オー!ファーザー (新潮文庫)
2013年11月2日 読書
伊坂幸太郎 新潮社 2013/06
何年か前に単行本の広告を見て、読んでみたいな~と思いつつ、文庫落ちを待っていた。
で、今年になってようやく文庫化。喜んで手に取ってみたら、788円。うわ、高!と棚に戻してしまった。
個人的に、文庫は700円オーバーだと高く感じる。600円台なら、まあなんとか手が出るんだけど。
…でも、この間久しぶりに地元本屋に行って、ついつい買ってしまった。
ネタバレ
-------------------------------------------
父親が四人いるってどういうこと?!という興味だけで手に取った。
実父と戸籍上の父と育ての父と…、あとは何?とか考えてたんだけど、四人とも自称・実父で、育ての父だけど、戸籍上は繋がりがない、というのが正解だった。
そんな環境って(笑)
ただ、ユニークな設定は興味を引くけど、話の方向性がどうにもつかめなくて、前半は読みづらかった。
中盤から点が繋がって線が見え始め、ラストはそんな細かいところまで伏線回収?!という感じ。実に伊坂さんらしい緻密な書き方。丁寧というか、読者に親切というか。デビュー当初は春樹っぽい文章だった伊坂さんだけど、この辺は全然違うな~と。
なによりキャラが個性的でよかった。由紀夫は冷めてるけど、実はお父さんたちが大好きなのが伝わってくるのもよかった。超変則家族なんだけど、しっかり絆はある。
父親が四人という設定上、母親は留守がちにするしかなかったんだろうなー。
四股(!)かけてる母親が家にいたら生々しい。かといって死亡したとか失踪したとかいう設定にすると、父親たちの誰かが「戸籍上の父親」という頭一つ抜け出した存在になる以外、同居が続けられない。それでは「四人とも一律に父親」という設定が成立しない。
しかも、由紀夫は「母親に愛されている子供」にしないと、話が暗くなりそうだし。
留守がちにするのが、唯一の落としどころだったんじゃないかと。
面白かったけど、まあテンポは悪いかな~。そのせいか、どことなく物足りなさが残る。
何年か前に単行本の広告を見て、読んでみたいな~と思いつつ、文庫落ちを待っていた。
で、今年になってようやく文庫化。喜んで手に取ってみたら、788円。うわ、高!と棚に戻してしまった。
個人的に、文庫は700円オーバーだと高く感じる。600円台なら、まあなんとか手が出るんだけど。
…でも、この間久しぶりに地元本屋に行って、ついつい買ってしまった。
ネタバレ
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父親が四人いるってどういうこと?!という興味だけで手に取った。
実父と戸籍上の父と育ての父と…、あとは何?とか考えてたんだけど、四人とも自称・実父で、育ての父だけど、戸籍上は繋がりがない、というのが正解だった。
そんな環境って(笑)
ただ、ユニークな設定は興味を引くけど、話の方向性がどうにもつかめなくて、前半は読みづらかった。
中盤から点が繋がって線が見え始め、ラストはそんな細かいところまで伏線回収?!という感じ。実に伊坂さんらしい緻密な書き方。丁寧というか、読者に親切というか。デビュー当初は春樹っぽい文章だった伊坂さんだけど、この辺は全然違うな~と。
なによりキャラが個性的でよかった。由紀夫は冷めてるけど、実はお父さんたちが大好きなのが伝わってくるのもよかった。超変則家族なんだけど、しっかり絆はある。
父親が四人という設定上、母親は留守がちにするしかなかったんだろうなー。
四股(!)かけてる母親が家にいたら生々しい。かといって死亡したとか失踪したとかいう設定にすると、父親たちの誰かが「戸籍上の父親」という頭一つ抜け出した存在になる以外、同居が続けられない。それでは「四人とも一律に父親」という設定が成立しない。
しかも、由紀夫は「母親に愛されている子供」にしないと、話が暗くなりそうだし。
留守がちにするのが、唯一の落としどころだったんじゃないかと。
面白かったけど、まあテンポは悪いかな~。そのせいか、どことなく物足りなさが残る。
新潮社 2012/06
文庫落ちを待っている間に、ネタバレされてしまい、ショックでしばらく寝かしておいた作品。
やっと(ショックから立ち直って)読めた……。
…電車の中で分厚いハードカバーは持ちづらいし、貧乏な私には買えないし、文庫落ちを待っている作品がいっぱいある。
あの続編、文庫落ちは何年後かな~。
ネタバレ
-------------------------------------------
「書物」とか「物語」というものに、特別な思い入れを持っている人には入り込みやすい設定かもしれない。
図書室でたくさんの本に囲まれて、話しかけられる、「本」がメインの作品。
宮部さんって本が好きだよね、と妙に親近感がわく。
魔法でできること、できないこと、をもう少し詳しく設定してあると、もっと面白かったかも。
この軽いノリが読みやすくもあり、もったいなくもあり。
なかなか重たいテーマだった。
「英雄」に出会ってしまったばかりに、自分をすべて捨てなければ贖罪できなくなってしまった、無名僧の存在が重たい。理不尽すぎる…。
この複雑で重たいストーリーの主人公を、ただの小学生の女の子ではなく、「オルキャスト」という特殊な存在にしたのが上手い。読んでいて、子供にしか持ちえない柔らかい感情に庇護欲を感じ、同時にユーリの大人っぽい思考に、自分に近い目線を感じて共感しやすい。
ラストはほろ苦さもあったけど、爽やかでもあった。友理子は素敵な女性になりそう。アッシュやアジュとの再会が楽しみ。
文庫落ちを待っている間に、ネタバレされてしまい、ショックでしばらく寝かしておいた作品。
やっと(ショックから立ち直って)読めた……。
…電車の中で分厚いハードカバーは持ちづらいし、貧乏な私には買えないし、文庫落ちを待っている作品がいっぱいある。
あの続編、文庫落ちは何年後かな~。
ネタバレ
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「書物」とか「物語」というものに、特別な思い入れを持っている人には入り込みやすい設定かもしれない。
図書室でたくさんの本に囲まれて、話しかけられる、「本」がメインの作品。
宮部さんって本が好きだよね、と妙に親近感がわく。
魔法でできること、できないこと、をもう少し詳しく設定してあると、もっと面白かったかも。
この軽いノリが読みやすくもあり、もったいなくもあり。
なかなか重たいテーマだった。
「英雄」に出会ってしまったばかりに、自分をすべて捨てなければ贖罪できなくなってしまった、無名僧の存在が重たい。理不尽すぎる…。
この複雑で重たいストーリーの主人公を、ただの小学生の女の子ではなく、「オルキャスト」という特殊な存在にしたのが上手い。読んでいて、子供にしか持ちえない柔らかい感情に庇護欲を感じ、同時にユーリの大人っぽい思考に、自分に近い目線を感じて共感しやすい。
ラストはほろ苦さもあったけど、爽やかでもあった。友理子は素敵な女性になりそう。アッシュやアジュとの再会が楽しみ。
歯医者行ってきた。今日はクリーニングだけ。
虫歯がなくて、ほっとした。
歯科助手さんがとっても丁寧な方で嬉しかった。ちっとも痛くないし、「~~しますよ」ってやる前に声をかけてくれるし。
…前の歯医者は、ムリヤリ大きく口を開けさせられて、唇の端に怪我をさせられたり(かさぶたになった)、喉のほうに器具を突っ込まれて苦しい思いをしたり、遠慮なくガリガリやられて、ゆすぐたびに血が出てたけど。
と、書き出してみると、前の歯医者の助手さんは、えらい乱暴だったのかもしれない。
いまの歯医者さんなら、ちょっと遠くても定期健診に行く気にもなる。
あ、読書感想の酷評のことを書こうと思ってたんだ。
毎回、かなり酷評ばかりしてるなあと。
文句ばかりなのは性格上の問題もあるけど、正直な感想でもある。
酷評しているときは、実は結構(読んだことで)ショックを受けているらしいと気付いた。
古本屋で、よく酷評してしまう作家さん(2名)の本を久しぶりに読んでみようかと棚の前まで行った。
設定や文章、表紙の雰囲気が私の趣味に合っていることが多くて、本屋でつい手に取ってしまう確率の高い作家さんでもある。
今度こそ趣味に合うかもしれないし、とタイトルを眺めていたら、当然ながら酷評した本もあって、無理!と慌てて棚に戻した。思い出すと、うわーってくる。軽くトラウマになっているらしい。
…なんでこんなに合わないのに、雰囲気は趣味に合うんだろう。
まあでも、感想を書くときは、なるべく誉めるようにするっていう人のほうがいいよね~とは思う。
虫歯がなくて、ほっとした。
歯科助手さんがとっても丁寧な方で嬉しかった。ちっとも痛くないし、「~~しますよ」ってやる前に声をかけてくれるし。
…前の歯医者は、ムリヤリ大きく口を開けさせられて、唇の端に怪我をさせられたり(かさぶたになった)、喉のほうに器具を突っ込まれて苦しい思いをしたり、遠慮なくガリガリやられて、ゆすぐたびに血が出てたけど。
と、書き出してみると、前の歯医者の助手さんは、えらい乱暴だったのかもしれない。
いまの歯医者さんなら、ちょっと遠くても定期健診に行く気にもなる。
あ、読書感想の酷評のことを書こうと思ってたんだ。
毎回、かなり酷評ばかりしてるなあと。
文句ばかりなのは性格上の問題もあるけど、正直な感想でもある。
酷評しているときは、実は結構(読んだことで)ショックを受けているらしいと気付いた。
古本屋で、よく酷評してしまう作家さん(2名)の本を久しぶりに読んでみようかと棚の前まで行った。
設定や文章、表紙の雰囲気が私の趣味に合っていることが多くて、本屋でつい手に取ってしまう確率の高い作家さんでもある。
今度こそ趣味に合うかもしれないし、とタイトルを眺めていたら、当然ながら酷評した本もあって、無理!と慌てて棚に戻した。思い出すと、うわーってくる。軽くトラウマになっているらしい。
…なんでこんなに合わないのに、雰囲気は趣味に合うんだろう。
まあでも、感想を書くときは、なるべく誉めるようにするっていう人のほうがいいよね~とは思う。
文藝春秋 2004/09
ちょっと気になってたけど、なんとなく機会がなくて読まなかった本。
近づきすぎない二人の距離、美味しそうな酒と料理、ちょっと素敵な休日の過ごし方。のんびりと進んでいく二人の関係と話が楽しかった。
さほど親しくもない関係から、恋になるのかならないのかという、微妙で暖かい関係になっていくのがいい。恋になる大きなきっかけとかはないけど、相性がよくて、自然と寄り添うようになる関係って憧れるな~。
さっぱりとしているけど、ロマンティックなラブストーリーだった。
そのうち読み返すと思う。
ちょっと気になってたけど、なんとなく機会がなくて読まなかった本。
近づきすぎない二人の距離、美味しそうな酒と料理、ちょっと素敵な休日の過ごし方。のんびりと進んでいく二人の関係と話が楽しかった。
さほど親しくもない関係から、恋になるのかならないのかという、微妙で暖かい関係になっていくのがいい。恋になる大きなきっかけとかはないけど、相性がよくて、自然と寄り添うようになる関係って憧れるな~。
さっぱりとしているけど、ロマンティックなラブストーリーだった。
そのうち読み返すと思う。
ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編
2013年5月17日 読書
『刑務所のリタ・ヘイワース』が好きなので、何度目かの再読。
こちらは何度読んでも感動するし、とてもいい気分で読み終われる。
で、その勢いのままついつい表題作のほうも読んでしまうという…。
ネタバレ
-----------------------------------------------------------
怖いよう…。
残酷な過去の話や、現在の残酷な場面も嫌なんだけど、悪夢の描写がとにかく怖い。
ああ、やっと解放される、サヨナラ勝ちだ、という場面で、永久に続く悪夢の延長戦って……、怖すぎるでしょう。
あ~、今晩夢に見そうで怖い!!
老人と少年の奇妙なパワーバランスと心理戦、依存とちょっとした友情?が読み応えがあってよかった。
こちらは何度読んでも感動するし、とてもいい気分で読み終われる。
で、その勢いのままついつい表題作のほうも読んでしまうという…。
ネタバレ
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怖いよう…。
残酷な過去の話や、現在の残酷な場面も嫌なんだけど、悪夢の描写がとにかく怖い。
ああ、やっと解放される、サヨナラ勝ちだ、という場面で、永久に続く悪夢の延長戦って……、怖すぎるでしょう。
あ~、今晩夢に見そうで怖い!!
老人と少年の奇妙なパワーバランスと心理戦、依存とちょっとした友情?が読み応えがあってよかった。
シェイクスピアを楽しむために
2012年10月19日 読書 コメント (2)
阿刀田高 新潮社 2002/12
よい入門書。
シェイクスピアに興味はあるし、あらすじぐらいは知ってるけど、本で戯曲っていうのは取っ付きづらい…という私にはピッタリだった。
有名作は網羅されているし、単なる作品紹介にとどまらず創作側の意図を読み解いたり、イギリス取材旅行をしていたり、たっぷりの内容で面白い。
「戯曲は台詞の多い小説じゃない」という言葉に、なるほど~と。小説と同じように読もうとして、取っ付きづらいと思ってたんだけど、そもそも読み方が違ったようで。
あと、英語じゃないと文章の上手さ、面白さを味わえないという指摘も興味深かった。確かに名文や名調子を翻訳で読み取るのは難しそう。
マザーグースを翻訳するとか、短歌を英訳するようなもので、翻訳家は語学力以上に文才を求められちゃうというか。小説の翻訳でももちろんそうなんだろうけど、詩や戯曲ではとくに。
1冊ぐらい翻訳を読んでみようと思っていたけど、舞台や映画を観たほうが本質が分かるというのも納得。そりゃ、そのまま読むために書かれたわけじゃないからなあ、と。名曲の楽譜見ても、普通は感動できないし。
トルストイのシェイクスピア批評も興味深かった。
…なんでそんなにムキになってシェイクスピアにダメ出ししてるのか分かりづらかったけど、シェイクスピア作品が突っ込みどころ満載というのは同意。世間の評判ほど面白い?という気持ちも分かる。
でも、突っ込みどころを修正すると勢いもなくなって、観客を惹き込む(巻き込む)ストーリーではなくなっちゃうんじゃないかなあ。シェイクスピア作品に大量に出てくる格言めいた名台詞の数々は、よく考えると「それってどうなの?」的な内容だけど、理屈抜きでカッコいいし。そういうの全部ひっくるめて魅力ある作品だと思う。
よい入門書。
シェイクスピアに興味はあるし、あらすじぐらいは知ってるけど、本で戯曲っていうのは取っ付きづらい…という私にはピッタリだった。
有名作は網羅されているし、単なる作品紹介にとどまらず創作側の意図を読み解いたり、イギリス取材旅行をしていたり、たっぷりの内容で面白い。
「戯曲は台詞の多い小説じゃない」という言葉に、なるほど~と。小説と同じように読もうとして、取っ付きづらいと思ってたんだけど、そもそも読み方が違ったようで。
あと、英語じゃないと文章の上手さ、面白さを味わえないという指摘も興味深かった。確かに名文や名調子を翻訳で読み取るのは難しそう。
マザーグースを翻訳するとか、短歌を英訳するようなもので、翻訳家は語学力以上に文才を求められちゃうというか。小説の翻訳でももちろんそうなんだろうけど、詩や戯曲ではとくに。
1冊ぐらい翻訳を読んでみようと思っていたけど、舞台や映画を観たほうが本質が分かるというのも納得。そりゃ、そのまま読むために書かれたわけじゃないからなあ、と。名曲の楽譜見ても、普通は感動できないし。
トルストイのシェイクスピア批評も興味深かった。
…なんでそんなにムキになってシェイクスピアにダメ出ししてるのか分かりづらかったけど、シェイクスピア作品が突っ込みどころ満載というのは同意。世間の評判ほど面白い?という気持ちも分かる。
でも、突っ込みどころを修正すると勢いもなくなって、観客を惹き込む(巻き込む)ストーリーではなくなっちゃうんじゃないかなあ。シェイクスピア作品に大量に出てくる格言めいた名台詞の数々は、よく考えると「それってどうなの?」的な内容だけど、理屈抜きでカッコいいし。そういうの全部ひっくるめて魅力ある作品だと思う。
これ、買ったほうがいいの?
なんで講談社文庫なの??
なんだかよく分からないけど…、収録作品を減らして、ノベルスの2冊分を1冊にしたってことなのかなあ。
まあ、いいや。
とりあえず、見なかったことにしよう。
もし買うとしても、解説のページは読みたくない。
なんで講談社文庫なの??
なんだかよく分からないけど…、収録作品を減らして、ノベルスの2冊分を1冊にしたってことなのかなあ。
まあ、いいや。
とりあえず、見なかったことにしよう。
もし買うとしても、解説のページは読みたくない。
伊坂幸太郎 講談社 2007/5
遅ればせながら、最近すっかりはまっている作家さん。
ネタバレ
-------------------------------------------
長編の構成力も凄いけど、伊坂さんはとくに連作短編が素晴しいと思う。
1つ1つの話の着想もいいし、何より陣内や永瀬、、武藤、優子といった登場人物が魅力的。
それぞれ独立しているし、時系列もバラバラなのに、通しで読むと浮かび上がってくるストーリーが最高!
盲導犬のベスも可愛い。撫でてみたくなる。
伊坂作品にわりと多い暴力描写がないのも読みやすくてよかった。…話の都合上、必要なときもあるけど、やっぱり読んでて気分はよくないし。
そういうわけでこの作品は、肩の力を抜いて、休日にのんびり楽しむのにピッタリな話だった。
遅ればせながら、最近すっかりはまっている作家さん。
ネタバレ
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長編の構成力も凄いけど、伊坂さんはとくに連作短編が素晴しいと思う。
1つ1つの話の着想もいいし、何より陣内や永瀬、、武藤、優子といった登場人物が魅力的。
それぞれ独立しているし、時系列もバラバラなのに、通しで読むと浮かび上がってくるストーリーが最高!
盲導犬のベスも可愛い。撫でてみたくなる。
伊坂作品にわりと多い暴力描写がないのも読みやすくてよかった。…話の都合上、必要なときもあるけど、やっぱり読んでて気分はよくないし。
そういうわけでこの作品は、肩の力を抜いて、休日にのんびり楽しむのにピッタリな話だった。
500MILES (ドルチェノベルズ)
2012年4月18日 読書 コメント (2)
新潮社 1994/05
人様の感想やレビューを拝読して驚いた。
「きれい」とか、「純粋な愛情」っていう感想が多い。
確かに書き方は透明感があるし、雰囲気は優しいんだけど、恋人がいるのに他の人と結婚するような男が優しいと言えるんだろうか。
奥さん公認だと不倫は不倫じゃなくなって、きれいで純粋なのかなあ。
家族愛がテーマなら、きれいな話かもしれないけど、恋愛って言われると違和感がある。
両思いのカップルの間に「妻」として割り込むことが幸せなんだとしたら、それは哀しい話じゃないのかな。
人様の感想やレビューを拝読して驚いた。
「きれい」とか、「純粋な愛情」っていう感想が多い。
確かに書き方は透明感があるし、雰囲気は優しいんだけど、恋人がいるのに他の人と結婚するような男が優しいと言えるんだろうか。
奥さん公認だと不倫は不倫じゃなくなって、きれいで純粋なのかなあ。
家族愛がテーマなら、きれいな話かもしれないけど、恋愛って言われると違和感がある。
両思いのカップルの間に「妻」として割り込むことが幸せなんだとしたら、それは哀しい話じゃないのかな。
宮廷神官物語 運命は兄弟を弄ぶ
2011年8月12日 読書
角川書店 2011/07
面白かった~。次で最終巻というだけあって、話のテンポがよくて、ギュッと詰まった感じだった。
どーでもいいが「宮廷神官」と入力するとき、まず「宮廷新刊」と変換される。これ、私の気分的には間違ってない。待ってた新刊だもの。
で、次に「宮廷震撼」になる。まあ話の内容的には合ってるかも?
で、その次に「宮廷新館」。あ、これこれ。でも、なんか違うような?
…だんだん何が正解なのか分からなくなっていくのでした。
ネタバレ
-------------------------------------------
わりと王道な面白さのある作品。こういう作品ってかえって感想書きづらくて、「面白かった」になりがち…。
というわけで、どーでもいいことだけ。
曹鉄。
やっとのことで活躍できて、よかったね!と思ったのも束の間、助けたはずの鶏冠が…。
えーっと…、ボスキャラ逃がしちゃったのは曹鉄なわけで、別に責められるような場面ではないけど、この詰めの甘さが頼りないっていうかヘタレっていうか。
「きみは本当に残念なヒーローだな!」ぐらいは言いたくなった。なんか、かわいそうなキャラなのかも。ひっそりと三枚目担当。
…だいたい、祖母(仮)にデレデレ、妹(仮)にデレデレ、親友にデレデレ。しっかりしなさい…。
櫻嵐は脇キャラとして必要以上に目立ちすぎで、なんかこう…人気はあるのかもしれないけど、小説全体のバランスを悪くしている気がしてならない。
櫻嵐がお好きなのは分かりましたが、どちらかっていうと王様になる弟という重要キャラ推しが適当なんじゃないのかなあと。
面白かった~。次で最終巻というだけあって、話のテンポがよくて、ギュッと詰まった感じだった。
どーでもいいが「宮廷神官」と入力するとき、まず「宮廷新刊」と変換される。これ、私の気分的には間違ってない。待ってた新刊だもの。
で、次に「宮廷震撼」になる。まあ話の内容的には合ってるかも?
で、その次に「宮廷新館」。あ、これこれ。でも、なんか違うような?
…だんだん何が正解なのか分からなくなっていくのでした。
ネタバレ
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わりと王道な面白さのある作品。こういう作品ってかえって感想書きづらくて、「面白かった」になりがち…。
というわけで、どーでもいいことだけ。
曹鉄。
やっとのことで活躍できて、よかったね!と思ったのも束の間、助けたはずの鶏冠が…。
えーっと…、ボスキャラ逃がしちゃったのは曹鉄なわけで、別に責められるような場面ではないけど、この詰めの甘さが頼りないっていうかヘタレっていうか。
「きみは本当に残念なヒーローだな!」ぐらいは言いたくなった。なんか、かわいそうなキャラなのかも。ひっそりと三枚目担当。
…だいたい、祖母(仮)にデレデレ、妹(仮)にデレデレ、親友にデレデレ。しっかりしなさい…。
櫻嵐は脇キャラとして必要以上に目立ちすぎで、なんかこう…人気はあるのかもしれないけど、小説全体のバランスを悪くしている気がしてならない。
櫻嵐がお好きなのは分かりましたが、どちらかっていうと王様になる弟という重要キャラ推しが適当なんじゃないのかなあと。
角川書店 1993/06
完結~。
ネタバレ
川中、年取ったなあ…っていうのが感想。1巻では若かったのに、10巻では何度も「社長も年取った」とか言われてしまっていて、なんだかちょっと寂しい。
10巻はあまり好きじゃない。完結に向かっているせいか、いままでの勢いを感じないし、盛り上がりにも欠けている気がする。作品としては必要なものだし、誰もが年は取るわけだけど、寂しさしか感じないんだよなあ。
作品内の世代交代も藤木→坂井だけで十分だった。高岸も悪くないけど、川中が高岸ばかり連れ歩いてるの見ると、なんだかなあって気分になる。
川中がいきなり20歳も年下の女性に入れあげていて、なぜ?という感じだし。このシリーズ、男は20代だと「ガキ、小僧」って扱いで、女が若いのは20代前半までっていう扱いなのだが、それにしてもね。
で、川中が若い女とイチャイチャ紅茶飲んでたりすると、「あー、こんなのハードボイルドじゃねー!」って叫びたくなるし、あんた本当に年取ったね…って言いたくもなる。
別に川中が恋をしようが穏やかな家庭を持とうがいいんだけど、その相手が「いいお嬢さん」としか評せない明子であることが、つまらない。アル中気味の美人の美津子の次が明子。いい悪いじゃなく、つまらないとしか言いようがない。
せめてもう少し明子のキャラに奥行きがあれば…。類型的にしか感じなかった。菜摘と安見の親子、知子みたいな個性もないし、玲子(悦子)やまりこほど気になるタイプでもなかった。
残り少ないせいか、各キャラの扱いも酷いものが…。
まずは立野。遅くに(8巻で)登場したキャラで9巻では出てこないんだけど、秋山の知人って程度の扱いで、えー?って思っちゃった。
誰より、秋山。
3巻からメインで頑張ってきたのに、見せ場もなく、誰にも看取られることなく、いきなり畑の中に死体が転がってましたって……。酷すぎる…。
…情報を持ってた川中が秋山に電話の一本もしておけば、死ななくてすんだんじゃ?って思うし。こんな扱いなら、そもそも殺す必要すら感じない。川中の人生を一層暗くするためだけに殺されたような感じ。最後に秋山の人生が描かれてないのが納得いかない。
次に下村。
なんか川中との間に少しばかり心理的隔たりみたいなものが続いた後で、いきなり暴走してサクッと死んでしまったという感じ。活躍もしたし、死に際も描かれ、秋山ほど酷くはないんだけど、「話の都合で、急いで殺しました」感が強い。
本人は満足して死んでいったんだろうけど、藤木や叶ほど「ここが人生の終わり」という地点には到達していなかったし、描き方が浅い。
そんな中、キドニーだけは大活躍。このシリーズは川中とキドニーの友情の行方がメインテーマだったのか、というぐらい(笑)
最後、砂丘でキドニーを助ける場面は盛り上がった。まさにシリーズの決着に相応しい舞台。
一緒にいるのが川岸だったのは残念だけど、まあここで坂井に活躍されても困るか…。ここは川中とキドニーだけの見せ場であるべき。
ああ、これがブラディ・ドールだ~って思った。
完結~。
ネタバレ
冬が海からやって来る。毎年それを眺めているのが好きだった。鈍く輝きはじめた海を見て、私は逝ってしまった男たちを想い出す。ケンタッキー・バーボンで喉を灼く。だが、心のひりつきまでは消しはしない。いま私にできることは、この闘いに終止符を打つことだ。張り裂かれるような想いを胸に、川中良一の最後の闘いが始まる。“ブラディ・ドール”シリーズ、ついに完結。
川中、年取ったなあ…っていうのが感想。1巻では若かったのに、10巻では何度も「社長も年取った」とか言われてしまっていて、なんだかちょっと寂しい。
10巻はあまり好きじゃない。完結に向かっているせいか、いままでの勢いを感じないし、盛り上がりにも欠けている気がする。作品としては必要なものだし、誰もが年は取るわけだけど、寂しさしか感じないんだよなあ。
作品内の世代交代も藤木→坂井だけで十分だった。高岸も悪くないけど、川中が高岸ばかり連れ歩いてるの見ると、なんだかなあって気分になる。
川中がいきなり20歳も年下の女性に入れあげていて、なぜ?という感じだし。このシリーズ、男は20代だと「ガキ、小僧」って扱いで、女が若いのは20代前半までっていう扱いなのだが、それにしてもね。
で、川中が若い女とイチャイチャ紅茶飲んでたりすると、「あー、こんなのハードボイルドじゃねー!」って叫びたくなるし、あんた本当に年取ったね…って言いたくもなる。
別に川中が恋をしようが穏やかな家庭を持とうがいいんだけど、その相手が「いいお嬢さん」としか評せない明子であることが、つまらない。アル中気味の美人の美津子の次が明子。いい悪いじゃなく、つまらないとしか言いようがない。
せめてもう少し明子のキャラに奥行きがあれば…。類型的にしか感じなかった。菜摘と安見の親子、知子みたいな個性もないし、玲子(悦子)やまりこほど気になるタイプでもなかった。
残り少ないせいか、各キャラの扱いも酷いものが…。
まずは立野。遅くに(8巻で)登場したキャラで9巻では出てこないんだけど、秋山の知人って程度の扱いで、えー?って思っちゃった。
誰より、秋山。
3巻からメインで頑張ってきたのに、見せ場もなく、誰にも看取られることなく、いきなり畑の中に死体が転がってましたって……。酷すぎる…。
…情報を持ってた川中が秋山に電話の一本もしておけば、死ななくてすんだんじゃ?って思うし。こんな扱いなら、そもそも殺す必要すら感じない。川中の人生を一層暗くするためだけに殺されたような感じ。最後に秋山の人生が描かれてないのが納得いかない。
次に下村。
なんか川中との間に少しばかり心理的隔たりみたいなものが続いた後で、いきなり暴走してサクッと死んでしまったという感じ。活躍もしたし、死に際も描かれ、秋山ほど酷くはないんだけど、「話の都合で、急いで殺しました」感が強い。
本人は満足して死んでいったんだろうけど、藤木や叶ほど「ここが人生の終わり」という地点には到達していなかったし、描き方が浅い。
そんな中、キドニーだけは大活躍。このシリーズは川中とキドニーの友情の行方がメインテーマだったのか、というぐらい(笑)
最後、砂丘でキドニーを助ける場面は盛り上がった。まさにシリーズの決着に相応しい舞台。
一緒にいるのが川岸だったのは残念だけど、まあここで坂井に活躍されても困るか…。ここは川中とキドニーだけの見せ場であるべき。
ああ、これがブラディ・ドールだ~って思った。
角川書店 1993/03
高校教師の西尾が主人公。
ネタバレ
殴られても殴り返せないような臆病な男は、このシリーズでは珍しい。職業は高校教師で、いいところのお坊ちゃん。ついでながら、コーヒーの味が分からず、砂糖を入れるのも北方ワールドでは珍しい(笑)
でも、そこはこのシリーズの主人公。怯えていても意地は通すし、ドライビングテクニックは一流で、カローラで川中のポルシェを負かすほどの腕前だったりする。
運転以外の面では頼りなかった西尾が、だんだん逞しくなっていくところがいい。
ただ教え子を助けるために体を張るっていうんじゃなくて、自分の生き方を変えるために足掻くところが共感を呼ぶんだと思う。「教え子のため」でも格好いいんだろうけど、人を助けることを通して成長していくっていうのが、いいよね。
教え子を逃がすために車で敵をかわす西尾はかなり格好いい。「男になる」なんて言い方は、普段見聞きすれば、まあちょっと笑っちゃうような言葉だと思うんだけど、西尾の戦いを見てると笑えなくなる。
本当に男になったよなあと感動する。
ところで、この巻で秋山に死亡フラグが立っている。再読だから先の展開は知ってるんだけど、知っていても、うわあってなる……。そういうシリーズなんだけど(ハードボイルドだし)、人が死にすぎて辛い。
このシリーズは一人称なんで、主人公は死なない。他の巻で死ぬことはあっても、自分が主役のときはとりあえず無事。
だから、最初に『聖域』を読んだときは西尾の命に関しては安心してた。高岸(教え子)は死ぬのかなあとか思ってたんだけど。結構、衝撃のラストだった…。
今回はラストが分かっていて読んだわけだけど、分かっていても辛い。
ただ、どれだけ人が死んでも、しっかり「生きた」結果としての死だから、納得できるというか、なんか「よかったね」って言ってあげたいような気分にはなる。
高校教師の西尾が主人公。
ネタバレ
高校教師の西尾は、突然退学した生徒を探しにその街にやって来た。「臆病なんですよ、俺は。自分でも情けなくなる…」西尾はそう呟く。だが、それでも自分を信じたいと思う。沈黙しつづけるばかりの人生に幕を下ろしたいと、西尾は願った。西尾は教え子が、暴力団に川中を殺すための鉄砲玉として雇われていることを知る。一体なんのために…。しかし、黙したまま堕ちていこうとした少年の決意を知ったとき、西尾の魂に火が点いた―。己の魂の再生に賭けた男の姿を描く“ブラディ・ドール”シリーズの第9弾。
殴られても殴り返せないような臆病な男は、このシリーズでは珍しい。職業は高校教師で、いいところのお坊ちゃん。ついでながら、コーヒーの味が分からず、砂糖を入れるのも北方ワールドでは珍しい(笑)
でも、そこはこのシリーズの主人公。怯えていても意地は通すし、ドライビングテクニックは一流で、カローラで川中のポルシェを負かすほどの腕前だったりする。
運転以外の面では頼りなかった西尾が、だんだん逞しくなっていくところがいい。
ただ教え子を助けるために体を張るっていうんじゃなくて、自分の生き方を変えるために足掻くところが共感を呼ぶんだと思う。「教え子のため」でも格好いいんだろうけど、人を助けることを通して成長していくっていうのが、いいよね。
教え子を逃がすために車で敵をかわす西尾はかなり格好いい。「男になる」なんて言い方は、普段見聞きすれば、まあちょっと笑っちゃうような言葉だと思うんだけど、西尾の戦いを見てると笑えなくなる。
本当に男になったよなあと感動する。
ところで、この巻で秋山に死亡フラグが立っている。再読だから先の展開は知ってるんだけど、知っていても、うわあってなる……。そういうシリーズなんだけど(ハードボイルドだし)、人が死にすぎて辛い。
このシリーズは一人称なんで、主人公は死なない。他の巻で死ぬことはあっても、自分が主役のときはとりあえず無事。
だから、最初に『聖域』を読んだときは西尾の命に関しては安心してた。高岸(教え子)は死ぬのかなあとか思ってたんだけど。結構、衝撃のラストだった…。
今回はラストが分かっていて読んだわけだけど、分かっていても辛い。
ただ、どれだけ人が死んでも、しっかり「生きた」結果としての死だから、納得できるというか、なんか「よかったね」って言ってあげたいような気分にはなる。
角川書店 1993/01
立野。スーパーの経営者。
このシリーズにしては、ごく平凡な経歴&職業の持ち主だが、わりと印象は強く残っていた。息子とセットだからかな。
ちなみに、再読の前に1巻から一人ずつ主人公を思い出していって、どうしても「誰だっけ?」と思い出せなかったのは桜内だけだった…。
ネタバレ
スーパーの経営者ってことで経歴自体は平凡なのだが、無茶苦茶タフな上に、ヤクザに殴られても全然怖がらない。いくら北方ワールドでも、そんな…と思っていたが、怖がらないことに理由がある。すべてに白けてしまっているから。で、それが離婚の原因にまでなっている。
そういう男が少しずつ何かを取り戻していく。取り戻せないものもある。って辺りが父と子の絆を取り戻していく過程とともに、じっくり描かれていて、読み応えのある内容。(上から目線で申し訳ないが)小説としての出来もいい。
最後はうわあって感じだが、納得できる展開で、それだけに悲しい。
立野。スーパーの経営者。
このシリーズにしては、ごく平凡な経歴&職業の持ち主だが、わりと印象は強く残っていた。息子とセットだからかな。
ちなみに、再読の前に1巻から一人ずつ主人公を思い出していって、どうしても「誰だっけ?」と思い出せなかったのは桜内だけだった…。
ネタバレ
男は、3年前に別れた妻を救うために、その街へやって来た。「なにからはじめればいいのか、やっとわかったよ。殴られた。死ぬほど殴られた。殴られたってことから、俺ははじめるよ」妻の死。息子との再会。男はN市で起きた土地抗争に首を突っ込んでいき、喪失してしまったなにかを、取り戻そうとする。一方、謎の政治家大河内が、ついにその抗争に顔を出し始めた。大河内の陰謀に執拗に食い下がる川中、そしてキドニー。いま、静寂の底に眠る熱き魂が、再び鬨の声を挙げる。“ブラディ・ドール”シリーズ第8弾。
スーパーの経営者ってことで経歴自体は平凡なのだが、無茶苦茶タフな上に、ヤクザに殴られても全然怖がらない。いくら北方ワールドでも、そんな…と思っていたが、怖がらないことに理由がある。すべてに白けてしまっているから。で、それが離婚の原因にまでなっている。
そういう男が少しずつ何かを取り戻していく。取り戻せないものもある。って辺りが父と子の絆を取り戻していく過程とともに、じっくり描かれていて、読み応えのある内容。(上から目線で申し訳ないが)小説としての出来もいい。
最後はうわあって感じだが、納得できる展開で、それだけに悲しい。
角川書店 1992/12
下村の登場。
ネタバレ
若いからか、性格なのか、下村の気持ちは分かりやすい。単純という意味ではなく、共感という意味で。
ストーリーはある意味では単純かもしれない。理由を言わずに消えた婚約者を追ってN市に辿り着いた下村が、余命幾ばくもない男(沖田)に出会って、自分が求めていたものは婚約者とのけじめではなく、もっと別のものではないかと考える。生ぬるい表現を使えば、「自分探し」ってやつ。(どうでもいいが、私は「自分探し」って言葉が好きじゃない)
ただ、北方ワールドなので、自分の生き方を見つけるのは命がけ…。下村は意地を通したために手首を切り落とされたりしている。
…にしても、下村はこの街に向いた人間だったんだろうなあ。川中やキドニーに惹かれ、坂井に懐き(?)、桜内と一緒に住んだりしているんだから…。
下村には共感しやすいが、もう一人の主役といっていい沖田は…、最後まで魅力が分からなかった。癌に冒されながら亡き友人との約束を守るために、ヤクザの妨害に遭いながらも病院を作ろうするところまではいいとして、「自分が死ぬと分かっているから、他人の命のことなんて考えられない」と言い切るのは最低だと思う。どんなに崇高な目的があろうと、自分のせいで誘拐された恋人を助けようともしない男なんて好きになれるはずもない。
で、この沖田を庇って叶が死んでしまう。再読だから、ここで叶が死ぬことは知っていたんだけど、知っていてもやはり悲しい…。最後まで「お喋りな殺し屋」を貫く叶が好きだ~!
叶は沖田のためではなく、自分の生き方を貫くために沖田を庇ったわけだけど、沖田にかける言葉は本当に優しい。
ところが、叶に助けられた命を沖田はすぐに無駄にして、自殺してしまう。爆弾持って敵と恋人を道連れに死んだんだけど、沖田のこういうところが嫌い。
…叶の犠牲が無駄になったからではない。叶は許すと思う。
だけど、こんなところで命を捨てるなら、何のために今まで周囲を犠牲にしてきたのか?
まだ病院はできてない。放り出すなよ。癌と戦わないのかよ。
沖田の壮絶な死に対してこんな感想を持ってしまうのは、私の器が小さいせいかもしれないが、なんか許せないんだよなあ。
下村の「俺の天使」発言は、何度読んでも笑える。
下村の登場。
ネタバレ
「なにも言わずに消える。それが俺には納得できなかった」自分の前から、突然消えた女を追いかけて、青年はこの街にやって来た。癌に冒された男との出会い。滅びゆく男に魅いられた女との再会。青年は、それから生きていくためのけじめを求めた。やがて死に向かった男の生命の炎が燃え尽きたとき、友の瞼には残照が焼き付けられる。喪失しつづけた男たちが辿り着く酒場を舞台に、己の掟に固執する男の姿を彫りおこす好評“ブラディ・ドール”シリーズの第7弾
若いからか、性格なのか、下村の気持ちは分かりやすい。単純という意味ではなく、共感という意味で。
ストーリーはある意味では単純かもしれない。理由を言わずに消えた婚約者を追ってN市に辿り着いた下村が、余命幾ばくもない男(沖田)に出会って、自分が求めていたものは婚約者とのけじめではなく、もっと別のものではないかと考える。生ぬるい表現を使えば、「自分探し」ってやつ。(どうでもいいが、私は「自分探し」って言葉が好きじゃない)
ただ、北方ワールドなので、自分の生き方を見つけるのは命がけ…。下村は意地を通したために手首を切り落とされたりしている。
…にしても、下村はこの街に向いた人間だったんだろうなあ。川中やキドニーに惹かれ、坂井に懐き(?)、桜内と一緒に住んだりしているんだから…。
下村には共感しやすいが、もう一人の主役といっていい沖田は…、最後まで魅力が分からなかった。癌に冒されながら亡き友人との約束を守るために、ヤクザの妨害に遭いながらも病院を作ろうするところまではいいとして、「自分が死ぬと分かっているから、他人の命のことなんて考えられない」と言い切るのは最低だと思う。どんなに崇高な目的があろうと、自分のせいで誘拐された恋人を助けようともしない男なんて好きになれるはずもない。
で、この沖田を庇って叶が死んでしまう。再読だから、ここで叶が死ぬことは知っていたんだけど、知っていてもやはり悲しい…。最後まで「お喋りな殺し屋」を貫く叶が好きだ~!
叶は沖田のためではなく、自分の生き方を貫くために沖田を庇ったわけだけど、沖田にかける言葉は本当に優しい。
ところが、叶に助けられた命を沖田はすぐに無駄にして、自殺してしまう。爆弾持って敵と恋人を道連れに死んだんだけど、沖田のこういうところが嫌い。
…叶の犠牲が無駄になったからではない。叶は許すと思う。
だけど、こんなところで命を捨てるなら、何のために今まで周囲を犠牲にしてきたのか?
まだ病院はできてない。放り出すなよ。癌と戦わないのかよ。
沖田の壮絶な死に対してこんな感想を持ってしまうのは、私の器が小さいせいかもしれないが、なんか許せないんだよなあ。
下村の「俺の天使」発言は、何度読んでも笑える。
角川書店 1992/03
医者。
ネタバレ
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正直、前半はあまり出来がよくない作品だと思う…。
主人公の流れ者?の医者が、事件に両足を突っ込みながら目を背けているんで、なんだかテンポも悪いし、なんでそんなとこで反抗するの?という気分になる。
いままで出てきたキャラクターが次々と紹介されていく過程も、長いシリーズものの宿命とはいえ、少しばかり残念な感じ。
まあはっきりいえば、桜内(主人公)があんまり好きじゃない。理不尽に対して逆らいたい気持ちは分かるんだけど、どうも桜内がやると子供の反抗みたいに思えてしまって。
腕もいいし、性格はひねくれているし、大人っぽく見えるが、中身は単なる甘ったれ。そんな印象が強かった。
で、桜内は積極的に事件に関わるわけじゃないのが、どうにも共感しづらくて。本当に無関係なんだから、さっさと回れ右して逃げればいいのに、なぜか顔を背けながら中心に向かって歩いていく。何がしたいのか、さっぱり分からない。
好きで怪我をして、自分で手術しました、としか。
遠山のやった無茶とか、秋山の意地なんかも、他人から見れば無意味だったかもしれないけど、なんか気持ちは分かった。
でも、桜内の行動や恋愛観は理解できない。というか、あまり興味が持てないままだった。
なんだかなーと読み進めるうちに、なぜか急に桜内が主役というよりむしろ物語の語り手になり、藤木の話になる。
1巻からずっと主役を食いそうなぐらい存在感のあった藤木の物語が、ようやく結末を迎える。男の生き様って感じで、格好いい最期だった。
『黙約』の主役は藤木だったと言われれば、納得できる。
医者。
ネタバレ
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正直、前半はあまり出来がよくない作品だと思う…。
主人公の流れ者?の医者が、事件に両足を突っ込みながら目を背けているんで、なんだかテンポも悪いし、なんでそんなとこで反抗するの?という気分になる。
いままで出てきたキャラクターが次々と紹介されていく過程も、長いシリーズものの宿命とはいえ、少しばかり残念な感じ。
まあはっきりいえば、桜内(主人公)があんまり好きじゃない。理不尽に対して逆らいたい気持ちは分かるんだけど、どうも桜内がやると子供の反抗みたいに思えてしまって。
腕もいいし、性格はひねくれているし、大人っぽく見えるが、中身は単なる甘ったれ。そんな印象が強かった。
で、桜内は積極的に事件に関わるわけじゃないのが、どうにも共感しづらくて。本当に無関係なんだから、さっさと回れ右して逃げればいいのに、なぜか顔を背けながら中心に向かって歩いていく。何がしたいのか、さっぱり分からない。
好きで怪我をして、自分で手術しました、としか。
遠山のやった無茶とか、秋山の意地なんかも、他人から見れば無意味だったかもしれないけど、なんか気持ちは分かった。
でも、桜内の行動や恋愛観は理解できない。というか、あまり興味が持てないままだった。
なんだかなーと読み進めるうちに、なぜか急に桜内が主役というよりむしろ物語の語り手になり、藤木の話になる。
1巻からずっと主役を食いそうなぐらい存在感のあった藤木の物語が、ようやく結末を迎える。男の生き様って感じで、格好いい最期だった。
『黙約』の主役は藤木だったと言われれば、納得できる。