合は残酷に感じるが。
たとえばこれが恋人同士でなくて、家族のような愛情だったら、もっと二人とも楽だったとは思うけど、だからといって恋愛感情がなくなってしまうことが幸せだとは思いたくない…。
櫂も眠るときは怖いだろうな。死ぬこと=自分の思考がなくなってしまうこと、として死を怖がる人もいるぐらいだから、たとえ18年分の記憶は消えないにしても、眠るときに死ぬような恐怖を感じる日も多いのだろう。津田が「(櫂は)セックスしないと眠れない」と言っていたのは、そういうことなんだろう。切ない…。
花火を見ているときにいきなり出てきた「渡瀬さん」が、本来、津田が愛していた恋人の姿らしい。(先生なのかな。主人公たちの経歴がよく分からないので気になる…)
櫂と同じ人とは思えないような雰囲気の人だが、なんというか、やっぱりどちらも愛おしく感じて、線を引かずにどちらの年齢の櫂も愛している津田の気持ちが理解できるところがよかった。
露天風呂で腕に書かれた「愛してる」の文字を見つける場面では涙が出てしまった。それから旅館で一度眠ってしまった櫂が目を覚まし、津田のことを好きだという感覚を覚えていた場面も感動的だった。
きっと記憶障害がよくなっていくことはないんだろうし、ますます悪化しているようなのが切ない。だから続編があるとしても、読みたいような読むのが怖いような気分…。
でも、明日には櫂本人が忘れてしまっても、津田の心の中で愛し合った「魔法」は解けないから、二人は大丈夫なんだろうなあ。きっと。

ところで。前半に出てくる機織のことや櫂が経営していたという店のことは最後まで詳しく語られることがない。これらは何かの伏線なのかと思っていたのだが、もしかして櫂がそうした自分に関する謎でさえ記憶に留めておけないということを表現するために、あえて残してあるのかな、とちょっと思った。彼は津田と「親しくなった後」にそういう疑問を思い出して質問することができないから…。
分からなくても話に支障がないし、かえって全部説明されるより深みが増したような気がする。

読む前も設定から意味がなんとなく分かるので好きだったけど、読後はもっとしみじみと、いいタイトルだなあと思った。
英田サキ 白泉社 2008/5/20

これもBLACK。お値段は文庫なのに750円。驚きのプライス。いや、最近はこれぐらい珍しくないんだけど、この厚さで?という不満があって。二段組にしてくれよとか、ついつい。
あらすじを読んで設定が苦手そうと思ったんだけど、750円を無駄にできないので読み始めた。
そんな私のケチっぷりはどうでもいい…。

肝心の中身は結構面白かった。FTのほうが台詞がしっくりくる気がする。
剣と竜が出てくるわりに、FTらしくないのがちょーっと物足りないけど。国同士の思惑が絡んでるのにこじんまりしてたし、もうちょっと読者を世界観に浸らせてほしいなあとか。逆にもうちょっと軽くしてくれれば、ラノベFTらしくていいと思う。このへんの加減は読者によって好みが分かれるんだろうけど。
あ、イラストがよかった。癖が強くて苦手だったけど、慣れてくるとかえって個性的でいいし、きれいな絵柄だ。

追記
あ、私の趣味に合わないから褒めてないだけで、面白い作品だと思ってますよ。
…自分の感想を読み返して、ひとつも褒めてないからびっくりした。

檻-おり-

2008年1月18日 BL作家あ行
烏城あきら 徳間書店 2007/11

今市子さんの表紙が美しいし、烏城さんも許可証シリーズは途中まで読んでたので買おうか迷ったがタイトルで待ったをかけて買わなかった本。
けど、表紙がいいよなあと悩んで、結局お借りしてしまった。いつもありがとう。

ネタバレ注意

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タイトルから受けるイメージより、表紙イラストから受けるイメージのほうが作品の雰囲気に合っているかも。
というわけで案外読みやすかった。執着というテーマだとドロドロして救いのない雰囲気になることが多い(と思う)けど、この話は一貫して静かな雰囲気で、しかもひどいめにあっても主人公がたいして気にしてないというか、むしろ喜んでいるので、読んでるこっちも「まあいいのかな」という気分で痛くならない。
攻の母親の気持ちだけは立場を考えると納得できないものがあったが、他のキャラは「こういう人もいるのかも」と思えた。
閉じた世界ってどうも苦手で、そういう雰囲気はしっかりあったのに、この作品を読んでも重苦しい気分にはならなかった。あまりカタルシスはないけど、はっきりハッピーエンドだからかな。
うーん、でも別に障害もないんだし普通に愛し合えばいいじゃないとか思ってしまう私には入り込めない世界だった。
単に執着系の恋愛に興味が薄いだけなので、面白い作品だと思う。
感情移入はできない(他人の趣味は理解できない)けど、雰囲気は楽しめた。
海野幸 二見書房 2007/11

いま読んでる本は行きの電車の中で読み終わりそうだから、帰りに読むための薄い本を…という理由で選んだ。パール文庫は薄いので片道1時間以内で通勤通学しているような人にはちょうどいい厚さかも。
ネタバレ
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海野幸(さち)さんは雑誌掲載された別の作品を読んだことがあるので、えーっとこれで4作目かな。この文庫の発売が発表されたときついていた仮題は(うろ覚えだが)「意地悪おばけと〜〜」という小学校低学年向けの児童書みたいなタイトルだったので、全然読む気がしなかった。しかも雑誌掲載作は読みやすいものの(おもにキャラが)まったく趣味に合わず…。どうもPNが面白おかしいタイプは作品のほうも(私には)駄目なときが多くて、PNで避けてる作家さんもいたり…。

あらすじ
銀縁眼鏡に鋭利な美貌、趣味は怪談。そんな入社五年目の佐藤清司は、人当たりがよく完璧に仕事もこなす新人・坂木康太が大嫌い。坂木の唯一の弱点が”おばけ”だと知った清司は、無理やり怪談を話しまくり、前後不覚になるほど怯える彼の様子に、感じたことのない胸の高鳴りを覚える。だが、怖さのあまりパニックに陥った坂木にキスで口を塞がれて…。
このあらすじを読んだときにまた趣味に合わないなーと思った。
…長々失礼なことを書いてきたのは、マイナス印象から入りましたよと云いたかったから。

飾らない、癖のない文章なので読みやすい。怪談という妙なモチーフを使っているし、最初は変人にしか思えない主役に感情移入しにくかったが、話が現実的な仕事のほうに向くと急に共感が芽生えた。年齢が違うから事情も違うけど、「就職氷河期」を体験した人間ならこうした不満のひとつやふたつや…百ぐらいまでは共感できる気がする。もっとも同じ年に就活をした友人に「割を食った」と思わなかったという人もいるので、必ずしもではないが。
あ、話が横に…。
というわけで、ちょっと傲慢で変人な清司は親しみやすいキャラだった。清司の視点なので後輩の坂木は出来すぎでちょっと嫌味なぐらいに感じるが、その完璧君が「おばけ」が苦手なんて言い出すと笑える。バカバカしく感じて抵抗のあるモチーフだったが、面白い、上手い、と思った。読めたというより、読まされたという感じ。
だんだん、おばけ嫌いなところまで含めて坂木が可愛く思えてきて、ちょっとびっくり。なんかもう愛嬌ぐらいにしか思えない。
切なさも味わえ、年下攻のよさを堪能できた。
キャラが合えば結構好きな作家さんかも。4度目の正直でした。さっさと見切りをつけずにしつこく読んでみるのも、たまにはいいかも。
それにしても、坂木に邪魔されて最後まで聞けなかった(読めなかった)怪談のオチが気になるなあ。
『甘い罪の熱情』 秋山みち花 オークラ出版 2005/04

記録。
初読みの作家さん。

(小説133)
自分用備忘録。

『鎌倉恋愛物語』 麻生 雪奈 桜桃書房 1996/05
弟×兄。同じ水槽。菜種梅雨。

(小説123)
英田サキ リブレ出版 2007/06

英田作品の中では比較的読みやすかった。
どうもストーリーや書き方の癖が肌に合わないので、面白い作品であってもはまるところまでいかない作家さんだ。設定段階では好みのことが多いので、趣味に合わないのが残念。

ネタバレ
ファンの方と未読の方は退避してください。

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とっつきやすい書き方だし、まとまりがいいしテンポもいいし、盛り上がりもある。読みやすい小説だと思う。
で、面白いと思うからこそ、いろいろなところが気になってしまう。

香港マフィア×刑事だが、監視しているだけなのでそれほどの緊張感はない。
最初こそワガママを言ってみせたマフィアだが、一度懐いたらひたすら甘いだけの男だった。まったく疑いも警戒もせずに刑事に骨抜きにされていく姿は、ただの金持ちという設定なら優しさを感じていいかもしれないが、マフィアのボスとしては少々情けない。もう少し切れるところ(キレやすいって意味じゃなく…)を見せてほしかった。あんまり大物に見えないせいか、元恋人とのいきさつや父親との再会なども弱さを強調しているだけのようで、隙がありすぎるというか。人が好すぎていつか食い物にされるのではないかと余計な心配をしたくなる。
とりあえず髪を切ってくれない限り趣味じゃないからいいけど。
受のほうもそれなりに刑事としての使命感はあるがとくに熱意も経験もないので、正直、最後に仕事を選んだときは違和感があった。たいして好きでもない仕事を続けるために日本に残ると言い、自分の人生を捨てられないと言うが、こだわるようなものが何も感じられなかったので、ラストの切なさも目減りした。
受が精神的、社会的に自立しようとする態度は好感が持てるが、自分の都合で別れておいて「わたしいつまでも待ってるわ」と言うのは違う気が…。

どちらにしても私は英田作品のキャラにはどうにも台本通りに動いているような作り物っぽさを感じてしまうので、ところどころしか感情移入できない。こういうのは感覚の問題なので、趣味の問題と同じく個人的なことだけど。

(小説116)

一万年+3日

2007年10月24日 BL作家あ行
麻生 玲子 集英社
『一万年+3日』   2004/10
『水の化石』     2004/12
『彩度ゼロの奇跡』 2005/04
『永遠に似た瞬き』 2005/07

久々のコバルト。薄いからか、通勤の片道で1冊読めてしまう。
たまには毛色の変わった作品を読んでみたくて、ネットで評判のよさそうだったこの作品を買ってみた。4冊も続いているぐらいだから、きっと面白いのだろうという期待もあった。

ネタバレ。
…は別にしてないか。つもりはあったが、何を書きたかったか忘れた。
先にお断りしておくと、私はあまり面白いと思えませんでした。
この作品、この作者さんが好きだという方はスルーしてください。


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起伏がない、メリハリがない、尖ったところのない、ダラダラ日常系大学生もの。
ちょっと貶しているような書き方だが、はっきりいってそういうのが好みだ。
最初から最後まで刺激的でノンストップに面白いエンタメも好きだが、内容が濃いと読むのにパワーが必要なので、何作か続けて読むと疲れる。その点こういう平板な話は、心が揺さぶられる感動もないかわりに軽く読めていい。
この作品には話の筋とまったく関係ないしディテールとしても面白みがないしで、丸ごと削ったほうがよさそうな場面がいくつかあるのだが、たぶんそれを削っちゃうと話のテンポがよくなってしまい、かえって雰囲気や味わいが崩れてしまう。なので話の筋からすれば無意味に思えるシーンの多い、滑り止め多用作品という感じかなあ。文章上ではなく内容上の滑り止めなので私には読みづらく感じられたが、1冊が薄いので読み飛ばせばすむという気もする。
1年後にこの話の内容を聞かれたら覚えていなくて答えられないかもしれないが、ふとした瞬間に場面の空気を思い出すことはあるかもしれない。そういう意味での読み応えはあると思う。

キャラは嫌味がなくてよかった。常識人という設定の主人公、西野にたまに(作者が意図していない)突っ込みどころがあるのは気になるものの、爽やか系が多いし、白川は面白かった。
ただなあ。「まだ若い彼らは〜〜なのだ」というような文章が要所要所に入るのがいただけない。これだけ起伏のないストーリーだと、場面の終わりごとにクローズアップしていたカメラを一旦引いて神さま視点に戻さないことには締まらないとは思うのだが、そんな人生の先輩視点を持ってこられると一気に作品の空気が枯れてしまう気が……。神さまに若さが足りない。そのせいか、なんだか作品全体が若作りしているみたいに感じられてしまうところが辛かった。
コバルトだから読者の対象年齢を低く設定しているんだろうか。読むのにキャラ萌が必要。「あの白川さんがこんなことを!」みたいに自ら盛り上がれば、たぶん楽しい。
男性を美人だといって誰もがもてはやす世界には、私はやっぱりついていけないが。

ストーリーを面白かったとかつまらなかったとか書く前に、外縁からゴチャゴチャ書いてしまうのは、うまく話に入り込めなかったからだと思う。もう少しキャッチーに始まってくれれば、そしてもう少し展開が上滑りしていなければ(狙いは分かるんだが狙いを考えさせられるあたりが…)、趣味に合いそうな系統なんだけどなあ。
惜しかった。

(小説107-110)

メモ

2007年7月19日 BL作家あ行
伊 郷 ル ウ 『コー ル ド・レ イン』

ネタバレで酷評。

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最後まで主人公の言動にまったく共感できなかった。
とりあえず好きな人が自分のせいで大怪我してるのに、病院に連れて行くのを後回しにするのはひどすぎる。いくら好きな人が傷つけられたのは許せないと思っていても、逃げてしまった犯人を警察に突き出すよりも病院が先だろう。
本当に好きなのかと聞きたくなった。
(小説56)

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