アンナ・カレーニナ〈上〉
2010年6月21日 読書
岩波書店 1989/11
面白いんだけど、なんせ分厚いので途中で息切れしそう。
「ロシア文学=人名を覚えられない」というイメージがあったんだけど(愛称とか複雑というか)、これは結構覚えやすいなあと。
ちなみに私にとってはロシア文学=『罪と罰』。たぶんそれしか読んだことない…。
読みたい本はたくさんあるし、これだけは読んでおかねばと思う名作は数多くあるんだけど、読まないとなーと思っているうちに無駄に過ごしてしまっている。学生のうちに読んでおきたかった。
こんなことじゃいかんとちょっと反省して名作を大人買いした。どうでもいいが最近の文庫、とくに純文は高いと思う…。これは1冊840円だった。まあこの作品に関してはページ数も普通の文庫の1.5~2倍ぐらいありそうだけど。
とにかく頑張って読まないとなあ…。
面白いんだけど、なんせ分厚いので途中で息切れしそう。
「ロシア文学=人名を覚えられない」というイメージがあったんだけど(愛称とか複雑というか)、これは結構覚えやすいなあと。
ちなみに私にとってはロシア文学=『罪と罰』。たぶんそれしか読んだことない…。
読みたい本はたくさんあるし、これだけは読んでおかねばと思う名作は数多くあるんだけど、読まないとなーと思っているうちに無駄に過ごしてしまっている。学生のうちに読んでおきたかった。
こんなことじゃいかんとちょっと反省して名作を大人買いした。どうでもいいが最近の文庫、とくに純文は高いと思う…。これは1冊840円だった。まあこの作品に関してはページ数も普通の文庫の1.5~2倍ぐらいありそうだけど。
とにかく頑張って読まないとなあ…。
恩田陸 文藝春秋 2008/3
たまには様式美(…別名テンプレ)から脱却した作品も読まないとなあと思い、積読の中から引っ張り出してきてみた。
ネタバレ
----------------------------------------------------
----------------------------------------------------
巻末(文庫版を読んだ)に収録されていたインタビューの言葉にちょっと衝撃を受けた。「閉じていない」結末に関して、「作者が説得し、読者が納得すればいい」と云っているのだが、…納得してるんだろうか、読者。
ミステリ好きな人は白黒はっきりした結末を好むのものだと思っていたのだが、たくさん読んでいるとそうでもなくなるのだろうか。うーん?
やっぱりラストの手前までは面白かった。ただ…それぞれの章ごとに矛盾をはらむ構成(1章で殺された人が、2章で普通に出てくる)だから、これはもう納得できるラストにはならないだろうなあと覚悟はしていた。
でも、それが分かっていても面白いし、最後まで夢中で読んでしまう。
最終章はまたか~という感じ。いや、作者本人も語っているように、恩田作品としてはきっちり説明がなされているラストなのだが、なんせ記憶の曖昧性や改竄がテーマなので、謎解きのすっきり感とは程遠く。
まあでも、それはそれでいいとして。
残念だったのは、最終章で登場人物が全員「向こう側」に行ってしまったこと。恩田作品にはよくあることだが、この作品でもそれまで読者のそばで悩んだり、謎を解き明かそうと頑張っていたキャラたちが、ラストで急に「まあいっか~」と全部放り出してしまう。え、いいの?と読者は置いていかれてしまう。
集団催眠にかかったように、「私は○×を~~という理由で殺しました」と次々と「告白」し始めて、「一年前のことなんて、覚えていないものだね」って納得されてもなあ…。つまり全員、妄想癖があるのか……と「こちら側」に残っている読者としては呆然としてしまう。
しかしこれを味のあるラストと受け取れれば、今回の作品に関しては謎は残っていないし、納得できると思う。
タイトルは、たぶん曲の名前なんだろうなあと予想はついたが、なんの関係があるのか、作品を読んだだけではさっぱり分からなかった。曲の構成と小説の構成が似ているからという理由のようだが、不思議なタイトルのつけ方だなあと……。
たまには様式美(…別名テンプレ)から脱却した作品も読まないとなあと思い、積読の中から引っ張り出してきてみた。
ネタバレ
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巻末(文庫版を読んだ)に収録されていたインタビューの言葉にちょっと衝撃を受けた。「閉じていない」結末に関して、「作者が説得し、読者が納得すればいい」と云っているのだが、…納得してるんだろうか、読者。
ミステリ好きな人は白黒はっきりした結末を好むのものだと思っていたのだが、たくさん読んでいるとそうでもなくなるのだろうか。うーん?
やっぱりラストの手前までは面白かった。ただ…それぞれの章ごとに矛盾をはらむ構成(1章で殺された人が、2章で普通に出てくる)だから、これはもう納得できるラストにはならないだろうなあと覚悟はしていた。
でも、それが分かっていても面白いし、最後まで夢中で読んでしまう。
最終章はまたか~という感じ。いや、作者本人も語っているように、恩田作品としてはきっちり説明がなされているラストなのだが、なんせ記憶の曖昧性や改竄がテーマなので、謎解きのすっきり感とは程遠く。
まあでも、それはそれでいいとして。
残念だったのは、最終章で登場人物が全員「向こう側」に行ってしまったこと。恩田作品にはよくあることだが、この作品でもそれまで読者のそばで悩んだり、謎を解き明かそうと頑張っていたキャラたちが、ラストで急に「まあいっか~」と全部放り出してしまう。え、いいの?と読者は置いていかれてしまう。
集団催眠にかかったように、「私は○×を~~という理由で殺しました」と次々と「告白」し始めて、「一年前のことなんて、覚えていないものだね」って納得されてもなあ…。つまり全員、妄想癖があるのか……と「こちら側」に残っている読者としては呆然としてしまう。
しかしこれを味のあるラストと受け取れれば、今回の作品に関しては謎は残っていないし、納得できると思う。
タイトルは、たぶん曲の名前なんだろうなあと予想はついたが、なんの関係があるのか、作品を読んだだけではさっぱり分からなかった。曲の構成と小説の構成が似ているからという理由のようだが、不思議なタイトルのつけ方だなあと……。
螢・納屋を焼く・その他の短編
2010年5月18日 読書
新潮 1987/09
短編っていいなあと思った。長編ももちろん好きなんだけど、短編の凝縮された感じがいい。あと長編だとどうしても一気読みする時間は取れないけど(寝食を忘れられるような長さじゃないし…)、短編だと中断せずに読めるあたりもいい。
『蛍』と『納屋を焼く』は長編とまた違った味わいがあってよかった。他の作品にもいえることだけど、引き込まれたところで終わる、「ここで終わり」という感覚が効果的。
『踊る小人』も面白かったけど、好みでいえば他の短編のほうがよかった。全体的な雰囲気がくっきり系なので読みやすくはあるんだけど、まあいつものタイプの主人公のほうが好きというか。
『めくらやなぎ~』は別の稿を読んだことがあるような気がする。まあどちらも好きだけど、今回のほうが日常の中の非日常みたいな雰囲気があるなあと。
ドイツ幻想の三篇も引き込まれるものがあった。筋を聞かれると説明に困るタイプの話だけど、物語を読む楽しみが大きかった。
短編っていいなあと思った。長編ももちろん好きなんだけど、短編の凝縮された感じがいい。あと長編だとどうしても一気読みする時間は取れないけど(寝食を忘れられるような長さじゃないし…)、短編だと中断せずに読めるあたりもいい。
『蛍』と『納屋を焼く』は長編とまた違った味わいがあってよかった。他の作品にもいえることだけど、引き込まれたところで終わる、「ここで終わり」という感覚が効果的。
『踊る小人』も面白かったけど、好みでいえば他の短編のほうがよかった。全体的な雰囲気がくっきり系なので読みやすくはあるんだけど、まあいつものタイプの主人公のほうが好きというか。
『めくらやなぎ~』は別の稿を読んだことがあるような気がする。まあどちらも好きだけど、今回のほうが日常の中の非日常みたいな雰囲気があるなあと。
ドイツ幻想の三篇も引き込まれるものがあった。筋を聞かれると説明に困るタイプの話だけど、物語を読む楽しみが大きかった。
宮廷神官物語 双璧の王子
2010年5月12日 読書
榎田ユウリ 角川書店 2010/5
電車通勤なんで…本を読む時間はあるけど、感想を書く時間がなかなか取れない。
ネタバレ
---------------------------------------------
や~、今回も面白かった。天青の成長は目覚しいものがあるなあと。
で、やっぱり曹鉄はカッコイイ担当じゃないんだろうか…。うーん、まあ暗示にかけられて洗脳状態なんだろうなあというのは(分かりやすく書かれていたので)最初から分かったけど、それにしても。その単純さが魅力なのかもしれないけど、そんな女に簡単に騙されて~!とは思った。だって、あなたの本命がかわいそうじゃない!
曹鉄は男装のお姫様といい感じになるのかと思ってたんだけど、妹だってことが分かったし、やっぱり本命は…てことでしょう…。この予想は消去法であって、べつに私の個人的希望でないってこともない。「似た女」じゃなく、ぜひとも本人で!
ペンネームを漢字に変えて、続きを書いていただきたいなあ。…いやカタカナのままでも面白いけど。
電車通勤なんで…本を読む時間はあるけど、感想を書く時間がなかなか取れない。
ネタバレ
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や~、今回も面白かった。天青の成長は目覚しいものがあるなあと。
で、やっぱり曹鉄はカッコイイ担当じゃないんだろうか…。うーん、まあ暗示にかけられて洗脳状態なんだろうなあというのは(分かりやすく書かれていたので)最初から分かったけど、それにしても。その単純さが魅力なのかもしれないけど、そんな女に簡単に騙されて~!とは思った。だって、あなたの本命がかわいそうじゃない!
曹鉄は男装のお姫様といい感じになるのかと思ってたんだけど、妹だってことが分かったし、やっぱり本命は…てことでしょう…。この予想は消去法であって、べつに私の個人的希望でないってこともない。「似た女」じゃなく、ぜひとも本人で!
ペンネームを漢字に変えて、続きを書いていただきたいなあ。…いやカタカナのままでも面白いけど。
ホーリー・アップル 虹色のスチーム
2010年5月5日 読書 コメント (4)
本日はNYのイケメン警部補さんのお誕生日♪
ということで、とっくに発売中。
密林で注文したのに発売日から何日過ぎても届かず、GWのせいかな~と思っていたのだが、あまりに遅いので調べたら6月に発送予定になっていた。
なぜ……。
慌ててキャンセルしたが、密林との付き合い方は時々難しい。
…今週末に読もうかと。
ということで、とっくに発売中。
密林で注文したのに発売日から何日過ぎても届かず、GWのせいかな~と思っていたのだが、あまりに遅いので調べたら6月に発送予定になっていた。
なぜ……。
慌ててキャンセルしたが、密林との付き合い方は時々難しい。
…今週末に読もうかと。
宮部みゆき 文藝春秋 2010/02
や~、面白かった。
分厚い文庫上下巻なので、しばらく積んでしまったが、読み始めたら早かった。
ネタバレ
-------------------------------------------
『模倣犯』の前畑滋子が主人公ということで読み始めたのだが、スピンオフじゃなくても楽しめたと思う。ただ、あの事件を引きずっている主人公だからこそ、時効の成立した事件に対して熱心に、そして慎重に向き合えたのではないかと思う。
推理よりも社会派の話として面白かったかな。超能力が出てくるけど、それで事件(人間)の怖さや情の描写にリアリティーが失われるということもなく、最後まで事件に関わる人々の思いを丁寧に描いていて楽しめた。
家族についても考えさせられる作品。
文庫の解説もよかったなあと。「この話で、なんで超能力を出すの?」という読者の引っかかりに対しての解説も用意されていて、『模倣犯』との繋がり方なんかにも触れてあり、読者が読みたいと思うような内容だった。いい感じに作品の余韻に浸ることができた。
…小説の解説って、ひどい人になると作品のことにはほとんど触れず、文学の薀蓄だけで終わったりするので。
宮部みゆきは超能力ものと社会派作品と両方書くけど、この話はどっちに行くのかな?というのも、作品を読み進めていく上での楽しみだった。
恐ろしいことに、どちらでもあった。幽霊とか超能力なんて出てきた時点で、ジャンルが違ってしまうものだけど、この作品では両立してしまっている。そこもすごいと思った。
超能力を否定して「偶然の一致」と片付けたとしても、驚くような偶然に遭遇したとき、その偶然に意味を見出したくなるのが一般的な反応じゃないかと思う。たとえば、昨日見た夢が「正夢になった」とかいうとき、科学的に夢と現実の一致の理由を解明することなんてできないわけで、偶然の一致ということで落ち着くと思う。でもその偶然を驚いたり、人に話したくなる人のほうが多い。実際にそういう偶然は起こるわけだから、超能力を出すこと=リアリティーの欠如とはならない。そういう低い確率での偶然が実際に起こることと、偶然に遭遇したときの驚きを無視することのほうが非現実的じゃないかと。この作品は、偶然に接したときの人々反応や超能力の検証を突き詰めて書いた作品としても楽しめた。
話の結論としては超能力の存在を認めているのだが、だからといって「これは社会派ではない」と切り捨てられないような書き方をしているところに感心した。
や~、面白かった。
分厚い文庫上下巻なので、しばらく積んでしまったが、読み始めたら早かった。
ネタバレ
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『模倣犯』の前畑滋子が主人公ということで読み始めたのだが、スピンオフじゃなくても楽しめたと思う。ただ、あの事件を引きずっている主人公だからこそ、時効の成立した事件に対して熱心に、そして慎重に向き合えたのではないかと思う。
推理よりも社会派の話として面白かったかな。超能力が出てくるけど、それで事件(人間)の怖さや情の描写にリアリティーが失われるということもなく、最後まで事件に関わる人々の思いを丁寧に描いていて楽しめた。
家族についても考えさせられる作品。
文庫の解説もよかったなあと。「この話で、なんで超能力を出すの?」という読者の引っかかりに対しての解説も用意されていて、『模倣犯』との繋がり方なんかにも触れてあり、読者が読みたいと思うような内容だった。いい感じに作品の余韻に浸ることができた。
…小説の解説って、ひどい人になると作品のことにはほとんど触れず、文学の薀蓄だけで終わったりするので。
宮部みゆきは超能力ものと社会派作品と両方書くけど、この話はどっちに行くのかな?というのも、作品を読み進めていく上での楽しみだった。
恐ろしいことに、どちらでもあった。幽霊とか超能力なんて出てきた時点で、ジャンルが違ってしまうものだけど、この作品では両立してしまっている。そこもすごいと思った。
超能力を否定して「偶然の一致」と片付けたとしても、驚くような偶然に遭遇したとき、その偶然に意味を見出したくなるのが一般的な反応じゃないかと思う。たとえば、昨日見た夢が「正夢になった」とかいうとき、科学的に夢と現実の一致の理由を解明することなんてできないわけで、偶然の一致ということで落ち着くと思う。でもその偶然を驚いたり、人に話したくなる人のほうが多い。実際にそういう偶然は起こるわけだから、超能力を出すこと=リアリティーの欠如とはならない。そういう低い確率での偶然が実際に起こることと、偶然に遭遇したときの驚きを無視することのほうが非現実的じゃないかと。この作品は、偶然に接したときの人々反応や超能力の検証を突き詰めて書いた作品としても楽しめた。
話の結論としては超能力の存在を認めているのだが、だからといって「これは社会派ではない」と切り捨てられないような書き方をしているところに感心した。
オタクホスト桜木玲音の奇跡
2010年3月19日 読書 コメント (2)
佐々木禎子 幻冬舎コミックス 2010/02
リアルに疲れていた私の目に飛び込んできた帯のコピー。
「リア充なんてクソ食らえ」
この言葉に勇気づけられ、心が癒された。
いま足首に、大きな青痣がある。
イベント会場でダンボールを落としてしまったときのものだが、ダンボールは凹みもなく無事だった。これはもう同人誌を身を挺して庇った名誉の負傷といってもいいんじゃないだろうか。
というわけで2巻も面白く読んだのだが、少々妙なハイテンションが移ってしまい、困っている(笑)
ネタバレ
----------------------------------------------
1巻のほうがストーリーとしては面白かったが、今回はパワーがあったし、キャラの行動の理由とか読んでるうちにどうでもよくなってくる話なので楽しく読めた。
・もうちょっと玲音の活躍があってもよかったと思うが、今回はヘタレっぷりが強調されていて楽しかった。
・次回はホストという設定をもっと出してほしいなあ。
・みどりの見せ場があってよかった。
・ナツキの出番が大幅に減っていてよかった。正直、別に同居させなくてもいいんじゃ?というキャラで。
・この作品で萌えるとしたら、やっぱり薫子かなあ。
・思わず「ラ○プラス」ってどんなキャラがいるんだろうと検索してしまった…。
・若頭がヤクザものBLを読んで、うっかりはまってしまわなかったのか、そこらへん詳しく知りたい。
リアルに疲れていた私の目に飛び込んできた帯のコピー。
「リア充なんてクソ食らえ」
この言葉に勇気づけられ、心が癒された。
いま足首に、大きな青痣がある。
イベント会場でダンボールを落としてしまったときのものだが、ダンボールは凹みもなく無事だった。これはもう同人誌を身を挺して庇った名誉の負傷といってもいいんじゃないだろうか。
というわけで2巻も面白く読んだのだが、少々妙なハイテンションが移ってしまい、困っている(笑)
ネタバレ
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1巻のほうがストーリーとしては面白かったが、今回はパワーがあったし、キャラの行動の理由とか読んでるうちにどうでもよくなってくる話なので楽しく読めた。
・もうちょっと玲音の活躍があってもよかったと思うが、今回はヘタレっぷりが強調されていて楽しかった。
・次回はホストという設定をもっと出してほしいなあ。
・みどりの見せ場があってよかった。
・ナツキの出番が大幅に減っていてよかった。正直、別に同居させなくてもいいんじゃ?というキャラで。
・この作品で萌えるとしたら、やっぱり薫子かなあ。
・思わず「ラ○プラス」ってどんなキャラがいるんだろうと検索してしまった…。
・若頭がヤクザものBLを読んで、うっかりはまってしまわなかったのか、そこらへん詳しく知りたい。
宮廷神官物語 慧眼は主を試す
2010年2月23日 読書
榎田ユウリ 角川グループパブリッシング 2009/05
というわけで、前の巻をお借りした。
ネタバレ
------------------------------------------
修行というので何年もかかるのかと思ったら、さくっと終わってよかった。
天青が何年分か成長して次の巻でもよかったんだけど、宮廷の中の政治的な動きを考えると、ここで中断しちゃうはつまらないし。
嘘をついていても良心の呵責がなければ慧眼で見抜くことはできないってところで、嘘発見器みたいだなあと思った。偽者の慧眼児である羽丁も脈拍で人の心理状態を把握するというので、やはり同じようなものかも。
というわけで、前の巻をお借りした。
ネタバレ
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修行というので何年もかかるのかと思ったら、さくっと終わってよかった。
天青が何年分か成長して次の巻でもよかったんだけど、宮廷の中の政治的な動きを考えると、ここで中断しちゃうはつまらないし。
嘘をついていても良心の呵責がなければ慧眼で見抜くことはできないってところで、嘘発見器みたいだなあと思った。偽者の慧眼児である羽丁も脈拍で人の心理状態を把握するというので、やはり同じようなものかも。
新潮社 1952/11
無事に買えた。
最近、「新訳」がブームなのか、名作を「現代的な文章で」という本をよく見かけるけど、もとのテキストが古いのに、なんで現代的にする必要があるのかと思ってしまう。言葉は生きているとよく言われるし、現代的な言葉で書けば、どうしても現代的な感覚が入ってしまうんじゃないかとか。
現代的なものが読みたいなら、同時代の小説を読めばいいだけだし、古いものには新しいものにはない味わいがあるのに。
作品の雰囲気を損なうというのは、翻訳として最悪だと思う……。そんなわけで半世紀以上前に訳された本のほうが、作品の時代を感じさせてくれてよかったし、文章も変な直訳がなくて読みやすかった。自分の言葉で書いてくれないと小説として読みづらいので「羊かん色」とか、作品に合っている上に分かりやすくてよかった。
無事に買えた。
最近、「新訳」がブームなのか、名作を「現代的な文章で」という本をよく見かけるけど、もとのテキストが古いのに、なんで現代的にする必要があるのかと思ってしまう。言葉は生きているとよく言われるし、現代的な言葉で書けば、どうしても現代的な感覚が入ってしまうんじゃないかとか。
現代的なものが読みたいなら、同時代の小説を読めばいいだけだし、古いものには新しいものにはない味わいがあるのに。
作品の雰囲気を損なうというのは、翻訳として最悪だと思う……。そんなわけで半世紀以上前に訳された本のほうが、作品の時代を感じさせてくれてよかったし、文章も変な直訳がなくて読みやすかった。自分の言葉で書いてくれないと小説として読みづらいので「羊かん色」とか、作品に合っている上に分かりやすくてよかった。
宮廷神官物語 王子の証と世継の剣
2010年1月29日 読書 コメント (2)
榎田ユウリ 角川書店 2009/11
1冊すっ飛ばしてしまっているが、まあいいかと読み始めた。
ネタバレ嫌いなワタクシに気を遣ってくれつつ、今回は私が楽しめる内容だと教えてくれたので(いつもありがとう!)、かなり張り切ってたし…。
ネタバレ
--------------------------------------------
ネタバレな上にBL的視点で読んでたり。
このシリーズは面白いんだけど、主人公は子供だし、男装の姫とか女装の王子とか出てくるし、どうも気分が盛り上がらないんだよなーと思っていた。FTにはカッコイイ担当が欲しい私。なんで曹鉄はポジションのわりに地味な扱いなんだろうと思っていたら、今回は活躍していてよかったなあと。
あと、彼が老け専なことが不満だったのだが、今回は身近な美青年にも目を向けてくれてよかった。なんだかサービス満点で、ここからペンネームを漢字に変えてくださいませんか?とか無理なお願いをしたくなった(笑)
非BL作品の場合、絶対にそういう意味ではうまくいかないって分かってても、やっぱりジレジレする。このもどかしさがBLでは味わえない楽しさだよなあと。
ストーリーはいつも通り面白かった。結構長々引っ張ってきた伏線も回収されたことだし、続きが気になる。まだ1つ2つひっくり返りそうな気もするし。
次の巻では主人公が活躍するのかなー。それも楽しみ。
1冊すっ飛ばしてしまっているが、まあいいかと読み始めた。
ネタバレ嫌いなワタクシに気を遣ってくれつつ、今回は私が楽しめる内容だと教えてくれたので(いつもありがとう!)、かなり張り切ってたし…。
ネタバレ
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ネタバレな上にBL的視点で読んでたり。
このシリーズは面白いんだけど、主人公は子供だし、男装の姫とか女装の王子とか出てくるし、どうも気分が盛り上がらないんだよなーと思っていた。FTにはカッコイイ担当が欲しい私。なんで曹鉄はポジションのわりに地味な扱いなんだろうと思っていたら、今回は活躍していてよかったなあと。
あと、彼が老け専なことが不満だったのだが、今回は身近な美青年にも目を向けてくれてよかった。なんだかサービス満点で、ここからペンネームを漢字に変えてくださいませんか?とか無理なお願いをしたくなった(笑)
非BL作品の場合、絶対にそういう意味ではうまくいかないって分かってても、やっぱりジレジレする。このもどかしさがBLでは味わえない楽しさだよなあと。
ストーリーはいつも通り面白かった。結構長々引っ張ってきた伏線も回収されたことだし、続きが気になる。まだ1つ2つひっくり返りそうな気もするし。
次の巻では主人公が活躍するのかなー。それも楽しみ。
妖奇庵夜話 その探偵、人にあらず
2010年1月26日 読書
榎田ユウリ 角川書店 2009/12
べつに私がこだわることでもないが、タイトルの「奇」は本当はたまへんのついた「琦」。文字化けするってことかな。タイトルがちゃんと書けないのって、ちょっと残念だ。
ネタバレ
本文を読むときはそうでもないけど、自分であらすじを書くとなると説明の面倒くさい設定なので、引用。
ラノベにしては高いし、そんな興味ないかなと思っていたのだが、裏表紙の彼が好みのタイプだったので読んでみた。
読みやすいし、面白かった。
特殊な設定とか、個性的なキャラとか、人間の薄暗い心理が絡んでの事件とか、エダさんらしいなあという感じで、いつも通りに読みやすかった。キャラが立っているので、彼らの会話を読んでいるだけでも結構楽しめる。
「妖人」への偏見とか、女の子の残酷な部分とか、座敷童のこととか、エダさんって結構容赦のない書き方をするよなーといつも思う。いくらでも明るく爽やかに終わらせることができると思うんだけど、リアルでシビアに描いて、救いは人情とかキャラの優しさで入れるというやり方。
そんなわけで読んでいると暗い気分になったりもするが、たぶん痛みや暗さがリアルな分だけ、キャラの優しさや明るさが染みるんだろうなあと。ただ…主要キャラはわりとデフォルメされた人柄なので、そこに救いを求めるとリアルの迫力が勝って、ちょっとだけ後味の悪さが残るような気がした。まあ個人的な感覚としては。
最後の伊織と青目の会話がよかった。こっち側と向こう側の中間にいる伊織の立ち位置の危うさが分かりやすかったし、「妖」側の魅力のようなものも伝わってきた。
続きも出るのかな。楽しみだけど、もうちょっと買いやすい形態と値段にしてほしい…。
べつに私がこだわることでもないが、タイトルの「奇」は本当はたまへんのついた「琦」。文字化けするってことかな。タイトルがちゃんと書けないのって、ちょっと残念だ。
ネタバレ
突如発見された妖怪のDNA。それを持つものを「妖人」と呼ぶ。お茶室「妖〓(き)庵」の主である洗足伊織は、明晰な頭脳を持つ隻眼の美青年。口が悪くてヒネクレ気味だが、人間に溶け込んで暮らす「妖人」を見抜く力を持つ。その力のせいで、伊織のもとには厄介な依頼が絶えない。今日のお客は、警視庁妖人対策本部、略して“Y対”の、やたら乙女な新人刑事、脇坂。彼に「油取り」という妖怪が絡む、女子大生殺人事件の捜査協力を依頼された伊織は…。
本文を読むときはそうでもないけど、自分であらすじを書くとなると説明の面倒くさい設定なので、引用。
ラノベにしては高いし、そんな興味ないかなと思っていたのだが、裏表紙の彼が好みのタイプだったので読んでみた。
読みやすいし、面白かった。
特殊な設定とか、個性的なキャラとか、人間の薄暗い心理が絡んでの事件とか、エダさんらしいなあという感じで、いつも通りに読みやすかった。キャラが立っているので、彼らの会話を読んでいるだけでも結構楽しめる。
「妖人」への偏見とか、女の子の残酷な部分とか、座敷童のこととか、エダさんって結構容赦のない書き方をするよなーといつも思う。いくらでも明るく爽やかに終わらせることができると思うんだけど、リアルでシビアに描いて、救いは人情とかキャラの優しさで入れるというやり方。
そんなわけで読んでいると暗い気分になったりもするが、たぶん痛みや暗さがリアルな分だけ、キャラの優しさや明るさが染みるんだろうなあと。ただ…主要キャラはわりとデフォルメされた人柄なので、そこに救いを求めるとリアルの迫力が勝って、ちょっとだけ後味の悪さが残るような気がした。まあ個人的な感覚としては。
最後の伊織と青目の会話がよかった。こっち側と向こう側の中間にいる伊織の立ち位置の危うさが分かりやすかったし、「妖」側の魅力のようなものも伝わってきた。
続きも出るのかな。楽しみだけど、もうちょっと買いやすい形態と値段にしてほしい…。
クリスマス・キャロル
2010年1月13日 読書
光文社 2006/11
確か2008年の12月に買って、クリスマス前だしちょうどいいとおもっているうちに年が明けちゃって、じゃあ今年のクリスマスにって思ってるうちにまた年が明けちゃったので、もうクリスマス前じゃなくていいやと思って読んだ。
翻訳者の名前ってあんまり知らないので適当に買ったのだが、過去に手がけた作品の中に既読のものがあったので、ああやっちゃったなーと、読む前にちょっぴりガッカリしたが、まあそれはそれとしてやっぱり作品の持ってる力があるから面白かった。
村岡花子の訳で読んでみたいなあ<売り切れ
確か2008年の12月に買って、クリスマス前だしちょうどいいとおもっているうちに年が明けちゃって、じゃあ今年のクリスマスにって思ってるうちにまた年が明けちゃったので、もうクリスマス前じゃなくていいやと思って読んだ。
翻訳者の名前ってあんまり知らないので適当に買ったのだが、過去に手がけた作品の中に既読のものがあったので、ああやっちゃったなーと、読む前にちょっぴりガッカリしたが、まあそれはそれとしてやっぱり作品の持ってる力があるから面白かった。
村岡花子の訳で読んでみたいなあ<売り切れ
暖かくて、のんびりした雰囲気がよかった。
ノスタルジックな町の、浮世離れした人々の交流と日常の話かなあ。
派手な事件なんて起こらないけど、まったく退屈することなくディテールで楽しめる。
童話を読んでるみたいな気分で和めた。
ノスタルジックな町の、浮世離れした人々の交流と日常の話かなあ。
派手な事件なんて起こらないけど、まったく退屈することなくディテールで楽しめる。
童話を読んでるみたいな気分で和めた。
それからはスープのことばかり考えて暮らした
2009年11月14日 読書
吉田篤弘 中央公論新社 2009/09
タイトル買いした。
どんな話かまったく知らなかったけど、退屈することはないだろうなあと。
これは文庫版。ハードカバー版の装丁をちょっと見てみたい。書店の写真で見る限り、おしゃれな感じ。
ノスタルジックで優しいお話。
大事件は起こらないけど飽きも来ないし、穏やかな日常が面白い。すご~く寛いだ気分になれる。天気のいい日に路面電車の知らない駅で降りて、初めての町を散歩したら、きっとこういう気分だろうなー。登場人物がみんな魅力的なんだけど、町そのものが行ってみたくなるような素敵な町で。
朝晩寒くなってきて、スープがさらに美味しく感じられる季節にぴったりな1冊。
タイトル買いした。
どんな話かまったく知らなかったけど、退屈することはないだろうなあと。
これは文庫版。ハードカバー版の装丁をちょっと見てみたい。書店の写真で見る限り、おしゃれな感じ。
路面電車が走る町に越して来た青年が出会う人々。商店街のはずれのサンドイッチ店「トロワ」の店主と息子。アパートの屋根裏に住むマダム。隣町の映画館「月舟シネマ」のポップコーン売り。銀幕の女優に恋をした青年は時をこえてひとりの女性とめぐり会う―。いくつもの人生がとけあった「名前のないスープ」をめぐる、ささやかであたたかい物語。
ノスタルジックで優しいお話。
大事件は起こらないけど飽きも来ないし、穏やかな日常が面白い。すご~く寛いだ気分になれる。天気のいい日に路面電車の知らない駅で降りて、初めての町を散歩したら、きっとこういう気分だろうなー。登場人物がみんな魅力的なんだけど、町そのものが行ってみたくなるような素敵な町で。
朝晩寒くなってきて、スープがさらに美味しく感じられる季節にぴったりな1冊。
荻原浩 光文社 2009/04
初読みの作家さん。
疲れた気分だったので、表紙とタイトルに惹かれて購入。
疲れているときって、めまぐるしい展開で飽きさせない、テンポのいい話か、逆に何の事件も起こらないような静かなものを読みたくなるのだが、今回は後者の気分だったようで。
ネタバレ
前半は世の中の厳しさがひしひしと伝わってくる内容なのに、読みづらさは感じなかった。適度にユーモアがあって、「負けっぱなし」という感じなのに、悲壮感がない。
感情移入しやすい話だった。たぶん主人公の年齢に近い読者なら、頷けるところが多いと思う。牧村が学生の頃住んでいたアパートの部屋で横になって目を閉じ、目を開けたら大学生に戻っているんじゃないかなんて妄想してしまうのは、(口に出して「タイム・スリップ!」とか言うし、)笑っちゃうけど、気持ちはよく分かる。
牧村は次々と「人生の分岐点」を思い出し、そのたびに「あのときこうしていれば、今頃はきっと」と妄想する。その中から1つぐらい過去の夢を実現するのかなと思っていたが、とくにそういうことはない。でも現実の世界では、ちょっとした工夫といっぱいの努力でタクシー運転手のノルマを達成できるようになったり、妻子と会話を持てるようになったり、小さな成功や幸せを手に入れていく。
クライマックスまで行っても、大きな変化はない。でも、日々のささやかな幸せを感じ取れるようになり、当座の生活費稼ぎだった仕事にもやりがいのようなものを見出していくのは、ほっとできるラストだった。
大成功はしてないし人に自慢できるものでもないけど、自分は結構幸せだ。そんな風に思える1冊だった。
けど、タクシーに乗りづらくなっちゃったな。私は近距離でしかタクシー使わないから、ハズレの客だよね、なんか悪いなー…とか考えてしまった(笑)
この作品とは関係ないが、本を刊行するにあたっての挨拶文みたいなもの。最近できたレーベルやラノベだとないけど、あれは個人的にはつけたほうがいいと思う。
なんかやっぱり本はビジネスライクに作ってほしくないっていう思いがあるので、あれを読むと思いを込めて世に送り出した1冊なんだなって感じられていい。毎回同じ文章なんだけど、気分的に…。
初読みの作家さん。
疲れた気分だったので、表紙とタイトルに惹かれて購入。
疲れているときって、めまぐるしい展開で飽きさせない、テンポのいい話か、逆に何の事件も起こらないような静かなものを読みたくなるのだが、今回は後者の気分だったようで。
ネタバレ
牧村伸郎、43歳。元銀行員にして現在、タクシー運転手。あるきっかけで銀行を辞めてしまった伸郎は、仕方なくタクシー運転手になるが、営業成績は上がらず、希望する転職もままならない。そんな折り、偶然、青春を過ごした街を通りかかる。もう一度、人生をやり直すことができたら。伸郎は自分が送るはずだった、もう一つの人生に思いを巡らせ始めるのだが…。
前半は世の中の厳しさがひしひしと伝わってくる内容なのに、読みづらさは感じなかった。適度にユーモアがあって、「負けっぱなし」という感じなのに、悲壮感がない。
感情移入しやすい話だった。たぶん主人公の年齢に近い読者なら、頷けるところが多いと思う。牧村が学生の頃住んでいたアパートの部屋で横になって目を閉じ、目を開けたら大学生に戻っているんじゃないかなんて妄想してしまうのは、(口に出して「タイム・スリップ!」とか言うし、)笑っちゃうけど、気持ちはよく分かる。
牧村は次々と「人生の分岐点」を思い出し、そのたびに「あのときこうしていれば、今頃はきっと」と妄想する。その中から1つぐらい過去の夢を実現するのかなと思っていたが、とくにそういうことはない。でも現実の世界では、ちょっとした工夫といっぱいの努力でタクシー運転手のノルマを達成できるようになったり、妻子と会話を持てるようになったり、小さな成功や幸せを手に入れていく。
クライマックスまで行っても、大きな変化はない。でも、日々のささやかな幸せを感じ取れるようになり、当座の生活費稼ぎだった仕事にもやりがいのようなものを見出していくのは、ほっとできるラストだった。
大成功はしてないし人に自慢できるものでもないけど、自分は結構幸せだ。そんな風に思える1冊だった。
けど、タクシーに乗りづらくなっちゃったな。私は近距離でしかタクシー使わないから、ハズレの客だよね、なんか悪いなー…とか考えてしまった(笑)
この作品とは関係ないが、本を刊行するにあたっての挨拶文みたいなもの。最近できたレーベルやラノベだとないけど、あれは個人的にはつけたほうがいいと思う。
なんかやっぱり本はビジネスライクに作ってほしくないっていう思いがあるので、あれを読むと思いを込めて世に送り出した1冊なんだなって感じられていい。毎回同じ文章なんだけど、気分的に…。
恩田陸 講談社 2006/04
半年ぐらい前?に恩田作品をまとめ買いして積んでおいたので、そろそろちょっと読まないとなーととっつきやすいのを選んで読んでみた。
『三月は~』を読んでたから、前から気になっていた作品。
ネタバレ
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恩田作品はサスペンス的だと思う。なんせオチに難ありなので、最後まで読まないことには好き嫌いも判断できない…。途中までは文句なく面白いので、読み始めると結構速いかな。でも面白いからこそ、オチが!!
そんなわけで、面白ければ面白いほど「ラストは?!」という心配でドキドキしてしまい、最後の1行まで疑心暗鬼が続くという。これっぽっちも作者を信じていないが、ものすごく期待はしているって感じ?(笑)
この作品は大学時代の友達、男女4人が屋久島に行き、そこで優雅に?「美しい謎」に挑みつつ、同時に過去と自己の内面も旅する、というような話。
それぞれ知的で嫌味のない4人なので、会話も楽しい。ほんと、こういう頭を使う会話って、日常ではしないと思った。屋久島の風景もきれいで神秘的。「美しい謎」も面白い。なんていうのかな、切羽詰った話じゃないのがいいのかも。解けても解けなくても現実は何も変らないんだけど、当事者にとってはちょっとだけ前進になるような謎だからこそ、のんびり楽しめるんだと思う。
旅情+過去+青春の余韻+現在+ちょっぴりミステリーっていうような配分かなあ。過去を思い出して懐かしむだけでも、乗り越えるわけでもなく、後ろを確認して前に進む爽やかさがあった。…珍しく、前向きっていうか、すっきりできるラストで。いつもこうだと素敵なのにね。
作品は4つのパートに分かれていて、それぞれ語り手がバトンタッチしていく方式で進む。現在時間では大きな事件は起こらない、過去の謎が主軸なんだけど飽きさせない。登場人物4人がそれぞれ魅力的、かつ興味深い人たちで、友達同士の旅行の物語としても面白かった。
最初は利枝子。この話の主軸になる死んだ女性、憂理の親友だし、一番過去を引きずっている人だから、一番手にふさわしい人物だと思う。考え方とか共感がしやすいので、物語の入り口として適任な人物というか。強さと脆さのバランス、冷静さと甘さのバランスが取れてて、魅力的な女性だった。
2番手は彰彦。考え方が単純だし、人間的な魅力も分かりやすいし、性格的にこの人が先頭でもよかったかなと思ったんだけど、抱えている過去がわりとヘビーなものだったので、この位置がぴったりって、読み終わってから思った。
3番手は蒔生。この人は他の人たちから「憂理を殺した?」ぐらいに思われているので、最後に来るのかなと思ったら3番手。「人と一緒に暮らすのが嫌になった」という理由で妻子を捨てるような「人でなし」で、他の3人に対しても結構ひどい仕打ちをしている。でも生き方みたいなものが見えてくると、利枝子と彰彦に愛されちゃってるのも分かるような気がしてくる。…とりあえず、もてる理由はよく分かるし(笑) 自分を悪者にして利枝子に真相を語らなかったあたり、いい奴かも?
4番手は節子。明るいリアリスト。4人のうちで一番普通に見えて、実は一番大物かもしれないし、強いことは間違いない。アンカーだから、もしかしたら何か重大な鍵を握っているのかなと思っていたのだが、そういう役割じゃなかった。
「アンカー」を辞書で引いたら、最後の走者、錨とあって、どちらも当てはまっているのだが、「時計の歯車にかみ合って、回転を調節する爪状の装置」という意味が印象的だった。まさにそういう女性。
文庫の解説でうまいこと節子の役回りが説明されていて、珍しく解説に頷いてしまった。たいてい解説って独りよがりな感じで好きじゃないんだけど、これは面白かった。
なかなか好みな作品だった。いいものを読んだ。ありがとう。
半年ぐらい前?に恩田作品をまとめ買いして積んでおいたので、そろそろちょっと読まないとなーととっつきやすいのを選んで読んでみた。
『三月は~』を読んでたから、前から気になっていた作品。
ネタバレ
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恩田作品はサスペンス的だと思う。なんせオチに難ありなので、最後まで読まないことには好き嫌いも判断できない…。途中までは文句なく面白いので、読み始めると結構速いかな。でも面白いからこそ、オチが!!
そんなわけで、面白ければ面白いほど「ラストは?!」という心配でドキドキしてしまい、最後の1行まで疑心暗鬼が続くという。これっぽっちも作者を信じていないが、ものすごく期待はしているって感じ?(笑)
この作品は大学時代の友達、男女4人が屋久島に行き、そこで優雅に?「美しい謎」に挑みつつ、同時に過去と自己の内面も旅する、というような話。
それぞれ知的で嫌味のない4人なので、会話も楽しい。ほんと、こういう頭を使う会話って、日常ではしないと思った。屋久島の風景もきれいで神秘的。「美しい謎」も面白い。なんていうのかな、切羽詰った話じゃないのがいいのかも。解けても解けなくても現実は何も変らないんだけど、当事者にとってはちょっとだけ前進になるような謎だからこそ、のんびり楽しめるんだと思う。
旅情+過去+青春の余韻+現在+ちょっぴりミステリーっていうような配分かなあ。過去を思い出して懐かしむだけでも、乗り越えるわけでもなく、後ろを確認して前に進む爽やかさがあった。…珍しく、前向きっていうか、すっきりできるラストで。いつもこうだと素敵なのにね。
作品は4つのパートに分かれていて、それぞれ語り手がバトンタッチしていく方式で進む。現在時間では大きな事件は起こらない、過去の謎が主軸なんだけど飽きさせない。登場人物4人がそれぞれ魅力的、かつ興味深い人たちで、友達同士の旅行の物語としても面白かった。
最初は利枝子。この話の主軸になる死んだ女性、憂理の親友だし、一番過去を引きずっている人だから、一番手にふさわしい人物だと思う。考え方とか共感がしやすいので、物語の入り口として適任な人物というか。強さと脆さのバランス、冷静さと甘さのバランスが取れてて、魅力的な女性だった。
2番手は彰彦。考え方が単純だし、人間的な魅力も分かりやすいし、性格的にこの人が先頭でもよかったかなと思ったんだけど、抱えている過去がわりとヘビーなものだったので、この位置がぴったりって、読み終わってから思った。
3番手は蒔生。この人は他の人たちから「憂理を殺した?」ぐらいに思われているので、最後に来るのかなと思ったら3番手。「人と一緒に暮らすのが嫌になった」という理由で妻子を捨てるような「人でなし」で、他の3人に対しても結構ひどい仕打ちをしている。でも生き方みたいなものが見えてくると、利枝子と彰彦に愛されちゃってるのも分かるような気がしてくる。…とりあえず、もてる理由はよく分かるし(笑) 自分を悪者にして利枝子に真相を語らなかったあたり、いい奴かも?
4番手は節子。明るいリアリスト。4人のうちで一番普通に見えて、実は一番大物かもしれないし、強いことは間違いない。アンカーだから、もしかしたら何か重大な鍵を握っているのかなと思っていたのだが、そういう役割じゃなかった。
「アンカー」を辞書で引いたら、最後の走者、錨とあって、どちらも当てはまっているのだが、「時計の歯車にかみ合って、回転を調節する爪状の装置」という意味が印象的だった。まさにそういう女性。
文庫の解説でうまいこと節子の役回りが説明されていて、珍しく解説に頷いてしまった。たいてい解説って独りよがりな感じで好きじゃないんだけど、これは面白かった。
なかなか好みな作品だった。いいものを読んだ。ありがとう。
連休はこれを読んで過ごした
2009年9月25日 読書
新潮社 2009/05
面白いかと聞かれれば、まあ面白いと答える。
ただ「どんな話?」という質問には面倒くさくて答えたくない。あらすじを説明しても読まなければ何の意味もないように思えるから。2冊目以降は分からないけど、1冊目に関してはストーリーよりも人と世界観を重視しているように思えた。
なんか春樹作品としては珍しく、登場人物に物語性があるような気がする。いつももうちょっとこう物語を無視して自分の言いたいことだけ語っているようなところがあると思うんだけど、今回はわりと協力的なんじゃないかなー。
1冊読み終わるのに、ずいぶんかかった。買ってすぐに読み始めたんだけど、中身が濃いので1章読み終わるごとに休憩していたら、お腹いっぱいになってしまって続きが読めなかった。私の場合、春樹作品の長編は数年に1度でちょうどいいぐらいで、今年はもう1冊読んでるから過剰摂取だったし……。けど、中途半端に読んでしまっていたので、連休中に続きを読んだ。
読みづらいってわけじゃなくて、飲み込むのに時間がかかるっていうか。
この1冊目は、ビールみたいにグイグイ飲める作品じゃなくて、チビチビと舐めるように楽しみたい作品って感じ。
面白いかと聞かれれば、まあ面白いと答える。
ただ「どんな話?」という質問には面倒くさくて答えたくない。あらすじを説明しても読まなければ何の意味もないように思えるから。2冊目以降は分からないけど、1冊目に関してはストーリーよりも人と世界観を重視しているように思えた。
なんか春樹作品としては珍しく、登場人物に物語性があるような気がする。いつももうちょっとこう物語を無視して自分の言いたいことだけ語っているようなところがあると思うんだけど、今回はわりと協力的なんじゃないかなー。
1冊読み終わるのに、ずいぶんかかった。買ってすぐに読み始めたんだけど、中身が濃いので1章読み終わるごとに休憩していたら、お腹いっぱいになってしまって続きが読めなかった。私の場合、春樹作品の長編は数年に1度でちょうどいいぐらいで、今年はもう1冊読んでるから過剰摂取だったし……。けど、中途半端に読んでしまっていたので、連休中に続きを読んだ。
読みづらいってわけじゃなくて、飲み込むのに時間がかかるっていうか。
この1冊目は、ビールみたいにグイグイ飲める作品じゃなくて、チビチビと舐めるように楽しみたい作品って感じ。
恩田陸 新潮社 1999/01
東北の街の雰囲気がいいなあと。
ネタバレ
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うわー、恩田陸らしいなーと思ったら、デビュー作の次の作品らしい。
まあどれを読んでも似たような印象は受ける…。これもいつもと同じ。
文章は読みやすいし、設定や雰囲気がよくて、途中までは引き込まれるし面白いんだけど、ラストでガックリって感じ。こういうラストが悪いわけじゃないと思う。ただ、ホラーといってもミステリ色が強いことが多い恩田作品の場合、不気味な余韻よりむしろ肩透かしで消化不良、と感じてしまう。
まあこの後味の悪さ、すっきりしない読後感もたまにはいいと思うんだけど、毎回だと味わいも薄れる。たまには別のエンディングを用意すればいいのにって思っちゃう。こういう終わらせ方と、この「世界は一皮剥けば異界」ってテーマがよっぽど好きなんだなーと……。
これさえなければね~。
東北の街の雰囲気がいいなあと。
ネタバレ
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うわー、恩田陸らしいなーと思ったら、デビュー作の次の作品らしい。
まあどれを読んでも似たような印象は受ける…。これもいつもと同じ。
文章は読みやすいし、設定や雰囲気がよくて、途中までは引き込まれるし面白いんだけど、ラストでガックリって感じ。こういうラストが悪いわけじゃないと思う。ただ、ホラーといってもミステリ色が強いことが多い恩田作品の場合、不気味な余韻よりむしろ肩透かしで消化不良、と感じてしまう。
まあこの後味の悪さ、すっきりしない読後感もたまにはいいと思うんだけど、毎回だと味わいも薄れる。たまには別のエンディングを用意すればいいのにって思っちゃう。こういう終わらせ方と、この「世界は一皮剥けば異界」ってテーマがよっぽど好きなんだなーと……。
これさえなければね~。